2012年4月25日水曜日

親知らずと自家歯牙(しが)移植

ゲスト/医療法人社団アスクトース 石丸歯科診療所 近藤 誉一郎院長

「親知らず」は、なぜ抜歯することが多いのですか。
 「親知らず」は、20歳以降、もっとも遅く形成される永久歯で、一番奥に生えてくる歯のことです。「親知らず」が生えてくる頃には、親がその歯を見る機会がないということから、この名が付いたといわれています。
 噛(か)み合わせに問題のない「親知らず」を無理に抜く必要はありません。しかし、「親知らず」は横や斜めに生えたり、生えきらなかったりすることがほとんどで、歯磨きが上手にできず、虫歯や歯茎の腫れを引き起こすなど口腔内のトラブルの原因になりがちです。親知らずのせいで噛み合わせが悪くなり、顎(がく)関節症になるケースもあります。
 親知らずの治療は、一番奥の歯なので治療器具が届きにくく、その後のメンテナンスも難しいので、治療をしたとしても高確率で再発します。そのため「親知らず」は、治療よりも抜歯をお勧めするケースが多くなるのです。

歯を失った場合、抜いた「親知らず」を移植する治療があると聞いたのですが。
 虫歯などで歯を失った場合、ブリッジや取り外し式の入れ歯、インプラントなどにより義歯で補う治療がありますが、「親知らず」を抜き、それを失った歯の部位に移植する治療もあり、これを自家歯牙移植といいます。移植する「親知らず」の根の状態が良いこと、移植場所の骨や歯肉の量が十分であること、「親知らず」と移植場所の大きさがある程度合致していることなどの条件がそろえば、生きた天然の歯を取り戻すことができる有効な治療法です。
 自家歯牙移植では、歯を移植した後に新しい骨が形成され、顎(あご)の骨にしっかりと定着します。メンテナンスを続けることで自分の歯として安定した状態を保つことができます。自分の歯であるため噛み心地がよく、他の歯に余分な負担も掛けません。もともと自分の体にあった歯を移植する点で、異物を使用しないという安心感もあります。
 自家歯牙移植は抜歯と移植を同時に行いますので、外科的処置において患者さんの負担がやや大きくなり、治療期間も移植してから噛めるようになるまで2〜3カ月必要です。費用は保険が適用されるケースが多いです。
 自家歯牙移植を検討されるのであれば、自分の「親知らず」がどういう状態なのか、将来移植に使用できるのかなど、まずは専門医に一度ご相談ください。

2012年4月18日水曜日

遺糞(いふん)症

ゲスト/札幌いしやまクリニック 樽見 研 医師

遺糞症とはどのような病気ですか。
 遺糞症とは4歳ぐらいから学童期の排せつ機能が自立すべき年代での排せつ障害で、トイレではなく下着の中や床の上など、本来排便してはいけない場所や状況で排便をしてしまうことをいいます。国際的な診断基準では、4歳以上になっても不適切な場所での排便を月に1回以上認め、それを3カ月以上繰り返す状態と定義されています。
 遺糞症の原因としては、慢性的な便秘のほか心理的ストレスが挙げられますが、一般的には便秘を伴うことが多いです。便秘を放置すると排便時に苦痛を感じて排便を我慢するようになります。あるいは、遊びに夢中になるなどして便意を我慢することを続けます。その結果、排便反射が弱くなり、便意を感じにくくなっているため、気付かないうちに便を漏らしてしまうのです。また、肛門を締める筋肉の機能が低下している場合もあります。
 子どもに便秘が起こる原因としては、排便時に緊張して便が出にくくなることや、排便時に肛門を傷つけてしまい、痛みを感じた経験から排便に恐れを持つことなどが考えられます。また、幼稚園への入園、小学校への入学など環境の変化やトイレに行きたくないなどのストレスがきっかけとなって、便秘や遺糞症が起こることも多いです。

遺糞症の治療について教えてください。
 便秘が遺糞症の原因となっている場合には、下剤やかん腸を用いて直腸にたまった便を排せつさせます。一方、子どもの生活習慣の改善も大切で、治療の基本は排便のリズムを取り戻させることになります。毎朝食事をしたら排便を行うといった排便習慣を付けさせることによって、規則的な排便を促します。
 直腸に便をためないようにしていると、次第に直腸の排便反射が戻ってきて、1日分の便量で便意を感じるようになり、自分で排便ができるようになります。1回の治療・指導で可能な子もいれば、数カ月かかる子もいます。
 また、家族など周囲の人間は、子どもが便を漏らしたからといって、いきなり叱りつけてしまうと、かえって逆効果になります。叱らず、焦らず、様子を見ながら排便を促すようにしましょう。子どもが余計なプレッシャーを感じないようにしてあげることが大切です。幼いころのトイレトレーニングの不足、早すぎるトイレトレーニングは、子どもに過度のストレスを与えてしまうケースもありますので注意が必要です。

2012年4月11日水曜日

最新の糖尿病治療薬

ゲスト/医療法人社団 青木内科クリニック 青木 伸 院長

最新の糖尿病治療薬について教えてください。
 糖尿病治療薬の最近の進歩は目覚ましいものがあります。飲み薬では、高血糖の時にだけすい臓からインスリンを分泌させ、正常血糖へ下げる「DPP-4阻害薬」があります。この薬は理論的には低血糖を起こさず治療できる新薬です。糖尿病の平均血糖の指標であるHbA1cを下げる効力は1.0%前後。この薬と同じ系統の注射薬も登場し、「GLP-1受容体作動薬」と呼ばれています。この注射薬のHbA1cを下げる効力は1.6%前後。現在は1日1回の注射が必要ですが、将来的には1週間に1回で済む注射薬も出る予定です。この系統の注射薬は、すい臓のインスリンを出す細胞を保護し、インスリンの分泌を弱らせない作用も持ち合わせているといわれています。
 一方、インスリン注射薬に眼を向けると、「持効型インスリン(1回の注射で24時間効果を持続する長時間作用型インスリン)」があります。飲み薬の治療が効かなくなる症例でも、飲み薬をそのまま服用しながら、1日1回の持効型インスリンの注射を加えると血糖が改善する症例もあります。「混合型インスリン」は、持続型インスリンと超速効型インスリンの合剤ですが、超速効型インスリンの含有率が50%〜70%の製剤が最近使用できるようになりました。食後血糖の高い症例を治療するのに便利なインスリンです。

糖尿病の治療について教えてください。
 糖尿病の治療が良好といえる目安はHbA1cが6.5%以下になっている場合です。糖尿病の患者さんの約半数が高血圧と脂質異常症(高脂血症)を合併しているといわれています。糖尿病を合併した高血圧の治療はとても重要で、血圧の治療目標値は130/80mmHg以下です。自宅で簡易血圧測定器を使用して治療に役立てる方法もあります。この場合使用する測定器は、指先や手首に巻くタイプのものではなく、上腕に巻くタイプのものをお勧めします。脂質異常症の治療目標値は、LDL-コレステロール(悪玉コレステロール)が120mg/dl以下です。以上のようなさまざまな基準値を長期間保てば、眼底出血(失明)、腎臓の悪化(透析)、足の潰瘍・壊疽(えそ)による足の切断など糖尿病に由来する重症の合併症にならなくて済みます。それ以外にも脳梗塞(こうそく)、心筋梗塞などの予防にもつながります。

2012年4月4日水曜日

動脈硬化

ゲスト/みどり内科クリニック 小田 朗 副院長

動脈硬化とはどのような病気ですか
 動脈硬化とは、血管の弾力性が失われて硬くなり、血液の通り道が狭くなったり、血液の流れが滞ったりする状態を指します。血管が完全に詰まったり、血管の内側からはがれ落ちた物質が血液中を流れ、細い血管を詰まらせたりするケースもあります。脳につながる大切な血管である頸(けい)動脈が硬くなると、脳に十分な血液が流れなくなる恐れもあります。
 動脈硬化は、サイレントキラー(静かなる殺人者)ともいわれています。それは動脈硬化そのものには自覚症状がないからです。加齢とともに静かに進行し、ある日突然、脳卒中や心筋梗塞など命にかかわる疾患を起こして初めて動脈硬化に気付くというケースも多いのです。
 動脈効果を引き起こす原因としては、高血圧、高脂血症、糖尿病、メタボリック・シンドローム、肥満、喫煙、動脈硬化の家族歴などが挙げられます。動脈硬化はある日急に表れる症状ではなく、若い頃からの生活習慣の積み重ねによる“血管の履歴書”といえます。つまり、動脈硬化の予防は若いうちから行う必要があるのです。

動脈硬化の予防について教えてください。
 動脈硬化の予防には、定期的な検査を受診することが何よりも大切です。特に有効と思われる検査が、頸(くび)の左右に超音波をあてる頸動脈エコーです。この検査では、動脈硬化を簡単に視覚化して調べることが可能です。痛みや被ばくもなく定期的に検査を行えます。検査効果を過去のデータと比較できるので、高血圧、高脂血症などの治療が適切かどうか、実際に動脈硬化の進行を阻止できているかどうかの効果判定ができ、その結果に応じて治療を変更したり、生活習慣の改善を促したりすることができます。患者さんと医療者が共通の目標を持つ動機付けになるという利点もあります。さらに、頸動脈は全身の血管の中で、もっとも動脈硬化が生じやすいという特徴があるので、全身の動脈硬化の“代表”として捉えることもできます。
 頸動脈エコーは、動脈硬化のある人、動脈硬化が疑われる人には保険適用があります。動脈硬化のリスク要因を持つ人、検診などで脳梗塞が疑われたり、無症候性脳梗塞があると指摘された人は、一度頸動脈エコーで動脈硬化の状態を自分の目で確かめてみることをお勧めします。