2014年12月24日水曜日

認知症


ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 西 裕 診療部長

認知症とはどのような病気ですか。
 認知症は、いったん発達した知能が、さまざまな原因で持続的に低下した状態を示します。原因別にいくつかの種類に分類され、代表的なものが「アルツハイマー型認知症」で全体の約5割、次に多いのが「血管性認知症」と「レビー小体型認知症」でそれぞれ約2割を占めます。
 アルツハイマー型認知症は、「アミロイドβ」というタンパク質が脳に蓄積し、脳が萎縮して起きるとされ、物忘れを主な症状として緩やかに進行します。血管性認知症は、脳梗塞など脳卒中が原因で発症し、階段状に増悪、進行するものです。レビー小体型認知症は、脳にレビー小体という物質がたまる病気で、ないはずの物が見える幻視(げんし)や、認知機能の急激な変動などが現れるのが特徴です。
 症状は、認知症の種類や個人によって異なりますが、初期には記憶障害が現れ、進行するにつれ、妄想や徘徊(はいかい)、攻撃的行動などの精神症状や行動異常を伴うことが多いです。よくあるのが「物盗(と)られ妄想」です。財布や貴重品の置き場所を忘れてしまうのですが、忘れた自覚がないので「盗まれた」と被害妄想を抱くというものです。

認知症の治療について教えてください。
 多くの認知症には根本的に治療する薬がないので、治療は病気の進行を遅らせることが重要となります(アルツハイマー型認知症には進行を緩和する薬があります)。過去の記憶について語り、脳の活性化につなげる「回想療法」や、音楽を通して脳を刺激する「音楽療法」などが行われることもあります。
 家族の方に気になる認知症の症状が現れたとしても、受診させるのをためらってしまうケースや、また本人も病院に行きたがらないことが多いです。しかし、受診を先送りにすればするほど生活面での問題が大きくなりがちです。健康診断的な面を強調するなど、本人のプライドを傷つけない配慮をしつつ受診を促すのが適切です。
 もし認知症と診断されたら、市町村の窓口で介護保険制度に基づく申請を行いましょう。認定された要介護の程度に応じて、訪問介護、通所介護、短期入所、生活介護などの介護支援サービスが受けられます。認知症の介護は長期間に及びます。家族の中だけで問題を抱え込まず、医師、看護師、福祉関係者などと相談することが大切です。

2014年12月17日水曜日

高血圧の原因疾患と治療


ゲスト/道 高血圧診療所 道林 勉 所長

高血圧になる病気について教えてください。
 高血圧は、心臓から出る太い動脈から始まって細い動脈に至る動脈内圧が、正常より高くなっている状態です。高血圧になる病気は、原因がすでに明らかになっている二次性高血圧と、原因が不明の一次性高血圧とがあります。
 二次性高血圧には、腎性高血圧、内分泌高血圧、心臓血管性高血圧、妊娠中毒症などがあります。腎性高血圧であれば、糸球体腎炎、腎盂(じんう)腎炎、膠原(こうげん)病などの腎臓自体の病気や、腎動脈瘤(りゅう)、腎動脈粥(じゅく)状硬化など、腎臓に入っていく動脈の病気が考えられます。また、内分泌性高血圧では、糖尿病、副腎髄質や皮質ホルモンの過剰分泌による高血圧があります。一次性高血圧は、専門的な詳しい検査によっても診断のつかない残りの高血圧をいいます。

高血圧を治すのに大切なことを教えてください。
 まず循環器病の専門医を受診し、高血圧の原因疾患を明らかにします。検査は広範囲に及ぶので、入院検査をお勧めします。二次性高血圧と診断された場合は、その原因を除くための治療が開始されます。原因疾患への対応処置は、高度な医療技術を要し、長期に及ぶものが多いのです。
 検査で原因が明らかにならなければ一次性高血圧です。高血圧全体の約90%を占めるとされます。遺伝性ですが、精神緊張や不安、過労、食塩摂取量などの環境因子も重視されています。原因療法ができないため、症状を和らげる対症療法が行われます。放置しておくと、脳出血などの致命的な脳血管障害となるので、血圧の定期的なチェックが必要です。注目すべきことは、この高血圧が進行すると精神感動・精神衝撃によって高まる交感神経活動や腎昇圧系の働きが、抑制されているときでも、高血圧となることです(低レニン性高血圧)。高血圧が長く続き細い動脈が硬くなっているときに見られます。
 高血圧を治すのに大切なのは、治療を受ける側の強い意志です。降圧剤の働きだけでは治療は奏功しません。生活環境・習慣の是正など長期にわたる取り組みが必要となります。

2014年12月10日水曜日

肺炎球菌ワクチン


ゲスト/琴似駅前内科クリニック 高柳 典弘 院長

肺炎球菌感染症とはどのような病気ですか。
 肺炎球菌によって起こる病気には、肺炎、気管支炎などの呼吸器感染症をはじめ、副鼻腔(びくう)炎、中耳炎、髄膜炎、菌血症などがあります。中でも成人肺炎の20%〜40%は肺炎球菌が原因であり、特に高齢者の重篤化が問題となっています。また、本来であれば菌が検出されない場所(血液や脳脊髄液など)から菌が見つかる病態(髄膜炎、菌血症など)を、特に侵襲性肺炎球菌感染症と呼びます。同感染症は、65歳以上の高齢者と5歳以下の乳幼児に多く発症することが知られています。
 細菌による感染症は抗生物質によって治療しますが、近年は抗生物質の効かない薬剤耐性菌が増えているため、治療が困難になっているという問題があります。そこで、ワクチンによって病気をあらかじめ予防することが以前にも増して大切になってきています。現在、肺炎球菌感染症を予防するワクチンは、「23価肺炎球菌多糖体ワクチン」と「13価肺炎球菌結合型ワクチン」の二つが発売されています。

肺炎球菌ワクチンについて教えてください。
 23価肺炎球菌多糖体ワクチンは、1回の接種で23種類の肺炎球菌の血清型に対して免疫をつけることができます。現在、肺炎球菌は90種類以上の血清型が報告されていますが、この23種類の血清型で成人の肺炎球菌による感染症の80%以上がカバーできます。接種対象者は2歳以上で、肺炎球菌による重い疾患にかかる可能性が高い人です。個人差はありますが、1回の接種で5年以上の効果が期待できます。
 2歳以下の小児では免疫の働きが未熟であるため、肺炎球菌の多糖体に対して抗体をつくることが難しく、23価肺炎球菌多糖体ワクチンを接種しても十分な免疫をつけることができません。そこで、小さな子どもにも免疫をつけられるよう工夫されているのが、13価肺炎球菌結合型ワクチンです。このワクチンは、13種の血清型の肺炎球菌による侵襲性肺炎球菌感染症の予防に用いられます。肺炎球菌による小児の同感染症の約70%をカバーできるという報告があります。 13価肺炎球菌結合型ワクチンの接種の対象となるのは、65歳以上の高齢者と生後2カ月以上6歳未満の小児で、標準として生後2カ月以上7カ月未満で接種を開始します。

2014年12月3日水曜日

ストレスと不適応


ゲスト/時計台メンタルクリニック 木津 明彦  院長

ストレスと不適応(適応障害)について教えてください。
 ストレスを感じ、イライラしたり落ち込んだりするのは、おしなべて、思い通りにならないという「欲求不満」や、どうしてよいか分からないという「葛藤」のときです。欲求不満や葛藤は生きていく上で不可避であり、人それぞれ何とか克服しているわけです。しかしながら、慣れない環境になじもうとする、あるいは行き詰まった問題を解決しようとして、奮闘努力のかいもなく周囲と摩擦を生じ、苦しみ悩む状態に陥ることはしばしばあります。これを「適応障害」といいます。
 このような状態を改善するには、まず「環境を変える」ことでしょう。職場や学校など苦痛を生じている状況から離れるとか、負担を軽減してもらいます。次は「自分を変える」ことが挙げられます。ストレスを強く感じないように薬を飲んだり、カウンセリングやリハビリでストレスを乗り越える能力をアップします(ストレス対処スキル)。理屈では以上の通りですが、実際の診察場面でよく遭遇するのは、苦痛を増幅させて悩んでいる方々です。

「苦痛の増幅」とは? またその対処法は? 
 人は適応努力が不調であるとき、その苦しみを消そう、あるいは無視しようと躍起になってしまいます。おまけに、その状況を「これでは駄目だ」とか「我慢するしかない」などのネガティブな言葉で表現してしまうと、そのイメージが独り歩きする、いわば言葉の魔力による「苦痛の増殖炉」のような状態となります。
 そこで認知行動療法の「マインドフルネス」という考え方が役に立ちます。これは「心が満たされること」とか「しみじみとした味わい」といった意味です。①心身に生じた現象に対するネガティブなレッテル貼りをやめ、温度や雨量を測定するように距離をおいて観察すること。②疫病神も神のうち:苦痛を排除しようとせず、「付き合う」スタンス。③大切な儀式のようにじっくり時間をかけて、お茶を入れたり洗濯物を畳むなど、五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、皮膚感覚)を駆使して実感してみる。このようなアプローチにより、脳本来の適応力・快復力を引き出したいものです。

2014年11月26日水曜日

糖尿病


ゲスト/やまうち内科クリニック 山内 雅夫 院長

糖尿病が怖いといわれるのはなぜですか。
 糖尿病の患者は推定で約950万人、予備軍も含めると約2200万人に上ります。そのうち90%が、膵臓(すいぞう)から分泌されるインスリン量が低下するか、分泌されてもその作用が十分に働かない2型糖尿病です。
 糖尿病の怖さは、全身に及ぶ合併症にあります。重症化すると、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害を起こし、それぞれ失明、人工透析、四肢切断に至る恐れも大きいです。また、糖尿病は動脈硬化を早め、心疾患や脳梗塞、下肢動脈閉塞症(へいそくしょう)など命に関わる病気を引き起こす大きな要因にもなります。

糖尿病の治療について教えてください。
 糖尿病の治療は、食事療法と運動療法が基本です。過食や運動不足といった悪習慣を改善しても血糖値を十分にコントロールできない場合、薬物療法が行われます。
 治療薬には経口薬と注射薬があります。このうち経口薬では、膵臓を刺激してインスリンの分泌を促進したり、肝臓や筋肉に作用してインスリンの働きを弱めたり、消化管での糖質の消化・吸収を遅らせたりする、さまざまなタイプの血糖降下薬が使われてきました。
 今年、「SGLT2阻害薬」と呼ばれる新しいタイプの経口薬が相次いで発売され、大きな注目を集めています。尿から血液に吸収される糖を減らすという、これまでにない仕組みで血糖値を下げる薬です。通常、血液は腎臓でろ過され、一部の糖が尿に流れますが、血液に再吸収されるようになっています。この時、SGLTというタンパク質が働くのですが、SGLT2阻害薬は、この働きを抑制することで、血液に糖が戻りにくくします。単独使用では血糖が過剰に下がる低血糖が起きにくいのが最大のメリットです。また、従来の薬と作用が異なるので、今までの薬で不十分な場合に、併用でも効果が期待されます。ただし、SGLT2阻害薬は、投与によって体重が2〜3キロ減少する特徴があります。特に高齢者では痩せてしまう恐れがあるので、使用には注意が必要です。
 新薬の登場で糖尿病の治療は大きく変化しています。ただ、全ての患者さんにとって最新の治療薬がベストとは限りません。専門医とよく相談し、個々の患者さんの病態に一番見合った治療法・薬を選択することが何よりも重要です。

2014年11月19日水曜日

禁煙治療


ゲスト/白石内科クリニック 干野 英明 医師

喫煙の害とタバコをやめられない理由について教えてください。
日本では現在約2000万人が喫煙しています。タバコは、さまざまながんや虚血性心疾患、脳血管疾患、慢性閉塞性肺疾患、歯周病などの原因になります。タバコの煙には4000種類以上の化学物質が含まれ、そのうち約60種類に発がん性が認められています。
 喫煙は喫煙者自身の健康への影響に加え、周囲の人たちの健康にも影響を及ぼしています。これを受動喫煙といいます。タバコの煙には、喫煙者が直接吸い込む煙(主流煙)と、タバコから立ち上る紫煙(副流煙)があり、有害物質は副流煙に多く含まれます。
 禁煙を始めても、ついまたタバコを吸ってしまうのは、タバコの煙に含まれるニコチンに強い依存性があるからです。タバコを吸うと、ニコチンが肺から血中に入り、すぐに脳に達します。脳にはニコチン受容体という組織があり、ニコチンが結合すると快感を生じさせる物質(ドーパミン)が放出されます。これを繰り返すうちに、ニコチンがないとイライラするなどの禁断症状が出現し、依存症に向かってしまうのです。

禁煙治療はどのように進められるのですか。
 現在、常習喫煙は「ニコチン依存症」という名の「病気」とされ、外来での治療には医療保険が適用されるようになりました。
 禁煙治療薬には大きく分けて二つあります。一つは、ニコチンガムとニコチンパッチです。タバコ以外の方法でニコチン量を調節する方法(ニコチン置換療法)です。ガムは口の粘膜から、パッチは1日1枚を腕や背中などに貼付することでニコチンを吸収し、段階的にニコチンの量を減らしていきます。
 もう一つは、服用するとタバコを吸ってもおいしいといった満足感を覚えにくくする飲み薬です。薬の成分がニコチンの代わりに脳のニコチン受容体と結びつき少量のドーパミンを放出し、イライラなどの症状を軽くします。また、ニコチンが受容体に結びつくのを邪魔するため、タバコを吸いたいという切望感が軽減され、スムーズに禁煙できる仕組みとなっています。この薬はニコチンを含まないため、ニコチン置換療法が難しい心血管疾患のある人にも使用できます。ただし、内服中の自動車の運転が禁止されるなど、いくつかの制限もあります。
 禁煙治療を希望する人は、医師とよく相談の上、自分に合った治療法を選択することが大切です。

2014年11月12日水曜日

テニス肘


ゲスト/医療法人社団 恵信会 環状通東整形外科 堀田 知伸 院長

テニス肘とはどのような病気ですか。
 テニス肘は正式には「上腕骨外側上顆炎(じょうかえん)」といいます。肘の外側の骨の出っ張り部分が痛くなる病気です。拳を強く握ったり、手首を反らせたりすると痛みを感じます。テニスやゴルフなどのスポーツ、パソコンなどの仕事や日常生活で腕をよく使う人に多くみられます。
 テニス肘は、腕の筋肉が肘の骨にくっついている部分(腱)に負荷がかかり、微小な損傷(炎症)を起こすのが原因と考えられています。加齢が大きな発症要因となり、40代〜60代の中高年に多く発生しています。年齢が高まるにつれ、筋力の柔軟性や腱の弾力性が低下し、炎症を引き起こしやすい状態となっているためです。

テニス肘の治療について教えてください。
 安静が基本です。日常生活では強く握る動作やタオルを絞る、重たいものを持ち上げるなどの動作をなるべく避けるようにします。その上で、初期には手首を上に持ち上げる筋肉に負担をかけないよう、肘の近くを固定するサポーターを付けたり、肘を伸ばし手首を曲げて筋肉を伸ばすストレッチングなどを行います。症状が強い患者さんには、痛みの出る部分にステロイド剤を注射します。注射は痛みの緩和には有効ですが、病気が治るわけではありません。繰り返し打つと体への負担も大きいので、2、3回までにしておく必要があります。
 このような保存治療で、多くの方は快方に向かい、数カ月〜半年で痛みがとれてきます。しかし、中には保存治療が効かず、痛みが慢性化、難治化するテニス肘もあります。これは、腱の断裂を起こしている可能性が高い症例で、MRIで診断がつきます。半年以上痛みが強く、日常生活や仕事に支障が出る場合は、手術も選択肢の一つになります。以前は外からメスで切って断裂部を処置する方法が主流でしたが、当院では体への負担が少ない関節鏡による手術を行っています。数ミリ程度の穴から肘の関節内に関節鏡を入れ、断裂部位を処置します。手術時間は40分程度、入院期間は2〜3日間。関節鏡手術で難治症例のうち約9割が回復に向かいます。
 テニス肘にあまり神経質になる必要はありませんが、強い痛みに悩まされている場合は、スポーツ障害、特に肘に詳しい医師に相談してみることが賢明です。

2014年11月5日水曜日

摂食障害


ゲスト/医療法人北仁会  いしばし病院 畠上 大樹 医師

摂食障害とはどのような病気ですか。
 摂食障害はさまざまな心理的・社会的な要因から、体重や体型の変化に過度にこだわり、食行動に異常を起こす病気です。10〜20代の若い女性を中心に増加しています。大きく分けて、極端に食事を制限する拒食症と、過剰に食べる過食症があります。いずれも太ることへの恐怖感を持っており、拒食の反動から過食に変わるケース、拒食と過食を繰り返すケースなどさまざまです。
 摂食障害と同時にうつの症状や、感情、行動、人間関係が不安定になる境界性人格障害が現れることも多いです。また、極端な低体重や肥満を招くため、栄養失調による生理不順や骨粗しょう症、感染症、肝機能障害などさまざまな身体的症状がみられるようになり、日常生活に支障を来します。
 患者さんの多くは、生まれつき繊細な性格・体質であり、自分のことを低く評価し、不安を抱えています。その背景には、成長する過程で自分の存在を認めてもらえなかった環境や、自分の思いを我慢しながら、周囲の願いを達成する形で生きてきた経験などがあります。摂食障害の原因を特定することは非常に難しいため、原因を無理に探すのではなく、これからどうしていけばよいかを考えていくことが重要です。

摂食障害の治療について教えてください。
 拒食症の人はどんなにやせても、自分が病気だという認識を持てないことが多いです。また過食症の人は、自分が悪い、恥ずかしいという思いから問題を一人で抱え込んでしまう傾向があります。摂食障害の治療は、まず自分を苦しめているのは自分自身ではなく、“病気“であると認識してもらうことから始まります。病気の発症は「これまでの生き方はもう無理で、一人では頑張れない」という意味にも捉えることができます。この自分自身のメッセージを素直に受け取り、周囲に相談することが大切です。
 治療に特効薬はありませんが、精神科や診療内科などの医師とのカウンセリングによる認知行動療法や、自助グループでの対話に効果が認められています。一般的に摂食障害の治療は時間を要することが多いです。一進一退を繰り返しながら徐々に良くなっていきます。回復への道は決して平坦ではありませんが、必ず治る病気です。あせらず、あきらめず、ゆっくりと治療を続けることが第一です。

2014年10月22日水曜日

白内障手術の合併症


ゲスト/大橋眼科 大橋 勉 院長

白内障の手術について教えてください。
 白内障は、瞳の後ろにある水晶体が濁るために起きる視力障害です。治療には点眼薬が投与されますが、最終的には手術が必要です。一般的な手術法は、水晶体を包んでいる袋を残し、袋の中の濁りを超音波で細かくして取り除き、その袋の中に人工の眼内レンズを挿入するものです。安全性の高い手術ですが、それぞれの目によって症状、程度、状況が異なるため、同じ白内障の手術でも難易度に差があります。
 従来、眼内レンズは1つの距離に焦点を合わせた単焦点眼内レンズが使われていましたが、最近では遠・近距離の複数に焦点が合う多焦点眼内レンズや、乱視矯正と多焦点が一体となったトーリック多焦点眼内レンズなど、眼内レンズの選択の幅も増えています。

白内障の手術で合併症など注意すべき点はありますか。
 最も合併症が起きやすいのは、進行して茶褐色になった白内障です。濁りが固くなっているため取り除くのが難しく、また、水晶体の袋を支えるチン小帯が弱くなっているため、濁りが目の中に落下することもあります。
 重度の合併症としては、数千人に一人というごく珍しい状態ですが、術後に眼内で細菌が繁殖し、網膜の障害で失明に至るケースがあります。ただちに硝子体手術を行えば、視力を維持できる可能性が高まります。
 術後、数カ月から数年して、またものが見にくくなってくることがあります。多くの場合、後発白内障によるものです。眼内レンズの入った、水晶体の袋の後ろ側が濁ってくるのが原因です。後発白内障は再手術の必要はなく、特殊なレーザーを使って簡単に濁りを取ることができます。外来でできる治療で、視力もすぐに回復します。
 白内障手術では、術前に術後の見え方を予測して、挿入する眼内レンズを決定します。目の軸の長さや角膜のカーブから、適切な屈折度数を得るように、眼内レンズの度数をさまざまな理論式に基づき算出しています。しかし、眼球の形状には個体差があり、術後予想通りの屈折度が得られないことがあります。特に多焦点眼内レンズ、トーリック多焦点眼内レンズは、適切な屈折度や乱視軸がずれると、視機能や乱視矯正効果の低下を生じやすい特性があり、その場合、眼内レンズを再度入れ直す手術やレーザー治療による調整が必要になることもあります。

2014年10月15日水曜日

COPD(慢性閉塞性肺疾患)の薬物療法


ゲスト/医療法人社団 大道内科・呼吸器科クリニック 大道 光秀 院長

COPDとはどのような病気ですか。
 COPDは、日本語で「慢性閉塞性肺疾患」と訳されます。以前は肺気腫や慢性気管支炎などと呼ばれ、細い気道(気管支)や肺胞などが障がいをうけ、長期にわたって気管支が細くなる病気の総称です。主な症状は、長引く咳(せき)や痰(たん)、労作時の息切れなどで、徐々に呼吸機能が低下していきます。重症化すると呼吸困難を起こし、日常生活に支障を来たすだけでなく、肺炎や心不全などの合併症で命とりになる場合があります。長期間にわたる喫煙習慣が主な原因であることから、COPDは「肺の生活習慣病」とも呼ばれ、近年、社会的にも大きな注目を集めています。
 現時点でCOPDを根本的に治し、肺を元の状態に戻す治療法はありません。呼吸機能を改善し、咳,痰,息切れなどの症状を緩和し患者さんの生活の質を高めることが治療の目的となります。症状の軽重にかかわらず、治療の基本は禁煙です。喫煙を続ける限り、病気の進行を止めることはできません。まずは、きっぱりとたばこをやめることが重要です。そして、薬物療法により症状を改善しながら、呼吸機能の維持・増進を図っていきます。

COPDの薬物療法について教えてください。
 COPDの治療に用いられる代表的な薬は、狭くなった気管支を広げて呼吸を楽にする「気管支拡張薬」です。霧状または粉末状の薬と息を一緒に吸い込み、気管支や肺に直接薬を届けられる吸入薬が主に用いられます。
 気管支拡張薬には、長時間作用性抗コリン剤(LAMA)、長時間作用性β2刺激薬(LABA)などありますが、近年、強力な気管支拡張作用をもつ新薬が続々と登場し数年前と治療は大きく様変わりしています。LAMAでは以前からあったチオトロピウムに加えグリコピロニウムが、LABAではインダカテロール、ホルモテロールが新たに登場し、従来の薬に比べて、即効性や持続性に優れるなど、増悪の抑制や生活の質の改善に大いに期待が持てます。効果の異なるLAMAとLABAを一つにまとめた合成剤も登場し、その有効性が確認されています。ただし、現時点では合剤は処方期間が2週間までと制限があります。
 COPDは軽症例から重症例までは薬物治療が可能ですが、超重症例になると薬の効果が不十分となります。そのため、早い段階で病気に気付き、適切な治療を開始することが大切です。

2014年10月8日水曜日

うつ病とアルコール問題


ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 山本 芳正 診療部長

うつ病とアルコール依存症の関連性に注目が集まっているのはなぜですか。
 うつ病とアルコール依存症の合併は頻度が高く、うつ病の人が悩みや苦しみから逃れるためにお酒を飲み、酒量が増えてアルコール依存症になる場合や、逆にアルコール依存症の人がお酒をたくさん飲むことで、うつ症状を悪化させてしまうケースなどいくつかのパターンに分かれます。うつ病とアルコール依存症が互いに誘発し合い、症状を悪化させることもさまざまな研究で指摘されるようになりました。また、うつ病もアルコール依存症も、それぞれ単独でも自殺のリスクは高いことが知られていますが、併発でさらにリスクが高まることも指摘されています。
 うつ病、アルコール依存症の診療では、それぞれの病気の併存に注意が必要です。この併存を正確に診断することが、治療方針を立てる上で重要になります。

アルコール問題について教えてください。
 2004年度のデータでは、アルコール依存症の疑いのある人は440万人、治療が必要な人は全国で80万人といわれていますが、専門治療を受けている人は、その中の2万人に過ぎません。
 飲酒量を表す単位を「ドリンク」といい、純アルコール換算で10gが1ドリンクです。節度ある適度な飲酒は、男性では2ドリンク以下が1日当たりの適量とされています。2ドリンクは、ビール500ml缶1本に相当します。1日の飲酒量が、6ドリンクを超えると多量飲酒となり、アルコール依存症になるリスクが高まると警告されています。
 健康に害をもたらすようなお酒の飲み方を早期に発見し、修正するためのスクリーニングテストに、WHO(世界保健機構)が開発した「AUDIT(オーディット)」があります。テストは10項目からなり、各項目の回答にしたがって点数が付与されています。合計点数により、適度な飲酒、危険・有害な飲酒、アルコール依存症の有無などを判定します。飲酒問題を持つ人を深刻なアルコール依存症に至る前に発見し、飲酒行動を変えるよう働きかけられる非常に有用なテストです。
 アルコール依存症は完全に断酒しないと治りませんが、その一歩手前の状態であれば、適切な支援や努力によって節酒でも治癒が望めます。何度も禁酒しようとしているのにやめられない、お酒が原因で問題が起きている…という人は、なるべく早い段階で一度専門医に相談することをお勧めします。

2014年10月1日水曜日

区別が紛らわしい足の皮膚病


ゲスト/宮の森スキンケア診療室 上林 淑人 院長

水虫とそれに似た区別しにくい皮膚病を教えてください。
 水虫とは白癬(はくせん)菌というカビの仲間が、足の指の間や足の裏などに感染して起こる皮膚病です。かゆみを伴うことが多く、皮がむけたり水疱(すいほう)ができたりします。水虫かどうかは患部を見ただけでは分からないこともあり、菌の存在を顕微鏡で確認する必要があります。
 水虫と紛らわしい疾患として異汗性(いかんせい)湿疹や掌蹠膿疱(しょうせきのうほう)症などがあります。異汗性湿疹は、汗の刺激やアトピー素因が原因で起こると考えられており、足の裏に細かい水疱状の湿疹が生じ、皮がむけたり強いかゆみを伴ったりします。掌蹠膿疱症は、手のひらや足の裏に膿を伴った水疱(無菌性膿疱)を形成し、皮がむけたり亀裂を生じたりします。
 爪から白癬菌が侵入して起こる爪白癬も水虫の一種です。爪が白濁し爪甲が厚くなるのが特徴です。しかしながら激しいスポーツの影響やきつい靴を履き続けるなど、長期にわたる様々な物理的な刺激で爪甲が厚く変形をきたすこともあり、見ただけでは爪白癬の診断は困難です。爪白癬の場合も菌の存在の確認が必要です。
 水虫かどうかの素人判断は危険です。水虫と思い込み、市販薬でこじらせる場合もあります。最初に診断を間違えれば治るものも治りません。市販薬などを使い効果が出なかった場合は違う病気である可能性を考え、専門医を受診することをお勧めします。

イボとうおのめ、たこの違いを教えてください。
 足底に硬く存在し歩行時に痛みを起こす皮膚疾患に、イボ、うおのめ、たこなどがあります。イボは正式には「尋常性疣贅(ゆうぜい)」といい、ウイルスの一種が感染して起こる皮膚病です。うおのめ、たこはそれぞれ「鶏眼(けいがん)」「胼胝(べんち)」と言います。これらは靴が足に合っていない、歩き方が悪いなど、足の裏への過度の圧力が原因となり、角質が皮膚深くに食い込んだり(鶏眼)、厚く盛り上がったり(胼胝)したものです。
 イボは液体窒素による冷凍凝固治療が一般的です。うおのめ、たこはメスなどで硬い部分を削る処置を行います。角質を浸軟させる外用剤を併用することもあります。
 イボ、うおのめ、たこは見た目だけでは区別が難しく、特にイボはウイルス性のため放っておくと知らずに広がるケースもあるので、きちんと診断を受けることが大切です。

2014年9月24日水曜日

おなかの痛み


ゲスト/つちだ消化器循環器内科 土田 敏之 院長

いろいろなおなかの痛みについて教えてください。
 内科小児科一般のクリニックでは、おなかの痛みを訴えて来院される患者さんも多いです。おなかに起こる症状は、腹痛の他、便秘や下痢などの便通異常、おなかが張る、グルグル鳴るといった腹部不快感などがあります。
 子どもの腹痛で最も多いのが便秘症と急性腸炎です。風邪や発熱に伴う腹痛もよくみられます。思春期には受験や友人関係のストレスから、自律神経失調症を引き起こしている場合もあります。赤ちゃんに多いのが腸重積。名前の通り、腸の一部が重なり合ってしまう病気で、早期の治療が必要です。
 大人のおなかの痛みは、さまざまな原因が考えられます。頻度が高いのは急性胃炎、胃潰瘍、胆石症、風邪、感染性腸炎、ぼうこう炎、尿管結石、便秘、急性虫垂炎、腸閉塞(へいそく)、過敏性腸症候群、大腸憩室症などによるものです。まれに子宮外妊娠、子宮付属器炎、慢性前立腺炎、心筋梗塞の患者さんが混じります。

腹痛の部位と病気の種類について教えてください。
 腹痛を部位別に分けると、胃の近く、みぞおちや左上腹部の痛みは胃炎、胃潰瘍のほか、風邪、便秘、膵炎(すいえん)、まれに心筋梗塞が疑われます。刺身など生ものを食した後の激しい胃の痛みは、胃アニサキス症によるものも考えられます。アニサキスは白い糸のような線虫類で、生食して胃に入ると、胃壁に刺さって炎症を起こします。投薬注射の効果はいまひとつで、内視鏡で見つけ、取り出さない限り痛みは取れません。
 右上腹部の痛みは、胆石症や十二指腸炎・潰瘍などが疑われます。右下腹部の痛みは、急性虫垂炎が最も多く、その他便秘や大腸憩室症、感染性腸炎、血尿があれば尿管結石も考えられます。下腹部中央の痛みは、下痢を伴う感染性腸炎やぼうこう炎、子宮付属器炎などが考えられます。感染性腸炎のうちノロウイルス、ロタウイルスについては約15分で分かる迅速検査があり、早期の発見・隔離に役立っています。
 胃・大腸内視鏡でおなかの中をのぞいてみると、胃がん、大腸がん、潰瘍性大腸炎、大腸憩室症、虚血性大腸炎などの発見、鑑別ができます。誰もが経験するおなかの痛みですが、中には深刻な病気の症状として表れる危険な腹痛もありますので、年に一度は胃・大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。

2014年9月17日水曜日

便秘


ゲスト/札幌いしやまクリニック 樽見 研 院長

便秘の原因について教えてください。
 便秘とは、便の排せつが困難になって便が長い期間体内に滞っている状態をいいます。毎日便が出ないといけないと考えている方も多いようですが、排便間隔は個人の環境、体質、生活習慣などによりさまざまです。何日以上便が出ないと便秘なのかと定義づけることは難しいのですが、3日に1回未満もしくは週2回未満の排便回数が便秘の判定の一つの目安となります。便秘症と呼ぶ場合は、おなかの張りや腹痛、残便感、便が硬いなどの不快な症状が出現し、日常生活に支障を来たすため治療の対象になってくるという意味合いが含まれてきます。
 便秘はまず一過性便秘と徐々に進行して慢性化していく慢性便秘に分けられます。一過性便秘は生活環境の変化などで一時的に便秘になることで、自然に改善するので問題にはなりません。慢性便秘で特に注意が必要なのは器質性便秘と呼ばれているものです。これは腸に便の通過を妨げる病気が隠れているために発生する便秘であり、その代表例は大腸がんです。
 器質性便秘以外の慢性便秘は、腸の機能が低下したために起こることが多く、機能性便秘と呼ばれています。機能性便秘はさらに、便意を我慢していることがきっかけでなる直腸性便秘、結腸の緊張が緩んでいてぜん動運動が弱くなってしまうことが原因で起こる結腸性便秘、常用している薬が原因となっている薬剤性便秘などに分類できます。

便秘の治療について教えてください。
 器質性便秘を除いては、食事療法と薬物療法、生活習慣の改善などが治療の基本となります。規則正しい排便習慣を取り戻しながら、便の量を増やし、また軟らかくすることが大切です。食物繊維を多く摂取するように心掛け、下剤を使うのであれば刺激のないタイプを用います。市販の便秘薬の多くには刺激性下剤が含まれているので、連用すると習慣性もあり、自己判断による安易な使用は勧められません。
 結腸性便秘の改善方法は運動することです。特に腹筋運動や骨盤内の筋肉を鍛えるような運動が効果的です。また、1日30分くらいのウオーキングもお勧めです。
 長期間便秘が改善しない場合は、大腸がん以外にも深刻な病気が隠れているケースもあります。一度専門医を受診し、便秘の原因をきちんと見極め、適切な対処を行うようにしましょう。

2014年9月10日水曜日

高齢者のめまい


ゲスト/西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 医師

めまいについて教えてください。
 脳神経外科の外来では、めまいを訴えて受診される患者さんが多くいらっしゃいます。初めて経験するめまいは、本人にとっては恐ろしいものです。「天井がぐるぐる回った」「後ろに倒れそうになった」「地震かと思った」「立ち上がったら目の前が暗くなった」などの症状を「めまい」として表現されることが多いようです。その訴えの中にはさまざまな原因が考えられます。
 症例として多いのは内耳障害によるめまいですが、脳の障害で起こる怖いめまいとの鑑別が重要です。症状の強さだけで判断することは禁物です。言葉のもつれや手足の脱力、しびれなどがめまいとともに出ているようなら、脳の障害が疑われます。中には非常に鑑別の難しいめまいもあります。脳の障害によるめまいは極力早く診断し、治療に入る必要がありますが、その際にはMRIによる診断が有用です。

高齢者のめまいはどのような特徴がありますか。
 高齢者は、加齢に伴い平衡感覚や血圧を調節する能力が衰えているので、めまいを起こしやすいです。高血圧や糖尿病などの持病を抱えていることも多く、それらの薬の副作用などでめまいを起こすこともあります。
 高齢者のめまいは、原因を簡単に明らかにできないケースも多いです。例えば、もともと耳鳴りや難聴がある場合のめまいは、必ずしも内耳に原因があるとはいえません。
 起立性低血圧とは、座った状態から立ち上がった時に血圧が低下する状態をいいます。若い人であれば顔が青ざめ、冷や汗が出て、失神してしまう場合もあります。高齢者はこのような激しい反応は起こりにくいとされていますが、反対に少し血圧が下がっただけでもめまいを起こしやすくなります。高齢者は血圧を一定に保つ自律神経の働きが衰えているからです。
 暑い時期は汗をかきやすく、脱水状態になりめまいを起こすこともあります。高齢者はのどの渇きを感じにくくなるため、脱水状態になりやすいです。夜間にトイレに行くのを減らそうと水分補給を控えることがありますが、脱水の予防を考えると好ましくありません。入浴や就寝前にはコップ一杯の水を飲むようにしましょう。
 漢方薬がめまいの症状に有効なことも多いです。長引くめまいに悩まされている人は、ぜひ一度専門医にご相談ください。

2014年9月3日水曜日

依存症


ゲスト/医療法人 耕仁会 札幌太田病院  太田 健介 院長

依存症とはどのような病気ですか。
 依存症は、ある対象物の使用をコントロールできなくなってしまい、社会生活に支障を来たす病気です。飲酒のコントロールが効かなくなるアルコール依存症、危険ドラッグ(脱法ドラッグの新呼称)など薬物依存症、スマートフォンやゲームを長時間使いすぎることで睡眠不足や成績低下など日常生活に支障が出たり、イライラしやすいなどの禁断症状があらわれたりするネット依存症など、さまざまな依存症が社会問題として注目されています。
 若年層や女性のアルコール依存症が増加しています。特に、未成年者の飲酒は発達途上の脳への障害が大きく、ほんの数年で依存症になってしまう危険性があります。また、高齢者のアルコール依存症も増加傾向にあり、特に認知症との合併は臨床的にも大きな問題となっています。
 危険ドラッグによる深刻な依存症も、若年層を中心に急増しています。物によっては覚せい剤より強い毒性、幻覚・興奮作用があり、入院治療が必要になることが多いです。
 厚労省は、ネット依存症の疑いのある成人は約2.6%(270万人)にのぼると推計し、女子中高生の9.9%、男子中高生の6.4%がネット依存の疑いありとしています。依存が進むと、昼夜が逆転する睡眠障害や不規則な食事による栄養失調を引き起こすほか、学校を休みがちになり、引きこもりにつながるケースも見受けられます。

依存症の診断と治療、予防について教えてください。
 依存症の判断基準はいろいろありますが、代表的なものとして「価値観の逆転」があります。大切にしていた家族や仕事、自分の健康より依存の対象となる事柄を優先させる状態のことです。依存症になってしまったら、自分一人の力で抜け出すのは困難です。自らを依存症と気付き、回復を求めなければ、さらに悪化していくことが避けられません。
 治療は薬物療法や認知行動療法、集団治療、自助グループへの参加などにより、依存に歯止めをかけ、依存の対象となる事柄に頼らない生活を目指します。他の病気と同じように、軽いうちに治療を始めれば、早期の回復が可能です。重要なのは、病気だと自覚し、正しい知識を得て、有効なやめ方を実践することです。
 依存症の一番の予防は、病気について正しく知ること。依存症は、自らの人生を破綻に導き、周囲をも傷つける進行性の深刻な病気であると理解することが大切です。

2014年8月27日水曜日

足のしびれ


ゲスト/札幌宮の沢脳神経外科病院 村上 友宏 医師

足のしびれの原因にはどのようなものがありますか。
 足のしびれの症状は実にさまざまです。足と床の間に何か一枚あるような、あるいは靴を履いていても砂利の上を歩いているような感覚、また、ジンジンやピリピリとしたしびれ感、足の裏から足指先にかけての痛み、冷え、火照りを訴える人もいます。
 足にしびれや痛みなどの知覚障害が出る病気はいくつか考えられます。例えば、背骨には脊柱管と呼ばれる神経の通路があります。腰の脊柱管が何らかの原因で狭くなったものが腰部脊柱管狭窄(きょうさく)症で、神経が圧迫されて足のしびれや冷えが起きます。足根(そくこん)管症候群は、内くるぶしとかかとの間にある足根管という狭いトンネルで、神経が圧迫されることで起きる病気です。かかとを除く足の裏全体のしびれや痛みが症状で、入浴したり布団に入ると痛みが増強するのが特徴です。また、眠りに入る時、主にふくらはぎの内側に虫がはうような不快感を覚え、足を動かさずにはいられないというむずむず脚症候群があります。不眠の原因になるためQOL(生活の質)を著しく低下させます。
 このほかには、糖尿病による末梢(まっしょう)神経障害、足の血管に動脈硬化が起こる閉塞性動脈硬化症の可能性も考えられます。 頸椎(けいつい)で神経の圧迫がある場合にも足のしびれや感覚が鈍くなるといった症状が出ることがあり注意が必要です。

足のしびれの検査、診断について教えてください。
 しびれは神経がどこかで圧迫されていたり、神経自体が傷ついたり、血液の流れが滞っていたりするときなどに起こります。脳や頸椎、腰椎の神経の検査には、エックス線やコンピューター断層撮影(CT)、磁気共鳴画像装置(MRI)が有用ですが、足根管症候群などでは画像検査で異常がないことも多く、神経の伝達速度を調べる神経伝導検査を行うこともあります。また、CAVIという血管の動脈硬化検査で血液の流れを確認することもありますし、糖尿病の診断には採血が必要です。
 足のしびれの原因を突き止め、治療を正しく進めるためには、これらの検査も大切ですが、医師による診察の神経所見が決め手となります。いつから、どの場所にどんな症状があるのかを医師にしっかり伝えて的確な診断をしてもらいましょう。

2014年8月13日水曜日

機能性ディスペプシア


ゲスト/佐野内科医院 佐野 公昭 院長

機能性ディスペプシアとはどのような病気ですか。
 これまでは2006年に作成された国際的な診断基準が引用されていましたが、今年4月に日本消化器病学会が作成した診療ガイドラインが発表されました。日本の実情に合った診療ができるガイドラインとなっています。
 ディスペプシアとは心窩部(しんかぶ・みぞおち)痛や胃もたれなどの心窩部を中心とした腹部症状をいいます。機能性ディスペプシア(FD)は、症状の原因となる器質的、全身性、代謝性疾患がないのにもかかわらず、慢性的にディスペプシアを呈する疾患と定義されています。
 これまでFDの患者さんは慢性胃炎として診断、治療されてきましたが、FDは症状により定義される疾患で、両者は同一のものではありません。併存することもしないこともあります。新たなガイドラインではこれらは異なる疾患であることを銘記するべきであるとしています。
 日本人の有病率は、検診受診者の11〜17%、上腹部症状を訴え病院を受診した患者の45〜53%と推定されています。FDの罹患(りかん)はQOL(生活の質)を低下させ、症状が強いとその低下は顕著になります。

機能性ディスペプシアの診断、治療について教えてください。
 まず症状の詳細を把握することが基本となります。問診が大切ですが、症状の種類、程度などを客観的に評価する方法として自己記入式の質問票を用いることもあり、治療効果の判定にも有用です。体重減少や再発性の嘔吐(おうと)、出血、嚥下(えんげ)困難、腹部腫瘤(しゅりゅう)、発熱といった器質性疾患が疑われる兆候がある場合は早めに、そうでなくても診療のいずれかの段階で内視鏡検査を行うことも欠かせません。必要に応じて内視鏡検査以外の画像検査も行います。ピロリ菌検査の実施も推奨されています。
 NSAIDs(非ステロイド性抗炎症剤=鎮痛剤)や低用量アスピリンの服用で似たような症状が出現することもあるため、可能な範囲で内服を中止し、それにより症状が軽減、あるいは消退する場合はFDから除外します。
 治療の基本は、食事など生活習慣の改善指導です。就寝前の食事や暴飲暴食、早食い、喫煙、過度の飲酒など、胃に負担をかける生活習慣を改めます。また、ストレスの解消や適度な運動も効果があります。
 内服薬では酸分泌抑制薬や消化管運動機能改善薬が用いられるほか、漢方薬や抗うつ薬、抗不安薬が処方されることもあります。4週間の内服治療を行っても症状が改善しない場合には治療法の変更を考慮します。

2014年8月6日水曜日

産後の精神疾患


ゲスト/医療法人社団 正心会 岡本病院 松山 智子 医師

産後になりやすい心の病気について教えてください。
 出産後3〜5日ごろの産褥(さんじょく)期には「マタニティー・ブルー」とも呼ばれる、感情の起伏が激しくなったり、涙もろくなったりして、眠れない時期に悩むことがあります。しかし、これは1週間ほどで自然に症状が消えるケースがほとんどで、産後の精神疾患とは異なります。
 出産後、2週間から数ヵ月以内の時期に、気分がひどく沈む、疲れやすく気力が出ない、ささいなことでイライラしたり不安になる。また、子どもの健康や将来を過度に悲観したり、満足な育児ができていないと自責的になるなどの症状が現れ、2週間以上続くようなら産後精神病といった精神疾患が疑われます。出産後の急激なホルモンバランスの変化の他、母親になったという重圧感、育児による心身疲労、職場復帰への焦りなどが引き金となりやすく、育児への手助けがない、経済的な悩みがある、相談する人がいないといった状況も、発症リスクを高めるとされています。
 核家族化が進んだ現代、特に初めての赤ちゃんの場合は、孤独や不安にさいなまれる母親も多いようです。対処法は、一人で抱え込まず、身近な人に打ち明けること。周囲の理解や支援も大切です。重症の場合は、専門医による治療が必要ですので、症状が数週間も持続したり、日常生活や育児に支障を来すようであれば、早めに受診されるほうがいいでしょう。周囲の人が気付いた場合も、受診を勧めるようにしてください。

産後の精神疾患の治療について教えてください。
 産後の精神疾患の治療は、カウンセリングや投薬が中心となります。カウンセリングでは、ご本人の悩み、状況、症状など日々の生活の中の具体的な問題を話し合い、その人なりの解決法を選択する過程を援助していきます。
 抗うつ剤などの薬物治療は、母乳で育児を行っている母親には薬の影響が気になるところです。どうしても母乳での育児を断念したくない方は、事前に担当医師に相談して、薬を使わずに治療を進めていくことも可能ですが、症状によっては授乳を中止していただき、薬物治療による病状の改善を優先させるケースもあります。
 うつ病など他の精神疾患と同様に、早期発見・早期治療が重症化や再発を防ぐ最大のポイントです。

2014年7月23日水曜日

「脳梗塞(こうそく)」について


ゲスト/コスモ脳神経外科 小林 康雄 院長

脳梗塞について教えてください。
 脳梗塞は虚血性の脳卒中で、脳の血管が血栓などによって詰まったり、動脈硬化によって血管が狭くなるなどして起こる疾患です。その背景となるのは基本的には、メタボリック症候群です。内臓脂肪が過剰になると、糖尿病や高血圧症、高脂血症といった生活習慣病を併発しやすく、動脈硬化が急速に進行します。
 脳梗塞の症状としては、半身不随、半身麻痺、しびれ、感覚の低下、手足の運動障害、意識障害、言語障害、昏睡などが挙げられます。突然起こる場合が多いのですが、場合によっては予兆となる症状があります。半身のしびれ、口のもつれなどで、このような症状が表れた場合は、迅速にかかりつけ医の指示をあおぐか、脳神経外科へ直行することをお薦めします。発症後3時間以内であれば、血栓や塞栓(そくせん)を溶かす薬を使って治療します。効果があれば、比較的後遺症が軽くすみます。投薬治療ができない場合は手術となりますが、この場合も治療までに要する時間が短いほど、後遺症を軽くすることができます。いかに迅速に治療を始めるかが、予後に大いに関係してきます。
 
脳梗塞を予防するにはどうすればいいですか。
 30代、40代で動脈硬化が始まりますから、会社などの健康診断でメタボリックシンドロームの兆候があれば、普段の生活習慣を見直しましょう。食事は塩分を控え日本食中心にし、適度な運動、禁煙、節酒を心掛ける。ストレスや寝不足などで疲労が蓄積しないように規則正しい生活を目指しましょう。
 また、健康診断で不安要素があったり、動脈硬化症の近親者がいる場合は、一度「脳ドック」を受けることをお薦めします。レントゲン検査で頭と首の健康状態を調べ、MRI(磁気共鳴画像装置)で脳の断層写真を撮り、MRA(磁気共鳴血管造影)で血管の狭窄(きょうさく)や閉塞(へいそく)部分・脳動脈瘤(りゅう)の発見、動脈硬化の程度などを調べます。健康保険の適用外になりますが、1~2時間程度で受けられます。脳梗塞は一度発症すると命にかかわり、後遺症の影響も大きい疾患です。自分の健康・生活を守るためにも、予防を心掛けましょう。

2014年7月16日水曜日

更年期障害


ゲスト/札幌駅前アップルレディースクリニック 工藤 正史 院長

更年期障害について教えてください。
 更年期とは、閉経の前後約5年間の時期を指します。多くの女性は50歳前後で閉経を迎えることから、おおむね45〜55歳を更年期と呼んでいます。年齢を重ねるにつれて卵巣の働きが低下し、女性ホルモン(エストロゲン)が欠乏することでやがて訪れるのが更年期です。45歳を過ぎて、月経不順や不正出血がみられたり、出血量が違うと感じられたら要注意です。
 女性ホルモンの欠乏は、女性の生活の質を脅かします。女性ホルモンを失いつつある体は、イライラや不安、不眠、突然の発汗、ほてり、動悸(どうき)、頭痛などさまざまな症状に悩まされます。化粧ののりの悪さ、肌にハリがないといったことが気になる女性も多いでしょう。女性ホルモンを補充することは、これらの症状を改善するだけでなく、女性の若さと美しさを取り戻すアンチエイジングとしても期待されています。
 また、更年期に入った女性は骨粗しょう症にかかりやすいとされています。高齢者の寝たきりの原因は、脳血管障害に次いで、骨粗しょう症による骨折が第2位です。骨の老化は、薬や食事・運動療法である程度予防できますから、そのフォローはとても大切です。さらに、閉経後のコレステロールの上昇により血管の老化が進み、動脈硬化や認知症などのリスクも高くなります。その他、人には言いにくい性生活の悩みや、失禁、頻尿、残尿感などの問題が出てくるケースも少なくありません。

更年期を過ぎると安心なのですか。
 江戸時代(19世紀)の日本女性の平均寿命は、なんと36歳前後でした。大正時代でも43.2歳と今のほとんど半分ぐらいです。現在、日本女性の平均寿命は80歳を超えて長生きするようになり、更年期以降の人生も長くなっています。
 この長くなった人生の時間を「老年期」と呼ぶことがありますが、更年期の症状がその後の老年期の病気につながってしまうなど、更年期を過ぎても安心とはいえないのが女性の一生です。しかし、この老年期をセカンドライフと考え、前向きに心豊かに、健康的に過ごしてもらいたいと思います。女性のライフステージそれぞれの場面で問題に行き当たったとき、婦人科医は女性の心と体をよく知る専門家です。ぜひ、かかりつけ医を見つけてご相談ください。

2014年7月9日水曜日

妊娠中の口腔ケア


ゲスト/医療法人社団アスクトース 石丸歯科診療所 近藤 誉一郎院長

妊娠すると、口の中ではどんな症状が多く出るのですか。
 「一子を生むと、一歯を失う」ということわざがあります。これは「妊娠、出産がきっかけで歯が悪くなってしまう」ということを意味するものです。妊娠するとつわりで歯磨きができなくなったり、食生活の規則性が失われ、間食や偏食が多くなりがちです。ホルモンの変調などで唾液の分泌量が減って、口腔内の自浄作用が低下し、また、唾液のPH値も低下するため、虫歯になりやすい酸性の環境になります。治療が胎児に影響しないか不安を感じて、歯科受診をためらう女性も多いようです。こうした要因で、妊娠中は口の中が不衛生になりやすく注意が必要です。

妊娠中の口腔ケアで注意すべきポイントを教えてください。
 まずは食生活に気を使い、睡眠を十分に取るなど規則正しい生活を心掛けることです。口腔清掃はゆっくりでいいので、今までより時間をかけて行うといいでしょう。口の中に異常があれば、歯科治療に不安を抱かずにかかりつけの歯科医に、現在妊娠何週目かなどの状態を告げてよく相談することが大切です。虫歯や歯周病があるのに、出産後まで治療を待つ患者さんも多いのですが、放置するとますます悪化します。
 治療の時期としては妊娠中期が最も適切ですが、初期や後期でも治療することは可能です。歯科用の局所麻酔や、エックス線防護用エプロンを装着してのレントゲン撮影は、胎児への影響はほとんどないと考えられています。抗菌剤などの薬は安全性の高いものを必要最小限で使います。痛みを抑える消炎鎮痛剤の服用は、妊娠中はできる限り控えるのが賢明ですが、痛みを我慢することがかえってストレスとなり、母体や胎児に悪影響を及ぼしてしまうことがあるので、比較的危険性の低い消炎鎮痛剤を慎重に処方するケースもあります。消炎鎮痛剤を使わなくていいように、早めに受診して悪化させないことが重要です。
 産後、授乳中の歯科治療も心配し過ぎる必要はありません。ただし、薬剤服用の乳児への影響など考慮すべき点もありますので、必ず歯科医に授乳中であることを告げてください。
 両親の口腔環境は、驚くほどその子どもに反映されます。これは遺伝というより、両親の生活習慣が大きく関係していると考えられています。生まれてくる赤ちゃんのためにも、妊娠中から口腔ケアをしっかり行いましょう。

2014年7月2日水曜日

ストレス社会を生き抜くために


ゲスト/医療法人社団五稜会病院 千丈 雅徳 院長

精神科の治療とはどのようなものなのですか。
 うつ病(気分障害)、パニック障害、アルコール依存症、社会的ひきこもり、統合失調症など、心の病気で医療機関を訪れる人は年々増加しています。精神科の診察では、まず患者さんのお話をじっくり聞くことから始まります。本人が抱えている問題を、精神科医などの専門的な目を通しながら時間をかけて整理します。表面的に見えない患者さんの心の深い部分の思いにも耳を傾けていきます。
 他の医療分野同様、精神科医療も近年著しく進歩している中で、さまざまな治療法や新薬が開発されていますが、治療の原点となるのは、患者さんの心に寄り添って、患者さんの社会復帰を目指し、より素晴らしい人生を送れるようにサポートすることです。

治療における患者さんとの関係づくりついて教えてください。
 医師や看護師などスタッフが、患者さんの心に手を伸ばし、心を支えていくためには、安心できる関係づくりと、効果的に自己回復ができるように、次のような段階を踏むことが大切です。①アタッチメント(愛着の時期)…患者さんが安心して病院と関わっていけるように受容的・支持的・共感的に対応します。②デタッチメント(分離の時期)…患者さんが病院に依存し過ぎないように、あえて距離を置いて対応します。③コミットメント(対等な関係になる時期)…病院が患者さんにとって「心の安全地帯」となることを目標とし、患者さん自身が社会で自立できるように、半歩後ろからさりげなく援助します。
 初期の段階では、まず安心して治療が受けられるような対応を心掛けます。医師やスタッフとの関係づくりが土台となって治療への動機付けが高まります。アタッチメントによって安心感が得られると、これまでに直面できなかった問題に向かうなど、内面を深める気付きが出てくるようになります。しかし、アタッチメントばかりでは、医師やスタッフに対しての甘えや依存が出てくるので、状況を見ながらデタッチメントを意識して、少しずつ程よい距離を置くようにします。そして、社会へのコミットメントを最終目標に、相手に依存し過ぎず、対等で信頼し合える人間関係を築いていけるように関わっていきます。
 ただし、アタッチメント・デタッチメント・コミットメントは、順番に行うのではなく、常にこの三つを心掛けて対応していくことが大切です。その時その時の患者さんの様子を知って、どれを強調すればいいのかという微妙なバランス感覚が求められます。また、アタッチメント・デタッチメント・コミットメントのどれに重点を置くべきか、スタッフ一人の判断で決めないことも重要です。治療に関わるスタッフ全員で話し合い、時には患者さんにも意見をいただきながら見定めていく必要があります。医療はチームプレーなのです。

2014年6月25日水曜日

関節リウマチの敵と関節エコーの重要性


ゲスト/佐川昭リウマチクリニック 佐川 昭 院長

関節リウマチ治療中の生活で何か気を付けることはありますか。
 関節リウマチは診断技術や治療法の進歩で「治る」時代に入りましたが、それでも一度発病したら、長く付き合っていかなければならない病気です。治療が順調で症状が軽くなっても、患者さん自身が病状を正しく知り、関節に負担をかけない動作を意識する、身近な人たちにも症状の辛さを理解してもらうなど、毎日の暮らしの中ではいくつかの注意が必要です。
 どういう生活を心掛ければいいのか。今回は、私が日々の診療から考える「関節リウマチの敵」を紹介します。列記すると、①行事など(お客の接待)/正月、お盆、葬式、法事、結婚式、年賀状、おじぎ ②対人関係/理解のない夫、育児、孫の世話 ③家事/大根洗い・おろし、漬物漬け、魚をおろす、カボチャ切り、イカの皮むき、床拭き、アイロンかけ、裁縫、編み物、じゅうたん掃除 ④労働など/庭仕事、冬囲い、雪かき、畑仕事、引っ越し ⑤レジャー/過度な運動、ボーリング、綱引き、ゴルフ ⑥趣味など/過度の散歩、楽器演奏(ピアノ、琴など)、着物の着付け、旅行、ペットの世話 ⑦環境・体質/低気圧、雨天、寒さ、クーラー、肥満、生理 ⑧精神面/日本人気質、仕事人間、ストレス、弱気 ⑨その他/通院、風邪、バス、看病、付き添い、薬の飲み忘れ、正座などがあげられます。

患者さん自身が病状を正しく知り、「関節リウマチの敵」を避けていくのに有効な画像検査について教えてください。
 レントゲンやMRIでは判断できない炎症や血流の状態をリアルタイム、そして時系列的に診断可能な検査に「関節エコー」があります。
 怪しいと思われる関節に、聴診器のように関節エコーを当てると、炎症を起こしている箇所が、まるでメラメラと燃えているかのように画面に赤く映し出されます。診断だけでなく、薬の効果が出ているかなど治療経過を見るのにも生かせます。前述した「関節リウマチの敵」と呼ぶべき行動、考え方などが、いかに病状を悪化させ、手足の関節に炎症を引き起こしているのかも一目で分かります。
 関節エコーには、必要な時に必要な関節を気軽に検査できるという利点のほかに、患者さん自身の目で炎症の状態や病状の推移を確認できるので、病気や治療に対する理解に役立ち、リウマチを鎮めていこうという強い気持ちである「治療心」を高められるというメリットもあるのです。

2014年6月18日水曜日

機能性ディスペプシア


ゲスト/琴似駅前内科クリニック 高柳 典弘 院長

機能性ディスペプシアとはどのような病気ですか。
 機能性ディスペプシアとは、慢性的に胃もたれ、食後の膨満感、みぞおちの痛みなど、みぞおちを中心とするおなかの症状が続いているにもかかわらず、血液検査、内視鏡検査などを行っても全身性、代謝性疾患ならびに逆流性食道炎、胃・十二指腸潰瘍などの器質的疾患が見当たらない病気です。
 生命に関わる病気ではありませんが、つらい症状により、患者さんの生活の質を大きく低下させてしまいます。日本人の4人に1人は機能性ディスペプシアを持っているという調査結果もあり、決して珍しくはない誰もが罹患(りかん)する可能性のある病気です。
 ストレス・過労などの心理的・社会的要因、胃の中に食べ物を蓄えようとする貯留機能や胃の内容物を十二指腸へ送り出す排出機能の障害、胃が刺激に対して痛みを感じやすくなっている状態(知覚過敏)、ピロリ菌の感染などが原因で症状が起こると考えられています。
 主な症状は「つらいと感じる食後のもたれ感」「食事を開始してすぐに食べ物で胃がいっぱいになり、それ以上食べられなくなる感じ」「みぞおちの痛み」「みぞおちの焼ける感じ」の四つです。

機能性ディスペプシアの診断と治療について教えてください
 診断は、問診により患者さんの生活背景、性格、過去の症状などを診ながら、
内視鏡検査により食道、胃・十二指腸に症状の原因となる器質的疾患がないことを確認して判断されることが一般的です。
 治療は、まずストレスや過労などの原因となっている生活習慣を改める指導が行われます。この病気は心理的・社会的要因が関与するため、生活習慣や食習慣を整えることが必要です。十分な睡眠を取り、適度な運動などでストレスを発散し、規則正しい食生活を心掛けてもらいます。薬物療法としては、患者さんの症状に応じて酸分泌抑制薬や消化管運動機能改善薬などが処方されます。それらの薬を服用して効果がなければ、抗不安薬や抗うつ薬、あるいは漢方薬などを併用するケースもあります。
 機能性ディスペプシアの診断や治療は、主治医が患者さんの症状をきちんと把握することから始まります。病院・診療所を受診した際は、自覚症状を主治医にできるだけ詳しく伝えましょう。また、気になることは遠慮せずに相談し、根気よく治療に取り組むことが大切です。

2014年6月11日水曜日

新型うつ病


ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 橋本 真一 医師

新型うつ病とはどのような病気ですか。
 近年、産業保健(労働者の健康対策を行う)領域では新型うつ病という言葉をよく耳にします。仕事となると心身の不調を訴えるが、私生活では元気になる新しいタイプのうつ病です。一方、いわゆる大学の学問的立場からは、新型うつ病という病名は正式には存在しないとの指摘もあります。
 従来の典型的なうつ病(メランコリー型うつ病)は、まじめな中高年に多く、過剰に頑張ってオーバーワークとなった結果、心身ともに疲弊し、自分を責める傾向があります。それに対して、新型うつ病は若い人に多く、好きな活動の時は元気ですが、仕事中は不調となり、病気を他者のせいにしがちです。このため「怠けているだけ」「わがまま」などと性格の問題にされやすく、周囲からなかなか病気と理解してもらえません。しかし、本人は職場では本当に体調が悪く、苦しんでいるのです。
 新型うつ病といわれるメンタル不調者が増加しているのには、今の若者たちの置かれている社会的背景が大きく関与しているように感じます。少子化で軋轢(あつれき)の少ない環境で育ったことや、会社では上司が多忙で若手社員を十分に指導する時間を持てない中、少人数の20代、30代の若手社員に仕事の負担が多くかかっていることなどの現代社会の諸相が、うつ病の病像に反映しているのではないかと私は考えています。

新型うつ病の特徴について教えてください。
 新型うつ病の特徴を列記すると、①若い人に多い ②こだわりがあり、負けず嫌いで自己中心的に見える ③自分の好きな活動の時は元気になる ④仕事や勉学になると調子が悪くなる ⑤「うつ」で休むことにあまり抵抗がなく、逆に利用する傾向がある ⑥疲労感や不調感を訴えることが多い ⑦自責の念に乏しく、会社や上司など他人のせいにしがち ⑧不安障害(パニック障害、強迫性障害など)を合併することが多い、などがあります。
 本人への対応は上司、産業医などが連携して行う必要があります。うつ病に対する正しい知識と対処方法が、職場でますます求められるようになっています。働く人やその家族と上司や管理職などの企業側の双方がメンタルヘルスに気を配り、また、企業としてはストレスケアと啓発教育、産業医が機能する体制の整備など支援強化を重視することが大切です。
(※新型うつの特徴については、傳田健三著『若者の「うつ」』からその特徴を抜粋(一部改変)して記載しています)

2014年6月4日水曜日

加齢による目の病気と定期検診の勧め


ゲスト/札幌エルプラザ 阿部眼科 阿部 法夫 院長

加齢による目の病気について教えてください。
 年齢を重ねるとともに、目の病気に悩まされる人も増えてきます。代表的な病気には、白内障、緑内障、加齢黄斑変性などがあります。糖尿病の人では、糖尿病網膜症が起こる可能性も高くなってきます。こうした病気の多くは、加齢が原因の慢性疾患で、数年から20年程度かけてゆっくり進行していきます。また、目は二つあるため、片方の目が見えにくくなっても、両目で見ていると異常に気付かないケースも多く、症状に気付いた時にはかなり進行している場合が少なくありません。
 白内障は、目の水晶体が白く濁り、目がかすんで見えにくくなる病気です。治療の基本は手術で、濁った水晶体を眼内レンズという人工の透明なレンズに取り替えます。緑内障は、何らかの原因で視神経が傷つき、見える範囲(視野)が狭くなっていく病気です。視野が大きく欠けてから治療を始めると進行を抑えることが難しくなるので早期発見が大切です。
 高齢化に伴い患者さんが増加している加齢黄斑変性は、網膜の中心の黄斑という場所がダメージを受け異常が起こり、物がゆがんで見えたりぼやけたりします。早期であれば、VEGF阻害剤投与、光線力学療法などが効果をあげています。糖尿病網膜症は、血糖の高い状態が長く続くと、網膜の細い血管が損傷され変形したり詰まったりして視力の低下を招きます。糖尿病にかかっている期間が長くなればなるほど発病率が高くなります。

眼科の定期検診について教えてください。
 加齢による目の病気は、早期発見・早期治療が何よりも大切です。視覚障害の有病率が50歳代で増加することを考えれば、40歳を過ぎたら自覚症状がなくても定期的に眼科で検診を受けることをお勧めします。
 眼科で受ける主な検査には、視力の状態を確認する「視力検査」、視神経や網膜の状態をみる「眼底検査」、眼球の圧力を測る「眼圧検査」、視野が欠けていないかをみる「視野検査」、眼球の表面や水晶体、硝子体を調べる「細隙(げき)灯顕微鏡検査」などがあります。特に眼底検査では、網膜や視神経の様子から加齢による目の病気の多くが分かります。また、眼圧検査では緑内障、細隙灯顕微鏡検査では角膜や水晶体の病気が見つかる可能性が高くなります。これらの検査を一通り受けておくと安心です。

2014年5月28日水曜日

顎(がく)変形症と子どもの矯正治療


ゲスト/つちだ矯正歯科クリニック 土田 康人 院長

顎変形症とはどのような病気ですか。
 顎変形症は、上下の顎の形や大きさ、位置関係の異常が著しく、かみ合わせが不正の状態をいいます。反対咬(こう)合(受け口)、上顎前突(出っ歯)、開咬(上下の歯がかんでいない状態)、顎偏位(顔や顎が曲がった状態)などがあります。
 かみ合わせが悪いままでいると、食べ物をうまくかめず、胃腸に負担をかけたり、消化不良を起こしやすくなったりするだけではなく、さまざまな問題が生じてきます。顎の関節に負担がかかり、顎の関節が痛い、音が出る、口を大きく開けられないなどの顎関節症を併発しやすくなります。また、不自然なかみ方は頭を傾斜させることになり、結果的に体全体のバランスが崩れ、肩こりや頭痛、腰痛など、不定愁訴と呼ばれる症状を引き起こします。下顎が小さいケースでは、睡眠時無呼吸症候群(SAS)になるリスクが高いことも分かってきました。
 顎変形症の傾向がある人は、子どものうちに治療する方が良い結果を得られる場合が多いです。成人してからでは、抜歯や手術を要するような症例でも、骨が軟らかい成長途中の子どものうちに治すことで、より自然に症状を改善できるからです。

子どもの矯正治療のタイミングについて教えてください。
 歯科矯正に相談する時期は、永久歯が生えてからと思っている親御さんもいらっしゃるかもしれませんが、それではタイミングを逃してしまう場合があります。1〜3歳にかけて乳歯が生えそろってくると、歯並びやかみ合わせについてもそれぞれお子さんの特徴が出てきます。歯磨き指導、虫歯予防も重要ですが、乳歯が生え出したらまず一度は矯正歯科にも足を運ぶことをお勧めします。
 治療を始めるタイミングは、顎の成長や歯並びによって違います。早い治療が望ましい症例は3歳からですが、その他は6〜10歳くらいまでとさまざまです。矯正装置を付けた治療をしなくてもよくなるお子さんも少なくありません。
 子どもの小顎症や下顎後退症は、反対咬合や上顎前突に比べると気付きにくいため、3歳児検診や学校検診でも見過ごされてしまうことがあります。“歯並びやかみ合わせのかかりつけ医”と呼べるような、信頼できる矯正の専門医で定期的に検診を受け、アドバイスをもらうことが何よりも大切だと思います。

2014年5月21日水曜日

依存症


ゲスト/医療法人北仁会  いしばし病院 白坂 知信 院長

依存症とはどのような病気ですか。
 飲酒を抑えられなくなるアルコール依存症、覚せい剤、脱法ドラッグの使用や抗不安薬、睡眠薬の不適切な長期処方による薬物依存症、オンラインゲームなどに夢中になり過ぎてやめられなくなり、健康状態を悪化させたり、日常生活に支障が出たりするネット依存症…。その他、ワーカホリックや摂食障害など、さまざまな依存症が社会的な問題となっています。
 何かにはまって、われを忘れるほど夢中になったり、自分が解放された気分になったりするのは誰にでもあることです。しかし、ほどほどでやめられる人と、自らの意思でコントロールできなくなるまで、その高揚感を求めようとしてしまう人がいます。依存症になる人には、自己肯定感に乏しく自信がない、周囲に受け入れてもらえないという孤独感がある、などの特徴がよく見られます。心がこうした状態にあると、そのつらさ苦しさから逃れるために、自分がのめり込める対象に傾倒していきます。そして、いつしかそれがなければ、平静でいられなくなってしまうのです。
 依存症は、アルコールやニコチン(タバコ)、薬物などの「物質に対する依存症」、ギャンブルや買い物、万引など「行為に対する依存症」、恋愛や友人、親子など「人間関係に対する依存症(共依存)」の三つのタイプに分けられます。

依存症の治療について教えてください。
 治療の中心となるのは、認知行動療法です。依存に陥る心理や背景を読み解き、考え方の癖や行動パターンを修正し、依存に歯止めをかけるというものです。例えばアルコール依存症の場合、これまでのお酒に対する考え方や価値観を見直すことで、アルコールに頼らない生活を目指します。また、アルコールへの欲求が生じた時の対処法や、アルコールの誘いがあった時の断り方などの実践的な対策も学んでいきます。
 依存症は習慣ではなく、脳の病気です。強い依存の状態であれば、自分の力だけで克服するのは困難であり、医療機関での治療が必要です。しかし、依存症の患者さんには自分の問題を否認する傾向があり、本人が自らの意志で病院に行くことはまれです。周囲の説得で本人が受診する場合はいいのですが、そうでない場合には、周囲が専門機関に相談し、アドバイスを受けることが勧められます。

2014年5月14日水曜日

子どもの矯正歯科治療


ゲスト/E-line矯正歯科 上野 拓郎 院長

子どもの矯正治療について教えてください。
 これまでこのコラムで何度かにわたって、子どもの矯正治療の重要性についてお話してきました。成長段階にある子どもは歯やあごの骨のコントロールがしやすく、成人と比べて早く治療を終えることができます。また、容姿に自信が持てるようになったり、思い切って口を開けて笑えるようになったりするなど、子どもの時代に歯並びやかみ合わせを整えておくことで、その後の人生における大きなアドバンテージを得ることができるからです。
 矯正治療が当たり前のように普及している欧米と比べて、日本ではまだ子どもの矯正治療に対する意識は低いようです。歯並びが悪いと、よくかめないばかりか、虫歯や歯槽膿漏(のうろう)の原因になったり、あごの関節に負担が掛かって顎(がく)関節症になりやすかったりします。歯並びの異常が引き起こす弊害についてさまざまなメディアで取り上げられる機会が増え、徐々に子どもの矯正治療への関心は高まっています。しかし、それでもなお「本当に矯正が必要なのか?」「大人になってからでもいいのでは…」とお考えになっている親御さんも多いのではないでしょうか。
 小さなお子さんが、自分から「歯並びがおかしい」と感じて「治したい」と訴えるケースはまれです。お子さんの人生を考え、矯正治療に一歩を踏み出すのは親御さんの役割です。矯正治療をして歯並びがきれいになることは、一生にわたってお子さんの健康的な笑顔を支える大切な財産となるはずです。どうか歯並び、かみ合わせについては子どもの頃から親御さんが注意して見てあげてください。

矯正歯科で検査を受けるのに最適な時期はありますか。
 永久歯が生える小学校在学時は、歯並びやかみ合わせを点検する重要な時期です。この時期にかみ合わせを見ると将来の歯並びが予測できるからです。近年、学校歯科検診でも歯並びがチェック項目に加えられています。学校から「歯並びに注意」といった用紙が渡されたときは、必ず一度矯正歯科で検診を受け、アドバイスをもらうことが大切です。治療が必要かどうか、治療を始める時期はいつ頃かなど、子どもの歯並び、かみ合わせの現状と将来の見通しの説明を受けるチャンスと考え、気軽に相談してみてください。それが後々必ず良かったと思える日が来るはずです。

2014年5月7日水曜日

大人のADHD(多動性障害)


ゲスト/時計台メンタルクリニック 木津 明彦  院長

大人のADHD(多動性障害)について教えてください
 ADHDは、注意力の欠如や衝動的な行動、落ち着きのなさ(多動性)を特徴とする発達障害で、生活にさまざまな困難を来す状態をいいます。思い付きをすぐ言動に移す、気が散りやすい、忘れ物をしやすいなどが代表的な症状として挙げられます。脳内の神経伝達に何らかの不具合を生じ、情報のフィルターや行動のブレーキがかかりにくくなっていると考えられます。
 ADHDは一般的に就学前に気づかれるものですが、成人後に「実はADHDだった」と分かるケースも増えてきました。そのような場合もADHDの症状に、子供のころからずっと悩まされています。多くの人は自分なりに努力していますが、なかなか状況が改善されません。そのため、自分自身を責めたり、本人が怠けている、親の育て方のせいといった非難や誤解にさらされたり、つらい状況に置かれがちです。ADHDが原因で周囲とのトラブルが起こり、抑うつ状態になってしまうこともあります。
 しかし、ADHDは本人の努力不足や、家族のせいではありません。正しい診断を受け自分の特性を把握し、適切な対策を立てることで、生活を改善していくことができます。同時に、周囲の理解を得ることも重要です。

ADHDの診断と治療について教えてください。
 子どものころの状態などを詳しく聞き取る問診のほか、アメリカでADHD研究に長年携わってきたコナーズ博士が開発した心理検査法などを用い、ADHDかどうかの判断を慎重に行います。
 治療は、環境調整などの心理社会的治療から始めます。これは、自分の特性をあらかじめ周囲に伝えおく、社会に適応するための生活術を学ぶなど、家族や職場との協力体制を築き、環境の調整を行うものです。心理社会的治療の効果や、周囲との状況から判断し、必要であれば薬による治療を組み合わせていきます。
 エジソンや坂本龍馬がADHDだったといわれていますが、彼らのように特性を自分の個性として強みにし、偉業を成し遂げた人もいます。ADHDだからこそ秀でている能力や才能、例えば、旺盛な好奇心や豊かな発想力を生かせる環境を探し、生かすことができればと思います。

2014年4月23日水曜日

甲状腺疾患


ゲスト/やまうち内科クリニック 山内 雅夫 院長

甲状腺の病気について教えてください。
 甲状腺は、首の前面、喉仏の下にあるチョウの羽を広げたような形の器官で、甲状腺ホルモンを分泌する役割を果たしています。甲状腺ホルモンは、人間の体の新陳代謝や成長をつかさどる大切なホルモンの一つ。甲状腺ホルモンが多くなったり、少なくなったりすることで、全身にさまざまな異常をもたらします。甲状腺疾患を患う患者さんは、女性に多く、日本全体では700万人ともいわれていますが、その内500万人は病気であることに気付いていないと推定されています。
 主な甲状腺の病気として、甲状腺ホルモンの過不足によるものと甲状腺腫瘍があります。
 甲状腺ホルモンの分泌異常は、大部分が甲状腺に対する自己抗体が関与しているもので、誰にでも起こり得る病気ですが、遺伝的な要因が大きいとされています。

甲状腺の病気の中で、代表的なものについて教えてください。
 最もよく知られている病気が「バセドー病」です。甲状腺ホルモンが過剰に産生されるため、動悸(どうき)、頻脈、多汗、手指のふるえ、易疲労感、体重減少、食欲亢進(こうしん)などの甲状腺機能亢進症状が現れ、甲状腺の腫脹(しゅちょう)、眼球突出なども見られます。
 しっかり食べているのに体重が減少する、健康診断でコレステロール値が低下し、アルカリフォスファターゼが上昇しているなどの異常所見が診断の糸口となることもあります。
 逆に甲状腺ホルモンが不足し、甲状腺機能低下症を呈するものの代表が「橋本病(慢性甲状腺炎)」です。寒がり、無気力、易疲労感、体重増加、甲状腺腫大、コレステロール値の増加などが現れ、進行すると記憶力低下、眼瞼浮腫なども起こります。中年以降の女性で物忘れなどが有る場合には注意する必要があります。
 甲状腺腫瘍は甲状腺超音波検査で比較的容易に発見することができるようになりました。1cm以上の腫瘍のうち、一割程度は悪性とされており、吸引細胞診などで確定診断をする必要があります。
 症状が多岐にわたり、更年期障害など、ほかの病気と間違われやすいのが甲状腺の病気です。頻度は比較的高いのですが、症状が軽いことも多いため、見逃されたり、放置されたりしているケースが多くみられます。血液検査、甲状腺超音波検査など診断の技術は進歩しており、各種の治療法も確立されていますので、症状が進んでしまう前に早めに治療を受けることが何よりも大切です。

2014年4月16日水曜日

長引くせき


ゲスト/白石内科クリニック 干野 英明 医師

せきの診断について教えてください。
 せきは患者さんにとってつらい症状であり、日常の診療でもせきを主要な症状として来院される方が非常に多くみられます。診断においては、せきの経過をよく聞き取ることが重要です。せきの期間、発熱や痰(たん)の有無、ゼーゼーすること(ぜん鳴)がないかなどを確認します。せきの持続期間が3週間未満の場合は急性咳嗽(がいそう)、3週間以上8週間未満であれば遷延性咳嗽、8週間以上のものは慢性咳嗽と分類されます。
 急性咳嗽では、感冒を含む気道の感染症が疑われます。その多くはウイルスによるもので、ほかにマイコプラズマ、百日咳菌、肺炎クラミジアなどがあります。せきの持続時間が長くなるにつれて感染症の頻度は低下し、慢性咳嗽では感染症そのものが原因となることはまれです。

長引くせきではどのような病気が疑われますか。
 慢性咳嗽の中ではせきぜんそくが多く、そのほかに副鼻腔気管支症候群、胃食道逆流によるせき、アトピー咳嗽、薬剤性のせき、喫煙に伴うせきなどがあります。
 せきぜんそくは、気管支ぜんそくの前段階ともいえる状態で、3割ぐらいの人が5年以内に気管支ぜんそくに移行します。せきは夜間から明け方に悪化しやすく、受動喫煙や温度変化で悪化することがあります。治療は吸入ステロイドや気管支拡張剤などを使います。
 副鼻腔気管支症候群は、痰を伴うせきと後鼻漏や鼻汁など副鼻腔炎の症状があります。治療にはマクロライド系抗菌薬や去痰剤を用います。胃食道逆流によるせきの治療は、胃酸分泌抑制薬や消化管運動機能改善薬などの内服です。アトピー咳嗽は、症状はせきぜんそくと似ていますが、気管支拡張剤が無効であり、ヒスタミンH1受容体拮抗薬を投与します。気管支ぜんそくへの移行がないため、せきが治まれば治療を中止できます。薬剤性のせきは、高血圧治療薬として使用されるACE阻害薬によるものが挙げられます。通常は、服薬中止後4週間以内に軽快します。喫煙に伴うせきは、喫煙により慢性気管支炎や肺気腫といった慢性閉塞性肺疾患(COPD)に進行する可能性があり、禁煙が重要です。
 そのほかにも、症状はせきだけであっても重大な病気が隠れていることがあり、肺結核、肺がん、間質性肺炎などの疾患も鑑別診断としては重要です。

2014年4月9日水曜日

便失禁


ゲスト/札幌いしやま病院 石山 元太郎 副院長

便失禁とはどのような症状ですか。
 排便の抑制がきかず、無意識のうちに、または、意思に反して便が排せつされることが度々起こる状態を便失禁と呼びます。知らず知らずのうちに下着を汚してしまうような便失禁や、排便を我慢しようと意識しているにもかかわらず、トイレに間に合わず漏らしてしまう便失禁があります。60歳以上の高齢者に多く、男女を問わず起こります。
 原因はさまざまで、過去に受けた肛門手術や脊髄損傷などの外傷、加齢による肛門括約筋の筋力低下、女性であれば出産時の会陰切開や吸引分娩(ぶんべん)などによる括約筋の挫傷などが挙げられます。
 診断の際は、まず適正な検査を行い、便失禁の病態を客観的に評価します。その上で最も効果的と思われる治療法を選択します。

便失禁の検査、治療について教えてください
 検査は、肛門括約筋の状態をみる超音波検査や、肛門の筋力を計る肛門内圧検査などが一般的です。そのほか、バリウムを肛門から入れ、排せつする際の便の流れをみる排便造影検査、直腸の容量を計るリザーバー機能検査、直腸・肛門の感覚機能検査などがあります。
 治療は便失禁の原因によりさまざまですが、通常はまず食事や規則正しい排便習慣の指導が行われます。便が軟らかいと漏れやすいので、便の硬さを調節する薬を使う場合もあります。また、自宅で行う毎日10分程度の括約筋を強めるトレーニング(骨盤底筋体操)や、外来で医師と一緒に行う、肛門の中にセンサーを入れて中の圧を見ながら括約筋をトレーニングするフィードバック療法も効果的です。
 自分では訓練できない内括約筋を、低周波の電気刺激で鍛える治療法もあります。低周波電気刺激療法と呼ばれるもので、電気刺激により肛門管組織の血流量を増やし、括約筋の筋力をアップさせます。1回の治療時間は5分ほどですが、繰り返し行うことで効果が出ます。また、腰のあたりに電気刺激装置を埋め込み、排便をコントロールする神経である仙骨神経を刺激し、便失禁を改善する仙骨神経刺激療法(SNM)という最新治療もようやく厚生労働省で認可が下り、治療選択肢の拡大が期待されています。
 肛門手術や会陰切開などが原因で括約筋に断裂がある場合には、入院して肛門括約筋を手術で縫合する括約筋形成術を行うのが一般的です。

2014年4月2日水曜日

子どもの歯科矯正治療


ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治 正光 院長

子どもの矯正治療について教えてください。
 お子さんの歯並びに矯正が必要かどうか迷われる人も多いと思います。歯並びを確かめる方法の一つとして、お子さんの口元を顔の正面から観察してみてください。上下の前歯の真ん中の位置が一致していれば安心ですが、ずれている場合は、矯正の必要があると考えられます。出っ歯や受け口など、上下の顎が前後に大き過ぎたり小さ過ぎたりという骨格的な問題は、一般の方でも気付きやすいのですが、左右のずれは発見しにくいものです。
 前後あるいは左右にずれが認められる場合は、顎骨(がっこつ)の成長コントロールが可能な9〜10歳までに行うのが理想的です。就寝時にバイオネーターと呼ばれる機能的顎(がく)矯正装置を装着し、寝ている間にずれた顎の骨を中央に移動させます。子どもの成長の力を利用して、無理なく自然にバランスのよい骨格をつくれます。痛みはほとんどなく、取り外しが可能で、日中は装着の必要がありません。ずれの程度にもよりますが、装着期間は半年〜1年が平均で、経過観察のための通院は、1〜3カ月に一度が目安となります。
 ずれの原因はさまざまですが、歯そのものがずれているケースもあり、永久歯がそろってからでも治療は可能です。その場合は抜歯する可能性が高くなりますが、きれいに治療できることが多いです。判断は非常に難しいので、一度専門医にご相談ください。

家庭でチェックするための別の方法はありますか。
 頬づえやかみ癖、就寝時の姿勢が左右どちらかに大幅に偏っている場合などは、左右のずれを引き起こす原因になることがあります。上下の前歯の位置を確認したら、次は鼻の先端を基準に、鼻の中央に前歯の中心が沿っているかを見てください。ずれの原因は一見して分かるものではなく、万が一、骨格のずれを歯のずれと勘違いして放っておくと、矯正に最適な成長時期を逃してしまうので注意が必要です。
 子どものうちの悪い歯並びやかみ合わせを放置していると、成長に伴い虫歯や歯周病の原因となったり、顎関節にも悪影響を及ぼす恐れがあります。また、大人になってから心理的なストレスの原因となる場合もあります。少しでもおかしいと感じたら、早めに専門医に相談することをお勧めします。歯科矯正は自由診療となりますので、費用についてもその際に問い合わせてみてください。

2014年3月26日水曜日

長引くせきの原因と治療


ゲスト/医療法人社団 大道内科・呼吸器科クリニック 大道 光秀 院長

感冒後にせきが長引く原因について教えてください。
 風邪によるせきは、通常1週間くらいで治ります。3週間以上せきが続く場合、背後に呼吸器の病気が隠れている可能性があります。例えば、熱がなく、レントゲンも正常なのにせきが続くときは、アレルギーによるせきの可能性が高いです。これにはせきぜんそくとアトピー咳嗽(がいそう)の2種類があります。以前はぜんそくというと、ゼーゼーするのが特徴でしたが、最近はゼーゼーのないせきだけのせきぜんそくが増えています。一方、アトピー咳嗽は、ハウスダストや花粉などのアレルゲンによってアレルギー性のせきが続きます。特にシラカバ花粉症の時期などにひどいせき込みが出る場合があります。
 マイコプラズマ、クラミジア、百日ぜきなどの感染症が原因であることも多いです。マイコプラズマ気管支炎、クラミジア気管支炎、百日ぜきは、それぞれ病原微生物に感染することによって発症し、発熱後に激しいせきが長く持続します。百日ぜきは今まで幼児の病気と考えられていましたが、近年、成人の長引くせきの原因として注目を集めています。夜中に症状が出ることが多く、発作性・連続性のあるせきに続いて、吸気時にヒューと音がしたり、咳き込んで嘔吐(おうと)したりします。
 アレルギーや感染症以外によるせきの原因としては、逆流性食道炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性副鼻腔炎(蓄膿症)、心因性によるものなどがあります。

長引くせきの治療について教えてください。
 このようにせきが出る病気はたくさんあり、せきの症状だけで診断するのは難しいので、レントゲン、肺機能検査、血液検査などを行い、せきの原因を特定していきますが、すぐに原因が分かるとは限りません。経過をみてやっと診断できる場合も多いです、せきの背後にある病気によって適切な治療はさまざまです。
 例えば、せきぜんそくは、気管支ぜんそくと同様に、気管支拡張剤でせきが改善するのが特徴ですが、治療は吸入ステロイドが最も効果的です。一方、アトピー咳嗽には気管支拡張剤が効かず、抗アレルギー剤が有効で、それでも効かなければ吸入ステロイドを併用します。アレルゲンを突き止め、せきが発生する季節のみせき止めと抗アレルギー剤を服用します。マイコプラズマ、クラミジア、百日ぜきには、通常頻用されているセフェム系抗生剤が効かず、マクロライド系やテトラサイクリン系、ニューキノロン系抗菌剤が有効です。せきが「長いな、おかしいな」と感じたら、呼吸器の専門医を受診することをお勧めします。

2014年3月24日月曜日

2014年3月19日水曜日

多焦点眼内レンズによる白内障治療(眼科領域の先進医療


ゲスト/大橋眼科 大橋 勉 院長

白内障の眼内レンズについて教えてください。
 白内障は目のレンズに当たる水晶体が濁る病気です。治療には点眼薬が投与されますが、最終的には手術が必要で、濁った水晶体を摘出して人工眼内レンズに入れ替えます。
 日本で使われている眼内レンズの多くは、近く、あるいは遠くの1カ所に焦点を合わせた単焦点眼内レンズです。濁りがなくなるため、見やすく、視界が明るくなりますが、近くか、遠くにしかピントが合わず、メガネを手放すことができませんでした。それを解消しようと生まれたのが多焦点眼内レンズです。

多焦点眼内レンズとはどのようなものですか。
 1枚のレンズに遠距離、近距離の両方に焦点が合うように設計された眼内レンズです。自由にピントを変えられるわけではありませんが、遠くにも近くにもメガネなしで焦点が合いやすくなります。場合によってはメガネを必要とすることもありますが、頻繁に掛け外しをする煩わしさからは解放されます。術後は見え方に慣れるまで数カ月かかる人もいます。夜間の光をまぶしく感じたり、暗い場所ではくっきり感が落ちたりするなどの弱点もあり、全ての人に適しているわけではありません。
 多焦点眼内レンズは2007年に厚生労働省に認可され、08年に先進医療として承認されました。先進医療とは、厚生労働大臣が保険適用外の先端的な医療技術と保険診療との併用を、一定の条件を満たした施設のみに認める医療制度です。先進医療施設に認定された医療機関で、多焦点眼内レンズによる白内障治療を受ける場合、術前術後の診察などに保険が適用となります。また、民間の生命保険の先進医療特約の対象ともなり、先進医療に係る費用が全額給付されるケースもあります。
 近年、従来の眼内レンズでは矯正不可能であった乱視も、白内障手術と同時に治せるようになりました。乱視矯正機能を持たせた多焦点眼内レンズは、今春にも厚労省から認可が下りる予定です。従来の多焦点眼内レンズの弱点を改善し、見え方の質を向上させたレンズや、遠近に加えて中間距離にも焦点の合う三焦点眼内レンズも登場しています。眼内レンズが進化し、白内障手術は患者さんのライフスタイルに合わせた治療の選択ができるようになり、視力の質をより一層重視する新しい時代に入ってきました。

2014年3月12日水曜日

双極性障害


ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 江川 浩司 副院長

双極性障害とはどのような病気ですか。
 気分のコントロールができず、日常生活に支障を来す病気の総称を気分障害といいます。気分障害は大きく、うつ病と双極性障害(そううつ病)に分けられます。うつ病では気分の落ち込みなどのうつ症状だけがみられますが、双極性障害はうつ状態とそう状態を繰り返します。遺伝的要因が大きく、およそ100人に1人の割合でかかる可能性があります。
 そう状態の症状は、万能感や誇大妄想などで、気分が高揚しておしゃべりになったり、自分が正しいと思い込んだりします。症状が軽い場合は、本人は「調子が良い」と感じ、周囲も「やけに元気だな」と思う程度で見過ごされがちです。しかし、症状が重くなると、借金をして買い物を続けたり、交通違反を犯すほど運転が荒くなったり、社会生活や人間関係に深刻な悪影響を及ぼす言動が目立ちます。また、そう状態からうつ状態に転じるとき、自殺に走る危険性が高まるとの指摘もあります。
 双極性障害のうつ状態とうつ病は症状がほぼ同じであるため、見分けがつきにくく、診断が難しい病気です。しかし、うつ病と双極性障害は治療方針も治療に使う薬も異なるため、この二つをしっかり見分けることが治療の鍵となります。

双極性障害の治療について教えてください
 双極性障害の治療は、うつ病と同じく薬物治療が中心です。うつ病では主に抗うつ薬が処方され、うつを良くすることが治療の目標ですが、双極性障害では主に気分安定薬や抗精神病薬を使い、うつ状態とそう状態の波を小さくすることを目指します。近年、そう状態の治療に効果が高い新しいタイプの抗精神病薬も登場し、治療の選択肢が広がっています。
 双極性障害であるのに、うつ病の治療を続けると、効果が低いだけでなく、うつ状態からそう状態への急速な状態変化など、病気が悪化する恐れがあるので注意が必要です。
 双極性障害は再発を繰り返しやすい病気です。症状が良くなってきても、服薬を中止せず、予防治療を続けていくことが大切です。患者さん自身が病気をよく理解し、発症・再発したときにどんな兆候が現れたのか、これまでの病状を振り返っておくことも必要です。病気のしるしを見逃さずに、再発を未然に防ぎ、病気とうまく付き合っていくことがとても重要になります。

2014年3月5日水曜日

慢性硬膜下血腫


ゲスト/西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 医師

慢性硬膜下血腫とはどのような病気ですか。
 転んで頭を打ったり、強くぶつけたりした時、頭の中に出血することがあります。ケガをしてすぐに出血が起きた場合は、急性の出血あるいは血腫などといいます。一方で、ケガをしてすぐの検査で異常がなかったのに、受傷してから1、2カ月たってから徐々に頭の中に血がたまってくる病気があり、これを慢性硬膜下血腫といいます。
 慢性硬膜下血腫は、50歳以上の中高年に多くみられ、お酒飲みの方、肝臓の悪い方、治療のために血液をサラサラにするお薬を服用されている方は、この病気になりやすいとされています。このような方の場合、軽いケガの後でも発症することがあるので注意が必要です。北海道ではこの季節、特に雪道での転倒事故に気を付けてください。
 慢性硬膜下血腫は、出血が少ない場合はほぼ無症状です。ある程度血がたまってくると、血液の塊が脳を圧迫し、頭の重だるい感じや頭痛などを起こします。手術前に訴えのなかった患者さんでも、術後に頭が軽くなったといわれる方も多いです。放置すると圧迫が進み、足元がおぼつかなくなるなどの歩行障害や手足のまひを起こすほか、脳梗塞などの脳血管障害と似た症状を示す場合も多いです。高齢者だと認知症に似た症状を起こすこともあり、間違われているケースも少なくありません。高齢者の場合は、本人が症状を自覚できず、そのまま寝込んでしまっていることもあるので、家族など周りの方が注意する必要があります。

慢性硬膜下血腫の治療について教えてください
 無症状であれば、よほど圧迫が強くない限りはそのまま経過観察をします。内服薬を使用して様子をみることもあります。ここ最近では、血腫の治癒を促進する効果のある漢方薬を使うケースも増えています。
 圧迫が強い場合や、症状が出ているものは手術を行います。脳外科の手術というと恐ろしいイメージを持っている方も多いと思いますが、慢性硬膜下血腫の手術は局所麻酔で行い、高齢者でも受けることができます。
 頭を打っても、軽いケガであれば慌てて病院に行く必要はありません。しかし、1、2カ月経ってから頭痛や、先にあげたような症状が出てきた時は、我慢しないで専門医を受診するようにしてください。

2014年2月26日水曜日

進化するぜんそく治療


ゲスト/医療法人社団潮陵会 医大前南4条内科  田中 裕士 院長

最新のぜんそく治療について教えてください。
 ぜんそくは、空気の通り道である気道が、炎症などによって狭くなり、呼吸が苦しくなる病気です。十数年ほど前は年間約6千人が亡くなっていましたが、炎症を抑えるステロイド吸入薬(ICS)や、ICSと気道を広げる長時間作動型吸入β刺激剤(LABA)の配合薬の普及などで、死亡例は大幅に減少しています。
 近年、ぜんそく治療はさらに進歩し、現在の治療の柱となっているICS/LABA配合薬にも新しい薬剤が次々と生まれています。昨年11月に登場したフルチカゾンとホルモテロールの配合薬は、即効性が高いのが特徴で、吸入直後から気道を広げる効果が得られます。また、特殊な吸入補助具を用い、吸入力が弱い人でも簡単な操作で服薬できるというメリットもあります。昨年12月に登場したフルチカゾンフランカルボン酸とビランテロールの配合薬は、従来薬が1日2回の吸入を必要とするのに対し、1日1回1吸入するだけで、24時間にわたって症状を抑えられるのが最大の特長です。
 ぜんそく治療では、自分に合った治療法を続けることが大切です。自分で試してみて、使いやすい薬を選ぶことが、負担なく継続できる最善の方法といえます。

難治性のぜんそくにも、治療効果の高い新薬があると聞きましたが。
 ICSやLABAなどを使っても発作に苦しむ重症患者が、全体の5%程度います。そうした重症患者向けに使われているのが「オマリズマブ」です。2〜4週間に1回、皮下注射し、ICSなども併用することで、約6割に効果が確認されています。ただし、適応となるのは重症患者のうち約半数で、アレルギーの原因物質に対抗する「IgE」という抗体の血液中の値が、1ml中30〜700IU(国際単位)の範囲内の人に限られていました。
 昨年8月、オマリズマブの適応範囲が広がり、難治性のぜんそくの子どもや血中IgE値が1ml中1500IUまでの人にも使えるようになりました。子どもはアレルギー反応が原因のぜんそくが大半なので、この薬で改善することが多く、重症ぜんそくの治療に新しい道が開けると期待されます。
 ぜんそくに悩む人は多いですが、昔の治療法しか知らない人も少なくありません。自分が受けている治療に疑問を感じたら、医師とよく相談することが大切です。ときには新たな治療を検討してみてもいいでしょう。

2014年2月19日水曜日

最新の糖尿病治療薬


ゲスト/医療法人社団 青木内科クリニック 青木 伸 院長

最新の糖尿病治療薬について教えてください。
 糖尿病治療薬の最近の進歩は目覚ましいものがあります。飲み薬では、高血糖の時にだけすい臓からインスリンを分泌させ、正常血糖へ下げる「DPP-4阻害薬」があります。この薬は理論的には低血糖を起こさず治療できる新薬で、糖尿病の平均血糖の指標であるHbA1c値を1.0%前後下げます。この薬と同じ系統の注射薬も登場し、「GLP−1受容体作動薬」と呼ばれています。この注射薬はHbA1c値を1.6%前後下げます。現在は1日1回の注射が必要ですが、将来的には1週間に1回で済む注射薬も出る予定です。この系統の注射薬は、すい臓のインスリンを出す細胞を保護し、インスリンの分泌を弱らせない作用も持ち合わせているといわれています。
 一方、インスリン注射薬に目を向けると、「持効型インスリン(1回の注射で24時間効果を持続する長時間作用型インスリン)」があります。飲み薬の治療が効かなくなる症例でも、飲み薬をそのまま服用しながら、1日1回の持効型インスリンの注射を加えると血糖が改善する症例もあります。「混合型インスリン」は、持続型インスリンと超速攻型インスリンの合剤ですが、超速攻型インスリンの含有率が50〜70%の製剤が最近使用できるようになりました。食後血糖の高い症例を治療するのに便利なインスリンです。

糖尿病の治療について教えてください。
 糖尿病の治療が良好といえる目安はHbA1cが6.9%以下になっている場合です。糖尿病の患者さんの約半数が高血圧と脂質異常症(高脂血症)を合併しているといわれています。糖尿病を合併した高血圧の治療はとても重要で、血圧の治療目標値は130/80mmHg以下です。自宅で簡易血圧測定器を使用して治療に役立てる方法もあります。この場合使用する測定器は、指先や手首に巻くタイプのものではなく、上腕に巻くタイプのものをお勧めします。脂質異常症の治療目標値は、LDL-コレステロール(悪玉コレステロール)が120mg/dl以下です。以上のようなさまざまな基準値を長期間保てば、眼底出血(失明)、腎臓の悪化(透析)、足の潰瘍・壊疽(えそ)による足の切断など糖尿病に由来する重症の合併症にならなくて済みます。それ以外にも脳梗塞(こうそく)、心筋梗塞などの予防にもつながります。

2014年2月12日水曜日

不登校


ゲスト/医療法人 耕仁会 札幌太田病院  太田 健介 院長

不登校について教えてください。
 不登校とは、何らかの心理・身体的、社会的要因などにより、登校しない状態です。平成24年度の政府統計では、小学生の0.31%、中学生の2.5%に不登校を認め、平成3年の2倍以上に増加しています。
 原因は多様で、不安などの情緒的混乱、無気力、友人関係上の問題、親子関係上の問題、学業不振などが多く、いじめが原因の不登校は2.1%とされます。
 最近は、携帯電話やインターネット、ゲーム依存による生活リズムの乱れが合併する症例が増えています。また、家庭の要因も大きく関与し、父性の欠如、過保護過干渉、母子密着などが多く認められます。また、背景に発達障害や精神障害があることもあります。
 不登校の子どもの第1期:腹痛や吐き気、目まい、朝起きられないなどの身体症状や母子密着などです。第2期:反抗、暴言、暴力。不登校が長期化し、集団生活や友人関係から得られる体験が得られず、第3期:ひきこもり状態となります。その結果、将来の社会適応がより困難になります。

不登校の治療について教えてください。
 不登校は、対応が早ければ早いほど、治療成績が良いです。早期ではなるべく早く学校に戻す行動療法的アプローチが有効です。背景にうつ病などの精神疾患が隠れているケースもあり、その場合は精神疾患への治療が必要です。
 不登校に対する治療は、1~2週間の入院で行われる場合が多いです。入院により、母子分離ができ、規則正しい生活が身に付き、多年齢層との集団生活により、視野が広がり、精神的自立が促されます。
 また、内観療法という認知療法も行われることがあります。これにより、自分のことをより客観的に見られるようになり、親や周囲の責任だと思っていたことを、自分の問題として捉え、前向きに行動できるようになります。ピアサポート、アニマルセラピーや、遊戯療法(ダーツなど)を通して心を開き、楽しく治療することも大切です。
 さらに、院内学校で学習指導を行う病院もあります。ほかに、家族療法および学校との連携も必須です。送迎や自転車貸与などの登校支援も有効です。

2014年2月5日水曜日

低温やけど


ゲスト/宮の森スキンケア診療室 上林 淑人 院長

冬季に増える「低温やけど」とはどのようなものですか。
 低温やけどとは、それほど熱くなく普通はやけどを起こさないような温度で起こるやけどを言います。42度以上の温度で起こり得ます。熱さを感じない、もしくは心地よさを感じる温度でも、長時間、体の同じ場所に触れ続けているとやけどが起きます。道内では、就寝中に湯たんぽを使っていたことが原因で、脚の横ずねやかかとに起きるケースが最も多いです。カイロを貼っていることを忘れて長時間使ったり、ストーブやファンヒーターの前で居眠りしたりするのも危険です。
 やけどの程度は、温度と接触時間によって変わります。通常のやけどと異なり、低温やけどは弱い熱でゆっくりと皮膚と皮下の組織にダメージを与えます。熱さや痛みに気付かないうちに、いつの間にかやけどになってしまうのです。長時間接触しているため、範囲は小さくても、深いやけどになるのが特徴です。皮膚表面の下にある真皮組織や、その下の脂肪、場合によっては筋肉まで達することもあります。
 やけどが比較的浅いものであれば、軟こうなどの治療で治りますが、それでも1~2ヵ月かかるケースがほとんどです。さらに深いやけどとなると、壊死組織を除去したり、場合によっては皮膚移植など手術が必要になることもあります。また、治っても瘢痕(はんこん)が残ってしまいます。

低温やけどで注意すべきポイントを教えてください。
 低温やけどは、最初は軽いやけどだと誤解されることが多いです。しかしながら、受傷後しばらくたってから「やけどが治らない」と受診する人が多いです。受傷部位が細菌などに感染すれば、高熱が出たり、ときには敗血症のような重篤な症状を引き起こしたりします。また、処置が遅れると、治療期間も長引きやすいので、決して自己判断せず、できるだけ早く形成外科や皮膚科の専門医を受診し、適切な治療を受けることが大切です。
 暖房器具の使い方を注意するのが、低温やけどの予防法です。湯たんぽはあらかじめ就寝時に布団から取り出すのが安全な使い方です。カイロは直接肌に貼り付けることを避け、下着や衣服の上に当てて使用しましょう。また、長時間同じ場所に当てずに温める場所をこまめに移動するのが安全です。ストーブやファンヒーター、パネルヒーターなどの前で居眠りしないよう、くれぐれも注意してください。

2014年1月29日水曜日

神経障害性疼痛


ゲスト/札幌宮の沢脳神経外科病院 村上 友宏 医師

神経障害性疼痛とはどのような病気ですか。
 打撲や炎症による痛みを侵害受容性疼痛といい、神経が障害されて起こる痛みを神経障害性疼痛といいます。代表的なものには、座骨神経痛、帯状疱疹(ほうしん)が治った後の痛み、糖尿病に伴う痛みやしびれなどがあります。あまり知られていませんが、脳卒中や脊髄損傷による痛みも含まれます。
 手足の指先や手のひら、足の裏などに、①針で刺したような②電気が走るような③正座をした後のような、痛みがある場合や、④衣類がすれたり、冷風に当たったりするだけで痛い、などのような症状がある場合は、神経障害性疼痛が疑われます。
 神経障害性疼痛には、通常の鎮痛薬はほとんど効果がないことが多いです。また、痛みは我慢を続けると慢性化し治りにくくなる恐れがあります。気になる痛みのある人は、慢性化してしまう前に、早期に原因を発見し適切な治療を行うことが大切です。

神経障害性疼痛の治療について教えてください。
 さまざまな薬剤を病態や症状に合わせて使い分ける薬物療法が中心です。その他、神経の周囲に局所麻酔薬を注射して、痛みを抑える神経ブロック療法や、運動療法、温熱療法などを組み合わせることもあります。
 薬や神経ブロックなどが効かない患者さんには、脊髄に弱い電気を流すことで、痛みの信号を脳に伝わりにくくする「脊髄刺激療法」という治療法もあります。先端に電極が付いたリードを、脊髄の外側にある硬膜外腔といわれる部分に挿入し、電気を流して疼痛部にトントンと、軽く叩くような心地よい電気刺激を感じるかどうかを確かめます。これをトライアルといい1週間ほどその効果を試します。痛みが半分以下になった場合、効果ありと判定し、電気信号を発生させる小型の装置を体内に埋め込む手術を行います。装置のオン・オフや、刺激の強さを患者さん自身が専用装置を使い体外から操作します。この治療で痛みがなくなるわけではありませんが、鎮痛薬を減らすことができる、不眠から開放されるなど生活の質の向上につながります。痛みに対し、さまざまな治療を行っても満足する効果が得られない人は、専門医に相談してみるといいでしょう。

2014年1月22日水曜日

歯科金属アレルギー


ゲスト/医療法人社団アスクトース 石丸歯科診療所 近藤 誉一郎院長

歯科金属アレルギーとはどのようなものですか。
 虫歯などで歯に詰めた金属が、アレルギーの原因になる場合があることが分かっています。これを歯科金属アレルギーといいます。歯の詰め物以外にも差し歯や金属の付いた入れ歯などあらゆる歯科材料で起こり得ます。
 アレルギーを引き起こしやすい金属には、ニッケル、水銀、パラジウム、コバルトなどがあります。金や銀などにも反応する人もいます。生体親和性の高い金属・チタンでもわずかにアレルギー発症の報告があります。
 実は、金属そのものがアレルギーの原因になることはありません。金属が唾液や皮膚などの生体成分に触れることでイオン化し、表皮や粘膜のタンパク質と結合、本来生体には存在しない異種タンパクが作られます。この異種タンパクに対する拒絶反応としてアレルギー反応を起こします。近年、口腔(こうくう)内に多種類の金属が認められるとイオン化の傾向が強くなり、アレルギー症状が出やすくなることも分かってきました。
 代表的な症状には、直接局部で起こる接触性皮膚炎と、接触しない部位に発症する全身性皮膚炎があります。口の中では、頬、下、口唇、歯肉の粘膜に白い斑点やレース状の病変として現れる扁平苔癬(へんぺいたいせん)や舌炎、歯肉炎、味覚異常などの病気があります。全身性のものでは、手のひらや足の裏の小さな水膨れ、顔、手、背中の湿疹のほか、アトピーに似た症状を示すものもあります。

歯科金属アレルギーが疑われる場合どうしたらいいでしょうか。
 まずはかかりつけ歯科医に相談をして、専門の医療機関を紹介してもらい金属アレルギーを調べるパッチテストを受けることが大切です。原因となっているアレルゲン(アレルギーを起こす物質)を突き止め、直接の原因となっている金属を取り除く治療を行います。除去した後は、金属アレルギーが比較的少ない金属に換えますが、種類によっては保険外となるので注意が必要です。
 近年では、保険適用の樹脂(コンポジットレジン)も以前より強度が上がり、使用できる範囲も広がっていますが、修復物の大きさや治療する部位によっては適応が難しいケースもあります。除去した後、そのままの状態にしておくわけにはいきませんので、事前にかかりつけ歯科医と十分に相談してから治療を受けることをお勧めします。

2014年1月15日水曜日

精神疾患からの復職


ゲスト/医療法人社団 正心会 岡本病院 岡本 呉賦 院長

精神疾患による休職者の職場復帰が大きな課題となっていますね。
 成果主義の広まりや長時間労働のストレスで、うつ病など心の病を訴える人が増えています。一方で、国は精神疾患の患者の雇用を義務化する動きを強めており、職場へのスムーズな復帰支援が大きな課題となっています。
 厚生労働省の研究では、病気が回復し、復職しても1年以内に約3〜5割が再発し、再休職したとのデータがあります。職場に復帰しても「みんなに迷惑を掛けた」「もっと頑張らないと」などと考え、自ら重圧をかけてしまったり、病気の回復レベルと職場が求める仕事レベルにギャップが生じ、頑張りすぎて心身ともに消耗したりで、再発や休職を繰り返すケースが目立ちます。
 近年、精神疾患の患者の職場復帰を支援する「リワーク」が広まっています。職場に見立てた疑似オフィスに患者が通い、復職訓練を行うものです。内科や外科の病気と同様、心の病にも復職前に一定のリハビリが必要です。長期間の療養中に体力が落ち、生活のリズムが崩れたり、従来の仕事をこなすために必要な集中力や記憶力が低下したりしているケースが多いからです。リハビリの内容は病気により異なりますが、復帰予定の業務に合わせた作業やコミュニケーションの訓練、体力回復のためのスポーツなどを通して、心と体を徐々に仕事に慣らしていきます。単に職場に戻るためだけではなく、再休職を防ぐのも大きな狙いです。

職場復帰にあたってのポイントを教えてください。
 復職や再発防止には、職場の理解と協力が欠かせません。職場の上司や人事担当者などに来院してもらい、患者と主治医、看護師や精神保健福祉士などのスタッフが同席し、病状の回復具合について情報共有を図る場を設け、じっくりと話し合うことが重要です。患者が何をどのようにできるところまで治ったのか、課題として残っているのはどんな部分かを会社側に説明し、慣らし出社やリハビリ勤務など復職後の働き方や、職場環境の調整などについて考えていきます。その上で、復職に向けたスケジュールを作成し、作業訓練などのリハビリをスタートさせます。
 心の病は誰もがかかり得る病気です。職場全体が精神疾患や心の健康について正しい知識を持ち、そうした人たちをそばで温かく見守り、支えていく仕組みを整備することも大切です。

2014年1月8日水曜日

視力検査で分かること


ゲスト/ふじた眼科クリニック 藤田 南都也 院長

視力検査について教えてください。 
 眼科では、さまざまな治療の折に視力検査を勧めます。視力に不安がないと断る人もいますが、視力検査からはいろいろなことが分かります。単に「視力」といっても裸眼の視力だけではなく、近視、遠視、乱視などの屈折異常や、矯正レンズを当てた状態で良好な視力を得られるかどうかの検査まで行います。
 例えば、小学生のお子さんの視力が0.8程度である場合、「授業に支障がなければ問題ない」と考える親御さんも多いかもしれません。しかし、強い遠視があるケースでは矯正レンズを当てても良好な視力を得られないことがあります。これは「弱視」という病気です。早期に弱視を発見し、適切な治療を受ければ視力回復につながりますが、小学校高学年以降になると治療は難しくなります。成人後も、日常生活や運転免許の取得に支障を来すこともあります。
 「見えづらい」原因が、近視・遠視のどちらによるものかを区別するのは難しく、学校の視力検査で不良を指摘されたら眼科での詳しい検査が必要です。

視力検査では、他にどんな病気が見つかりますか。
 成人の場合、高血圧の人に発生する網膜静脈閉塞(へいそく)症や、糖尿病網膜症などの、起こる部位によっては視力障害が出ます。
 ご年配の方の場合、白内障による視力低下と思い込んでいたのが、実は加齢黄斑変性症という別の病気による場合も少なくありません。普段両目で見ていると片目に異常があってもなかなか気付きにくいものです。眼科で片目ずつ視力を測定して初めて見つかるケースも多いです。
 強度近視の場合は、網膜が平均より薄く、網膜剥離(はくり)などの重大な病気を引き起こす可能性が高くなります。一定以上の近視と判明したら眼底の精密検査をお勧めします。
 中高年以降で、急に手元が見やすくなってきた場合には、白内障が始まり、水晶体の中心部が固くなって近視化を起こしている可能性があります。さらに白内障が進行すれば矯正視力も低下してきますが、裸眼視力の検査だけでは視力低下の原因をはっきりと判断できません。 
 視力検査が、目に隠れているさまざまな病気の早期発見につながるケースは珍しくありません。特別な症状がなくても、定期的に眼科を受診するようにしましょう。

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