2013年1月30日水曜日

関節リウマチの治療


ゲスト/北海道内科リウマチ科病院 松橋 めぐみ 医師

関節リウマチの治療について教えてください。
 免疫の異常による関節の炎症で、腫れや痛みが起こり、進行すると骨が破壊し関節が変形してしまう関節リウマチです。治療は、症状や進み具合に合わせて、薬物療法、リハビリテーション、手術療法などが行われます。
 一度変形してしまった関節は、薬を使ったりリハビリを行ったりしても、元には戻せません。薬を飲んでも痛みが続く場合や、関節の機能が失われて日常生活に支障を来す場合などには、手術治療が勧められます。変形したり破壊され関節を人工関節に置き換える手術などがあります。
 関節リウマチの痛みや腫れは、薬で和らげることができますが、関節を動かさずにいると、骨や関節周囲にある筋肉、靭帯(じんたい)などの機能が落ちてしまいます。症状が出始めた初期のころから、適切なリハビリを行うことが大切です。リハビリには、患部を温めて痛みやこわばりを和らげる温熱療法、関節の動きを広げるなど、身体機能の保持・改善を目指す運動療法などがあります。
 現在、関節リウマチの治療の中心となっているのは薬物療法です。治療の進歩で、症状が落ち着き進行しない「寛解」も夢ではなくなりました。

薬物治療について教えてください。
 痛みや腫れを抑える消炎鎮痛剤のほかに、免疫系に作用する薬剤などを用いて治療します。標準的な治療薬は、メトトレキサート(MTX)です。日本では使用量が低く抑えられてきましたが、2011年2月から十分な量が処方可能となり、良好な治療成果をあげています。ただし、まれに間質性肺炎や肝機能障害などの副作用が出る場合もありますので、リウマチ専門医のもとで治療することが大事です。
 抗リウマチ薬だけで症状や関節の所見が十分に改善しない場合、新しい治療薬である生物学的製剤が使えるようになりました。炎症の原因となるサイトカインの働きを抑えるタイプに加え、免疫をつかさどる細胞の働きを抑えるタイプも登場し、選択肢が広がっています。即効性があり、痛みもコントロールできるなど効果は高いですが、高額な薬代が難点となっています。
 どの薬を選択するかは、症状や進行の程度、合併症の有無のほか、患者さんのライフスタイルなども考慮して決められます。患者さんも主治医や専門の先生とよく相談し、効果や副作用を十分理解しながら、治療を継続しやすい薬を選ぶことが大切です。

2013年1月23日水曜日

子どもの歯科矯正治療


ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治 正光 院長

子どもの矯正治療について教えてください。
 お子さんの歯並びに矯正が必要かどうか迷われる人も多いと思います。歯並びのチェック方法の一つとして、お子さんの口元を顔の正面から観察してみてください。上下の前歯の真ん中の位置が一致していれば安心ですが、ずれている場合は、矯正の必要があると考えられます。
 出っ歯や受け口など上下の顎が、前後に大き過ぎたり小さ過ぎたりという骨格的な問題は、一般の人でも気付きやすいのですが、左右のずれは発見しにくいものです。自然な矯正なら、顎骨(がっこつ)の成長コントロールが可能な9〜10歳までに行うのが理想的です。この時期なら就寝時に、バイオネーターと呼ばれる機能的顎(がく)矯正装置を装着し、ずれた顎の骨を中央に移動させます。バイオネーターは、子どもの成長の力を利用して、無理なく自然にバランスのよい骨格をつくります。痛みはほとんどなく、取り外しが可能で日中は装着の必要がありません。ずれの程度にもよりますが、装着期間は平均で半年〜1年。経過観察のための通院は、1〜3カ月に1度が目安です。
 ずれの原因には、歯そのものがずれている場合もあり、永久歯がそろってからでも治療は可能です。その場合は抜歯する可能性が高くなりますが、きれいに治療できることが多いです。判断は非常に難しいので、ぜひ専門医にご相談ください。

家庭でチェックするための別の方法はありますか。
 頰づえやかみ癖、就寝時の体位が左右どちらかに大幅に偏っている場合などは、左右のずれを引き起こす原因となることがあります。上の前歯と下の前歯の中央の位置が一致しているのを確認したら、次は鼻の先端を基準に、鼻の中央に前歯の中心が沿っているかを確認してください。ずれの原因は一見して分かるものではなく、万が一、骨格のずれを歯のずれと勘違いして放っておくと、矯正に最適な成長期を逃してしまう場合もあります。
 子どものうちの悪い歯並びやかみ合わせを放置してしまうと、大人になってから心理的な悪影響を及ぼしたり、虫歯や歯周病、顎関節への影響が出てきたりする場合もあります。少しでもおかしいなと感じたら、早めに専門医に相談することをお勧めします。歯科矯正は自由診療となりますので、費用についてもその際に問い合わせると良いでしょう。

2013年1月16日水曜日

自律神経失調症


ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 尾形 マリ 医師

自律神経失調症とはどのような病気ですか。
 人体が健康な生命活動を行っていくために、その人が意識しなくても体を上手に働かせている神経のことを自律神経といいます。例えば運動をしているときは、「さあ、筋肉に十分酸素を送るぞ」と思わなくても呼吸が速くなり心臓は活発に拍動しますし、ご飯を食べたときには「さあ、消化するぞ」と思わなくても胃液が出て胃袋が動きます。これが自律神経の役割です。自律神経には交感神経と副交感神経と呼ばれる神経があり、この両者が必要に応じてバランスよく働くことで日々の生命活動を維持しています。
 しかし、先ほどお話ししたように、自律神経は自分の意思で完全に制御することができないので、頑張りモードの作動ばかりを長期に強いられた時などに、その調節がうまくいかなくなり、全身にさまざまな症状が出ます。これが自律神経失調症と呼ばれている現象です。運動をしていないのに動悸(どうき)がする、食べ過ぎでもないのに胃腸の具合が悪い、暑くもないのに汗が出る、その他、全身のあちこちにつらい症状がたくさんあるのに検査では異常がないとされる場合にこの病名が使われることが多いようです。
 ただし、「自律神経失調症」というのは正式な病名ではなく、状態を表す言葉です。「自律神経失調症」が見られたときは、うつ病などの心の病気が隠れていないかをチェックすることも大切です。うつ病かどうかを自分で見極めるのはとても難しい事です。体調が悪いのは疲れているから、仕事がはかどらないのは自分の頑張りが足りないからと思いこんでしまう場合が多いからです。

自律神経失調症の治療について教えて下さい。
 うつ症状が明らかなときは抗うつ薬を使いますが、さまざまなつらい症状には漢方薬による治療も有効です。多くの漢方薬は現代医学のお薬同様、保険が効きます。症状によっては保険外の生薬が必要なこともありますが、保険の効くお薬と組み合わせて費用をなるべく抑えることも可能です。
 「自律神経失調症」は、よくこれまで頑張りましたね、少し心身をいたわりませんか、というサインです。これを治療することで将来かかるかもしれない病気を予防できるかもしれません。「自律神経失調症状」が続くときは、検査で異常がなかったからと、つらい症状を我慢せずに相談されることをお勧めします。

2013年1月9日水曜日

多焦点眼内レンズによる白内障治療(眼科領域の先進医療)


ゲスト/大橋眼科 大橋 勉 院長

白内障の眼内レンズについて教えてください。
 白内障は瞳の後方にある水晶体が濁って起きる視力障害です。治療には点眼薬が投与されますが、最終的には手術が必要になります。現在、日本で多く行われている手術法は、水晶体を包んでいる袋の中の濁りを取り除き、その袋の中に人工レンズを挿入する方法です。
 日本で使われている眼内レンズの多くが「単焦点眼内レンズ」です。遠く、あるいは近くの1カ所に焦点を合わせたレンズで、濁りがなくなるため、見やすく視界が明るくなりますが、裸眼でどこでもよく見えるというわけではありません。焦点が遠くにある場合は、読書や縫い物など手元の作業時には視界がぼやけ、老眼鏡が必要になります。逆に近くに焦点を合わせた場合は、外を歩いたり、運転したりする時に眼鏡が必要になります。

多焦点眼内レンズについて教えてください。
 多焦点眼内レンズは、遠距離、近距離と2点に焦点が合うように設計されています。単焦点眼内レンズに比べると、遠くにも、近くにも眼鏡なしで焦点が合いやすくなります。多焦点眼内レンズは2007年に厚生省に認可され、08年に先進医療として承認されました。先進医療とは、厚生労働大臣が保険適用外の先端的な医療技術と保険診療との併用を、一定の条件を満たした施設のみに認める医療制度です。先進医療施設に認定された医療機関で、多焦点眼内レンズによる白内障治療を受ける場合、術前術後の診察などに保険が適用となります。また、民間の生命保険の先進医療特約の対象ともなり、先進医療に係る費用が全額給付されるケースもあります。
 多焦点眼内レンズでの見え方に脳が慣れるには、年齢や個人間の差はありますが、一般に数カ月程度かかるといわれています。また、単焦点眼内レンズに比べ、遠くも近くも焦点が合いやすいのですが、自由にピントを変えることができる見え方とは異なります。場合によっては眼鏡が必要になることもありますが、頻繁に掛け外しをする煩わしさからは解放されます。
 どちらのレンズにするかは、医師と話し合い、ライフスタイルを考慮して選択することをお勧めします。近年、従来の眼内レンズでは矯正不可能であった乱視も、白内障手術と同時に治すことができるようになってきました。詳しくは、医師にお尋ねください。

2013年1月7日月曜日

痔核(じかく)の最新手術


ゲスト/札幌いしやま病院 石山 元太郎 副院長

痔核とはどのような病気ですか。
 痔(じ)と呼ばれる疾患のうち、最も多いのが痔核(いぼ痔)です。通常肛門は、便やガスが無意識のうちに漏れたりしないように、括約筋という筋肉で閉じられています。しかし、これだけでは不十分なため、肛門の出口から数センチ入ったところに、肛門クッションと呼ばれる柔らかな盛り上がり(血管の集まり)があり、これによって括約筋が強い力で収縮しなくても便などが漏れない仕組みになっています。肛門クッションは、ちょうど水道の蛇口に付いているゴム栓のような役割を果たしているのです。排便時に強くいきむなど、肛門に負担がかかることが度重なると、徐々に肛門クッションが腫れて、本来あるべき位置からずれ落ちた状態になります。これが痔核です。
 初期段階であれば薬や生活改善で症状は良くなりますが、痔核が脱出するようになった場合には手術などの治療が必要となります。

痔核の手術について教えてください。
 昔の手術は、痔核を残らず切り取っていました。そうすると肛門クッションもなくなってしまうため、肛門のべとつきや排便障害などの後遺症に悩まされる人も多く、30年ほど前から行われなくなりました。近年の手術は、肛門クッションの重要さが広く知られてきたために、肛門クッションを残す方法を取っています。また、専用の器具を使い、痔核そのものではなく、近くにある直腸粘膜を切除することで痔核をなくす方法も登場しています。
 硫酸アルミニウムカリウムタンニン酸(ALTA)を痔核に注射するという、切らずに治す方法もあります。治療後の痛みがほとんどなく、長期間の入院も必要ありません。ただし、誤ったやり方で注射してしまうと重大な合併症を引き起こす危険性があります。また、全ての痔核に有効ではなく、その適応を厳密に選択しなければ再発することがあります。
 現在、最も新しい術式であり、再発の可能性がほとんどなく、肛門本来の機能を温存するという観点からも有効と考えられているのが「肛門形成術」です。ずれ落ちた肛門クッションを括約筋から剥離し、本来あるべき位置と思われるところに戻して括約筋に固定するという方法です。術後の痛みや出血も少なく、入院期間を大幅に短縮できるというメリットもあります。