2012年7月25日水曜日

肝臓の病気


ゲスト/佐野内科医院 佐野 公昭 院長


肝臓とはどのような器官なのですか。
 肝臓は、成人でおよそ1500gもあるヒトの臓器で最大の器官です。肝臓は、血液によって運ばれてくる栄養分を蓄えたり、それらを体に必要な別の物質につくり変えたり、また、血液中に入り込んだ体に有害な物質を分解し、無毒化する働きなど、人体にとって重要な役割を担っており、「人体の化学工場」ともいわれています。
 また肝臓は、「沈黙の臓器」とも呼ばれます。ひどく傷んでも痛みを感じることがほとんどなく、病気になっても自覚症状が出にくい臓器だからです。肝臓の病気を疑う症状として、体のだるさや食欲不振、黄疸(おうだん)、褐色尿などが挙げられますが、具合が悪いなと感じるころには、肝臓は取り返しがつかないほどダメージを受けているケースもあります。肝臓の健康には常に気を付けていくことが大切です。

肝臓の異常を早期に発見するにはどうしたらいいのですか。
 特定健診をはじめとする健康診断の検査結果を上手に生かすことです。血液検査のなかにGOT(AST)、GPT(ALT)という項目があると思います。これらはともに細胞内に分布し機能している酵素です。細胞が障害されたりすると血液中に逸脱して値が上昇します。かつてはどちらも40〜45くらいまでは正常値とされていましたが、現在は31以上の数値を示していると、肝臓に異常がある可能性が高いことが分かってきました。
 例えば、慢性肝炎の約90%は、ウイルス性肝炎であるといわれています(B型肝炎が約20%、C型肝炎が約70%)。ウイルス性の慢性肝炎は、徐々に病気が進み、やがては肝硬変まで進行します。また、肝臓にがんができるリスクも高くなります。輸血や一部の血液製剤などが感染の原因といわれていますが、感染原因が不明の場合も少なくありません。GOT、GPTの値が31以上で、過去に肝炎ウイルスの検査を受けたことがない人は、一度肝炎ウイルス検査を受けることをお勧めします。自治体によって異なりますが保健所や医療機関などで検査を無料、ないしは安く受けられる制度がありますので、それらを利用するのも一つです。
 肝臓の病気の早期発見、早期治療には、血液検査の異常などから「沈黙の臓器」の声なき声を聞く姿勢が大切です。

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