2012年1月25日水曜日

COPD(慢性閉塞〈へいそく〉性肺疾患)

ゲスト/医療法人社団 大道内科・呼吸器科クリニック 大道 光秀 院長

COPDについて教えてください。
 COPDは、日本語で「慢性閉塞(へいそく)性肺疾患」と訳されます。患者さんの数が増え、最近では新聞やテレビなどでも病名を目にするようになりました。気道の空気の流れが慢性的に悪くなり、咳(せき)や痰(たん)、労作時の息切れが出てきて、最後は呼吸困難になる病気です。以前では、肺気腫や慢性気管支炎という病名で言われていましたが、それらの病気になってしまう過程や終末像として、COPDという病名が普及してきました。
 COPDは肺の生活習慣病ともいえます。初期には咳や痰、坂道や急いだ時の息切れといったありふれた症状で、ただ風邪が長引いているだとか、「年齢のせい」と思っていて、気付かないうちにゆっくりと症状が進行し、病院を受診した時にはかなり悪化しているというケースが多いのです。また、それまで症状がなくても、風邪やインフルエンザなどの感染症がきっかけで咳、痰、呼吸困難の症状がつよく出てきて、はじめてCOPDをもっている事が分かることがあります。またCOPDは冬に症状が悪化し、夏には改善します。
 病変は、肺胞と気道に起こります。肺胞を仕切る壁である肺胞壁が壊れると、血管も壊れてしまい、ガス交換の効率が悪くなります。肺の弾性力が減るので、息を吐く時に気管支を拡げる力が減り、空気の流れが悪くなります。一方、気道では炎症を繰り返すことで過剰に痰が分泌され、気管支の粘膜も厚くなり、気道を狭くし空気の流れを悪化させます。

COPDの患者が増えてきたのはなぜですか。
 COPDの主な原因は喫煙や大気汚染ですが、日常の診療のイメージでは喫煙によるものがほとんどです。喫煙による肺の障害は男性より女性が強く、女性の喫煙率が高い北海道では女性患者が増加しています。
 COPDは軽いうちであれば禁煙や気管支を拡げる薬の吸入や飲み薬での治療が可能ですが、症状が進めば呼吸困難のため日常の生活が困難になり、高濃度の酸素を吸入する「在宅酸素療法」などが必要になります。咳や痰、労作時の息苦しさなどを感じたら、肺の機能検査を受けてください。早期に発見し、治療することが重要で、生活習慣病ですから治療は長期に渡ります。予防法は、何といっても禁煙です。最近では病院でも禁煙を積極的にサポートしていますから、禁煙に失敗した人は、一度相談してみることをお勧めします。

2012年1月18日水曜日

白内障

ゲスト/ふじた眼科クリニック 藤田 南都也 院長

白内障について教えてください。
 人間の目はカメラに例えることができますが、白内障はカメラのレンズにあたる水晶体が濁ってくる病気です。進行すると、ものがかすんで見える、ぼやけて二重に見える、明るい所へ出るとまぶしくて見えにくい、などの症状が現れます。
 白内障の原因で最も多いのは、目の老化によるもので、70歳代以上になるとほぼすべての人に、白内障による視力低下が認められます。アトピー性や糖尿病、外傷による白内障は、若いうちから発症することもあります。また、生まれつき水晶体が濁っている先天性白内障もあります。
 年を取ると避けられない病気なので、ある程度の年齢になれば定期的な検診が必要です。白内障は進行するにつれ、水晶体が硬くなり、治療が難しくなります。何となく目がかすむ、ものが見えにくいといった症状を感じたら、早めに専門医の診察を受けるようにしましょう。

白内障の治療について教えてください。
 白内障が軽度で、視力に影響が小さい場合は、点眼薬によって病気の進行を抑える治療が行われます。しかし、濁った水晶体を元に戻す薬はありませんので、進行した白内障には手術が行われます。
 患者さんの全身状態や通院に問題がなければ日帰り手術ができます。年齢や体の状態によっては入院が必要となりますので、医師と相談して決めてください。
 手術は、濁った水晶体を超音波で砕き、「眼内レンズ」と呼ばれる人工のレンズを入れます。眼内レンズによっては近視や遠視などの屈折異常を治すこともできます。手術は通常局所麻酔で行い、痛みはほとんどありません。手術時間は通常10〜数十分程度が一般的です。
 術後は、早ければ翌朝には視力改善を体感できますが、目の状態が安定するまでは点眼加療が必要です。当院では術後約1週間は、紫外線をカットし、ホコリなどから目を守る保護メガネを装用していただきます。
 手術を一度行えば、再度白内障になることはありません。眼内レンズは半永久的に持ちます。ただし、時々、水晶体が包まれていた薄い膜に濁りが出てくる場合があり、これを後発性白内障と呼びます。その際はメスを入れる必要はなく、レーザーを使って濁りを取ることができ、視力はすぐに回復します。

2012年1月11日水曜日

鼻から入れる内視鏡

ゲスト/やまうち内科クリニック 山内 雅夫 院長

鼻から入れる内視鏡について教えてください。
 これまで、胃内視鏡検査は口から入れる経口内視鏡を用いるのが一般的でした。しかし、最近は「経鼻内視鏡検査」という鼻から挿入する方法で検査が行われることも増えてきました。経鼻内視鏡はかなり以前からあったのですが、近年は性能が良くなり、導入する医療機関が急増しています。
 弾力性のあるしなやかなチューブで、直径は5㎜台と、一般的な経口内視鏡の9㎜に比べて細く、スムーズに挿入することができます。画像もクリアな高画質で、視野が広く、ごく小さな病変も発見することが可能です。
 経口内視鏡は挿入時、舌の付け根の舌根という部分に内視鏡が触れることで、検査の最中に「オエッ」という吐き気を催すことがあるなど、患者さんの負担が大きかったのですが、経鼻内視鏡では鼻から挿入した内視鏡は鼻腔(びくう)を通って食道に入るため、嘔吐(おうと)感や痛みもほとんどありません。また、検査中に医師と会話できることも、医師と患者さん双方にとって大きなメリットになっています。さらに、鎮静剤の使用が不必要なので、検査後ただちに車の運転なども可能です。

実際にはどのように行いますか。
 最初に鼻づまりがあるか、鼻血が出やすいかなど鼻の状態を確かめます。鼻の疾患がある場合などは、経鼻内視鏡が使用できないこともあります。前処置として、鼻腔に局所血管収縮剤をスプレーし、鼻の通りを良くして出血をしにくくします。鼻腔に麻酔薬を注入してから、麻酔薬を塗った内視鏡と同じ太さの柔らかなチューブを挿入し、鼻腔の局所麻酔を行います。これによって、内視鏡が通過するときの痛みが抑えられます。局所麻酔なので、眠くなったりすることはありません。この後、内視鏡が鼻から挿入され、鼻腔、のど、食道、胃、十二指腸と順次観察がなされ、通常数分以内に終了します。
 がんや潰瘍など、食道や胃、十二指腸などの疾患は、早期発見、早期治療が完治への近道です。「検査が怖い」「以前すごくきつかった」など経口内視鏡を嫌うあまりに受診が遅れて症状が進行していることもあります。経鼻内視鏡は患者さんの体への負担が少ないので、内視鏡が苦手でちゅうちょしている人は、一日も早く医師に相談してほしいと思います。

2012年1月6日金曜日

秋から冬にかけての悩み・乾燥肌

ゲスト/宮の森スキンケア診療室 上林 淑人 院長

乾燥肌について教えてください。
 秋から冬にかけて寒い季節に、多くの人が悩まされる肌のトラブルといえば乾燥肌です。皮脂欠乏症または乾皮(かんぴ)症ともいい、中高年の手足、特に膝から下の皮膚によくみられます。皮膚が乾燥して、カサカサした状態になり、ひどくなると白く粉をふいたり、ひび割れてうろこのようになったりします。ある程度乾燥すると、それだけでかゆみを伴い、掻(か)くと悪化して皮膚炎を起こす場合もあります(皮脂欠乏性湿疹)。
 皮膚表面を覆う脂分など、皮膚の潤い(水分量)を保つ成分が、加齢などにより減ったり、不足することが乾燥肌の原因です。また、外気や室内の乾燥、皮膚を強く洗い過ぎるといった生活習慣なども原因の一つと考えられています。乾燥してカサカサした皮膚は、目に見えない細かな傷がたくさん付いた皮膚ともいえます。これらの傷からいろいろな刺激物が入り込んでかゆみを起こし、さらなる皮膚トラブルの原因となります。放っておくとますます症状は悪化しますので、早い時期から治療することが大切です。

乾燥肌の治療と対策について教えてください。
 治療は、傷ついた皮膚の表面に潤いを与える保湿剤が中心となります。皮膚のダメージに応じて、かゆみや炎症を抑える塗り薬、飲み薬を処方することもあります。ただの乾燥肌と思っていたのが実際にはアトピー性皮膚炎だったというケースや、かゆみの症状には別の皮膚の病気が隠れていたというケースもありますので、自己判断に頼らず、専門医と相談の上で治療することをお勧めします。
 乾燥肌対策として日常生活で気を付けたいポイントは、①保湿クリームなどを小まめに塗り、皮膚の潤いを保つこと。特にお風呂上がりに塗るのが効果的です。②お風呂で体をゴシゴシと洗いすぎないこと。あかこすりやナイロンタオルで皮膚を強くこすると、皮脂がどんどん失われていきます。また、せっけんには汚れと一緒に脂分を落とす成分が含まれているので、使い過ぎには注意が必要です。③室内を適切な湿度に保つこと。空気が乾燥すると、皮膚の乾燥やかゆみもひどくなります。特に冬期間は室内が乾燥しがちなので、加湿器などで部屋の湿度を保つようにしましょう。

子どもの歯科矯正治療

ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治 正光 院長

子どもの矯正治療について教えてください。
 お子さんの歯並びが気に掛かり、矯正が必要かどうか判断に迷われる人も多いと思います。子どもの歯並びのチェック方法の一つとして、お子さんの口元を顔の正面から観察することをお勧めします。上の前歯と下の前歯の真ん中の位置が一致していればひと安心ですが、ずれている場合は、矯正の必要があると考えられます。
 出っ歯や受け口といった上下の顎が前後に大き過ぎたり小さ過ぎたりという骨格的な問題は、一般の人にも気付きやすいのに対し、左右のずれは発見しにくいものです。自然な矯正治療なら、顎骨(がっこつ)の成長コントロールが可能な9〜10歳までに行うのが理想的です。この時期なら就寝時に、バイオネーターやFKO(エフカーオー)と呼ばれる機能的顎(がく)矯正装置を装着し、ずれた顎の骨を中央に移動させます。子どもの成長能力を生かしたもので、痛みはほとんど感じられず、日中は装着する必要がありません。ずれの程度にもよりますが、装着期間は平均で半年から1年。経過観察のための通院は、1〜3カ月に1度が目安です。
 ずれの原因には、歯そのものがずれている場合もあり、永久歯がそろってからでも治療は可能です。その場合は、抜歯する可能性が高くなりますが、きれいに治療できることが多いです。判断は非常に難しいので、ぜひ専門医にご相談ください。

家庭でチェックするための別の方法はありますか。
 頬づえやかみ癖、就寝時の体位が左右どちらかに大幅に偏っている場合などは、左右のずれを引き起こす原因となることがあります。上の前歯と下の前歯の中央の位置が一致しているのを確認したら、次は鼻の先端を基準に、顔の中央に前歯の中心が沿っているかを確認してください。ずれの原因は一見して分かるものではなく、万が一、骨格のずれを歯のずれと勘違いして放っておくと、矯正に最適な成長期を逃してしまう場合もあります。
 子どものうちの悪い歯並びやかみ合わせを放置してしまうと、大人になってから心理的な悪影響を及ぼしたり、虫歯や歯周病、顎関節への影響が出てくる場合もあります。小児期に歯並び、かみ合わせの治療を行うことで、これらの心配を減らすことができます。少しでもおかしいなと感じたら、早めに専門医に相談することをお勧めします。また、歯科矯正は自由診療となりますので、費用についてもその際に問い合わせると良いでしょう。

心の病気とそのサインについて

ゲスト/医療法人社団 正心会 岡本病院 島子 智之 医師

心の病気の初期症状とそのサインについて教えてください。
 睡眠異常(不眠・過眠)、食欲異常(過食・拒食)、やる気が出ない、そわそわして急に落ち着かなくなる、人と接したくないというのが、心の病の代表的な初期症状です。趣味や好きだったものに急に興味を持たなくなる、示さなくなるといった場合も注意が必要です。一般的に、そういった症状が2週間程度続く場合は、心の病のサインだと考えてください。
 最近では、テレビやインターネットの情報だけで、自分の病気を判断して「自分はうつ病だ」と思い込んでしまう人が多くみられます。それらの情報は、正しいものもありますが、間違った情報も数多く含まれています。すべてをうのみにして、病気でもないのにふさぎ込んでしまっては、別の病気を発症してしまう可能性も考えられます。
 心の病は、早期発見・早期治療が肝心です。体がだるい、食欲がない、よく眠れないなど、自分の体調がいつもと違うと感じたら、まずは一度専門病院を受診することをお勧めします。

心の病は、どのような人が発症するのでしょうか。
 心の病は年々、発症数が増加傾向にあり、現在では日本人の5人に1人がうつ病を発症しているといわれています。また、うつ病以外にも、不安障害やパニック障害などさまざまな心の病が存在しています。ストレス社会で生きる私たちにとって、心の病はいつ、誰が発症してもおかしくない、非常に身近な病気といえます。
 しかし、「精神科」や「心療内科」と聞いただけで、受診をためらう人が少なくありません。時代とともに改善されてきたと思われますが、心の病が一種特別な病気とみなされることがあり、カウンセリングに通っていることを周りの人に悟られたくないと考える人が多いようです。心の病気は自分の病のつらさと、周りに理解してもらえないつらさで、二重につらい病気です。辛さを我慢している状態が続くと、病状が悪化し大変なことになってしまうケースもあります。だからこそ、家族や友人、会社の同僚など、本人以外の第三者が心の病の症状や治療などについて正しく理解し、病気の兆候を見逃さないようにすることが重要なのです。心の病は、専門医による適切な治療はもちろんですが、周囲の人が病気への理解を示し、共感してあげることが一番の特効薬といえます。

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