2014年3月26日水曜日

長引くせきの原因と治療


ゲスト/医療法人社団 大道内科・呼吸器科クリニック 大道 光秀 院長

感冒後にせきが長引く原因について教えてください。
 風邪によるせきは、通常1週間くらいで治ります。3週間以上せきが続く場合、背後に呼吸器の病気が隠れている可能性があります。例えば、熱がなく、レントゲンも正常なのにせきが続くときは、アレルギーによるせきの可能性が高いです。これにはせきぜんそくとアトピー咳嗽(がいそう)の2種類があります。以前はぜんそくというと、ゼーゼーするのが特徴でしたが、最近はゼーゼーのないせきだけのせきぜんそくが増えています。一方、アトピー咳嗽は、ハウスダストや花粉などのアレルゲンによってアレルギー性のせきが続きます。特にシラカバ花粉症の時期などにひどいせき込みが出る場合があります。
 マイコプラズマ、クラミジア、百日ぜきなどの感染症が原因であることも多いです。マイコプラズマ気管支炎、クラミジア気管支炎、百日ぜきは、それぞれ病原微生物に感染することによって発症し、発熱後に激しいせきが長く持続します。百日ぜきは今まで幼児の病気と考えられていましたが、近年、成人の長引くせきの原因として注目を集めています。夜中に症状が出ることが多く、発作性・連続性のあるせきに続いて、吸気時にヒューと音がしたり、咳き込んで嘔吐(おうと)したりします。
 アレルギーや感染症以外によるせきの原因としては、逆流性食道炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性副鼻腔炎(蓄膿症)、心因性によるものなどがあります。

長引くせきの治療について教えてください。
 このようにせきが出る病気はたくさんあり、せきの症状だけで診断するのは難しいので、レントゲン、肺機能検査、血液検査などを行い、せきの原因を特定していきますが、すぐに原因が分かるとは限りません。経過をみてやっと診断できる場合も多いです、せきの背後にある病気によって適切な治療はさまざまです。
 例えば、せきぜんそくは、気管支ぜんそくと同様に、気管支拡張剤でせきが改善するのが特徴ですが、治療は吸入ステロイドが最も効果的です。一方、アトピー咳嗽には気管支拡張剤が効かず、抗アレルギー剤が有効で、それでも効かなければ吸入ステロイドを併用します。アレルゲンを突き止め、せきが発生する季節のみせき止めと抗アレルギー剤を服用します。マイコプラズマ、クラミジア、百日ぜきには、通常頻用されているセフェム系抗生剤が効かず、マクロライド系やテトラサイクリン系、ニューキノロン系抗菌剤が有効です。せきが「長いな、おかしいな」と感じたら、呼吸器の専門医を受診することをお勧めします。

2014年3月24日月曜日

2014年3月19日水曜日

多焦点眼内レンズによる白内障治療(眼科領域の先進医療


ゲスト/大橋眼科 大橋 勉 院長

白内障の眼内レンズについて教えてください。
 白内障は目のレンズに当たる水晶体が濁る病気です。治療には点眼薬が投与されますが、最終的には手術が必要で、濁った水晶体を摘出して人工眼内レンズに入れ替えます。
 日本で使われている眼内レンズの多くは、近く、あるいは遠くの1カ所に焦点を合わせた単焦点眼内レンズです。濁りがなくなるため、見やすく、視界が明るくなりますが、近くか、遠くにしかピントが合わず、メガネを手放すことができませんでした。それを解消しようと生まれたのが多焦点眼内レンズです。

多焦点眼内レンズとはどのようなものですか。
 1枚のレンズに遠距離、近距離の両方に焦点が合うように設計された眼内レンズです。自由にピントを変えられるわけではありませんが、遠くにも近くにもメガネなしで焦点が合いやすくなります。場合によってはメガネを必要とすることもありますが、頻繁に掛け外しをする煩わしさからは解放されます。術後は見え方に慣れるまで数カ月かかる人もいます。夜間の光をまぶしく感じたり、暗い場所ではくっきり感が落ちたりするなどの弱点もあり、全ての人に適しているわけではありません。
 多焦点眼内レンズは2007年に厚生労働省に認可され、08年に先進医療として承認されました。先進医療とは、厚生労働大臣が保険適用外の先端的な医療技術と保険診療との併用を、一定の条件を満たした施設のみに認める医療制度です。先進医療施設に認定された医療機関で、多焦点眼内レンズによる白内障治療を受ける場合、術前術後の診察などに保険が適用となります。また、民間の生命保険の先進医療特約の対象ともなり、先進医療に係る費用が全額給付されるケースもあります。
 近年、従来の眼内レンズでは矯正不可能であった乱視も、白内障手術と同時に治せるようになりました。乱視矯正機能を持たせた多焦点眼内レンズは、今春にも厚労省から認可が下りる予定です。従来の多焦点眼内レンズの弱点を改善し、見え方の質を向上させたレンズや、遠近に加えて中間距離にも焦点の合う三焦点眼内レンズも登場しています。眼内レンズが進化し、白内障手術は患者さんのライフスタイルに合わせた治療の選択ができるようになり、視力の質をより一層重視する新しい時代に入ってきました。

2014年3月12日水曜日

双極性障害


ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 江川 浩司 副院長

双極性障害とはどのような病気ですか。
 気分のコントロールができず、日常生活に支障を来す病気の総称を気分障害といいます。気分障害は大きく、うつ病と双極性障害(そううつ病)に分けられます。うつ病では気分の落ち込みなどのうつ症状だけがみられますが、双極性障害はうつ状態とそう状態を繰り返します。遺伝的要因が大きく、およそ100人に1人の割合でかかる可能性があります。
 そう状態の症状は、万能感や誇大妄想などで、気分が高揚しておしゃべりになったり、自分が正しいと思い込んだりします。症状が軽い場合は、本人は「調子が良い」と感じ、周囲も「やけに元気だな」と思う程度で見過ごされがちです。しかし、症状が重くなると、借金をして買い物を続けたり、交通違反を犯すほど運転が荒くなったり、社会生活や人間関係に深刻な悪影響を及ぼす言動が目立ちます。また、そう状態からうつ状態に転じるとき、自殺に走る危険性が高まるとの指摘もあります。
 双極性障害のうつ状態とうつ病は症状がほぼ同じであるため、見分けがつきにくく、診断が難しい病気です。しかし、うつ病と双極性障害は治療方針も治療に使う薬も異なるため、この二つをしっかり見分けることが治療の鍵となります。

双極性障害の治療について教えてください
 双極性障害の治療は、うつ病と同じく薬物治療が中心です。うつ病では主に抗うつ薬が処方され、うつを良くすることが治療の目標ですが、双極性障害では主に気分安定薬や抗精神病薬を使い、うつ状態とそう状態の波を小さくすることを目指します。近年、そう状態の治療に効果が高い新しいタイプの抗精神病薬も登場し、治療の選択肢が広がっています。
 双極性障害であるのに、うつ病の治療を続けると、効果が低いだけでなく、うつ状態からそう状態への急速な状態変化など、病気が悪化する恐れがあるので注意が必要です。
 双極性障害は再発を繰り返しやすい病気です。症状が良くなってきても、服薬を中止せず、予防治療を続けていくことが大切です。患者さん自身が病気をよく理解し、発症・再発したときにどんな兆候が現れたのか、これまでの病状を振り返っておくことも必要です。病気のしるしを見逃さずに、再発を未然に防ぎ、病気とうまく付き合っていくことがとても重要になります。

2014年3月5日水曜日

慢性硬膜下血腫


ゲスト/西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 医師

慢性硬膜下血腫とはどのような病気ですか。
 転んで頭を打ったり、強くぶつけたりした時、頭の中に出血することがあります。ケガをしてすぐに出血が起きた場合は、急性の出血あるいは血腫などといいます。一方で、ケガをしてすぐの検査で異常がなかったのに、受傷してから1、2カ月たってから徐々に頭の中に血がたまってくる病気があり、これを慢性硬膜下血腫といいます。
 慢性硬膜下血腫は、50歳以上の中高年に多くみられ、お酒飲みの方、肝臓の悪い方、治療のために血液をサラサラにするお薬を服用されている方は、この病気になりやすいとされています。このような方の場合、軽いケガの後でも発症することがあるので注意が必要です。北海道ではこの季節、特に雪道での転倒事故に気を付けてください。
 慢性硬膜下血腫は、出血が少ない場合はほぼ無症状です。ある程度血がたまってくると、血液の塊が脳を圧迫し、頭の重だるい感じや頭痛などを起こします。手術前に訴えのなかった患者さんでも、術後に頭が軽くなったといわれる方も多いです。放置すると圧迫が進み、足元がおぼつかなくなるなどの歩行障害や手足のまひを起こすほか、脳梗塞などの脳血管障害と似た症状を示す場合も多いです。高齢者だと認知症に似た症状を起こすこともあり、間違われているケースも少なくありません。高齢者の場合は、本人が症状を自覚できず、そのまま寝込んでしまっていることもあるので、家族など周りの方が注意する必要があります。

慢性硬膜下血腫の治療について教えてください
 無症状であれば、よほど圧迫が強くない限りはそのまま経過観察をします。内服薬を使用して様子をみることもあります。ここ最近では、血腫の治癒を促進する効果のある漢方薬を使うケースも増えています。
 圧迫が強い場合や、症状が出ているものは手術を行います。脳外科の手術というと恐ろしいイメージを持っている方も多いと思いますが、慢性硬膜下血腫の手術は局所麻酔で行い、高齢者でも受けることができます。
 頭を打っても、軽いケガであれば慌てて病院に行く必要はありません。しかし、1、2カ月経ってから頭痛や、先にあげたような症状が出てきた時は、我慢しないで専門医を受診するようにしてください。