2012年11月28日水曜日

最新の糖尿病治療薬


ゲスト/医療法人社団 青木内科クリニック 青木 伸 院長

最新の糖尿病治療薬について教えてください。
 糖尿病治療薬の最近の進歩は目覚ましいものがあります。飲み薬では、高血糖の時にだけすい臓からインスリンを分泌させ、正常血糖へ下げる「DPP-4阻害薬」があります。この薬は理論的には低血糖を起こさず治療できる新薬で、糖尿病の平均血糖の指標であるHbA1c値を1.0%前後下げます。この薬と同じ系統の注射薬も登場し、「GLP−1受容体作動薬」と呼ばれています。この注射薬はHbA1c値を1.6%前後下げます。現在は1日1回の注射が必要ですが、将来的には1週間に1回で済む注射薬も出る予定です。この系統の注射薬は、すい臓のインスリンを出す細胞を保護し、インスリンの分泌を弱らせない作用も持ち合わせているといわれています。
 一方、インスリン注射薬に目を向けると、「持効型インスリン(1回の注射で24時間効果を持続する長時間作用型インスリン)」があります。飲み薬の治療が効かなくなる症例でも、飲み薬をそのまま服用しながら、1日1回の持効型インスリンの注射を加えると血糖が改善する症例もあります。「混合型インスリン」は、持続型インスリンと超速攻型インスリンの合剤ですが、超速攻型インスリンの含有率が50〜70%の製剤が最近使用できるようになりました。食後血糖の高い症例を治療するのに便利なインスリンです。

糖尿病の治療について教えてください。
 糖尿病の治療が良好といえる目安はHbA1cが6.9%以下になっている場合です。糖尿病の患者さんの約半数が高血圧と脂質異常症(高脂血症)を合併しているといわれています。糖尿病を合併した高血圧の治療はとても重要で、血圧の治療目標値は130/80mmHg以下です。自宅で簡易血圧測定器を使用して治療に役立てる方法もあります。この場合使用する測定器は、指先や手首に巻くタイプのものではなく、上腕に巻くタイプのものをお勧めします。脂質異常症の治療目標値は、LDL-コレステロール(悪玉コレステロール)が120mg/dl以下です。以上のようなさまざまな基準値を長期間保てば、眼底出血(失明)、腎臓の悪化(透析)、足の潰瘍・壊疽(えそ)による足の切断など糖尿病に由来する重症の合併症にならなくて済みます。それ以外にも脳梗塞(こうそく)、心筋梗塞などの予防にもつながります。

2012年11月21日水曜日

歯の外傷


ゲスト/医療法人社団アスクトース 石丸歯科診療所 近藤 誉一郎院長

転倒などで歯が折れた時の処置について教えてください。
 自転車で転んだ、両手がふさがっている状態で転倒した、スポーツでの衝突など、外傷により歯が破折した場合は、すぐに歯科医を受診することが大切です。外傷を受けた歯は、早期の治療によって予後がまったく変わってきます。受診する際、折れた歯の破片があれば、持参するようにしましょう。折れた部位、大きさ、形などを推定し、治療の参考にすることがあるからです。
 歯科医では、まずエックス線検査で、折れた部位を特定し、他にひびなどが入っていないか、歯の周囲の骨に異常がないかなどを調べます。治療は、歯の欠けた部分の位置や大きさによって異なります。歯の頭の部分など浅い位置での破折は、樹脂などで欠けた部分の修復を行い、元に近い状態まで戻すことができます。破折が歯の内側の象牙質にかかるような場合は、神経の処置をした後、差し歯などの被せる方法で修復するのが一般的です。折れた場所が深く、残る根が少ない場合は、歯を抜かなければならないこともあります。

歯がグラグラしている時、歯が抜け落ちてしまった時の処置について教えてください
 外傷により歯がぐらついているケースでは、ワイヤーなどを用いて隣の歯と固定し、安定を図ります。固定期間は症状や年齢によって異なりますが、1〜2週間が目安となります。その後、歯髄組織(歯の神経)へのダメージを見るため、約6カ月間の経過観察が必要です。歯髄が壊死(えし)してしまった場合は、神経を取って根の治療を行います。数カ月経ってから歯髄が壊死して、その結果、歯の色が黒ずんで見えてくることもあります。
 歯が完全に抜け落ちてしまった場合、最も重要なのは、抜けた歯を乾燥させずに保管し、早急に歯科医を受診することです。歯には「歯根膜細胞」という、歯と生体をつなぐ組織があり、抜けた歯を元に戻すことができるかどうかは、この細胞の有無に懸かっています。歯根膜細胞は乾燥に弱く、約30分で大半が死滅してしまいます。抜けた歯の保管場所として最適なのは、市販されている歯の専用保存液、もしくは、コップなどに入れた牛乳の中に浸すことです。専用保存液なら約24時間、牛乳なら約12時間、歯根膜細胞を生存させることができます。処置が早ければ早いほど、もう一度歯を戻して残せる可能性は高くなります。

2012年11月14日水曜日

ウイルス性胃腸炎


ゲスト/医療法人社団 いし胃腸科内科 石忠明院長

ウイルス性胃腸炎とはどのような病気ですか。
 微生物の感染を原因とする胃腸炎の総称を「感染性胃腸炎」といいます。感染性胃腸炎は、O-157(病原性大腸菌)やサルモネラ菌などの細菌を原因とする「細菌性胃腸炎」と、ノロウイルスなどのウイルスを原因とする「ウイルス性胃腸炎」の二つに大きく分けられます。いずれも主な症状は嘔吐(おうと)、下痢、腹痛、発熱などです。1年を通して発症しますが、細菌性胃腸炎は夏季に、ウイルス性胃腸炎は冬季を中心に流行し、集団生活の場で大規模に流行することもあります。
 ウイルス性胃腸炎の代表が、ノロウイルスとロタウイルスによるものです。両者ともウイルスが人の手などを介して、口に入った時に感染する可能性があります。ノロウイルスによる胃腸炎は、カキなどの二枚貝がノロウイルスに汚染され、感染源になると考えられていますが、料理を食した際以外にも、調理器具や食器、調理した人の手、嘔吐物、便などからも感染が広がります。ロタウイルスによる胃腸炎は、乳幼児に多くみられ、大人もかかることがあります。
 ウイルス性胃腸炎の多くは数日で回復します。しかし、乳幼児や年配の方は、嘔吐、下痢などによる脱水で病態が悪化する恐れがあるので、早めに医療機関を受診することが大切です。

ウイルス性胃腸炎の治療と予防について教えてください。
 治療は、ウイルスには抗生物質が効かないため、整腸剤の処方や点滴による水分・栄養補給など、症状を軽減するための対症療法が行われます。感染が疑われる場合、周囲に感染を広げないよう、数日は仕事や学校を休む必要があります。自宅では、小まめな水分補給で脱水を防ぎ、安静に努め、回復期には消化の良い食事を取るよう心掛けましょう。基本的には自然に治まっていくのを待つしかありません。
 ウイルスから身を守るのに最も有効なのは、外出後や調理・食事前、トイレの後などに、石けんを使った手洗いを励行することです。家族に患者さんがいる場合には、二次感染を予防するために、嘔吐物や便を処理する際にビニール手袋、マスクを使用するなどの注意が必要です。タオルも家族と共有しないようにしましょう。症状が落ち着いても、しばらくは便へのウイルスの排出が続くため、患者さんの入浴は、最後にするようにしてください。

2012年11月7日水曜日

認知症


ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 西 裕 医師

認知症とはどのような病気ですか。
 認知症は、いったん発達した知能が、さまざまな原因で持続的に低下し、記憶障害がひどくなり、生活に支障を来たすようになった状態のことを示します。
 原因別にいくつかの種類に分類され、代表的なのが「アルツハイマー型認知症」で、患者さんの約6割を占めます。「アミロイドβ」というタンパク質が脳に蓄積することで、脳が萎縮して起きるとされています。物忘れを主な症状に、数年から十数年かけて緩やかに進行します。次に多いのが、脳梗塞や脳出血など脳卒中が原因で発症し、階段状に憎悪、進行するとされる「脳血管性認知症」で、全体の約2割を占めます。
 症状は認知症の種類や人によって異なりますが、初期には記憶障害が現れ、進行するにつれ妄想や徘徊(はいかい)、攻撃的行動などの精神症状・行動異常を伴う場合が多いです。よくみられるのが「物盗(と)られ妄想」です。財布の置き場所を忘れてしまうのですが、忘れた自覚がないので「誰かに盗まれた」と被害妄想を抱くようなケースをいいます。
 多くの認知症には根本的に治療する薬がないので(アルツハイマー型認知症には進行を緩和する薬があります)、治療は病気の進行を遅らせることが重要になってきます。過去の記憶について語り、脳の活性化につなげる「回想療法」や音楽を通して脳を刺激する「音楽療法」などの療法が行われることがあります。

認知症患者に対する接し方、向き合い方について教えてください
 家族の方に気になる症状が現れたとしても、受診させるのを躊躇(ちゅうちょ)してしまうケースや、本人も自分が認知症であることを認めたくない気持ちが強く、病院に行きたがらないケースも多いです。対応として、健康診断的な面を強調するなど、本人のプライドを傷つけない配慮をしつつ受診を勧めるようにしてください。受診を先送りにすればするほど問題は大きくなりがちです。早期に治療すれば、穏やかに生活できる時間を長くすることができます。
 もし認知症と診断されたら、症状の進行によっては市町村の窓口で介護保険制度に基づく申請を行いましょう。認定された要介護度の程度に応じて、訪問介護、通所介護、短期入所生活介護などの介護支援サービスが受けられます。認知症の介護は長期に及びます。家族間で問題を抱え込まず、医師、看護師、福祉関係者など専門家と相談していくことが大切です。