2013年8月28日水曜日

多焦点眼内レンズによる白内障治療(眼科領域の先進医療)


ゲスト/大橋眼科 大橋 勉 院長

白内障の眼内レンズについて教えてください。
 白内障は目のレンズに当たる水晶体が濁る病気です。治療には点眼薬が投与されますが、最終的には手術が必要で、濁った水晶体を摘出して人工眼内レンズに入れ替えます。
 日本で使われている眼内レンズの多くは、近く、あるいは遠くの1カ所に焦点を合わせた単焦点眼内レンズです。濁りがなくなるため、見やすく、視界が明るくなりますが、近くか、遠くにしかピントが合わず、メガネを手放すことができませんでした。それを解消しようと生まれたのが多焦点眼内レンズです。

多焦点眼内レンズとはどのようなものですか。
 1枚のレンズに遠距離、近距離の両方に焦点が合うように設計された眼内レンズです。自由にピントを変えることができる見え方とは異なりますが、遠くにも近くにもメガネなしで焦点が合いやすくなります。場合によってはメガネを必要とすることもありますが、頻繁に掛け外しをする煩わしさからは解放されます。術後は見え方に慣れるまで数カ月かかる人もいます。夜間の光をまぶしく感じたり、暗い場所ではくっきり感が落ちたりするなどの弱点もあり、全ての人に適しているわけではありません。
 多焦点眼内レンズは2007年に厚生労働省に認可され、08年に先進医療として承認されました。先進医療とは、厚生労働大臣が保険適用外の先端的な医療技術と保険診療との併用を、一定の条件を満たした施設のみに認める医療制度です。先進医療施設に認定された医療機関で、多焦点眼内レンズによる白内障治療を受ける場合、術前術後の診察などに保険が適用となります。また、民間の生命保険の先進医療特約の対象ともなり、先進医療に係る費用が全額給付されるケースもあります。
 近年、従来の眼内レンズでは矯正不可能であった乱視も、白内障手術と同時に治すことができるようになってきました。また、乱視矯正機能を持たせた多焦点眼内レンズも厚労省の認可を待っている状態です。従来の多焦点眼内レンズの弱点を改善し、見え方の質を向上させたオーダーメードの多焦点眼内レンズも登場しています。眼内レンズが進化し、白内障手術は患者さんのライフスタイルに合わせた治療の選択ができるようになり、視力の質をより一層重視する新しい時代に入ってきました。

2013年8月21日水曜日

精神疾患の薬物療法


ゲスト/医療法人社団 正心会 岡本病院 瀬川 隆之 医師

精神疾患の薬物療法について教えてください。 
 統合失調症やうつ病など心の病気には、脳内の神経伝達物質が大きく関わっています。薬物療法とは、その神経伝達物質の調整や改善を薬によって行う治療法です。精神科で専門的に使う薬には、抗うつ薬や抗不安薬、睡眠薬などさまざまな種類があり、それらを状態に応じて組み合わせて処方します。
 統合失調症や躁うつ病の治療では薬物療法が必要であり、カウンセリングなどの精神療法は補助的な役割を果たします。パニック障害や強迫性障害など神経症の治療でも、薬物療法と精神療法が併用されますが、症状によっては精神療法だけで治療を続けることもあります。
 精神科で処方される薬には、副作用が強い、依存性があるなどあまり良くない印象を抱いている人が多いかもしれません。しかし、それらの中には誤解も含まれています。眠気や口渇、便秘などの副作用がみられることもありますが、薬の種類や量を調節することで軽減できますし、医師の指示通りに飲む限り、中毒の危険性は低いといえます。
 医学の進歩に伴い、新しい薬も登場し、薬物療法の選択肢は広がっています。主治医とよく話し合い、できるだけ多くの情報を得て、十分に理解したうえで服用することが大事です。

薬物療法の注意点を教えてください。
 患者さんの症状を目安にして適切な薬を選択しますが、一人ひとりに合った薬の種類を決めるには、ある程度の試行錯誤が必要な場合もあります。また薬は、最初は少量から始め、効果と副作用のバランスを見ながら少しずつ量を増やしていきます。短時間型の睡眠薬など即効性のある薬もありますが、服用してから効果が現れるまでに数週間以上かかる薬もあります。すぐに「治らないのでは」と焦らずに、根気よく治療を続けていくことが肝心です。
 治療が長くなると、精神状態が一時的に安定した時に「もう薬を飲まなくても大丈夫」と自分で勝手に判断し、服用をやめてしまうケースがあります。薬は決められた量を、継続して服用することが重要で、服用をやめてしまうと、離脱症状が出現したり、病気が再発したりする原因にもなります。
 心の病気は、薬と継続通院による管理が大切。患者さん本人の努力はもちろんですが、治療を続けられるよう家庭や職場など周囲の人たちの協力も不可欠です。

2013年8月14日水曜日

子どもの歯科矯正治療


ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治 正光 院長

子どもの矯正治療について教えてください。
 お子さんの歯並びに矯正が必要かどうか迷われる人も多いと思います。歯並びを確かめる方法の一つとして、お子さんの口元を顔の正面から観察してみてください。上下の前歯の真ん中の位置が一致していれば安心ですが、ずれている場合は、矯正の必要があると考えられます。出っ歯や受け口など、上下の顎が前後に大き過ぎたり小さ過ぎたりという骨格的な問題は、一般の方でも気付きやすいのですが、左右のずれは発見しにくいものです。
 前後あるいは左右にずれが認められる場合は、顎骨(がっこつ)の成長コントロールが可能な9〜10歳までに行うのが理想的です。就寝時にバイオネーターと呼ばれる機能的顎(がく)矯正装置を装着し、寝ている間にずれた顎の骨を中央に移動させます。子どもの成長の力を利用して、無理なく自然にバランスのよい骨格をつくれます。痛みはほとんどなく、取り外しが可能で、日中は装着の必要がありません。ずれの程度にもよりますが、装着期間は半年〜1年が平均で、経過観察のための通院は、1〜3カ月に一度が目安となります。
 ずれの原因はさまざまですが、歯そのものがずれているケースもあり、永久歯がそろってからでも治療は可能です。その場合は抜歯する可能性が高くなりますが、きれいに治療できることが多いです。判断は非常に難しいので、一度専門医にご相談ください。

家庭でチェックするための別の方法はありますか。
 頬づえやかみ癖、就寝時の姿勢が左右どちらかに大幅に偏っている場合などは、左右のずれを引き起こす原因になることがあります。上下の前歯の位置を確認したら、次は鼻の先端を基準に、鼻の中央に前歯の中心が沿っているかを見てください。ずれの原因は一見して分かるものではなく、万が一、骨格のずれを歯のずれと勘違いして放っておくと、矯正に最適な成長時期を逃してしまうので注意が必要です。
 子どものうちの悪い歯並びやかみ合わせを放置していると、成長に伴い虫歯や歯周病の原因となったり、顎関節にも悪影響を及ぼす恐れがあります。また、大人になってから心理的なストレスの原因となる場合もあります。少しでもおかしいと感じたら、早めに専門医に相談することをお勧めします。歯科矯正は自由診療となりますので、費用についてもその際に問い合わせてみてください。

2013年8月7日水曜日

裂肛(れっこう)について


ゲスト/札幌いしやま病院 西尾 昭彦 院長

裂肛とはどのような病気ですか。
 痔(じ)のなかで裂肛(切れ痔)は女性に多い病気です。裂肛を引き起こす原因の多くは便秘で、硬い便や太い便を無理に出そうとすることによって肛門上皮(便が通過する部分の肛門の皮膚)が裂けてできます。症状は排便時の痛みが主で、出血はないか、あっても少量です。一度裂けた傷は排便の度に伸ばされるため治りにくく、痛みが続くようになります。痛みが嫌で排便を避けるようになると、便がますます硬くなり、症状を悪化させるという悪循環が生じます。
 裂肛の症状が進み慢性化すると、傷が深くえぐれて潰瘍化していきます。肛門ポリープと呼ばれる突起物ができたり、肛門が狭くなったりして、排便時の苦痛が増します。また、肛門の括約筋がけいれんを起こすことで、さらに痛みがひどくなる場合もあります。トイレの中で気が遠くなるという患者さんもいるほどです。

裂肛の治療について教えてください。
 裂肛の治療は、便を軟らかくして排便を楽にする内服薬や、排便時の痛みを抑えるための塗り薬、肛門に注入する座薬、軟こうなどの外用薬が中心です。市販薬もありますが、裂肛に合うもの合わないものがあるので、一度専門の医療機関を受診し、正しい診断の下で適した薬を処方してもらうべきでしょう。
 傷の治療を行いながら、生活習慣を改善して便通を整えることも裂肛治療では大切です。朝食をきちんと取る、水分や植物繊維を十分に取る、便意を我慢しない、適度な運動をするなど、便秘を防ぎ、硬すぎず軟らかすぎない“質の良い便”を出す生活を心掛けてください。半練り状の便で、息むことなく、すんなりと排便できる状態が理想です。
 傷が深い、肛門が狭いなどの慢性化した裂肛になると、薬などの保存治療では治らず、手術治療が必要になります。硬くなった肛門の括約筋を切開する手術が一般的ですが、当院では麻酔をした上で肛門に指を入れ、括約筋が正常な状態になるまでマッサージして引きのばす治療も行っています。その際、肛門ポリープがあれば、同時に切除します。入院の必要も、痛みもなく、短時間で治療できるというメリットがあります。
 恥ずかしさから受診をためらわれている方も多いようですが、治療により痛みのない快適な生活を取り戻せることをぜひ知ってほしいと思います。