2014年3月5日水曜日
慢性硬膜下血腫
ゲスト/西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 医師
慢性硬膜下血腫とはどのような病気ですか。
転んで頭を打ったり、強くぶつけたりした時、頭の中に出血することがあります。ケガをしてすぐに出血が起きた場合は、急性の出血あるいは血腫などといいます。一方で、ケガをしてすぐの検査で異常がなかったのに、受傷してから1、2カ月たってから徐々に頭の中に血がたまってくる病気があり、これを慢性硬膜下血腫といいます。
慢性硬膜下血腫は、50歳以上の中高年に多くみられ、お酒飲みの方、肝臓の悪い方、治療のために血液をサラサラにするお薬を服用されている方は、この病気になりやすいとされています。このような方の場合、軽いケガの後でも発症することがあるので注意が必要です。北海道ではこの季節、特に雪道での転倒事故に気を付けてください。
慢性硬膜下血腫は、出血が少ない場合はほぼ無症状です。ある程度血がたまってくると、血液の塊が脳を圧迫し、頭の重だるい感じや頭痛などを起こします。手術前に訴えのなかった患者さんでも、術後に頭が軽くなったといわれる方も多いです。放置すると圧迫が進み、足元がおぼつかなくなるなどの歩行障害や手足のまひを起こすほか、脳梗塞などの脳血管障害と似た症状を示す場合も多いです。高齢者だと認知症に似た症状を起こすこともあり、間違われているケースも少なくありません。高齢者の場合は、本人が症状を自覚できず、そのまま寝込んでしまっていることもあるので、家族など周りの方が注意する必要があります。
慢性硬膜下血腫の治療について教えてください。
無症状であれば、よほど圧迫が強くない限りはそのまま経過観察をします。内服薬を使用して様子をみることもあります。ここ最近では、血腫の治癒を促進する効果のある漢方薬を使うケースも増えています。
圧迫が強い場合や、症状が出ているものは手術を行います。脳外科の手術というと恐ろしいイメージを持っている方も多いと思いますが、慢性硬膜下血腫の手術は局所麻酔で行い、高齢者でも受けることができます。
頭を打っても、軽いケガであれば慌てて病院に行く必要はありません。しかし、1、2カ月経ってから頭痛や、先にあげたような症状が出てきた時は、我慢しないで専門医を受診するようにしてください。
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