2013年7月24日水曜日

COPD(慢性閉塞(へいそく)性肺疾患)


ゲスト/医療法人社団 大道内科・呼吸器科クリニック 大道 光秀 院長

2012年、厚生労働省が「健康日本21」で取り上げる病気の一つにCOPDを加えたそうですが。
 厚生労働省が国民の健康増進を図るための方針「健康日本21」が昨年改定され、重点疾患にCOPDが追加されました。長期間にわたる喫煙習慣が主な原因であることから、COPDは「肺の生活習慣病」とも呼ばれ、社会的にも大きな注目を集め、「健康日本21」で取り上げられたのです。COPDは日本での推定患者数が500万人以上であるのに対し、実際に治療を受けているのは約22万人。多くの人々がCOPDであることに気付いていない、あるいは正しく診断されていないことになります。COPDの特徴は細い気管支や肺胞が障害を受け、労作時の息切れ、せき、たんが出てきて、重症化すると息切れのため日常生活が出来なくなり、肺炎や心不全などの合併症で命に関わる病気です。自覚症状が現れにくく、気付かないうちにゆっくりと病状が進行し、病院を受診した時にはかなり悪化している場合が多いです。中高年での発症が多いため、階段の昇降などで息苦しさを感じても「年のせい」と思い込み、疾患発見が遅れたり、風邪をひいたときのみ症状が出て初めてCOPDを持っていることが分かる事が多いです。 

COPDの診断、治療について教えてください。
 問診や胸部写真のほか、1秒間で一気に吐き出せる空気の量を測る肺機能検査の結果から病気の確定診断を行います。 CT(コンピューター断層撮影)を使った精密検査も有用な検査です。
 現時点でCOPDを根本的に治し、肺を元の状態に戻す治療法はありません。最近、COPDの進行を遅らせ、症状も改善する吸入薬が次々と開発され早期から、治療することにより、病気の進行を抑えられるようになりました。肺機能の低下を遅らせ、患者さんの生活の質を高めることが治療の目的となります。症状の軽重にかかわらず、治療の基本は禁煙です。そして、気管支拡張薬など薬物療法により症状を和らげながら、残された肺機能の維持・増進を図ります。年齢を重ねるほど肺機能の低下は顕著になります。重要なのは、早期診断と適切な治療の継続です。喫煙歴が長く、風邪が長引いていると感じたり、体を動かしたときに息切れを感じたりしたら、呼吸器科で一度検査を受けるようにしてください。

2013年7月17日水曜日

関節リウマチの診断[関節エコー(超音波)検査]


ゲスト/北海道内科リウマチ科病院 深江 淳  医師

関節リウマチの診断について教えてください。
 関節リウマチは免疫の働きに異常が起き、関節をくるむ滑膜(かつまく)に炎症を発する病気です。進行すると骨の表面が削られたようになる「びらん」が起き、関節が破壊され、日常生活に支障を来すようになります。
 関節リウマチの診断は、関節の腫れや痛みを調べたり、血液検査やエックス線を併用したりして行われてきましたが、エックス線では炎症の状態をリアルタイムに確認できない場合が多く、患者さんが腫れや痛みを訴えても、炎症の程度の判断は医師によって分かれることもありました。
 関節リウマチの治療は、免疫を制御する抗リウマチ薬に加え、新しい治療薬である生物学的製剤の普及で飛躍的に向上し、早期診断・治療の重要性が一層増しています。これらを実現するためには、炎症をできるだけ正確に、客観的に評価し、治療開始の必要性を判断したり、治療効果を判定したりする必要があります。こうした背景で注目されているのが、関節エコー(超音波)検査です。

関節エコーとはどのような検査ですか。
 日本リウマチ学会が検査法の標準化に乗り出し、近年、急速に普及が進んでいる検査です。調べたい関節にエコーの器具を当て、画像で炎症や血流の状態を調べます。
 関節エコーの利点は、検査が簡便な上、従来の検査では検出が難しかった、診断上の有用な情報をリアルタイムで確認できることです。炎症が強いほど増える血流の程度を細かく把握できるので、炎症の小さな変化も逃さず捉えることができます。診断だけでなく、薬の効果が出ているかなど治療経過を見るのにも生かせます。
 エックス線のように放射線による被ばくの心配がなく、滑膜の炎症を評価する上で有効なMRI(磁気共鳴画像装置)と比べ費用が割安で、患者さんの負担が少ない検査といえます。また、炎症を起こしている部位が、画像に赤く映し出されるので、患者さんは自分の炎症の状態をイメージしやすく、病状の理解にも役立ちます。
 治療の進歩により、関節リウマチは症状が落ち着き進行しない「寛解」を目指すことも可能になりました。病状を上手にコントロールするために重要なのは、一日でも早く治療を始めることです。気になる症状があれば、すぐに専門医の診察を受けましょう。

2013年7月9日火曜日

パニック障害


ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 吉住 寿美香 診療部長

パニック障害はどのような病気ですか。
 パニック障害とは、突然、理由も無く強い不安に襲われ、動悸(どうき)や震え、目まい、息苦しさといった体の症状も伴う「パニック発作」を繰り返す疾患です。
 「今にも死んでしまうのではないか」と思うほどの強い恐怖感を伴うこともあり、救急車で病院を訪れる方もおられますが、数分から一時間くらいで症状は自然におさまります。心臓や呼吸器の疾患ではと心配され内科を受診される方も多いのですが、詳しい検査を受けても異常は指摘されません。けれども何日かしてまた繰り返すのが特徴です。決して珍しい疾患ではなく、100人に1〜2人の割合で発症すると言われています。また比較的女性に多い疾患でもあります。
 患者さまにとって大変なのは「また発作が起こるのでは」「起こったらどうしよう」と極度に恐れてしまう「予期不安」です。予期不安が強くなると、パニック発作が起こりそうな状況や、起こった際に逃げ場の無い場所を避けるようになり、学業や仕事といった社会生活に支障が生じたり、家に引きこもりがちになる方もおられます。
 パニック障害は決して気持ちの持ちようでどうにかなるものではなく、脳内の不安や恐怖に関与する神経系の‘誤作動’によって起こります。ですから、迷わず専門医の下でしっかりとした治療を受けることが大切です。

パニック障害の治療について教えてください。
 治療は大きく二段階に分かれます。第一段階は薬物療法です。発作に有効な薬がありますので、まずはそれを服用しパニック発作を抑えていきます。「薬さえ飲んでおけば発作は出ない」という状態を作ることが出来たら、第二段階の認知行動療法に移ります。これまで不安や恐怖のために制限していた行動を少しずつ再開し、慣れていくのです。症状が出たときの対処法も学びつつ、今まで避けていた状況でも安心できるという自信を積み重ねます。自信が強まっていくにつれ、不安も消えていきます。勇気を必要とする段階ですが治療効果も実証されており、薬物療法との併用で再発率も低いことが分かっています。
 数ヶ月ほどで安定してくる人もいれば、何年かかけ少しずつ発作が遠のいていく人もいます。症状は楽になるケースが多いので、病気の内容をよく知り、じっくり治療に取り組む姿勢が大切です。周囲の方にも同様の理解をお願いしたいと思います。

2013年7月3日水曜日

隠れ脳梗塞


ゲスト/西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 医師

隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)について教えてください。
 脳ドックを受けたり、けがで脳の検査をしたときに医師から、脳梗塞があると言われてドキっとした。というような経験をされた方も多いのではないでしょうか。俗に「隠れ脳梗塞」というように、自分には思い当たるような症状がないのにもかかわらず、検査時に偶然見つかる脳梗塞をそう呼びます(正しくは無症候性脳梗塞と言います)。
 脳梗塞と聞かされると、驚いてしまいますが、即、大きな発作につながることは少ないと考えられますので、必要以上に不安になる必要はありません。検査の際に、医師の説明が十分でないために不安が増している場合が多いので、われわれも気を付けなくてはいけません。隠れ脳梗塞がありますよと言われた場合には、ご自身の持病や生活習慣等を見直すためのきっかけにしていただくのが得策ではないでしょうか。こういった機会に禁煙を決断される方もいらっしゃいます。
 差し迫った危険はないのですが、そう言われて何も手を打たずに放っておいてもよいかというと、そういうわけではありません。無症候性脳梗塞の方は、健常者に比べると脳梗塞や脳出血、あるいは認知症になる危険がやや高いことが分かっています。また非常にわずかながら脳にダメージを与えているのではないかとする説もあります。つまり自分が他の人より脳梗塞を発症するリスクが高いことを自覚して、その予防に役立てる事が大切です。
 だからといって、慌ててすぐに脳梗塞再発予防の薬を飲む必要性はありません。まずやるべきことは、脳梗塞の危険因子のチェックが必要です。脳梗塞の発症に一番関係があるのが高血圧の存在です。高血圧があればその後しっかり血圧を管理していくことがとても大切です。そのほかの危険因子では喫煙や糖尿病、脂質異常症などがあります。それぞれ医師の指導のもと適切に管理していく必要があります。
 脳神経外科の専門医では、さらに頸動脈の動脈硬化のチェックや脳血管のチェック等を行って、リスクの高い方には内服薬を処方する場合もありますし、再発予防のための手術が行われる場合もあります。