2013年12月25日水曜日

むくみ(浮腫)


ゲスト/つちだ消化器循環器内科 土田 敏之 院長

むくみについて教えてください。
 足の甲やすねを押すとへこんで、すぐには元に戻らない。顔やまぶたが腫れぼったくなる。こういったむくみのことを、浮腫といいます。
 むくみとは、何らかの原因で体の水分が異常に増えて、皮下組織(皮膚の下部・血管の外)に余分な水分(血しょう成分)がたまった状態です。原因疾患はさまざまですが、健康な人でも長時間の立ち仕事をしたり、同じ姿勢で座ったままでいたりすると、むくみが起こることがあります。重力の影響で、心臓より低い場所の血液は戻りにくいため、下腿には血がたまりやすいからです。

むくみの原因にはどのようなものがありますか。
 一般的に、むくみの主な原因は次のようなものが挙げられます。
①特発性浮腫…特定の原因が見つからないむくみです。女性に多く、女性ホルモンの影響やストレスなどの関与が指摘されています。②肥満性浮腫…肥満の人(標準体重を20%以上超えている人)は代謝が悪くなっているため、むくみが起こりやすくなっています。③慢性静脈循環不全…下肢静脈瘤(りゅう)や静脈血栓症などによる静脈のうっ血が原因です。④薬剤性浮腫…鎮痛剤、ホルモン剤、降圧剤、漢方薬の副作用としてむくみが生じることがまれにあります。⑤心不全…心臓の血液のポンプ作用の低下に伴い、毛細血管の内圧が上がり、血管内の血液から水分が漏れてきます。これが高齢者に多い心不全によるむくみです。⑥腎臓病…ネフローゼ症候群や腎不全に伴う腎性のむくみです。腎臓の尿を作る働きが低下すると、水分や塩分が排せつされないまま体内に残るからです。⑦甲状腺機能低下症…甲状腺の機能が低下し、全身にむくみが現れます。女性に多く、倦怠(けんたい)感や便秘、体重増加などの症状も見られます。⑧膠原(こうげん)病…女性に多く、むくみのほかに微熱や関節痛を伴うことがあります。⑨栄養障害…加齢やうつ病、がんなどの病気で食事が取れなくなり、血液中のタンパク質が低下した状態のときに起こります。
 このほか、じんましんの一種や肝硬変などの肝臓病、極度の貧血でもむくみを生じることがあります。症状が出ているのに放っておくと、深刻な事態に陥る可能性があるのがむくみです。むくみを発見したら、病気のサインと考え、できるだけ早めに医師に相談することが大切です。

2013年12月18日水曜日

婦人科クリニックでできること

ゲスト/札幌駅前アップルレディースクリニック 工藤 正史 院長

婦人科クリニックの診療内容について教えてください。
 婦人科クリニックで行う検査などについて簡単に説明します。施設によってはできない項目がありますので、受診前にご確認ください。
 検査には、子宮頸(けい)がん、子宮体がんの検査、子宮頸がんの原因とみられるHPV(ヒトパピローマウイルス)を持っているかのリスク検査、HPVの型判定の検査などがあります。また、子宮頸がん検診で異常所見が見られた場合、精密検査として組織診を行います。
 超音波検査は、子宮筋腫や卵巣の腫瘍の有無など多くの情報が分かる大事な検査です。膣(ちつ)おりもの検査では、一般細菌、性感染症の原因菌を調べます。近年、性感染症の中で増加しているのが尖圭(せんけい)コンジローマです。治療が非常に困難で、完治までに長い治療期間が必要となります。
 B型・C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、梅毒とヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)の感染は、血液検査で分かります。HTLV-1は、特に妊婦の方の母乳感染に注意が必要です。
 そのほか、妊娠判定と妊娠経過のフォロー、風疹の抗体検査、インフルエンザや子宮頸がんの予防接種なども行っています。また、膀胱(ぼうこう)炎の治療も婦人科で受けられます。

ピルの処方、不妊症治療などについて教えてください。
 緊急避妊用ピルと低容量ピルの処方があります。低容量ピルは、避妊効果だけでなく、月経痛の軽減や肌トラブルの改善などの目的でも効用を発揮するほか、旅行や試験などのスケジュールに合わせて月経の時期を調節できます。また、卵巣がんや子宮内膜症、骨粗しょう症などに対して予防効果があるとされています。
 不妊治療は、精液所見の異常などを調べ、排卵期を予測して性生活を持つタイミング療法や、人工授精、体外受精などの方法を取ります。また、血液検査(AMH:抗ミュラー管ホルモン)で卵巣年齢(卵の数)が分かります。
 思春期に多い月経困難症や月経不順は、血液検査によるホルモン検査の確認が必要な場合があります。また、更年期障害には、女性ホルモン補充療法や漢方療法などを行います。高齢者の寝たきりの原因の第2位は、骨粗しょう症による骨折です。健康な骨を維持するためにも定期的な骨密度検査の受診をお勧めします。女性には年代特有の病気、問題が数多くありますので、かかりつけの婦人科クリニックを見つけることが大切です。

2013年12月11日水曜日

パニック発作への対処

ゲスト/時計台メンタルクリニック 木津 明彦  院長

自律神経とパニック障害の関係について教えてください。
 皆さんがよく耳にする自律神経とは、手足などを動かす体性神経とは対照的に、循環、消化、発汗といった自分の意志によらない機能を制御する神経です。自律神経は交感神経と副交感神経に分類され、それぞれまったく逆の働きをしています。
 交感神経系は昔から「闘争か逃走か」の神経といわれ、怒りや恐怖、不安、緊張が生じるときに作動します。交感神経が興奮すると心臓の拍動が高まり、血圧は上がり、呼吸が速くなります。体温を高めて筋肉を緊張させ、闘争や逃走の態勢を整える役割を果たします。
 交感神経の活動は、本来私たちを外敵から守るための反応です。これがなければ、動物も人もサバイバルできません。しかし、必要のないときに交感神経が興奮してしまうのは厄介なことです。例えていうなら火事ではないのに警報器が鳴るようなものです。このような病態の一つがパニック障害です。

パニック発作の対処法について教えてください。
 パニック障害は、ある日突然、動悸(どうき)や呼吸困難などの発作が起こり(パニック発作)、その発作が何度も繰り返される病気です。発作自体は短い時間で治まりますが、「また発作が起きるのではないか」という不安感に襲われ、それが新たな発作を引き起こすという悪循環に陥ってしまいます。
 自分でできるパニック発作の予防は、交感神経が興奮しやすい状況を作らないことです。カフェインなどの刺激物を控え、鉄や亜鉛などのミネラルをしっかり取ること。糖分の取り過ぎにも注意し、高血糖に引き続く低血糖にならないような食生活を心掛けてください。適度の運動や疲れをためないことも大切です。
 病気についての正しい知識や不安を増幅させない心の持ちようも効果があります。発作が起きても「これは警報器の誤作動。決して死ぬわけじゃない」と判断できれば、あわてて救急車を呼ぶことはありません。
 発作が繰り返されるとき、不安が強いときは医療機関で診てもらいましょう。受診の際は、心療内科、精神科、内科、婦人科など、必要に応じた診療科を選ぶことが重要です。初診時の問診は、心の症状が身体的な問題から生じていないかなどを判断する大切な情報になります。普段の食生活、貧血の既往、糖尿病の家族歴、月経の状態などを把握しておくことが望ましいです。

2013年11月25日月曜日

慢性膵炎


ゲスト/佐野内科医院 佐野 公昭 院長

膵臓とはどのような器官なのですか。
 膵臓はみぞおちの奥、胃のちょうど裏側にあるおよそ100グラムの臓器です。体の中の最も奥深くに位置し、肝臓や胃、十二指腸など多くの臓器に囲まれているため、検査でも病気を見つけにくく、また症状も出にくいために“沈黙の臓器”とも呼ばれています。
 膵臓の主な働きは2つあります。炭水化物を分解するアミラーゼなどの消化酵素が含まれる膵液をつくり、膵管を通して十二指腸に分泌する機能(外分泌機能)と、インスリンなどのホルモンをつくって血液中に分泌する機能(内分泌機能)です。外分泌機能は、食物の消化や栄養の吸収を助ける役割を担い、内分泌機能は、血糖値をコントロールする役割を果たしています。

慢性膵炎について教えてください。
 膵液は強力な消化作用を持っていますが、通常は膵臓自体には影響を及ぼしません。ところが何らかの理由で膵液の分泌に異常が生じると、膵臓そのものを消化してしまい(自己消化)、炎症を引き起こします。これが膵炎です。
 膵炎にはいくつかの種類がありますが、慢性膵炎は、炎症が繰り返し起こり、正常な細胞が線維組織に変化したり、石灰化したりすることで、膵臓の機能が低下していく病気です。男性に多く、長期間にわたるアルコールの過剰摂取を原因とするものが、約半数を占めます。ストレスが関係することも分かっています。
 主な症状は腹痛です。上腹部や背中に放散する痛みが多いです。嘔気(おうけ)や嘔吐(おうと)、腹部膨満感、重圧感、全身倦怠(けんたい)感などがみられることもあります。病気が進行すると消化酵素の分泌が低下するため、消化不良に伴う下痢や脂肪便、体重減少などの症状が出現します。インスリンなどホルモンの分泌も低下して糖尿病が出現することもあります。
 治療は、腹痛の軽減、膵臓の機能を保つようにして膵炎の進行悪化を遅らせ、糖尿病の出現を阻止することを目指します。禁酒、禁煙を守り、脂肪を控えた食事にすることなどの生活習慣が大切です。腹痛を和らげたり、消化吸収を助けるために薬物治療を行います。膵液の流れを良くするために、内視鏡を用いた治療や手術を行う場合もあります。
 慢性膵炎は完全に治すことは難しい病気ですが、早期に適切な治療を受ければ病気の進行を遅らせることができます。気になる症状があれば、一度専門医に相談されることをお勧めします。

2013年11月20日水曜日

ヨーロッパリウマチ学会と関節エコーの重要性


ゲスト/佐川昭リウマチクリニック 佐川 昭 院長

関節リウマチをめぐる最近の話題について教えてください
 今年6月スペインのマドリードで、ヨーロッパリウマチ学会が開催されました。この学会では何年かおきにリウマチの治療法についてリコメンデーション(勧告)が発表され、われわれリウマチ医に対して治療指針を示してくれます。今年はその年に当たり、診断から治療までの流れや治療薬の分類など、リウマチ患者さんをどのように診ていくべきかについての新たな提言が相次ぎました。
 その中で、関節リウマチ診療における画像診断の重要性、特に関節エコーの有用性についての勧告が出され、信びょう性の高いデータと共に発表されました。それはイギリスの研究によるもので、関節エコーを使った診療と使わなかった診療では、確定診断がつくまでの期間に約1カ月、また、治療開始までの期間にも約1カ月の差が生じたとされています。関節リウマチ診療では、より早期の診断・治療によって関節の破壊と機能低下のない寛解状態へと導くことが求められます。関節エコーによる画像診断は、理学的所見などによる従来の診断や評価に比べ、早期に、正確に関節の炎症を検出し、治療開始の必要性を判断できるということが証明されたのです。
 別の勧告では、治療法の選択についてリウマチ医は患者さんと一緒になり考えていくように指導しています。患者さんにも一定の知識が必要であり、患者さん自身が積極的に治療に参加していくことが必要な時代になってきました。

早期診断・治療のための画像検査について教えてください。
 関節リウマチにおける画像診断の中心はX線とMRIによるものでしたが、これらの手法で判断できない炎症や血流の状態をリアルタイムに、そして時系列的に診断可能な検査が関節エコーです。怪しいと思われる関節に、聴診器のように関節エコーを当てると、炎症を起こしている箇所が、まるでメラメラと燃えているかのように画面に赤く映し出されます。診断だけでなく、薬の効果が出ているかなど治療経過を見るのにも生かせます。
 必要な時に必要な関節を気軽に検査できるという利点のほかに、患者さん自身にも炎症の状態が一目で分かるので、病状の理解に役立ち、リウマチを鎮めていこうという強い気持ちである“治療心”を高めることができるというメリットもあります。

2013年11月13日水曜日

心房細動


ゲスト/大野病院附属 はまや循環器クリニック 浜谷 秀宏 院長

心房細動とはどのような病気ですか。 
 心臓は心房と心室と呼ばれる部分から成り立ちます。正常な心拍は、まず心房が収縮し、それに引き続いて心室が収縮するということを繰り返しています。心房細動は心房が規則正しい収縮をせず、不規則に細かく震えるような状態になり、それに続く心室の収縮も早くなったり、遅くなったり不規則になる病気です。
 もともと心臓の働きが低下している人以外、心房細動自体では急に心臓が停止するなど生死に関わるということはめったにありません。ただし、やっかいなのは、心房の中に血の塊ができて、まれにそれが血流に乗って血管を流れ、体のどこかの血管に詰まってしまうケース(血栓塞栓症)があることです。もし脳の血管に詰まれば脳梗塞になってしまいます。心房細動の発症率は年齢とともに増加し、現在、日本での患者数は80万人以上いると推定されています。

心房細動の治療について教えてください。
 抗不整脈薬(不整脈を抑える薬)が有効なケースもありますが、多くの場合は再発する可能性が高いため、現在のところ心房細動自体を抑える治療よりも、血栓塞栓症を予防する治療を優先するのが、より重要で現実的と考えられています。
 血栓塞栓症の予防を目的として処方されるのが、抗凝固剤という血液が固まる(凝固)のを抑える薬です。昔から広く使われ、その有効性が実証されています。常に心房細動のある人、また時々心房細動になるという人にも有効です。
 抗凝固剤は効果の高い薬ですが、服用の際は注意すべき点がいくつかあります。定期的に血液検査を行って効き目を測り、服用量を適宜調整しなければなりません。また、服用中は納豆や青汁などビタミンKを含む食品の摂取を避ける必要があります。抗凝固剤と併用してはいけない薬も多く存在します。最近は、食品やほかの薬の影響を受けない新しい抗凝固薬も登場し、比較的年齢の若い、腎臓の働きが悪くない人を中心に使われるようになってきました。また、カテーテルという細い管を脚の付け根などの血管から挿入し、心房内の特定の部位を焼くことによって心房細動の発生を抑えるカテーテルアブレーションという治療方法もあり、近年は治療成績も向上しています。

2013年11月6日水曜日

うつ病からの職場復帰


ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 響 徹  診療部長

うつ病が増え続ける現在、休職中の人の職場復帰が大きな課題となっていますね。
 厚生労働省の調査によると、うつ病の患者数は2008年に約100万人を超え、いまだ減少の兆しが見えません。うつ病が原因の休職者も多くの職場で増加し、社会全体・組織全体としてのメンタルヘルス対策が必要となってきました。
 うつ病の治療のため休職をした人にとって気にかかるのが職場復帰です。多くの患者さんは早期の復職を希望しますが、いったん復職しても、遅れを取り戻さなくてはという焦りや、周囲に対する申し訳なさから無理をしてしまい、再発や休職を繰り返してしまうケースも目立ちます。
 うつ病は再発しやすい病気で、治るプロセスも一進一退で波があります。復帰した職場が、うつ病になる前と同じような状況で、同じようなストレスがある場合、再発の可能性が高くなります。一時的に症状が改善しても、主治医の指示に従って焦らずに適切な治療を続けること。その上で、本人と主治医、職場の上司や人事担当者を交えた面談(診察)の中でじっくり話し合い、復職の時期や復職後の働き方、職場環境の調整などについて考えていくことが大切です。

職場復帰へのポイントを教えてください。
 うつ病になりやすい人は、責任感が強く、無理をして頑張りがちです。前の自分に戻ろうとするのではなく、「無理をしない」「頑張りすぎない」という心の管理の仕方を覚えるのが大事です。
 職場の上司、同僚の協力と理解も不可欠です。休職者が無事に復職してきたときは、病気に配慮しつつも、特別視することなく、これまでと変わらない態度で温かく迎えてあげてください。また、一定期間は短時間勤務やフレックス勤務といった“慣らし出社”の時期を設けて、段階的にフルタイム勤務に近づけていくのがいいでしょう。うつ病と診断された部下、同僚とどのように接するか、職場としてどのように迎え入れるか、それは今や誰もが考えておくべき問題といえます。
 うつ病の治療、うつ病からの回復において、家族やパートナーなど身近な人たちのサポートは、患者さんにとって何よりも大きな支えになります。つらい気持ちを共感してあげること、そしてよく話を聞いてあげること。「決して一人じゃないんだよ」という気持ちが伝われば、必ず光明が見えてくるはずです。

2013年10月23日水曜日

糖尿病


ゲスト/やまうち内科クリニック 山内 雅夫 院長

糖尿病が怖いといわれるのはなぜですか。
 糖尿病の患者は推定で約890万人、予備軍も含めると約2210万人に上ります。そのうち90%以上が、すい臓から分泌されるインスリン量が低下するか、分泌されてもその作用が十分に働かない2型糖尿病です。
 糖尿病の多くは、ほとんど自覚症を現しません。ひどくなると、初めて「疲れやすい」「喉が異常にかわく」「多尿になった」などの症状を訴え、さまざまな合併症を引き起こします。糖尿病の怖さは糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害など全身に及ぶ合併症にあります。
 糖尿病網膜症は現在、年間4000人が失明する成人の失明原因の第2位です。糖尿病腎症が原因で腎不全に陥り、新たに人工透析治療を受ける患者は現在、年間1万6000人以上に達しています。また、手足にしびれや痛みの出る糖尿病神経障害は、患者にとって非常につらい合併症の一つです。さらに、糖尿病は全身の動脈硬化を早め、心疾患や脳梗塞、下肢動脈閉塞症など命に関わる病気を引き起こす大きな要因にもなります。

糖尿病の治療について教えてください。
 糖尿病の治療は、食事療法と運動療法が基本です。過食や運動不足といった悪習慣を改善しても血糖値を十分にコントロールできない場合、薬物療法が行われます。
 糖尿病の治療薬にはいくつか種類がありますが、2009年に登場したインクレチン関連薬によって治療が新たな段階を迎えました。インクレチン関連薬は、血糖値が高いときだけ作用して正常なときには働かないため、従来薬に比べ、低血糖を起こしにくく、体重増加がないという特徴があります。比較的早期から血糖値を安定させ、合併症の予防にも高い効果が期待されています。
 飲み薬では十分な血糖コントロールが得られない場合は、インスリン注射の出番となります。即効性のインスリン注射を毎食前に打ち、さらに一日中効果が持続する持効型のインスリン注射を1回打つ、1日計4回注射の強化療法が広く行われています。一方、以前は飲み薬の効果が低下してから始めていたインスリン注射を、早期に始める治療も広がってきました。最近では、飲み薬と併用して、持効型のインスリンを1日1回だけ注射する治療法も普及しています。インスリン治療を始める人には簡便で、最も受け入れやすい方法です。

2013年10月21日月曜日

子どもの矯正歯科治療に最適な開始


ゲスト/E-line矯正歯科 上野 拓郎 院長

子どもの矯正治療はいつから開始すればいいですか。
 他の先進諸国と比較して、日本人の歯並びに対する意識は低いといわれます。欧米では、子どもが矯正装置を付けているのは日常的な光景ですが、日本ではまだ矯正治療にネガティブなイメージを持っている人が少なくないようです。とはいえ、近年は歯並びやかみ合わせの重要性が徐々に理解され始め、「きれいな歯並びを」という親心で歯を矯正する子どもたちが増えているのは喜ばしいことです。
 「矯正はいつ始めればいいですか」と聞かれることがよくあります。矯正治療に年齢制限はありませんが、顎の骨が成長途中にある子どものうちに行うのがベストでしょう。成長する力を利用することで、正しくかめるように骨格を誘導し、スムーズに歯並びやかみ合わせを改善できるからです。将来の抜歯や手術を回避できる可能性も上がります。また、この時期の矯正治療は使用できる装置の選択肢が豊富で、それぞれの子どもに合った治療方法を選べるというメリットもあります。
 ただし、矯正治療の開始時期というのは、歯並びの現状、歯や骨の発育状況などによって変わってきます。まずは矯正歯科医で検査を受けることが第一歩です。

矯正歯科医で検査を受けるのに最適な時期はありますか。
 小学校の就学時、もしくは上下前歯が乳歯から永久歯に生え替わるタイミングで、一度矯正歯科医を受診し、歯並びやかみ合わせを点検することをお勧めします。この時期にかみ合わせを見ると将来の歯並びが予測できます。はっきりと外見から分かる症例だけでなく、一般の方の目にはほとんど分からない不正咬合(こうごう)の兆候も見ることができます。治療が必要かどうか、治療を始める時期はいつごろかなど、子どもの歯並びの現状と将来の見通しの説明を受けるチャンスと考え、気軽に相談してみてください。
 歯並びやかみ合わせが悪いと、よくかんで飲み込むという顎の機能がうまく育たない、発音が不明確になりやすいといった悪影響を及ぼします。呼吸や姿勢などの機能や全身の発育に影響するとの報告もあります。心理的にも口元の形の悪さがコンプレックスのもとにもなりかねません。子どもの口腔ケアには、保護者の協力が不可欠です。「子どもの将来の安心」につながることを理解いただき、歯と口の中のことも気に掛けてあげてください。

2013年10月9日水曜日

ストレス社会を生き抜くために


ゲスト/医療法人社団五稜会病院 千丈 雅徳 院長

ストレス社会を生き抜くために必要なことは何ですか。
 私たちが、ストレスあふれる現代社会を生き抜いていくために大切なのは「心の安全地帯」です。今日の出来事をみんなで一緒に喜び、あるいは泣いて、傷ついた心を癒し、スッキリとして、明日からまた新たな一歩を踏み出していけるような人間関係や場所。そんな「心の安全地帯」がどうしても必要です。
 誰もが皆、程度はさまざまですが、不安感を抱え、緊張感の中で生きています。しかし、それをそのまま受け取らないで、10倍にも100倍にも膨らませてしまう人もいます。また、現代社会では効率を重視するあまり、何事についても「早く、早く」とせかされる場面が多く、失敗は許されない、ペナルティーが待っているなどの不安をあおり立てられます。時間に追われると、焦ってしまい、冷静さを失い、できることにも手が付けられなくなります。不安が大きくなると、客観的に自分を見る力を失っていきます。
 「心の安全地帯」とは、不安感や強い緊張感に支配されても、いつでも逃げ込める場です。優しい言葉を掛けてくれる気心の知れた人がいて、ホッと一息つける場、痛みそうな心を癒やしてくれる場です。混乱した考えを整理することができ、「大丈夫、何とかなりそうだ」という気持ちにしてくれる場です。そして、世の荒波に立ち向かっていこうという勇気を与えてくれる場です。「頑張り過ぎない自分でいてもいいんだよ」と言ってもらえる「心の安全地帯」があってこそ、先の見えにくいこの社会の中でストレスを抱えながらも立っていることができるのです。
─「心の安全地帯」とは、具体的にはどのような人間関係や場所のことをいいますか。
 一言でいうなら、気の休まる人間関係や場所のことです。家族と一緒にいる時が最もリラックスできるという人もいれば、友人と遊んでいる時や一人で読書をしている時がストレスを発散できる、落ち着くという人もいるでしょう。また、自宅の居間、自分の部屋が一番癒やされると感じる人もいれば、お気に入りの喫茶店が一番ゆったりくつろげるという人もいます。
 「心の安全地帯」は、家族や友人、自宅や行きつけのお店以外でも、今日から、ここから広げていくことが可能です。例えばインターネットによるコミュニケーションもリスクは伴いますが、賢く利用することで、お互いの気持ちを受け止め合って、応援し合える仲間と出会うことができるかもしれません。
 ただし、「心の安全地帯」は特定の人やグループに限定しないことも大事です。いつも離れずにべったりとくっついている関係は、やがて息苦しいものになったり、予期せぬ負の感情(嫉妬やねたみ)が生じさせたりする可能性があるからです。また、あまりに多くの人と知り合って、かえって煩わしくなるのも考えものです。
 なかなか「心の安全地帯」を持てない場合は、心療内科や精神科でカウンセリングという形で行われる治療手段を利用するのも一案です。

2013年10月2日水曜日

バレット食道


ゲスト/琴似駅前内科クリニック 高柳 典弘 院長

バレット食道とはどのような病気ですか。
 食道は、体表の皮膚と類似した「扁平(へんぺい)上皮」という粘膜で覆われています。その扁平上皮の粘膜が、胃の粘膜に似た「円柱上皮」に置き換わった状態をバレット粘膜といい、その食道をバレット食道と呼んでいます。
 バレット食道は、食道腺がん(バレット腺がん)に移行すると考えられています。バレット粘膜からバレット腺がんへのがん化の原因は、円柱上皮への置換と遺伝子異常が関与しているとされますが、まだ十分には解明されていません。
 欧米では、食道がんの約半数はバレット食道から発生する腺がんであり、バレット食道は腺がんの発生母地(ぼち)として注目されています。日本では、食道がんの90%以上は扁平上皮から発生するがんなのですが、ライフスタイルの欧米化などにより、将来的にバレット腺がんの増加が危惧されています。
 欧米の定義によると、本来の食道胃接合部(食道壁と胃壁の境界部)から食道側への円柱上皮のはい上がりが3cm未満(ショートバレット食道:SSBE)と3cm以上(ロングバレット食道:LSBE)に分けて考えた場合、後者の方が食道がんの発生頻度が高いといわれています。欧米の報告ではLSBEが多くなっていますが、日本ではほとんどがSSBEで、LSBEまで進展する症例は少数です。

バレット食道の症状、治療について教えてください。
 症状としては、逆流性食道炎にみられる胸やけや苦い水が上がってくるなどを訴える人が多いのですが、まったく無症状の人も少なくありません。特にLSBEの症例では、酸逆流に対する知覚のメカニズムが荒廃している可能性があり、そのため無症状のままLSBEが継続し、がんが発生・進行して症状が出るまで気付かないというケースがあると推測されています。
 治療は、日本ではがんの発生頻度が低いことから、無治療あるいは酸分泌抑制薬の内服だけで経過を見ることが多くなっています。欧米では、発がん予防の観点からバレット食道に対する内視鏡的焼灼(しょうしゃく)術も試みられていますが、日本ではほとんど行われていません。
 近年の内視鏡技術の進歩により、極めて早期のがんを発見できるようになってきました。バレット食道と診断された場合、専門医を定期的に受診し(年1〜2回)、内視鏡検査を受けることをお勧めします。

2013年9月25日水曜日

小児の睡眠時無呼吸症候群(SAS)と顎(がく)変形症


ゲスト/つちだ矯正歯科クリニック 土田 康人 院長

小児の睡眠時無呼吸症候群(SAS)について教えてください。
 先日、全国ネットの情報番組でも取り上げられていましたが、夜中にいびきをかいたり息が止まったりしてぐっすり眠れないSASが、子どもの間で増えています。子どものSAS患者の割合は海外で1〜3%と報告されていますが、診断されずに治療を受けないでいる潜在患者は相当数に上るといわれ、国内でも治療全般についての普及啓発活動が活発化しています。
 SASは、睡眠時に呼吸が止まるなどして深い睡眠が得られず、日中に耐え難い睡魔に襲われます。国内では2003年に新幹線の居眠り運転による事故で注目されました。子どもの場合、成人に多い居眠りより、注意散漫や粗暴な行動などの症状が見られ、生育の遅れを引き起こす要因にもなるといわれています。
 子どものSASは、扁桃(へんとう)肥大・アデノイドを原因とする症例が大多数を占めます。そのため、耳鼻咽喉科での治療が主体となるケースが多いのですが、いびきの原因として、下顎が小さいまたは後退している(小顎症、下顎後退症)など顎変形症が認められる場合、矯正歯科での矯正治療を検討する症例もあります。

顎変形症の矯正治療について教えてください。
 顎変形症には、反対咬(こう)合(受け口)、上顎前突(出っ歯)、開咬(上下の歯がかんでいない状態)、顎偏位(顔や顎が曲がった状態)などがあります。その中でもSASに深く関わる小顎症や下顎後退症は、横顔を見ると顎の部分が奥に引っ込んでいるのが特徴です。下顎が後ろにあるため気道が狭くなっていることが、SASの発症につながると考えられています。症例によって、また専門医のアプローチによって治療はさまざまですが、下顎の骨を前方に移動させる治療が基本となります。変形が大きい場合、外科手術を行うこともあります。
 顎変形症の傾向がある人は、子どものうちに治療する方が良い結果を得られる場合が多いです。成人してからでは、抜歯や手術を要するような症例でも、骨が軟らかい成長途中の子どものうちに治すことで、より自然に症状を改善できるからです。
 子どもの小顎症や下顎後退症は、反対咬合や上顎前突と比べると気付きにくいため、そのまま放置されているケースが多いです。SASの危険性を避けるためにも、ぜひ一度専門医の診察を受けることをお勧めします。

2013年9月18日水曜日

「脳梗塞(こうそく)」について


ゲスト/コスモ脳神経外科 小林 康雄 院長

脳梗塞について教えてください。
 脳梗塞は虚血性の脳卒中で、脳の血管が血栓などによって詰まったり、動脈硬化によって血管が狭くなるなどして起こる疾患です。その背景となるのは基本的には、メタボリック症候群です。内臓脂肪が過剰になると、糖尿病や高血圧症、高脂血症といった生活習慣病を併発しやすく、動脈硬化が急速に進行します。
 脳梗塞の症状としては、半身不随、半身麻痺、しびれ、感覚の低下、手足の運動障害、意識障害、言語障害、昏睡などが挙げられます。突然起こる場合が多いのですが、場合によっては予兆となる症状があります。半身のしびれ、口のもつれなどで、このような症状が表れた場合は、迅速にかかりつけ医の指示をあおぐか、脳神経外科へ直行することをお薦めします。発症後3時間以内であれば、血栓や塞栓(そくせん)を溶かす薬を使って治療します。効果があれば、比較的後遺症が軽くすみます。投薬治療ができない場合は手術となりますが、この場合も治療までに要する時間が短いほど、後遺症を軽くすることができます。いかに迅速に治療を始めるかが、予後に大いに関係してきます。
 
脳梗塞を予防するにはどうすればいいですか。
 30代、40代で動脈硬化が始まりますから、会社などの健康診断でメタボリックシンドロームの兆候があれば、普段の生活習慣を見直しましょう。食事は塩分を控え日本食中心にし、適度な運動、禁煙、節酒を心掛ける。ストレスや寝不足などで疲労が蓄積しないように規則正しい生活を目指しましょう。
 また、健康診断で不安要素があったり、動脈硬化症の近親者がいる場合は、一度「脳ドック」を受けることをお薦めします。レントゲン検査で頭と首の健康状態を調べ、MRI(磁気共鳴画像装置)で脳の断層写真を撮り、MRA(磁気共鳴血管造影)で血管の狭窄(きょうさく)や閉塞(へいそく)部分・脳動脈瘤(りゅう)の発見、動脈硬化の程度などを調べます。健康保険の適用外になりますが、1~2時間程度で受けられます。脳梗塞は一度発症すると命にかかわり、後遺症の影響も大きい疾患です。自分の健康・生活を守るためにも、予防を心掛けましょう。

2013年9月11日水曜日

アルコール依存症


ゲスト/医療法人 耕仁会 札幌太田病院  太田 健介 院長

アルコール依存症について教えてください。
 飲酒のコントロールが効かなくなる病気です。健康を損ね、家庭生活や仕事に支障を来しても、お酒をやめることができません。国内にはアルコール依存症の疑いのある人が約440万人いると推計されています。
 アルコール依存症は薬物依存症の一種です。個人の人格や意志の弱さが原因ではありません。繰り返し飲酒することで、お酒に含まれるエチルアルコールという依存性の薬物に対して、脳の神経細胞に耐性が生じ、飲酒量をコントロールできなくなるのです。つまり、お酒を飲む人であれば誰でもかかる可能性のある病気です。
 依存症になると、飲酒を原因とする多種の合併症が生じます。例えば、高血圧、高脂血症、アルコール性肝障害、肝硬変、認知症などが挙げられます。アルコール依存症とうつ病の合併も頻度が高く、お酒に頼る生活が自殺のリスクを高めることも明らかになっています。
 依存症は中高年の男性に多い印象がありますが、若年層や女性の患者も増加しています。特に、未成年の飲酒は発達途上の脳への障害が大きく、ほんの数年で依存症になってしまう危険性があります。飲酒に対し規制が緩やかな日本社会では、中高生からの酒害教育を行っていく必要があるでしょう。

依存症の診断と治療、予防について教えてください。
 依存症の判断基準はいろいろありますが、代表的なものとして「価値観の逆転」があります。大切にしていた家族や仕事、自分の健康より飲酒を優先させる状態のことです。依存症になってしまったら、自分一人の力で抜け出すのは非常に困難で、適切な治療を受けない限り、徐々に悪化していくケースがほとんどです。
 治療には、断酒が必要です。節酒では駄目で、きっぱりやめるしかありません。薬物療法や認知行動療法、断酒会への参加により、断酒につなげていきます。ほかの病気と同じように、軽いうちに治療を始めれば、早期の回復が可能です。重要なのは、病気だと自覚し、正しい知識を得て、有効なやめ方を知ることです。
 依存症の一番の予防は、お酒と病気について正しく知ること。依存症は人生が破綻し、周囲を傷つける進行性の深刻な病気であると理解することが大切です。また、お酒の持つ負の側面を十分に認識し、お酒と安全に付き合っていくことが大切です。

2013年9月4日水曜日

非結核性抗酸菌症


ゲスト/白石内科クリニック 干野 英明 医師

非結核性抗酸菌症とはどのような病気ですか。
 抗酸菌は大きく二つに分けられます。一つが結核菌です。これは人から人に感染します。結核菌以外の抗酸菌は非結核性抗酸菌と呼ばれ、人から人に感染しないのが特徴です。
 非結核性抗酸菌は約150種類ほどあり、そのうち人間に感染するのは約20種類です。この菌は水の中や土壌に存在するので、日常的に接する機会は多いですが、毒性が弱いため、一般的には感染することは少ないです。しかし、免疫力が低下している場合などに感染すると、気管支に炎症を起こし、咳(せき)、痰(たん)、発熱などの症状が現れます。
 非結核性抗酸菌のうち、最も多くみられるのは全体の約70%を占めるアビウム・コンプレックス菌で、通称マックと呼ばれます。中高年の女性に発症するケースが多く、レントゲンでは肺の中・下肺野(かはいや)を中心に病変が発見されます。マックに次いで多いのが、若い男性への感染が増加しているカンサシ菌で、全体の約20%を占めます。
 現在の日本では、以前に猛威を振るった結核は減っていますが、非結核性抗酸菌症は増加傾向にあり、特にマック症は急増しています。

非結核性抗酸菌症の診断、治療について教えてください。
 非結核性抗酸菌症は、比較的毒性が弱く、感染しても数年単位でゆっくりと悪化していくことが多いため、初期段階には自覚症状がない場合があります。レントゲンを撮って初めて、この病気を指摘されることも珍しくありません。レントゲンやCT(コンピューター断層撮影装置)で肺に病変がみられ、喀痰(かくたん)検査で菌が検出されると確定診断となります。ただし、1回の検出では不十分で、2回以上繰り返して菌を見つけることが必要です。
 この病気は、治療なしでも進行しない場合があり、菌が検出されて診断がついても、経過観察した上で治療の開始を判断することがあります。治療開始の基準としては、排菌量が多い、肺に空洞病変がある、血痰などの自覚症状が強いケースなどが挙げられます。
 治療は、抗生剤のクラリスロマイシンと抗結核剤のエタンブトール、リファンピシンなどを併用する薬物療法が中心です。治療は1年〜数年間という長期にわたることが多いですが、中断せずに薬を服用することが大切です。病巣が狭い範囲内に限られている場合には、外科的に切除することもあります。

2013年8月28日水曜日

多焦点眼内レンズによる白内障治療(眼科領域の先進医療)


ゲスト/大橋眼科 大橋 勉 院長

白内障の眼内レンズについて教えてください。
 白内障は目のレンズに当たる水晶体が濁る病気です。治療には点眼薬が投与されますが、最終的には手術が必要で、濁った水晶体を摘出して人工眼内レンズに入れ替えます。
 日本で使われている眼内レンズの多くは、近く、あるいは遠くの1カ所に焦点を合わせた単焦点眼内レンズです。濁りがなくなるため、見やすく、視界が明るくなりますが、近くか、遠くにしかピントが合わず、メガネを手放すことができませんでした。それを解消しようと生まれたのが多焦点眼内レンズです。

多焦点眼内レンズとはどのようなものですか。
 1枚のレンズに遠距離、近距離の両方に焦点が合うように設計された眼内レンズです。自由にピントを変えることができる見え方とは異なりますが、遠くにも近くにもメガネなしで焦点が合いやすくなります。場合によってはメガネを必要とすることもありますが、頻繁に掛け外しをする煩わしさからは解放されます。術後は見え方に慣れるまで数カ月かかる人もいます。夜間の光をまぶしく感じたり、暗い場所ではくっきり感が落ちたりするなどの弱点もあり、全ての人に適しているわけではありません。
 多焦点眼内レンズは2007年に厚生労働省に認可され、08年に先進医療として承認されました。先進医療とは、厚生労働大臣が保険適用外の先端的な医療技術と保険診療との併用を、一定の条件を満たした施設のみに認める医療制度です。先進医療施設に認定された医療機関で、多焦点眼内レンズによる白内障治療を受ける場合、術前術後の診察などに保険が適用となります。また、民間の生命保険の先進医療特約の対象ともなり、先進医療に係る費用が全額給付されるケースもあります。
 近年、従来の眼内レンズでは矯正不可能であった乱視も、白内障手術と同時に治すことができるようになってきました。また、乱視矯正機能を持たせた多焦点眼内レンズも厚労省の認可を待っている状態です。従来の多焦点眼内レンズの弱点を改善し、見え方の質を向上させたオーダーメードの多焦点眼内レンズも登場しています。眼内レンズが進化し、白内障手術は患者さんのライフスタイルに合わせた治療の選択ができるようになり、視力の質をより一層重視する新しい時代に入ってきました。

2013年8月21日水曜日

精神疾患の薬物療法


ゲスト/医療法人社団 正心会 岡本病院 瀬川 隆之 医師

精神疾患の薬物療法について教えてください。 
 統合失調症やうつ病など心の病気には、脳内の神経伝達物質が大きく関わっています。薬物療法とは、その神経伝達物質の調整や改善を薬によって行う治療法です。精神科で専門的に使う薬には、抗うつ薬や抗不安薬、睡眠薬などさまざまな種類があり、それらを状態に応じて組み合わせて処方します。
 統合失調症や躁うつ病の治療では薬物療法が必要であり、カウンセリングなどの精神療法は補助的な役割を果たします。パニック障害や強迫性障害など神経症の治療でも、薬物療法と精神療法が併用されますが、症状によっては精神療法だけで治療を続けることもあります。
 精神科で処方される薬には、副作用が強い、依存性があるなどあまり良くない印象を抱いている人が多いかもしれません。しかし、それらの中には誤解も含まれています。眠気や口渇、便秘などの副作用がみられることもありますが、薬の種類や量を調節することで軽減できますし、医師の指示通りに飲む限り、中毒の危険性は低いといえます。
 医学の進歩に伴い、新しい薬も登場し、薬物療法の選択肢は広がっています。主治医とよく話し合い、できるだけ多くの情報を得て、十分に理解したうえで服用することが大事です。

薬物療法の注意点を教えてください。
 患者さんの症状を目安にして適切な薬を選択しますが、一人ひとりに合った薬の種類を決めるには、ある程度の試行錯誤が必要な場合もあります。また薬は、最初は少量から始め、効果と副作用のバランスを見ながら少しずつ量を増やしていきます。短時間型の睡眠薬など即効性のある薬もありますが、服用してから効果が現れるまでに数週間以上かかる薬もあります。すぐに「治らないのでは」と焦らずに、根気よく治療を続けていくことが肝心です。
 治療が長くなると、精神状態が一時的に安定した時に「もう薬を飲まなくても大丈夫」と自分で勝手に判断し、服用をやめてしまうケースがあります。薬は決められた量を、継続して服用することが重要で、服用をやめてしまうと、離脱症状が出現したり、病気が再発したりする原因にもなります。
 心の病気は、薬と継続通院による管理が大切。患者さん本人の努力はもちろんですが、治療を続けられるよう家庭や職場など周囲の人たちの協力も不可欠です。

2013年8月14日水曜日

子どもの歯科矯正治療


ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治 正光 院長

子どもの矯正治療について教えてください。
 お子さんの歯並びに矯正が必要かどうか迷われる人も多いと思います。歯並びを確かめる方法の一つとして、お子さんの口元を顔の正面から観察してみてください。上下の前歯の真ん中の位置が一致していれば安心ですが、ずれている場合は、矯正の必要があると考えられます。出っ歯や受け口など、上下の顎が前後に大き過ぎたり小さ過ぎたりという骨格的な問題は、一般の方でも気付きやすいのですが、左右のずれは発見しにくいものです。
 前後あるいは左右にずれが認められる場合は、顎骨(がっこつ)の成長コントロールが可能な9〜10歳までに行うのが理想的です。就寝時にバイオネーターと呼ばれる機能的顎(がく)矯正装置を装着し、寝ている間にずれた顎の骨を中央に移動させます。子どもの成長の力を利用して、無理なく自然にバランスのよい骨格をつくれます。痛みはほとんどなく、取り外しが可能で、日中は装着の必要がありません。ずれの程度にもよりますが、装着期間は半年〜1年が平均で、経過観察のための通院は、1〜3カ月に一度が目安となります。
 ずれの原因はさまざまですが、歯そのものがずれているケースもあり、永久歯がそろってからでも治療は可能です。その場合は抜歯する可能性が高くなりますが、きれいに治療できることが多いです。判断は非常に難しいので、一度専門医にご相談ください。

家庭でチェックするための別の方法はありますか。
 頬づえやかみ癖、就寝時の姿勢が左右どちらかに大幅に偏っている場合などは、左右のずれを引き起こす原因になることがあります。上下の前歯の位置を確認したら、次は鼻の先端を基準に、鼻の中央に前歯の中心が沿っているかを見てください。ずれの原因は一見して分かるものではなく、万が一、骨格のずれを歯のずれと勘違いして放っておくと、矯正に最適な成長時期を逃してしまうので注意が必要です。
 子どものうちの悪い歯並びやかみ合わせを放置していると、成長に伴い虫歯や歯周病の原因となったり、顎関節にも悪影響を及ぼす恐れがあります。また、大人になってから心理的なストレスの原因となる場合もあります。少しでもおかしいと感じたら、早めに専門医に相談することをお勧めします。歯科矯正は自由診療となりますので、費用についてもその際に問い合わせてみてください。

2013年8月7日水曜日

裂肛(れっこう)について


ゲスト/札幌いしやま病院 西尾 昭彦 院長

裂肛とはどのような病気ですか。
 痔(じ)のなかで裂肛(切れ痔)は女性に多い病気です。裂肛を引き起こす原因の多くは便秘で、硬い便や太い便を無理に出そうとすることによって肛門上皮(便が通過する部分の肛門の皮膚)が裂けてできます。症状は排便時の痛みが主で、出血はないか、あっても少量です。一度裂けた傷は排便の度に伸ばされるため治りにくく、痛みが続くようになります。痛みが嫌で排便を避けるようになると、便がますます硬くなり、症状を悪化させるという悪循環が生じます。
 裂肛の症状が進み慢性化すると、傷が深くえぐれて潰瘍化していきます。肛門ポリープと呼ばれる突起物ができたり、肛門が狭くなったりして、排便時の苦痛が増します。また、肛門の括約筋がけいれんを起こすことで、さらに痛みがひどくなる場合もあります。トイレの中で気が遠くなるという患者さんもいるほどです。

裂肛の治療について教えてください。
 裂肛の治療は、便を軟らかくして排便を楽にする内服薬や、排便時の痛みを抑えるための塗り薬、肛門に注入する座薬、軟こうなどの外用薬が中心です。市販薬もありますが、裂肛に合うもの合わないものがあるので、一度専門の医療機関を受診し、正しい診断の下で適した薬を処方してもらうべきでしょう。
 傷の治療を行いながら、生活習慣を改善して便通を整えることも裂肛治療では大切です。朝食をきちんと取る、水分や植物繊維を十分に取る、便意を我慢しない、適度な運動をするなど、便秘を防ぎ、硬すぎず軟らかすぎない“質の良い便”を出す生活を心掛けてください。半練り状の便で、息むことなく、すんなりと排便できる状態が理想です。
 傷が深い、肛門が狭いなどの慢性化した裂肛になると、薬などの保存治療では治らず、手術治療が必要になります。硬くなった肛門の括約筋を切開する手術が一般的ですが、当院では麻酔をした上で肛門に指を入れ、括約筋が正常な状態になるまでマッサージして引きのばす治療も行っています。その際、肛門ポリープがあれば、同時に切除します。入院の必要も、痛みもなく、短時間で治療できるというメリットがあります。
 恥ずかしさから受診をためらわれている方も多いようですが、治療により痛みのない快適な生活を取り戻せることをぜひ知ってほしいと思います。

2013年7月24日水曜日

COPD(慢性閉塞(へいそく)性肺疾患)


ゲスト/医療法人社団 大道内科・呼吸器科クリニック 大道 光秀 院長

2012年、厚生労働省が「健康日本21」で取り上げる病気の一つにCOPDを加えたそうですが。
 厚生労働省が国民の健康増進を図るための方針「健康日本21」が昨年改定され、重点疾患にCOPDが追加されました。長期間にわたる喫煙習慣が主な原因であることから、COPDは「肺の生活習慣病」とも呼ばれ、社会的にも大きな注目を集め、「健康日本21」で取り上げられたのです。COPDは日本での推定患者数が500万人以上であるのに対し、実際に治療を受けているのは約22万人。多くの人々がCOPDであることに気付いていない、あるいは正しく診断されていないことになります。COPDの特徴は細い気管支や肺胞が障害を受け、労作時の息切れ、せき、たんが出てきて、重症化すると息切れのため日常生活が出来なくなり、肺炎や心不全などの合併症で命に関わる病気です。自覚症状が現れにくく、気付かないうちにゆっくりと病状が進行し、病院を受診した時にはかなり悪化している場合が多いです。中高年での発症が多いため、階段の昇降などで息苦しさを感じても「年のせい」と思い込み、疾患発見が遅れたり、風邪をひいたときのみ症状が出て初めてCOPDを持っていることが分かる事が多いです。 

COPDの診断、治療について教えてください。
 問診や胸部写真のほか、1秒間で一気に吐き出せる空気の量を測る肺機能検査の結果から病気の確定診断を行います。 CT(コンピューター断層撮影)を使った精密検査も有用な検査です。
 現時点でCOPDを根本的に治し、肺を元の状態に戻す治療法はありません。最近、COPDの進行を遅らせ、症状も改善する吸入薬が次々と開発され早期から、治療することにより、病気の進行を抑えられるようになりました。肺機能の低下を遅らせ、患者さんの生活の質を高めることが治療の目的となります。症状の軽重にかかわらず、治療の基本は禁煙です。そして、気管支拡張薬など薬物療法により症状を和らげながら、残された肺機能の維持・増進を図ります。年齢を重ねるほど肺機能の低下は顕著になります。重要なのは、早期診断と適切な治療の継続です。喫煙歴が長く、風邪が長引いていると感じたり、体を動かしたときに息切れを感じたりしたら、呼吸器科で一度検査を受けるようにしてください。

2013年7月17日水曜日

関節リウマチの診断[関節エコー(超音波)検査]


ゲスト/北海道内科リウマチ科病院 深江 淳  医師

関節リウマチの診断について教えてください。
 関節リウマチは免疫の働きに異常が起き、関節をくるむ滑膜(かつまく)に炎症を発する病気です。進行すると骨の表面が削られたようになる「びらん」が起き、関節が破壊され、日常生活に支障を来すようになります。
 関節リウマチの診断は、関節の腫れや痛みを調べたり、血液検査やエックス線を併用したりして行われてきましたが、エックス線では炎症の状態をリアルタイムに確認できない場合が多く、患者さんが腫れや痛みを訴えても、炎症の程度の判断は医師によって分かれることもありました。
 関節リウマチの治療は、免疫を制御する抗リウマチ薬に加え、新しい治療薬である生物学的製剤の普及で飛躍的に向上し、早期診断・治療の重要性が一層増しています。これらを実現するためには、炎症をできるだけ正確に、客観的に評価し、治療開始の必要性を判断したり、治療効果を判定したりする必要があります。こうした背景で注目されているのが、関節エコー(超音波)検査です。

関節エコーとはどのような検査ですか。
 日本リウマチ学会が検査法の標準化に乗り出し、近年、急速に普及が進んでいる検査です。調べたい関節にエコーの器具を当て、画像で炎症や血流の状態を調べます。
 関節エコーの利点は、検査が簡便な上、従来の検査では検出が難しかった、診断上の有用な情報をリアルタイムで確認できることです。炎症が強いほど増える血流の程度を細かく把握できるので、炎症の小さな変化も逃さず捉えることができます。診断だけでなく、薬の効果が出ているかなど治療経過を見るのにも生かせます。
 エックス線のように放射線による被ばくの心配がなく、滑膜の炎症を評価する上で有効なMRI(磁気共鳴画像装置)と比べ費用が割安で、患者さんの負担が少ない検査といえます。また、炎症を起こしている部位が、画像に赤く映し出されるので、患者さんは自分の炎症の状態をイメージしやすく、病状の理解にも役立ちます。
 治療の進歩により、関節リウマチは症状が落ち着き進行しない「寛解」を目指すことも可能になりました。病状を上手にコントロールするために重要なのは、一日でも早く治療を始めることです。気になる症状があれば、すぐに専門医の診察を受けましょう。

2013年7月9日火曜日

パニック障害


ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 吉住 寿美香 診療部長

パニック障害はどのような病気ですか。
 パニック障害とは、突然、理由も無く強い不安に襲われ、動悸(どうき)や震え、目まい、息苦しさといった体の症状も伴う「パニック発作」を繰り返す疾患です。
 「今にも死んでしまうのではないか」と思うほどの強い恐怖感を伴うこともあり、救急車で病院を訪れる方もおられますが、数分から一時間くらいで症状は自然におさまります。心臓や呼吸器の疾患ではと心配され内科を受診される方も多いのですが、詳しい検査を受けても異常は指摘されません。けれども何日かしてまた繰り返すのが特徴です。決して珍しい疾患ではなく、100人に1〜2人の割合で発症すると言われています。また比較的女性に多い疾患でもあります。
 患者さまにとって大変なのは「また発作が起こるのでは」「起こったらどうしよう」と極度に恐れてしまう「予期不安」です。予期不安が強くなると、パニック発作が起こりそうな状況や、起こった際に逃げ場の無い場所を避けるようになり、学業や仕事といった社会生活に支障が生じたり、家に引きこもりがちになる方もおられます。
 パニック障害は決して気持ちの持ちようでどうにかなるものではなく、脳内の不安や恐怖に関与する神経系の‘誤作動’によって起こります。ですから、迷わず専門医の下でしっかりとした治療を受けることが大切です。

パニック障害の治療について教えてください。
 治療は大きく二段階に分かれます。第一段階は薬物療法です。発作に有効な薬がありますので、まずはそれを服用しパニック発作を抑えていきます。「薬さえ飲んでおけば発作は出ない」という状態を作ることが出来たら、第二段階の認知行動療法に移ります。これまで不安や恐怖のために制限していた行動を少しずつ再開し、慣れていくのです。症状が出たときの対処法も学びつつ、今まで避けていた状況でも安心できるという自信を積み重ねます。自信が強まっていくにつれ、不安も消えていきます。勇気を必要とする段階ですが治療効果も実証されており、薬物療法との併用で再発率も低いことが分かっています。
 数ヶ月ほどで安定してくる人もいれば、何年かかけ少しずつ発作が遠のいていく人もいます。症状は楽になるケースが多いので、病気の内容をよく知り、じっくり治療に取り組む姿勢が大切です。周囲の方にも同様の理解をお願いしたいと思います。

2013年7月3日水曜日

隠れ脳梗塞


ゲスト/西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 医師

隠れ脳梗塞(無症候性脳梗塞)について教えてください。
 脳ドックを受けたり、けがで脳の検査をしたときに医師から、脳梗塞があると言われてドキっとした。というような経験をされた方も多いのではないでしょうか。俗に「隠れ脳梗塞」というように、自分には思い当たるような症状がないのにもかかわらず、検査時に偶然見つかる脳梗塞をそう呼びます(正しくは無症候性脳梗塞と言います)。
 脳梗塞と聞かされると、驚いてしまいますが、即、大きな発作につながることは少ないと考えられますので、必要以上に不安になる必要はありません。検査の際に、医師の説明が十分でないために不安が増している場合が多いので、われわれも気を付けなくてはいけません。隠れ脳梗塞がありますよと言われた場合には、ご自身の持病や生活習慣等を見直すためのきっかけにしていただくのが得策ではないでしょうか。こういった機会に禁煙を決断される方もいらっしゃいます。
 差し迫った危険はないのですが、そう言われて何も手を打たずに放っておいてもよいかというと、そういうわけではありません。無症候性脳梗塞の方は、健常者に比べると脳梗塞や脳出血、あるいは認知症になる危険がやや高いことが分かっています。また非常にわずかながら脳にダメージを与えているのではないかとする説もあります。つまり自分が他の人より脳梗塞を発症するリスクが高いことを自覚して、その予防に役立てる事が大切です。
 だからといって、慌ててすぐに脳梗塞再発予防の薬を飲む必要性はありません。まずやるべきことは、脳梗塞の危険因子のチェックが必要です。脳梗塞の発症に一番関係があるのが高血圧の存在です。高血圧があればその後しっかり血圧を管理していくことがとても大切です。そのほかの危険因子では喫煙や糖尿病、脂質異常症などがあります。それぞれ医師の指導のもと適切に管理していく必要があります。
 脳神経外科の専門医では、さらに頸動脈の動脈硬化のチェックや脳血管のチェック等を行って、リスクの高い方には内服薬を処方する場合もありますし、再発予防のための手術が行われる場合もあります。

2013年6月26日水曜日

ぜんそく・COPD(慢性閉塞性肺疾患)のオーバーラップ症候群


ゲスト/医大前南4条内科  田中 裕士 院長

ぜんそく・COPDのオーバーラップ症候群とはどのような病気ですか。
 気管や気管支に慢性的な炎症が起きて狭くなり、呼吸が苦しくなるぜんそく。たばこなどが原因で発症し、ひどい息切れやせきが続くCOPD(慢性閉塞性肺疾患)。オーバーラップ症候群とは、ぜんそくとCOPDが同時に同じ患者で起こっている状態を表します。今年、4年ぶりに改訂された日本呼吸器学会の「COPD診断と治療のためのガイドライン」にもオーバーラップ症候群に関しての内容が盛り込まれるなど、その特徴や治療法への関心が高まっています。
 オーバーラップ症候群では、ぜんそくを合併しないCOPDに比べて重症で、呼吸機能の低下が早まるほか、急速に悪化して呼吸困難に陥る「増悪」と呼ばれる現象が起こりやすく、死の危険も高まります。また予後やQOL(生活の質)にも悪影響を及ぼします。
 COPD、ぜんそくいずれも日本での罹患(りかん)数は500万人とも推定される疾患で、COPDの死亡数は年々増加の一途をたどり、ぜんそくによる死亡者の多くは高齢者です。厚労省の調査では、高齢のぜんそく患者の約25%はCOPDを合併していると報告され、また米国と英国の大規模な疫学研究からは50歳以上のCOPD患者は約半数がオーバーラップ症候群に当てはまると示されています。
 ぜんそく、またはCOPDと診断されていても、二つの疾患が重なり合っていることが見落とされているケースも考えられます。同じ治療のままで症状が改善しない場合や、悪化する場合は、オーバーラップ症候群の可能性を疑ってみることも必要です。

オーバーラップ症候群の検査、治療について教えてください。
 オーバーラップ症候群の診断には、ぜんそくとCOPD両方の検査を受ける必要があります。喘鳴(ぜんめい、呼吸時に「ゼイゼイ」「ヒューヒュー」すること)や呼吸困難があるかどうかといった問診に加えて、アレルギーの検査、気管の炎症状態を調べる検査、気道の過敏さを測定する検査、呼気中の一酸化炭素濃度を調べる検査、肺に吸い込まれる空気の量(肺活量)と1秒間に吐き出される量を調べる検査などが行われます。
 治療の基本はまず禁煙。次にぜんそくへの対応を優先し、気道の炎症を抑えて発作を起こさないようにする薬物療法が中心となります。炎症を抑えるステロイドと、発作で狭くなった気管支を広げる気管支拡張薬の配合剤などが使われます。COPDに対しては抗コリン剤と気管支拡張薬を用います。患者の改善度が横ばいになるまでは、複数の薬剤で積極的に治療するということです。そして、安定期に入るとそれぞれの薬剤を減量します。
 きちんと診断して、的確な治療をすれば、確実に症状を抑えられます。特に注意したいのは、喫煙歴のある高齢者やぜんそくの喫煙者。高齢者は呼吸機能が弱っており、ぜんそくやCOPDが重症化しやすいので、「気のせい」「年のせい」と見過ごさないで、肺の機能診断などを定期的に受けるようにしましょう。

2013年6月18日火曜日

虫歯の予防法


ゲスト/内山デンタルクリニック 内山 孝英  院長

どうして虫歯になるのですか。
 「何度治しても虫歯になってしまう」「私は歯が弱いから…」と嘆く人は多いと思います。誰でも虫歯の治療は嫌なものでしょうが、治療を受けるだけでは、なりやすい人はまた虫歯になってしまいます。
 その理由は、虫歯という病気の特殊性にあります。虫歯は「虫歯菌(ミュータンス連鎖球菌)」が起こす細菌感染症なのです。口の中には400種類以上の細菌がすみついており、歯の表面にできる「歯垢(プラーク)」1㌘には、数億個の細菌が存在しています。虫歯になりやすい人の口の中には、そうでない人に比べて虫歯菌の数が桁違いに多く存在するのです。
 虫歯菌は、砂糖という餌から「グルカン」というネバネバした物質を作り出し、歯の表面にへばりつきます。これは水には溶けないので、うがいでは除去できません。次第に歯の表面に分厚い膜(バイオフィルム)が作られていきます。
 バイオフィルム中の虫歯菌は、私たちが飲食する砂糖の糖分を吸収してエネルギーを獲得し、乳酸などの強い「酸」を放出します。バイオフィルムが育ってくると、酸はバイオフィルムの中に残り、歯の表層のエナメル質を溶かし始めます(脱灰)。これが虫歯の始まりです。つまり砂糖を多く摂取すると、虫歯菌数が増えて、歯が溶けやすくなるのです。ブラッシングなどによって早期にバイオフィルムを除去できれば、唾液の力などでエナメル質を修復(再石灰化)できますが、酸性状態が続くと再石灰化が間に合わず、虫歯へと向かっていきます。また、内服薬の副作用などで唾液の分泌が少ない人は、極めて虫歯になりやすくなります。

虫歯を予防する方法はありますか。
 虫歯を予防するには、砂糖の摂取を控えること、ブラッシングなどで歯の表面のバイオフィルムを除去することが2大原則です。加えて、フッ素などにより歯質を強化し、糖分摂取の時間をコントロールすることで、ほぼ確実に予防することができます。虫歯は私たちの普段の生活習慣に深く関係がある病気なのです。
 また、「キシリトール」は優れた代用甘味料で、甘さは砂糖に匹敵しますが、摂取しても虫歯菌に酸を作らせません。キシリトールを習慣的に摂取することで、口の中の虫歯菌数を減少させることが知られています。

2013年6月12日水曜日

最新の糖尿病治療薬


ゲスト/医療法人社団 青木内科クリニック 青木 伸 院長

最新の糖尿病治療薬について教えてください。
 糖尿病治療薬の最近の進歩は目覚ましいものがあります。飲み薬では、高血糖の時にだけすい臓からインスリンを分泌させ、正常血糖へ下げる「DPP-4阻害薬」があります。この薬は理論的には低血糖を起こさず治療できる新薬で、糖尿病の平均血糖の指標であるHbA1c値を1.0%前後下げます。この薬と同じ系統の注射薬も登場し、「GLP−1受容体作動薬」と呼ばれています。この注射薬はHbA1c値を1.6%前後下げます。現在は1日1回の注射が必要ですが、将来的には1週間に1回で済む注射薬も出る予定です。この系統の注射薬は、すい臓のインスリンを出す細胞を保護し、インスリンの分泌を弱らせない作用も持ち合わせているといわれています。
 一方、インスリン注射薬に目を向けると、「持効型インスリン(1回の注射で24時間効果を持続する長時間作用型インスリン)」があります。飲み薬の治療が効かなくなる症例でも、飲み薬をそのまま服用しながら、1日1回の持効型インスリンの注射を加えると血糖が改善する症例もあります。「混合型インスリン」は、持続型インスリンと超速攻型インスリンの合剤ですが、超速攻型インスリンの含有率が50〜70%の製剤が最近使用できるようになりました。食後血糖の高い症例を治療するのに便利なインスリンです。

糖尿病の治療について教えてください。
 糖尿病の治療が良好といえる目安はHbA1cが6.9%以下になっている場合です。糖尿病の患者さんの約半数が高血圧と脂質異常症(高脂血症)を合併しているといわれています。糖尿病を合併した高血圧の治療はとても重要で、血圧の治療目標値は130/80mmHg以下です。自宅で簡易血圧測定器を使用して治療に役立てる方法もあります。この場合使用する測定器は、指先や手首に巻くタイプのものではなく、上腕に巻くタイプのものをお勧めします。脂質異常症の治療目標値は、LDL-コレステロール(悪玉コレステロール)が120mg/dl以下です。以上のようなさまざまな基準値を長期間保てば、眼底出血(失明)、腎臓の悪化(透析)、足の潰瘍・壊疽(えそ)による足の切断など糖尿病に由来する重症の合併症にならなくて済みます。それ以外にも脳梗塞(こうそく)、心筋梗塞などの予防にもつながります。

2013年6月5日水曜日

手のしびれ


ゲスト/札幌宮の沢脳神経外科病院 村上 友宏 医師

―手のしびれの原因にはどのようなものがありますか。
 しびれは、血液の流れが滞っていたり、神経がどこかで圧迫されていたり、神経自体が傷ついたりするときなどに起こります。その原因は大きく分けて二種類あります。
 一つは脊髄や神経根の障害です。代表的な病気として頸椎(けいつい)症や頸椎椎間板ヘルニアがあります。頸椎症は首の骨(頸椎)の一部に骨棘(こつきょく)と呼ばれる突起が生じ、頸椎椎間板ヘルニアは骨と骨の間にあるクッションのような柔らかい組織が飛び出し、それが脊髄や、手に分布する神経を圧迫するために手のしびれ、脱力が生じてきます。頭を前や後ろに反らすとしびれが強くなることがあります。
 もう一つは末梢(まっしょう)神経の異常で、その神経の支配している範囲がしびれます。代表的なのは、中年以降の女性に多い手根管症候群です。これは、正中(せいちゅう)神経が手首の関節の使い過ぎによる靭帯(じんたい)の肥厚や炎症により圧迫されておこります。
 このほか、脳梗塞などの脳の病変(特に、視床)や血流障害、糖尿病のような全身性の病気など、さまざまな原因で手がしびれます。

―頸椎症について詳しく教えてください。
 首は重い頭を支えており、動きもダイナミックです。そのため負担も大きく、これが骨棘(こつきょく)のできる原因であると考えられています。従って、高齢者に多いのが特徴で、ひどくなるとピリピリしたしびれからビリビリした痛みに変わったりします。進行すると、腕や指の動きも悪くなり、足がしびれたり歩きにくくなったりします。
 頸椎症は、頸部のエックス線で診断可能です。他にもコンピューター断層撮影(CT)、磁気共鳴画像装置(MRI)検査を行って脊髄や神経の圧迫の程度などを知ることができます。
 初期の治療は、神経やその周囲の炎症や痛みを抑える薬、筋肉を柔らかくする薬を服用して、症状を緩和します。首を固定するネックカラー(腰でいう、コルセット)をする場合もあります。腕の力がない、細かい指の動きができない、歩きにくい、排尿しにくいといった場合では、手術が必要になることがあります。
 頸椎症は、治療を行わなくても症状が軽減することもあり、「軽いしびれだから」と我慢している人も多いようですが、日常生活に不便を感じるようになったときはすぐに病院に相談してください。早期に治療すれば回復も早くなります。

2013年5月8日水曜日

ストレスと自律神経


ゲスト/つちだ消化器循環器内科 土田 敏之 院長

ストレスと自律神経の関係について教えてください。
 仕事や家事が立て込んで気分が重くなったり、地域や職場での人間関係に悩まされたり…。現代社会はストレス社会であり、私たちは、毎日いろいろなストレスを感じて暮らしています。育児や老後の不安、家計の心配、突然の離職や失業、家族や親しい人の死や病気など、身体的・精神的ストレスの原因は人によって千差万別です。一般的に自分を抑えがちな人、小さい事をいつまでも気にしてしまう人、短気で好戦的な人などは、ストレスをため込みやすいといわれています。
 ストレスが大きくなると自律神経がうまく働かなくなります。自律神経は交感神経と副交感神経という二種類の神経が、補い合いながら働いて、健康を保つのに必要な心臓や呼吸などの働きを調節する神経です。自律神経は体の隅々まで張り巡らされているので、何らかのストレスで自律神経のバランスが崩れると、心身に多様な異常をもたらします。ストレス太り、高血圧、不眠症、胃炎、食欲が出ない、疲れが抜けない、下痢や便秘、体のかゆみ、口が渇く、体調不良、肩凝り、口内炎、イライラする、胸が苦しい、発汗、手足がほてるまたは冷たくなるなど、症状は実にさまざまです。

ストレスを解消するにはどうすればいいですか。
 ストレスを発散し、ため込まない工夫としては、例えば、ゴルフやテニスなどの運動で汗を流す、ショッピングやドライブ、料理、習い事などの趣味を楽しむ、自宅ではラフな格好に着替え、靴下をぬぎ、入浴はぬるいお湯にゆっくりと漬かる、就寝前に適量のお酒を飲むなどが推奨されます。クラシックやバラードなど“癒やし系”の音楽を聞いたり、友人と長電話でおしゃべりをしたりするのもいい気分転換になりそうです。旅行の計画を立てる、趣味のサークルに参加し交流を楽しむ、お笑い番組を見て思いっ切り笑うなど、自分流のストレス対処法を見つけることも大切です。
 それでも体調が回復しない場合は、病院の受診を考える必要があります。重症化すると、うつ病や社会不安障害、周囲とうまく交われない適応障害、体に症状が出る心身症、突然動悸(どうき)や息苦しさに襲われるパニック障害といった別の病気へと進行し、社会生活に支障を来してしまう可能性もあるので、早めに適切な治療を受けることが大事です。

2013年5月1日水曜日

歯科でのマウスピース治療


ゲスト/医療法人社団アスクトース 石丸歯科診療所 近藤 誉一郎院長

歯科でのマウスピースによる治療にはどのようなものがありますか。
 歯科医が作るマウスピースには、歯ぎしりの強い人に使用するナイトガードや顎(がく)関節症の治療で用いられるスプリント、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療で使われるスリープスプリントなどがあります。
 夜眠っている間に歯をギシギシとこすり合わせたり、ギュウギュウとかみしめたり、カチカチとかみ合わせたりする歯ぎしり。自覚がないことが多く、歯のすり減り方が極端に激しいなど、歯科医から指摘を受けて発覚するケースが目立ちます。
 歯ぎしりは、周りで寝ている人に迷惑なだけでなく、歯のかむ面がすり減ってしまうため、冷たい物が歯にしみたり、顎の関節に痛みが出たり、頭痛を引き起こしたりするなど、いろいろな症状の原因となります。また、歯ぎしりしているときは強い力が働き、歯を支える骨などにダメージを与えるため、虫歯や歯周病の進行を速めます。
 夜間、かみ合わせのバランスを整えたナイトガードで歯全体を覆うことで、歯や歯周組織、顎の関節などを歯ぎしりの強い力から守ります。

スプリント、スリープスプリントを使った治療について教えてください。
 顎関節症は、口を大きく開けられない、顎を動かしたときに音が鳴る、顎の関節や筋肉が痛いなどの症状が出る病気です。何らかの原因で、顎関節や周囲の靭帯(じんたい)、筋肉に過剰な負担が掛かって起こります。顎関節症に対するスプリント治療は、マウスピースを歯の上にかぶせることで顎の関節や筋肉の負担を軽減します。
 SASは、睡眠中に何度も呼吸が止まることで、日常生活にさまざまな問題を引き起こす病気。眠っているときに空気の通り道が狭くなり、いびきや無呼吸が起きます。日中の眠気やだるさ、集中力の低下などの症状があるなら要注意。一度詳しく検査することをお勧めします。治療はスリープスプリントを使って下顎を前方に数ミリ程度突き出させて、睡眠中に気道が狭まったり、ふさがったりするのを防ぎます。ただし、スリープスプリントを製作するには睡眠専門外来の医師による診断書が必要となります。
 虫歯が多い、重度の歯周病にかかっている、総入れ歯を使っている人などはマウスピースの製作が困難な場合もありますので、日々の歯のメンテナンスをきちんと行うことが何よりも大切です。

2013年4月24日水曜日

緑内障と近視


ゲスト/札幌エルプラザ 阿部眼科 阿部 法夫 院長

緑内障と近視の関係について教えてください。
 眼圧の上昇などに伴う視神経障害により、視野が狭くなる緑内障。その多くは痛みがなく、症状もゆっくりと進んでいくため異変に気付きにくいのが特徴です。40歳以上では17人に1人、70歳以上では10人に1人が発症し、中途失明の原因のトップにもなっています。今後、高齢化が進んでいくと、患者さんの数はさらに増えると予想されます。
 近視があると緑内障発症のリスクが2〜3倍になることが以前から知られていましたが、近年、緑内障と近視の関係が注目されるようになり、緑内障の危険因子が加齢、眼圧と近視であることが疫学調査でも明らかになってきました。
 近視は近くが見やすく遠くが見えにくい状態です。成人の眼球は直径約24ミリですが、近視が強い場合、目の前後の長さ(眼軸長)が延長し、約27〜30ミリとなります。眼軸長が長くなることで、視神経が集中する視神経乳頭が変形し、血液が流れにくくなることなどが緑内障の原因につながっていると考えられています。また、近視眼は眼圧に弱い構造であるとのデータも得られつつあります。

緑内障の診断と治療について教えてください。
 緑内障の検査には、眼球の内圧を測る眼圧検査、視神経の異常の有無を調べる眼底検査、視野に欠けている部分がないかを確認する視野検査があります。さらに、眼球の前方及び後方の断層画像を撮影できる検査機器「OCT(光干渉断層計)」を使い、緑内障の有無やその進行を調べるのが一般的です。
 近視眼緑内障では近視性視神経症、緑内障性視神経症との判別をしながら総合的な診断が必要になります。特に強度近視眼緑内障の場合は、OCTの画像解析が困難で、早期診断の難しさが指摘されています。
 治療は、点眼薬などで眼圧を下げて、症状の進行を食い止めることが主流となっています。最近よく「レーシック治療」と「IPS細胞」について質問されますが、レーシックは近視の治療であり、緑内障の治療にはなりません。また、IPS細胞を用いた網膜の再生治療ですが、実用化されるのはまだ先のことです。
 成人の眼科受診率は低く、中には一度も受診したことがない人もいるようです。40歳を過ぎたら自覚症状がなくても一度は、眼科で検診を受けることをお勧めします。

2013年4月17日水曜日

骨粗鬆症


ゲスト/札幌駅前アップルレディースクリニック 工藤 正史 院長

骨粗鬆(しょう)症について教えてください。
 「骨が折れやすくなる」「骨がスカスカになる」という骨粗鬆症は、日本では男女合わせて約1300万人ほどになっています。骨が折れやすくなった場合、くしゃみやせきをしただけでも、あばら骨が折れたりすることもあります。昔は高齢になると骨がもろくなり折れやすくなるのは当たり前と考えられてきましたが、現在では生存期間の延長だけでなく生活の質の維持向上が求められます。従って骨折の予防は重要で、骨粗鬆症治療の意義はここにあります。
 女性は閉経に伴う女性ホルモンの低下を契機に骨量が急激に減少します。女性の発症率は男性に比べ3~4倍も高くなっています。骨粗鬆症は痛みなどの自覚症状がありませんので定期的な検査が重要です。特に閉経後や、卵巣機能不全のある方、腰痛を訴える方、骨粗鬆症の家族歴のある方、やせている方、副腎皮質ステロイド内服、甲状腺機能異常のある方は積極的な骨密度測定が必要です。最小限必要な血液検査は血清カルシウム、リン、アルカリフォスファターゼです。
 骨粗鬆症の診断は数種類ありますが、DXA法(デキサ法)による腰椎と大腿骨頸部(けいぶ)の骨密度測定が重要です。X線で脆弱性骨折(小さな外力によって発生する骨折)があれば骨粗鬆症、骨折がなくても骨密度が若年女性平均(YAM)の70%未満なら骨粗鬆症、70~80%なら骨量減少となります。
 骨粗鬆症と診断された場合は、薬物治療にて骨量低下を防止し骨折を予防します。さらに生活習慣や食事療法含めたライフスタイルの改善が必要です。1日800mgを目標にカルシウムを摂取しましょう。タバコやアルコールなどの多量摂取や高塩分食などは避けましょう。適度な運動の継続は骨量低下や骨折の防止に対しては有効で、散歩や水泳、体操などで背筋の強化運動もお勧めです。
 若い人も骨粗鬆症にならないために骨量をしっかり蓄積することが大切です。女性の骨量は20歳頃に最大値となり、その後40歳頃まではほぼ一定ですが、その後は徐々に減少するからです。成長期の方も無理なダイエットを避けバランスのよい食事と運動、いつの時代も大切なことは一緒です。
 転んで手をついただけで骨折にならないようしっかりと予防して下さい。

2013年4月10日水曜日

大腸がん


ゲスト/やまうち内科クリニック 山内 雅夫 院長

大腸がんが増えていると聞きましたが。
 厚生労働省の調査によると、日本の大腸がん患者はこの50年間で男性は約7倍、女性は約6倍に増加しています。2003年以降は、女性のがん死亡原因の第1位ともなっています。大腸がんは今後ますます増え、15年には胃がんと肺がんを抜き、部位別のがん死亡率でも首位になるのではないかと懸念されています。
 これまで欧米に多かった大腸がんが、日本でも増加した原因としては、食生活の欧米化により、動物性脂肪の摂取が増えたことなど、生活習慣の比重が大きいと考えられています。
 大腸の壁は内側から粘膜層、粘膜下層、固有筋層、漿膜(しょうまく)に分かれます。がんは粘膜層で発生し、粘膜下層、固有筋層へと広がっていきますが、粘膜層にとどまるがんならほぼ100%治ります。また、進行したがんでも手術が可能な時期であれば、他臓器への転移が見られても完治の可能性があります。
 大腸がんの初期はほとんど自覚症状がなく、発見されにくいですが、胃がんや食道がんなど他の消化器がんと比べて進行が遅く、転移も少ないので、定期検査による早期発見が非常に有効ながんだといえます。

大腸がんの検査と治療について教えてください。
 代表的なのは健康診断などで行われる、便潜血検査です。肉眼では見えない出血も、この検査で分かります。陽性と判断されたら、バリウム検査(注腸造影検査)や大腸内視鏡検査を行います。近年は精度の高い内視鏡検査が主流となっています。検査器具も技術も進歩しているので、以前に比べ苦痛が軽減されてきています。症状の有無によらず、定期的な便潜血検査、内視鏡検査をお勧めします。
 治療は、内視鏡治療、外科治療(手術)、抗がん剤を使った化学治療などがあります。粘膜層にとどまる早期の大腸がんであれば、内視鏡による切除で治すことができます。内視鏡の先端に専用の器具を取り付け、がんを切り取ります。粘膜層を越えて広がったがんが見つかった場合は外科治療となります。一般的な開腹手術以外に、最近では腹腔(ふくくう)鏡を使ってカメラが映す画像を見ながら、手術器具を操作する腹腔鏡下手術が増えています。この手術は腹部の傷が小さいため、患者さんの体の負担が少なく、術後も傷が目立たないという利点があります。

2013年4月3日水曜日

ヘリコバクターピロリ菌(ピロリ菌)


ゲスト/佐野内科医院 佐野 公昭 院長

ピロリ菌について教えてください。
 ヘリコバクターピロリ菌(ピロリ菌)は胃の中にいる細菌です。1983年にオーストラリアの医師であるウォレンとマーシャルによって発見されました。彼らはこの功績により2005年にノーベル賞を受賞しています。
 胃には強い胃酸があるため、通常の菌は生息できません。しかし、ピロリ菌は特殊な酵素を利用し、周辺の胃酸を中和することによって身を守っています。
 日本では約3500万人がピロリ菌に感染していると推定されています。ピロリ菌の感染率は衛生環境と相関すると指摘され、若い世代の感染率は急速に低下しています。ピロリ菌の感染経路はまだはっきり解明されていませんが、経口感染が主な経路と考えられています。
 ピロリ菌に感染すると胃に炎症を起こして慢性(萎縮性)胃炎となったり、胃・十二指腸潰瘍を繰り返したりします。また、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病などの病気や胃がんの発生にも関係していることが分かってきました。

ピロリ菌の除菌について教えてください。
 ピロリ菌の除菌に関するガイドラインでは、ピロリ菌関連疾患の治療のため、全ての感染者に除菌を勧めています。除菌により潰瘍の症状の改善や再発の予防、胃がんの予防に効果が期待されているからです。
 除菌が保険適用となるのは、胃・十二指腸潰瘍などの病気にかかっている場合に限られますが、新たに「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎」でも除菌できるようになりました。ピロリ菌に感染していること、内視鏡検査により慢性胃炎の所見があることの両方を確認することが条件になります。
 除菌は胃酸の分泌を抑える薬と二種類の抗生物質を、朝と夕の一日二回、一週間続けて服用して行います(一次除菌)。下痢や味覚異常などの副作用が出る場合もありますが、軽微なものがほとんどです。この方法で約80%の人が除菌に成功します。失敗した場合には抗生物質の種類を変えてもう一度治療(二次除菌)します。どちらも治療して4週間以上の期間をあけて除菌が成功したかどうかを確かめるための検査を行います。
 なお除菌に成功すると胃がんになる危険性は減りますが、リスクがゼロになるわけではありません。早期のがんが見つかることもありますので除菌後も定期的な検査は受けた方がよいでしょう。

2013年3月27日水曜日

適応障害


ゲスト/医療法人社団五稜会病院 千丈 雅徳 院長

適応障害について教えてください。
 精神科を受診される方々のお話を診察室で聞いただけで、「適応障害」と診断することは決して容易なことではありません。職場や生活環境が問題となり、多くは人間関係が絡みますので、患者さん本人だけの発言で診断を下すことは困難なことがあります。国際的に用いられている診断基準を大ざっぱに見ると、以下のようになっています。
 ①大きく・継続的で・反復的なストレスが発症の原因で、そのストレスを受けてから3カ月以内(あるいは1カ月以内)に情緒面、行動面で症状が発生する。 ②ストレス因子と接した時、非常な苦痛・仕事や生活に著しい障害が起きる。 ③不安障害や気分障害、うつ病などの既存の病気や死別反応が原因ではない。 ④ストレス因子が排除された場合、半年以内に寛解する。
 これらをみると分かるのは、自分の内面ではなく、自分の周囲が障害の原因となっていることです。精神疾患の区別の方法として、理由が明確ではない内因性、頭部のけがやホルモンバランスの乱れといった原因が明確な外因性、精神的ストレスが問題となる心因性の三つに分けられますが、この分類にしても、内因性は体質や遺伝によるかもしれないと考えることが多く、世界中の診断の流れとして、精神障害は自己の心を問題としない、精神障害の原因を外部に求める風潮が強くなっています。そして、治療の大原則は環境調整ということになります。病気の原因となっているストレス因子を除いたり、軽くしないことには症状が再発する可能性が高いので、医師から「適応障害」という診断が出ると、関係者はストレス状況そのものを改善する必要に迫られてきます。しかし、それをできるゆとりのない環境が多いのが現実です。
 このような社会の流れの中で私が一番大きな問題として感じているのは、現代社会では仕事が重視され、家族のだんらんは2番目以下になることです。職場に適応できないことはすぐに問題となりますが、職場に適応しすぎて私的生活の充実をおろそかにすることも問題につながります。社会に適応できるかできないか以前の問題として、自分が自分であるということが大切です。
 また、もっと根本的には、一人でいられないという問題があります。一人で一日中携帯をいじっているのは、一人でいることではありません。一人でいるということは、孤独になることです。そして、孤独のつらさを我慢する忍耐力を培うこと。例えばインドで活動した故マザー・テレサは多くの仲間がおり、尊敬に値することをしました。しかし、彼女は孤独の中で自らの非力を知りました。そして彼女は神にすがり、力を得ていたということです。
 私の患者さんの中にも、大きなストレスにさらされ、打ちのめされて病院を受診しますが、徐々に劣悪な環境に置かれたからこそ、自分の弱さが分かった、これからはささやかなことでも感謝して生きてゆこう、眼の前の小さな事を精一杯無我夢中になってやり遂げてゆこうとおっしゃる方がいます。そんなとき私は、精神科医の立場を超えて、素晴らしいと拍手を送りたくなるのです。

2013年3月21日木曜日

歯科治療とアンチエイジング


ゲスト/E-line矯正歯科 上野 拓郎 院長

歯科治療におけるアンチエイジングとはどういったものですか。
 近年、アンチエイジング(抗加齢)という言葉をよく耳にするようになりました。化粧品や健康食品などに目立ちますが、単に「アンチエイジング=美容」ではありません。いつまでも若さと健康を保ちながら、生き生きと年齢を重ねていくという考え方を表しています。加齢による疾患を予防・治療するアンチエイジング医学という新しい分野の医療も普及しつつあります。
 現在、医療の最前線では口腔(こうくう)と全身の関係が重要視されていますが、それはアンチエイジングの観点からも同じように考えられます。口の健康が失われると、食事や会話など日常生活に支障を来たし、老化のスピードが早まるといわれています。例えば、しっかりかめないと、食べ物をおいしく味わうことができなくなり、食生活の質が低下します。また、口臭が気になったりして、対人関係に自信を持てなくなることもあります。
 厚生労働省と日本医師会では、80歳で自分の歯を20本保つことを目標にした「8020運動」というキャンペーンを展開しています。アンチエイジングに基づく歯科治療は、それをさらに一歩押し進めて、歯を含む口腔全体の若返りを図り、積極的に老化防止を実践しようというものです。

かみ合わせが悪いと口や体にどのような影響がありますか。
 かみ合わせが口腔の老化、全身の老化に与える影響は大きいです。かみ合わせの悪い状態が続くと、顔の特定の筋肉が疲労し、顔のゆがみや表情の不自然さ、口元のしわやたるみにつながります。首の筋肉や頭を支えるさまざまな筋肉にも負担がかかるので、肩こりや腰痛、耳鳴り、片頭痛といった、一見歯とは関係のなさそうな症状を引き起こす場合もあります。また、かみ合わせが乱れていると、歯磨きがしにくくなり、虫歯や歯周病になるリスクが高まります。さらに、よくかめなくなると、食べ物の消化を助ける唾液の分泌量が減るため、胃腸にも大きな負担をかけることになります。
 見た目の美しさだけではなく、機能の回復を目指すのが矯正治療です。「今からでは遅いのでは?」とおっしゃる方も多いですが、治療を始めるのに遅すぎることはありません。以前にも増して、成人の方やご年配の方が矯正を始められるケースが増えています。まずは専門医に気軽に相談してみてください。

2013年3月13日水曜日

大腸がんの予防


ゲスト/琴似駅前内科クリニック 高柳 典弘 院長

大腸がんの予防について教えてください。
 わが国における大腸がんの死亡者数・罹患(りかん)者数はがんの中でも上位にあります。女性のがん死亡原因の1位、男性の3位となっており、罹患者数は男女ともに2位です。
 国内外の研究結果などから、大腸がんの“確実”な危険因子(リスクファクター)として、以下のようなことが挙げられています。
 ①親や兄弟など直系の家族に大腸がんの人がいる(家族性大腸腺腫症、遺伝性非ポリポーシス性大腸がん)②肥満(特に男性の結腸がんリスクが高まる)③喫煙の習慣 ④大量飲酒の習慣 ⑤牛、豚、羊などの赤肉、ベーコン、ハム、ソーセージ、サラミなどの加工肉の過剰摂取 ⑥運動不足(特に男性の結腸がんリスクが高まる)
 一方、大腸がんの予防法として最近発表された複数の大規模な研究結果から、これまで“確実”とされていた野菜や、“可能性あり”とされていた果物の摂取については、予防的な関連が“認められない”“可能性を示唆する”という結果に変更され、“確実”な予防法は「運動」であるということが証明されています。また、大腸がんと診断された治療中や治療後の患者さんにおいても、運動が死亡率を低くすると報告されています。

具体的にはどのような運動が適していますか。
 歯を食いしばって頑張るのではなく、笑顔が保てる程度に無理なく体を動かす「ニコニコペースの有酸素運動」、やや早足で歩くかゆっくりとしたジョギングなどが勧められます。仕事中でもよく体を動かせば、がんのリスクは低下するので、それほど構えた運動である必要はありません。運動の種類より、むしろ運動する時間や運動を継続することが重要です。毎日1時間ぐらい元気に歩き、週に1度は汗が出るような適度な運動を行うのが効果的です。運動嫌いの人でも、家事や掃除、庭づくり、サイクリング、水泳など、何でも良いので、とにかく毎日1時間ぐらいは体を動かすよう心掛けてください。テレビや机の前に座って、一日中ほとんど体を動かさない、そういう生活がよくありません。
 大腸がんは早期発見・治療ができれば、治癒率が高いことが知られています。二次予防として40歳を過ぎたら、便潜血検査を中心とした大腸がん検診も定期的に(年に1回が目安)受けることも忘れないようにしましょう。

2013年3月6日水曜日

関節リウマチ患者の妊娠・出産


ゲスト/佐川昭リウマチクリニック 佐川 昭 院長

関節リウマチ患者の妊娠・出産について教えてください。
 関節リウマチの患者さんの約3割は20〜30代に発症しています。女性に多い病気であるため、治療中の妊娠・出産は人生の重大な問題となります。
 関節リウマチは妊娠中に症状が軽くなり、産後に悪化する傾向があるため、かつては妊娠に否定的な見解も少なくありませんでした。しかし、近年の医療の進歩に伴い、治療薬の種類が増え、効果の高い薬も登場し、病気を上手にコントロールしながらの妊娠・出産が可能と考えられるようになってきました。
 患者さんのもう一つの大きな不安は、妊娠経過や胎児への薬の副作用です。関節リウマチの薬の中には、妊娠経過や胎児に悪い影響を与える可能性のある薬があります。しかし、そのような禁忌薬を避けたり、妊娠を希望する一定期間前に服用を中止することによって、妊娠・出産は十分に可能です。また、患者さんが妊娠に気付かずに禁忌薬を飲んでしまったケースでも、ただちに出産を諦める必要はありません。リスクの高低を確認できれば、科学的根拠に基づいた出産の助言もできますので、まずは主治医とよく相談してください。

関節リウマチの薬と妊娠について専門家と相談できる窓口はありますか。
 2005年10月に厚生労働省の事業としてスタートした「妊娠と薬情報センター」があります。専門の医師や薬剤師が、関節リウマチの薬以外にも、風邪やインフルエンザの薬、てんかんやうつ病などの薬、アレルギー薬など、妊娠中の女性の服薬に関する相談に当たっています。情報センターでは世界各地から論文を集め、寄せられた相談に対応。日本では妊婦への影響が検証されていない薬でも、過去にどのような事例が報告されているかなどの情報を提供しています。また、相談者から承諾が得られれば、妊娠中や出産後の状況などを報告してもらい、データの蓄積や分析を進めています。
 関節リウマチの治療を続けながら、妊娠・出産を迎えるためには、薬を上手に使うことが大切です。根拠のない不安で妊娠を諦めたり、使うべき薬を使わずに悪化させたりするのは最悪のケースといえます。悩みのある方は、情報センターに相談してみるのもいいでしょう。詳しくは情報センターのホームページhttp://www.ncchd.go.jp/kusuri/をご覧ください。

2013年2月27日水曜日

高齢者の肺炎


ゲスト/白石内科クリニック 干野 英明 医師

肺炎で亡くなる高齢者が急増していると聞きますが。
 肺炎は日本人の死亡原因の第4位であり、近年増加傾向にあります。肺炎による死亡者数のうち、9割以上を65歳以上の高齢者が占めています。また、高齢者に限ると、肺炎は死亡原因の第1位となっています。高齢化社会が急速に進むわが国において、高齢者の肺炎の診断・治療・予防は重要な課題の一つです。
 高齢者の肺炎は、発熱などの自覚症状が軽くても、症状が進行している場合があり、診断が遅れがちになります。風邪程度の症状しか見られなくても肺炎になっていることが珍しくありません。また、再発を繰り返して治りにくく、心不全に陥る傾向があります。さらに、加齢に伴う免疫力の低下や心臓病、慢性呼吸器疾患、糖尿病などの基礎疾患との合併によって重症化しやすいです。
 嚥下(えんげ)機能や咳(せき)反射の低下が引き金になって起こる誤嚥(ごえん)性肺炎になりやすいのも、高齢者肺炎の特徴です。特に脳梗塞がある人は注意が必要です。高齢者では、口腔内に定着した少量の菌や胃液を、気が付かないうちに繰り返し気管に吸入してしまう、いわゆる不顕(ふけん)性の誤嚥が目立ちます。加齢に伴い、唾液の分泌量が低下し、本来口腔(こうくう)内にある細菌の代わりに病原性の細菌が増えてきます。それらが気管に吸入されることにより肺炎が起きやすくなるのです。

高齢者肺炎の予防について教えてください。
 肺炎は、抗生物質の投与、補液、酸素投与などで治療できますが、かからないようにすることが何よりも肝心です。予防法としては、手洗い、うがい、マスクの着用、栄養管理、合併症のコントロール、禁煙などが挙げられます。口腔内のケアも重要で、歯磨きなどで口の中の細菌を減らすことで、誤嚥しても肺炎を発症しにくくなります。
 食事を取るときは、少量ずつ時間をかけて、しっかり飲み込むことを意識しましょう。また、食後2時間くらいは胃からの逆流を防ぐため、すぐに横にならず、座った姿勢を保ちましょう。就寝中も、あおむけで平らに寝るよりも、リクライニングシートのように少し上半身を高くするのが良いです。
 肺炎球菌ワクチンの摂取も予防効果が期待されます。また、インフルエンザ予防接種と併用することで予防効果がさらに高まると考えられています。

2013年2月20日水曜日

歯周病の歴史


ゲスト/まるやまファミリー歯科 小川 拡成 院長

 今回は歯周病の歴史について触れようと思います。ヨーロッパでもアメリカでも日本でも歯周疾患といえば、虫歯と並ぶ歯科の二大疾患にもかかわらず、昔はこの病気は難治、不治の疾患で、究極の治療法は抜歯のほかにないと思われていました。
 しかし、アメリカは19世紀の終わりから20世紀の初めにかけて、見事にその治療や予防を可能にしました。そもそも、19世紀前半のヨーロッパでは、歯周疾患の原因については、局所説と全身説が入り乱れ、スケーリング(歯石取り)や手術、固定などの局所療法に努めてもすぐ再発するので、体質というような未知の全身因子があるのではないかと考えられていました。ですが、今から150年前の1867年、アメリカのリッグス氏が、この歯周疾患の特徴として、まず歯肉に炎症が起こり、次第に歯槽骨吸収が進行して歯の動揺が起こることを報告しました。また彼は局所療法の重要性を説き、スケーラーでポケット内の汚染された部分や炎症を起こした歯肉をかき取るばかりでなく、患者さんにブラッシング指導を行うことによって、大きな成果が得られることも併せて報告しました。それでこの歯周疾患は「リッグス病」と呼ばれましたが、彼が学会に加入しなかったことなどで、この名称は消えてしまいました。
 しかし、その考え方はその後の臨床へ大きな影響を与えました。また、細菌学の立場からメスを入れたのがミュラー氏でした。彼はドイツ系アメリカ人で、コッホの下で細菌学の研究に情熱を注ぎ、歯周疾患はどこにでもいる口腔常在菌の混合感染であるという考え方を明確にしました。つまり原因は口の中にいるばい菌ということです。このようにしてアメリカ東海岸付近では、ブラッシングやスケーリングを中心とした予防活動が日常的なものとなり、不治と言われた歯周疾患も自信をもって治癒に導けるようになりました。局所説が勝利を収めたのです。
 口の中のばい菌が歯周病の原因である以上、どのような時代がきてもヒトは歯ブラシを捨てることはできません。歯周病で悩んでいる皆さんは、今すぐお近くの歯医者さんでアドバイスを受けられることをお勧めします。

2013年2月13日水曜日

睡眠時無呼吸症候群(SAS)と顎変形症


ゲスト/つちだ矯正歯科クリニック 土田 康人 院長

睡眠時無呼吸症候群(SAS)と顎変形症の関係について教えてください。
 SASは、就寝中に筋肉が緩んで気道(呼吸をするときに空気が通る道)がふさがり、呼吸ができなくなる病気で、10秒以上の呼吸停止が一晩で30回以上、あるいは1時間に5回以上ある場合に診断されます。大きないびきが特徴で、中高年で肥満の男性がかかりやすいといわれています。熟睡感が得られない、昼間眠くて注意力に欠けるなどの症状があり、居眠り運転など重大な事故を引き起こす要因となることがあります。また、酸素不足や血圧上昇の繰り返しで心筋梗塞や脳卒中の発症につながる恐れもあります。
 SASの原因としては、肥満に伴う脂肪による気道の閉塞、気道に舌が落ち込んでいる、扁桃(へんとう)肥大、舌の肥大(巨舌症)のほか、下顎が小さいまたは後退している(小顎症、下顎後退症)など顎変形症が挙げられます。
 SASの治療には、鼻にマスクをして空気を送り気道を広げる、マウスピースを着けて下顎を前に出すようにして気道を広げる、手術で扁桃肥大などを除去するなどの方法がありますが、いずれも根本的な治療にはなりません。

顎変形症によるSASの治療法について教えてください。
 顎変形症には、反対咬(こう)合(受け口)、上顎前突(出っ歯)、開咬(上下の歯がかんでいない状態)、顎偏位(顔や顎が曲がった状態)などがあり、変形が大きい場合、矯正治療だけでは治しきれず、外科手術を行います。手術は全て口の中から行うので顔に傷が残ることはありません。また、矯正治療のみの場合は健康保険外の診療になりますが、外科手術を伴う場合は、手術と前後の矯正治療が保険の適用となります。
 下顎後退症は、文字通り下顎が後退していることで、横顔を見ると顎の部分が奥に引っ込んでいます。下顎が後ろにあるために気道が狭くなり、SASの発症につながりやすいと考えられます。症例によって、また専門医のアプローチによって治療はさまざまですが、基本的には下顎骨を口腔内から切断し、下顎骨を前方に移動する手術を行います。
 反対咬合の方は、比較的すすんで矯正治療を受けられますが、下顎後退症は気付きにくいため、そのままにしている方も多いようです。SASの危険性を避けるためにも、ぜひ一度専門医の診察を受けることをお勧めします。

2013年2月6日水曜日

せきぜんそく


ゲスト/医療法人社団碩心会北海道大野病院附属駅前クリニック 古口 健一 院長

せきぜんそくとはどのような病気ですか。
 風邪は治ったのに、何週間もせきが治まらない。そんな人はせきぜんそくになっているかもしれません。せきぜんそくは、ぜんそくの前段階といえる状態で、せきが慢性的に続きますが、ゼイゼイ・ヒューヒューといった喘鳴(ぜんめい)がないのが特徴です。発熱や痰(たん)などの症状はほとんど出ません。季節の変わり目に出始めることが多く、夜中から明け方にせきが激しくなるほか、室内外の温度差や喫煙でせきが出やすくなります。
 一般的なぜんそくと同様、気道(呼吸をするときに空気が通る道)が狭くなり、いろいろな刺激に対して過敏になることで、炎症やせきの発作が起こります。花粉や動物の毛、ホコリやダニなどのハウスダストによるアレルギーが主な原因と考えられていますが、最近はストレスから発症するケースも多く、患者数は年々増加しています。比較的女性に多くみられ、しばしば再発を繰り返します。放っておくと約3割の患者さんがぜんそくに進んでしまうので、注意が必要です。目安として、風邪をひいた後に3週間以上せきが続くようなら、専門医で詳しく診てもらうことをお勧めします。

せきぜんそくの診断と治療について教えてください。
 せきぜんそくと紛らわしい疾患には気管支炎やアトピー咳嗽(がいそう)、百日咳などがあり、いずれも適切な治療を行わなければせきが長引く原因となります。また、長引くせきは肺がんや慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)、間質性肺炎などの重い疾患が原因となっている場合もあるので、たかがせきと軽視せず、専門検査を受けることが大切です。せきぜんそくが疑われる場合は、問診で病歴などを詳しく尋ねた上で、血液検査や肺機能検査、痰の検査などを行い、さまざまな症状から総合的に診断します。
 せきぜんそくに一般的なせき止め薬や風邪薬、抗生物質を用いても効果はありません。治療にはせきを抑えるための気管支拡張薬と、せきを引き起こす原因となっている気道の炎症を治すための吸入ステロイド薬を使います。せきが抑えられても、ぜんそくへ移行するのをしっかりと防ぐため、数カ月〜半年ほどは吸入ステロイド薬を使う必要があります。自己判断で薬を中止せずに、医師の指示通りに根気よく治療を続けることが重要です。

2013年1月30日水曜日

関節リウマチの治療


ゲスト/北海道内科リウマチ科病院 松橋 めぐみ 医師

関節リウマチの治療について教えてください。
 免疫の異常による関節の炎症で、腫れや痛みが起こり、進行すると骨が破壊し関節が変形してしまう関節リウマチです。治療は、症状や進み具合に合わせて、薬物療法、リハビリテーション、手術療法などが行われます。
 一度変形してしまった関節は、薬を使ったりリハビリを行ったりしても、元には戻せません。薬を飲んでも痛みが続く場合や、関節の機能が失われて日常生活に支障を来す場合などには、手術治療が勧められます。変形したり破壊され関節を人工関節に置き換える手術などがあります。
 関節リウマチの痛みや腫れは、薬で和らげることができますが、関節を動かさずにいると、骨や関節周囲にある筋肉、靭帯(じんたい)などの機能が落ちてしまいます。症状が出始めた初期のころから、適切なリハビリを行うことが大切です。リハビリには、患部を温めて痛みやこわばりを和らげる温熱療法、関節の動きを広げるなど、身体機能の保持・改善を目指す運動療法などがあります。
 現在、関節リウマチの治療の中心となっているのは薬物療法です。治療の進歩で、症状が落ち着き進行しない「寛解」も夢ではなくなりました。

薬物治療について教えてください。
 痛みや腫れを抑える消炎鎮痛剤のほかに、免疫系に作用する薬剤などを用いて治療します。標準的な治療薬は、メトトレキサート(MTX)です。日本では使用量が低く抑えられてきましたが、2011年2月から十分な量が処方可能となり、良好な治療成果をあげています。ただし、まれに間質性肺炎や肝機能障害などの副作用が出る場合もありますので、リウマチ専門医のもとで治療することが大事です。
 抗リウマチ薬だけで症状や関節の所見が十分に改善しない場合、新しい治療薬である生物学的製剤が使えるようになりました。炎症の原因となるサイトカインの働きを抑えるタイプに加え、免疫をつかさどる細胞の働きを抑えるタイプも登場し、選択肢が広がっています。即効性があり、痛みもコントロールできるなど効果は高いですが、高額な薬代が難点となっています。
 どの薬を選択するかは、症状や進行の程度、合併症の有無のほか、患者さんのライフスタイルなども考慮して決められます。患者さんも主治医や専門の先生とよく相談し、効果や副作用を十分理解しながら、治療を継続しやすい薬を選ぶことが大切です。

2013年1月23日水曜日

子どもの歯科矯正治療


ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治 正光 院長

子どもの矯正治療について教えてください。
 お子さんの歯並びに矯正が必要かどうか迷われる人も多いと思います。歯並びのチェック方法の一つとして、お子さんの口元を顔の正面から観察してみてください。上下の前歯の真ん中の位置が一致していれば安心ですが、ずれている場合は、矯正の必要があると考えられます。
 出っ歯や受け口など上下の顎が、前後に大き過ぎたり小さ過ぎたりという骨格的な問題は、一般の人でも気付きやすいのですが、左右のずれは発見しにくいものです。自然な矯正なら、顎骨(がっこつ)の成長コントロールが可能な9〜10歳までに行うのが理想的です。この時期なら就寝時に、バイオネーターと呼ばれる機能的顎(がく)矯正装置を装着し、ずれた顎の骨を中央に移動させます。バイオネーターは、子どもの成長の力を利用して、無理なく自然にバランスのよい骨格をつくります。痛みはほとんどなく、取り外しが可能で日中は装着の必要がありません。ずれの程度にもよりますが、装着期間は平均で半年〜1年。経過観察のための通院は、1〜3カ月に1度が目安です。
 ずれの原因には、歯そのものがずれている場合もあり、永久歯がそろってからでも治療は可能です。その場合は抜歯する可能性が高くなりますが、きれいに治療できることが多いです。判断は非常に難しいので、ぜひ専門医にご相談ください。

家庭でチェックするための別の方法はありますか。
 頰づえやかみ癖、就寝時の体位が左右どちらかに大幅に偏っている場合などは、左右のずれを引き起こす原因となることがあります。上の前歯と下の前歯の中央の位置が一致しているのを確認したら、次は鼻の先端を基準に、鼻の中央に前歯の中心が沿っているかを確認してください。ずれの原因は一見して分かるものではなく、万が一、骨格のずれを歯のずれと勘違いして放っておくと、矯正に最適な成長期を逃してしまう場合もあります。
 子どものうちの悪い歯並びやかみ合わせを放置してしまうと、大人になってから心理的な悪影響を及ぼしたり、虫歯や歯周病、顎関節への影響が出てきたりする場合もあります。少しでもおかしいなと感じたら、早めに専門医に相談することをお勧めします。歯科矯正は自由診療となりますので、費用についてもその際に問い合わせると良いでしょう。

2013年1月16日水曜日

自律神経失調症


ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 尾形 マリ 医師

自律神経失調症とはどのような病気ですか。
 人体が健康な生命活動を行っていくために、その人が意識しなくても体を上手に働かせている神経のことを自律神経といいます。例えば運動をしているときは、「さあ、筋肉に十分酸素を送るぞ」と思わなくても呼吸が速くなり心臓は活発に拍動しますし、ご飯を食べたときには「さあ、消化するぞ」と思わなくても胃液が出て胃袋が動きます。これが自律神経の役割です。自律神経には交感神経と副交感神経と呼ばれる神経があり、この両者が必要に応じてバランスよく働くことで日々の生命活動を維持しています。
 しかし、先ほどお話ししたように、自律神経は自分の意思で完全に制御することができないので、頑張りモードの作動ばかりを長期に強いられた時などに、その調節がうまくいかなくなり、全身にさまざまな症状が出ます。これが自律神経失調症と呼ばれている現象です。運動をしていないのに動悸(どうき)がする、食べ過ぎでもないのに胃腸の具合が悪い、暑くもないのに汗が出る、その他、全身のあちこちにつらい症状がたくさんあるのに検査では異常がないとされる場合にこの病名が使われることが多いようです。
 ただし、「自律神経失調症」というのは正式な病名ではなく、状態を表す言葉です。「自律神経失調症」が見られたときは、うつ病などの心の病気が隠れていないかをチェックすることも大切です。うつ病かどうかを自分で見極めるのはとても難しい事です。体調が悪いのは疲れているから、仕事がはかどらないのは自分の頑張りが足りないからと思いこんでしまう場合が多いからです。

自律神経失調症の治療について教えて下さい。
 うつ症状が明らかなときは抗うつ薬を使いますが、さまざまなつらい症状には漢方薬による治療も有効です。多くの漢方薬は現代医学のお薬同様、保険が効きます。症状によっては保険外の生薬が必要なこともありますが、保険の効くお薬と組み合わせて費用をなるべく抑えることも可能です。
 「自律神経失調症」は、よくこれまで頑張りましたね、少し心身をいたわりませんか、というサインです。これを治療することで将来かかるかもしれない病気を予防できるかもしれません。「自律神経失調症状」が続くときは、検査で異常がなかったからと、つらい症状を我慢せずに相談されることをお勧めします。

2013年1月9日水曜日

多焦点眼内レンズによる白内障治療(眼科領域の先進医療)


ゲスト/大橋眼科 大橋 勉 院長

白内障の眼内レンズについて教えてください。
 白内障は瞳の後方にある水晶体が濁って起きる視力障害です。治療には点眼薬が投与されますが、最終的には手術が必要になります。現在、日本で多く行われている手術法は、水晶体を包んでいる袋の中の濁りを取り除き、その袋の中に人工レンズを挿入する方法です。
 日本で使われている眼内レンズの多くが「単焦点眼内レンズ」です。遠く、あるいは近くの1カ所に焦点を合わせたレンズで、濁りがなくなるため、見やすく視界が明るくなりますが、裸眼でどこでもよく見えるというわけではありません。焦点が遠くにある場合は、読書や縫い物など手元の作業時には視界がぼやけ、老眼鏡が必要になります。逆に近くに焦点を合わせた場合は、外を歩いたり、運転したりする時に眼鏡が必要になります。

多焦点眼内レンズについて教えてください。
 多焦点眼内レンズは、遠距離、近距離と2点に焦点が合うように設計されています。単焦点眼内レンズに比べると、遠くにも、近くにも眼鏡なしで焦点が合いやすくなります。多焦点眼内レンズは2007年に厚生省に認可され、08年に先進医療として承認されました。先進医療とは、厚生労働大臣が保険適用外の先端的な医療技術と保険診療との併用を、一定の条件を満たした施設のみに認める医療制度です。先進医療施設に認定された医療機関で、多焦点眼内レンズによる白内障治療を受ける場合、術前術後の診察などに保険が適用となります。また、民間の生命保険の先進医療特約の対象ともなり、先進医療に係る費用が全額給付されるケースもあります。
 多焦点眼内レンズでの見え方に脳が慣れるには、年齢や個人間の差はありますが、一般に数カ月程度かかるといわれています。また、単焦点眼内レンズに比べ、遠くも近くも焦点が合いやすいのですが、自由にピントを変えることができる見え方とは異なります。場合によっては眼鏡が必要になることもありますが、頻繁に掛け外しをする煩わしさからは解放されます。
 どちらのレンズにするかは、医師と話し合い、ライフスタイルを考慮して選択することをお勧めします。近年、従来の眼内レンズでは矯正不可能であった乱視も、白内障手術と同時に治すことができるようになってきました。詳しくは、医師にお尋ねください。

2013年1月7日月曜日

痔核(じかく)の最新手術


ゲスト/札幌いしやま病院 石山 元太郎 副院長

痔核とはどのような病気ですか。
 痔(じ)と呼ばれる疾患のうち、最も多いのが痔核(いぼ痔)です。通常肛門は、便やガスが無意識のうちに漏れたりしないように、括約筋という筋肉で閉じられています。しかし、これだけでは不十分なため、肛門の出口から数センチ入ったところに、肛門クッションと呼ばれる柔らかな盛り上がり(血管の集まり)があり、これによって括約筋が強い力で収縮しなくても便などが漏れない仕組みになっています。肛門クッションは、ちょうど水道の蛇口に付いているゴム栓のような役割を果たしているのです。排便時に強くいきむなど、肛門に負担がかかることが度重なると、徐々に肛門クッションが腫れて、本来あるべき位置からずれ落ちた状態になります。これが痔核です。
 初期段階であれば薬や生活改善で症状は良くなりますが、痔核が脱出するようになった場合には手術などの治療が必要となります。

痔核の手術について教えてください。
 昔の手術は、痔核を残らず切り取っていました。そうすると肛門クッションもなくなってしまうため、肛門のべとつきや排便障害などの後遺症に悩まされる人も多く、30年ほど前から行われなくなりました。近年の手術は、肛門クッションの重要さが広く知られてきたために、肛門クッションを残す方法を取っています。また、専用の器具を使い、痔核そのものではなく、近くにある直腸粘膜を切除することで痔核をなくす方法も登場しています。
 硫酸アルミニウムカリウムタンニン酸(ALTA)を痔核に注射するという、切らずに治す方法もあります。治療後の痛みがほとんどなく、長期間の入院も必要ありません。ただし、誤ったやり方で注射してしまうと重大な合併症を引き起こす危険性があります。また、全ての痔核に有効ではなく、その適応を厳密に選択しなければ再発することがあります。
 現在、最も新しい術式であり、再発の可能性がほとんどなく、肛門本来の機能を温存するという観点からも有効と考えられているのが「肛門形成術」です。ずれ落ちた肛門クッションを括約筋から剥離し、本来あるべき位置と思われるところに戻して括約筋に固定するという方法です。術後の痛みや出血も少なく、入院期間を大幅に短縮できるというメリットもあります。