2014年2月26日水曜日

進化するぜんそく治療


ゲスト/医療法人社団潮陵会 医大前南4条内科  田中 裕士 院長

最新のぜんそく治療について教えてください。
 ぜんそくは、空気の通り道である気道が、炎症などによって狭くなり、呼吸が苦しくなる病気です。十数年ほど前は年間約6千人が亡くなっていましたが、炎症を抑えるステロイド吸入薬(ICS)や、ICSと気道を広げる長時間作動型吸入β刺激剤(LABA)の配合薬の普及などで、死亡例は大幅に減少しています。
 近年、ぜんそく治療はさらに進歩し、現在の治療の柱となっているICS/LABA配合薬にも新しい薬剤が次々と生まれています。昨年11月に登場したフルチカゾンとホルモテロールの配合薬は、即効性が高いのが特徴で、吸入直後から気道を広げる効果が得られます。また、特殊な吸入補助具を用い、吸入力が弱い人でも簡単な操作で服薬できるというメリットもあります。昨年12月に登場したフルチカゾンフランカルボン酸とビランテロールの配合薬は、従来薬が1日2回の吸入を必要とするのに対し、1日1回1吸入するだけで、24時間にわたって症状を抑えられるのが最大の特長です。
 ぜんそく治療では、自分に合った治療法を続けることが大切です。自分で試してみて、使いやすい薬を選ぶことが、負担なく継続できる最善の方法といえます。

難治性のぜんそくにも、治療効果の高い新薬があると聞きましたが。
 ICSやLABAなどを使っても発作に苦しむ重症患者が、全体の5%程度います。そうした重症患者向けに使われているのが「オマリズマブ」です。2〜4週間に1回、皮下注射し、ICSなども併用することで、約6割に効果が確認されています。ただし、適応となるのは重症患者のうち約半数で、アレルギーの原因物質に対抗する「IgE」という抗体の血液中の値が、1ml中30〜700IU(国際単位)の範囲内の人に限られていました。
 昨年8月、オマリズマブの適応範囲が広がり、難治性のぜんそくの子どもや血中IgE値が1ml中1500IUまでの人にも使えるようになりました。子どもはアレルギー反応が原因のぜんそくが大半なので、この薬で改善することが多く、重症ぜんそくの治療に新しい道が開けると期待されます。
 ぜんそくに悩む人は多いですが、昔の治療法しか知らない人も少なくありません。自分が受けている治療に疑問を感じたら、医師とよく相談することが大切です。ときには新たな治療を検討してみてもいいでしょう。

2014年2月19日水曜日

最新の糖尿病治療薬


ゲスト/医療法人社団 青木内科クリニック 青木 伸 院長

最新の糖尿病治療薬について教えてください。
 糖尿病治療薬の最近の進歩は目覚ましいものがあります。飲み薬では、高血糖の時にだけすい臓からインスリンを分泌させ、正常血糖へ下げる「DPP-4阻害薬」があります。この薬は理論的には低血糖を起こさず治療できる新薬で、糖尿病の平均血糖の指標であるHbA1c値を1.0%前後下げます。この薬と同じ系統の注射薬も登場し、「GLP−1受容体作動薬」と呼ばれています。この注射薬はHbA1c値を1.6%前後下げます。現在は1日1回の注射が必要ですが、将来的には1週間に1回で済む注射薬も出る予定です。この系統の注射薬は、すい臓のインスリンを出す細胞を保護し、インスリンの分泌を弱らせない作用も持ち合わせているといわれています。
 一方、インスリン注射薬に目を向けると、「持効型インスリン(1回の注射で24時間効果を持続する長時間作用型インスリン)」があります。飲み薬の治療が効かなくなる症例でも、飲み薬をそのまま服用しながら、1日1回の持効型インスリンの注射を加えると血糖が改善する症例もあります。「混合型インスリン」は、持続型インスリンと超速攻型インスリンの合剤ですが、超速攻型インスリンの含有率が50〜70%の製剤が最近使用できるようになりました。食後血糖の高い症例を治療するのに便利なインスリンです。

糖尿病の治療について教えてください。
 糖尿病の治療が良好といえる目安はHbA1cが6.9%以下になっている場合です。糖尿病の患者さんの約半数が高血圧と脂質異常症(高脂血症)を合併しているといわれています。糖尿病を合併した高血圧の治療はとても重要で、血圧の治療目標値は130/80mmHg以下です。自宅で簡易血圧測定器を使用して治療に役立てる方法もあります。この場合使用する測定器は、指先や手首に巻くタイプのものではなく、上腕に巻くタイプのものをお勧めします。脂質異常症の治療目標値は、LDL-コレステロール(悪玉コレステロール)が120mg/dl以下です。以上のようなさまざまな基準値を長期間保てば、眼底出血(失明)、腎臓の悪化(透析)、足の潰瘍・壊疽(えそ)による足の切断など糖尿病に由来する重症の合併症にならなくて済みます。それ以外にも脳梗塞(こうそく)、心筋梗塞などの予防にもつながります。

2014年2月12日水曜日

不登校


ゲスト/医療法人 耕仁会 札幌太田病院  太田 健介 院長

不登校について教えてください。
 不登校とは、何らかの心理・身体的、社会的要因などにより、登校しない状態です。平成24年度の政府統計では、小学生の0.31%、中学生の2.5%に不登校を認め、平成3年の2倍以上に増加しています。
 原因は多様で、不安などの情緒的混乱、無気力、友人関係上の問題、親子関係上の問題、学業不振などが多く、いじめが原因の不登校は2.1%とされます。
 最近は、携帯電話やインターネット、ゲーム依存による生活リズムの乱れが合併する症例が増えています。また、家庭の要因も大きく関与し、父性の欠如、過保護過干渉、母子密着などが多く認められます。また、背景に発達障害や精神障害があることもあります。
 不登校の子どもの第1期:腹痛や吐き気、目まい、朝起きられないなどの身体症状や母子密着などです。第2期:反抗、暴言、暴力。不登校が長期化し、集団生活や友人関係から得られる体験が得られず、第3期:ひきこもり状態となります。その結果、将来の社会適応がより困難になります。

不登校の治療について教えてください。
 不登校は、対応が早ければ早いほど、治療成績が良いです。早期ではなるべく早く学校に戻す行動療法的アプローチが有効です。背景にうつ病などの精神疾患が隠れているケースもあり、その場合は精神疾患への治療が必要です。
 不登校に対する治療は、1~2週間の入院で行われる場合が多いです。入院により、母子分離ができ、規則正しい生活が身に付き、多年齢層との集団生活により、視野が広がり、精神的自立が促されます。
 また、内観療法という認知療法も行われることがあります。これにより、自分のことをより客観的に見られるようになり、親や周囲の責任だと思っていたことを、自分の問題として捉え、前向きに行動できるようになります。ピアサポート、アニマルセラピーや、遊戯療法(ダーツなど)を通して心を開き、楽しく治療することも大切です。
 さらに、院内学校で学習指導を行う病院もあります。ほかに、家族療法および学校との連携も必須です。送迎や自転車貸与などの登校支援も有効です。

2014年2月5日水曜日

低温やけど


ゲスト/宮の森スキンケア診療室 上林 淑人 院長

冬季に増える「低温やけど」とはどのようなものですか。
 低温やけどとは、それほど熱くなく普通はやけどを起こさないような温度で起こるやけどを言います。42度以上の温度で起こり得ます。熱さを感じない、もしくは心地よさを感じる温度でも、長時間、体の同じ場所に触れ続けているとやけどが起きます。道内では、就寝中に湯たんぽを使っていたことが原因で、脚の横ずねやかかとに起きるケースが最も多いです。カイロを貼っていることを忘れて長時間使ったり、ストーブやファンヒーターの前で居眠りしたりするのも危険です。
 やけどの程度は、温度と接触時間によって変わります。通常のやけどと異なり、低温やけどは弱い熱でゆっくりと皮膚と皮下の組織にダメージを与えます。熱さや痛みに気付かないうちに、いつの間にかやけどになってしまうのです。長時間接触しているため、範囲は小さくても、深いやけどになるのが特徴です。皮膚表面の下にある真皮組織や、その下の脂肪、場合によっては筋肉まで達することもあります。
 やけどが比較的浅いものであれば、軟こうなどの治療で治りますが、それでも1~2ヵ月かかるケースがほとんどです。さらに深いやけどとなると、壊死組織を除去したり、場合によっては皮膚移植など手術が必要になることもあります。また、治っても瘢痕(はんこん)が残ってしまいます。

低温やけどで注意すべきポイントを教えてください。
 低温やけどは、最初は軽いやけどだと誤解されることが多いです。しかしながら、受傷後しばらくたってから「やけどが治らない」と受診する人が多いです。受傷部位が細菌などに感染すれば、高熱が出たり、ときには敗血症のような重篤な症状を引き起こしたりします。また、処置が遅れると、治療期間も長引きやすいので、決して自己判断せず、できるだけ早く形成外科や皮膚科の専門医を受診し、適切な治療を受けることが大切です。
 暖房器具の使い方を注意するのが、低温やけどの予防法です。湯たんぽはあらかじめ就寝時に布団から取り出すのが安全な使い方です。カイロは直接肌に貼り付けることを避け、下着や衣服の上に当てて使用しましょう。また、長時間同じ場所に当てずに温める場所をこまめに移動するのが安全です。ストーブやファンヒーター、パネルヒーターなどの前で居眠りしないよう、くれぐれも注意してください。