2012年12月19日水曜日

健康寿命


ゲスト/みどり内科クリニック 小田 朗 副院長

健康寿命とはどのようなものですか。
 誰にでもやがて訪れる老年。“ぴんぴん”と元気に老いて、最後は寝付かずに“ころり”と死にたいと思う人は多いでしょう。医療や福祉の分野で「ぴんぴんころり」というキャッチフレーズは、理想の老い方の代名詞のように使われています。
 日本は先進国の中で最も平均寿命が長い国です。しかし、自立して健康に生活できる期間を示す「健康寿命」はそれほど延びていません。晩年、介護が必要になったり、病気を患ったりで日常生活が制約を受ける期間は、男性が約9年、女性が約13年といわれています。生存期間の“年月”を測定した平均寿命と、“生活の質”に焦点を当てた健康寿命との差は意外に大きいのです。「ぴんぴんころり」の考え方は、健康寿命を延ばし、平均寿命との乖離(かいり)をいかに縮めていくかということです。

健康寿命を延ばすためのアドバイスをいただけますか。
 健康寿命を延ばすためには、「メタボリックシンドローム(メタボ)」と「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」の予防、対策が重要です。
 メタボは、内臓脂肪型肥満をベースに高血糖、高血圧、脂質異常が複数重なることによって動脈硬化を引き起こします。その結果、心疾患や脳卒中といった重篤な病気の危険性が急激に高まるので、大変危険です。特定健診などで早期に発見し、生活習慣の改善など対策を立てるとともに、血管の老化の程度を把握するための検査を受けることが有効です。血管内の狭まり具合を調べる頸(けい)動脈エコー検査や、手と足の脈のリズムの差から、動脈血管の硬さなどを数値化できるABI/PWI検査(血圧脈波検査)などがあります。
 ロコモは、骨や筋肉、関節など運動器の働きが加齢などにより衰え、要介護になるリスクの高い状態になることをいいます。脳卒中のように直接、生命を脅かすことは少ないですが、骨折により寝たきりになってしまうケースなど、放置すると重症化する恐れがあります。ロコモを防ぐには、筋力が低下する40代後半から準備しておくことが大切です。骨密度を測定する検査で自分の骨密度を把握し、骨粗しょう症の予防に役立てるなど、早期診断・治療を心掛けましょう。
 悪くなってから治療のために病院に通うのではなく、強い体をつくり、病気を予防するために病院を上手に利用することも重要です。

2012年12月12日水曜日

マイコプラズマ肺炎


ゲスト/医療法人社団 大道内科・呼吸器科クリニック 大道 光秀 院長

マイコプラズマ肺炎とはどのような病気ですか。
 マイコプラズマ肺炎は、かつては4年ごとのオリンピックの年に流行するといわれていましたが、最近では毎年のように流行しています。1999年に発生動向の調査を開始して以来、今年は過去最高の患者数が報告されています。
 原因となるマイコプラズマは、正式には「肺炎マイコプラズマ」という名前の微生物で、細菌より小さく、ウイルスより大きく、細菌にもウイルスにもない性質を持っています。ウイルスはヒトの細胞の中でしか増えませんが、マイコプラズマは栄養があればヒトの細胞外でも増えていきます。
 初期の症状は、倦怠(けんたい)感、のどの痛み、発熱などがあり、インフルエンザの症状と似ています。3〜5日たつと頑固なせきが始まります。乾いたせきが徐々にひどくなり、解熱後も長期にわたって(3〜4週間)持続します。時期によっては痰(たん)が出ることもあります。肺炎にしては元気で、一般状態も悪くないことが多いのですが、一部に重症肺炎となる場合や、胸水がたまったり、髄膜炎や多発神経炎を発症したりする場合もあります。また、肺炎にならなくても、マイコプラズマによる気管支炎のためひどいせきが1カ月以上続くことがあり、気管支ぜんそくや咳ぜんそくなどと鑑別が困難なケースもあります。

マイコプラズマ肺炎の治療と予防について教えてください。
 一般的な細菌感染症に使われるペニシリンやセフェム系などの抗生物質は、細菌の外側にある細胞壁を壊して、細菌を殺す作用を持つため、細胞壁のないことが特徴のマイコプラズマに対しては効果がありません。このため、マクロライド系抗菌薬やテトラサイクリン系抗菌薬、ニューキノロン系抗菌剤が有効となります。
 近年、マクロライド系抗菌薬に耐性を持つマイコプラズマの割合が増加しつつあります。しかし、耐性菌で発症した場合でも、マクロライド系抗菌剤を続けて飲めば、熱などの症状が数日長引きはしますが、効果はあります。テトラサイクリン系抗菌薬、ニューキノロン系抗菌剤は耐性菌に効きますが、小児の場合は副作用があり、子どもには使いにくい薬です。
 予防策は、かぜやインフルエンザと同じで手洗い、うがいを励行し、せきの症状がある場合には、マスクを着用するようにしてください。

2012年12月5日水曜日

「こころの安全地帯」とストレス社会


ゲスト/医療法人社団五稜会病院 千丈 雅徳 院長

 日本ハムファイターズは惜しかったですね。でも、ダルビッシュが大リーグに行ったり、若い人が監督になったりして、大丈夫かなあと思っていたので、こんなに頑張るとは驚きでもあります。想定外のうれしい誤算です。ですから、よくやった、頑張った、という気持ちでいっぱいです。 日本ハムファイターズが札幌ドームを本拠地としてから、私たちはたくさんの夢をもらってきました。本当に感謝ですね。
 ところで私たちが、このストレスあふれる社会の中で生き抜いて行くために大切なのは、札幌ドームならぬ、「こころの安全地帯」です。 傷ついた心を癒やし、今日の出来事をみんなで一緒に喜び、あるいは泣いて、そして、スッキリして、明日からまた一歩踏み出す、そんな「こころの安全地帯」が必要です。
 先行き不透明な社会情勢の中、厳しい現代を生きている私たちは、何げない毎日を送っていくだけでも緊張と不安、恐怖の連続です。「こころの安全地帯」とは、そうした不安感や強い緊張感に支配されても、いつでも逃げ込める場です。ホッと安心して休んで、優しい言葉掛けをしてくれる気心の知れた人が居て、痛みそうなこころを癒やしてくれる場。混乱した考えを整理して、なあんだ、何とかなりそうだ、という気持ちにしてくれる場。そして、世の荒波に立ち向かって行こうという勇気を与えてくれる場です。そんな場があってこそ、先の見えないこの社会の中に不安感を持ちながらも立っていることができます。
 イギリスの精神分析医のジョン・ボウルビィが、愛着理論の中で、セキュア・ベース(こころの安全基地)という概念を出しました。「安全基地」は単なる場だけではなく、2歳前後の子どもに対する母親などの養育者との安心感に満ちた人間関係をも意味します。1歳を過ぎた子どもは母親から離れ、自分の力で歩いて周りの世界に好奇心をもって探検し始めますが、不安や恐怖もあります。そこで、子どもは母親を「安全基地」にしながら、外の世界に出て行き、不安になったら母親の所に戻る、ということを繰り返し、やがて母親から離れて自立していきます。「安全基地」は幼い時期に特徴的な言葉として用いられますが、現代社会では、大人も同じように「安全基地」ならぬ、「こころの安全地帯」が必要なのです。
 あなたは「こころの安全地帯」を持っていますか?「こころの安全地帯」は結婚相手や家族や昔からの友達以外でも、今日から、ここから広げていくことは可能です。ネットでの関係もリスクを伴うでしょうが、時には賢く利用してもよいでしょう。しかし、あまり多くの人と知り合ってかえって煩わしくなるのも考えものです。また、「こころの安全地帯」は特定の一つに限定しないことも大事です。いつも離れずにベッタリくっついている関係は、やがて、息苦しいものになったり、予期せぬ嫌な感情が生じる危険性があります。
 なかなか安全な「こころの安全地帯」を持てない場合は、お近くの心療内科や精神科でカウンセリングという形で行われている安全な治療手段を利用されるのも一案かもしれませんね。

2012年11月28日水曜日

最新の糖尿病治療薬


ゲスト/医療法人社団 青木内科クリニック 青木 伸 院長

最新の糖尿病治療薬について教えてください。
 糖尿病治療薬の最近の進歩は目覚ましいものがあります。飲み薬では、高血糖の時にだけすい臓からインスリンを分泌させ、正常血糖へ下げる「DPP-4阻害薬」があります。この薬は理論的には低血糖を起こさず治療できる新薬で、糖尿病の平均血糖の指標であるHbA1c値を1.0%前後下げます。この薬と同じ系統の注射薬も登場し、「GLP−1受容体作動薬」と呼ばれています。この注射薬はHbA1c値を1.6%前後下げます。現在は1日1回の注射が必要ですが、将来的には1週間に1回で済む注射薬も出る予定です。この系統の注射薬は、すい臓のインスリンを出す細胞を保護し、インスリンの分泌を弱らせない作用も持ち合わせているといわれています。
 一方、インスリン注射薬に目を向けると、「持効型インスリン(1回の注射で24時間効果を持続する長時間作用型インスリン)」があります。飲み薬の治療が効かなくなる症例でも、飲み薬をそのまま服用しながら、1日1回の持効型インスリンの注射を加えると血糖が改善する症例もあります。「混合型インスリン」は、持続型インスリンと超速攻型インスリンの合剤ですが、超速攻型インスリンの含有率が50〜70%の製剤が最近使用できるようになりました。食後血糖の高い症例を治療するのに便利なインスリンです。

糖尿病の治療について教えてください。
 糖尿病の治療が良好といえる目安はHbA1cが6.9%以下になっている場合です。糖尿病の患者さんの約半数が高血圧と脂質異常症(高脂血症)を合併しているといわれています。糖尿病を合併した高血圧の治療はとても重要で、血圧の治療目標値は130/80mmHg以下です。自宅で簡易血圧測定器を使用して治療に役立てる方法もあります。この場合使用する測定器は、指先や手首に巻くタイプのものではなく、上腕に巻くタイプのものをお勧めします。脂質異常症の治療目標値は、LDL-コレステロール(悪玉コレステロール)が120mg/dl以下です。以上のようなさまざまな基準値を長期間保てば、眼底出血(失明)、腎臓の悪化(透析)、足の潰瘍・壊疽(えそ)による足の切断など糖尿病に由来する重症の合併症にならなくて済みます。それ以外にも脳梗塞(こうそく)、心筋梗塞などの予防にもつながります。

2012年11月21日水曜日

歯の外傷


ゲスト/医療法人社団アスクトース 石丸歯科診療所 近藤 誉一郎院長

転倒などで歯が折れた時の処置について教えてください。
 自転車で転んだ、両手がふさがっている状態で転倒した、スポーツでの衝突など、外傷により歯が破折した場合は、すぐに歯科医を受診することが大切です。外傷を受けた歯は、早期の治療によって予後がまったく変わってきます。受診する際、折れた歯の破片があれば、持参するようにしましょう。折れた部位、大きさ、形などを推定し、治療の参考にすることがあるからです。
 歯科医では、まずエックス線検査で、折れた部位を特定し、他にひびなどが入っていないか、歯の周囲の骨に異常がないかなどを調べます。治療は、歯の欠けた部分の位置や大きさによって異なります。歯の頭の部分など浅い位置での破折は、樹脂などで欠けた部分の修復を行い、元に近い状態まで戻すことができます。破折が歯の内側の象牙質にかかるような場合は、神経の処置をした後、差し歯などの被せる方法で修復するのが一般的です。折れた場所が深く、残る根が少ない場合は、歯を抜かなければならないこともあります。

歯がグラグラしている時、歯が抜け落ちてしまった時の処置について教えてください
 外傷により歯がぐらついているケースでは、ワイヤーなどを用いて隣の歯と固定し、安定を図ります。固定期間は症状や年齢によって異なりますが、1〜2週間が目安となります。その後、歯髄組織(歯の神経)へのダメージを見るため、約6カ月間の経過観察が必要です。歯髄が壊死(えし)してしまった場合は、神経を取って根の治療を行います。数カ月経ってから歯髄が壊死して、その結果、歯の色が黒ずんで見えてくることもあります。
 歯が完全に抜け落ちてしまった場合、最も重要なのは、抜けた歯を乾燥させずに保管し、早急に歯科医を受診することです。歯には「歯根膜細胞」という、歯と生体をつなぐ組織があり、抜けた歯を元に戻すことができるかどうかは、この細胞の有無に懸かっています。歯根膜細胞は乾燥に弱く、約30分で大半が死滅してしまいます。抜けた歯の保管場所として最適なのは、市販されている歯の専用保存液、もしくは、コップなどに入れた牛乳の中に浸すことです。専用保存液なら約24時間、牛乳なら約12時間、歯根膜細胞を生存させることができます。処置が早ければ早いほど、もう一度歯を戻して残せる可能性は高くなります。

2012年11月14日水曜日

ウイルス性胃腸炎


ゲスト/医療法人社団 いし胃腸科内科 石忠明院長

ウイルス性胃腸炎とはどのような病気ですか。
 微生物の感染を原因とする胃腸炎の総称を「感染性胃腸炎」といいます。感染性胃腸炎は、O-157(病原性大腸菌)やサルモネラ菌などの細菌を原因とする「細菌性胃腸炎」と、ノロウイルスなどのウイルスを原因とする「ウイルス性胃腸炎」の二つに大きく分けられます。いずれも主な症状は嘔吐(おうと)、下痢、腹痛、発熱などです。1年を通して発症しますが、細菌性胃腸炎は夏季に、ウイルス性胃腸炎は冬季を中心に流行し、集団生活の場で大規模に流行することもあります。
 ウイルス性胃腸炎の代表が、ノロウイルスとロタウイルスによるものです。両者ともウイルスが人の手などを介して、口に入った時に感染する可能性があります。ノロウイルスによる胃腸炎は、カキなどの二枚貝がノロウイルスに汚染され、感染源になると考えられていますが、料理を食した際以外にも、調理器具や食器、調理した人の手、嘔吐物、便などからも感染が広がります。ロタウイルスによる胃腸炎は、乳幼児に多くみられ、大人もかかることがあります。
 ウイルス性胃腸炎の多くは数日で回復します。しかし、乳幼児や年配の方は、嘔吐、下痢などによる脱水で病態が悪化する恐れがあるので、早めに医療機関を受診することが大切です。

ウイルス性胃腸炎の治療と予防について教えてください。
 治療は、ウイルスには抗生物質が効かないため、整腸剤の処方や点滴による水分・栄養補給など、症状を軽減するための対症療法が行われます。感染が疑われる場合、周囲に感染を広げないよう、数日は仕事や学校を休む必要があります。自宅では、小まめな水分補給で脱水を防ぎ、安静に努め、回復期には消化の良い食事を取るよう心掛けましょう。基本的には自然に治まっていくのを待つしかありません。
 ウイルスから身を守るのに最も有効なのは、外出後や調理・食事前、トイレの後などに、石けんを使った手洗いを励行することです。家族に患者さんがいる場合には、二次感染を予防するために、嘔吐物や便を処理する際にビニール手袋、マスクを使用するなどの注意が必要です。タオルも家族と共有しないようにしましょう。症状が落ち着いても、しばらくは便へのウイルスの排出が続くため、患者さんの入浴は、最後にするようにしてください。

2012年11月7日水曜日

認知症


ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 西 裕 医師

認知症とはどのような病気ですか。
 認知症は、いったん発達した知能が、さまざまな原因で持続的に低下し、記憶障害がひどくなり、生活に支障を来たすようになった状態のことを示します。
 原因別にいくつかの種類に分類され、代表的なのが「アルツハイマー型認知症」で、患者さんの約6割を占めます。「アミロイドβ」というタンパク質が脳に蓄積することで、脳が萎縮して起きるとされています。物忘れを主な症状に、数年から十数年かけて緩やかに進行します。次に多いのが、脳梗塞や脳出血など脳卒中が原因で発症し、階段状に憎悪、進行するとされる「脳血管性認知症」で、全体の約2割を占めます。
 症状は認知症の種類や人によって異なりますが、初期には記憶障害が現れ、進行するにつれ妄想や徘徊(はいかい)、攻撃的行動などの精神症状・行動異常を伴う場合が多いです。よくみられるのが「物盗(と)られ妄想」です。財布の置き場所を忘れてしまうのですが、忘れた自覚がないので「誰かに盗まれた」と被害妄想を抱くようなケースをいいます。
 多くの認知症には根本的に治療する薬がないので(アルツハイマー型認知症には進行を緩和する薬があります)、治療は病気の進行を遅らせることが重要になってきます。過去の記憶について語り、脳の活性化につなげる「回想療法」や音楽を通して脳を刺激する「音楽療法」などの療法が行われることがあります。

認知症患者に対する接し方、向き合い方について教えてください
 家族の方に気になる症状が現れたとしても、受診させるのを躊躇(ちゅうちょ)してしまうケースや、本人も自分が認知症であることを認めたくない気持ちが強く、病院に行きたがらないケースも多いです。対応として、健康診断的な面を強調するなど、本人のプライドを傷つけない配慮をしつつ受診を勧めるようにしてください。受診を先送りにすればするほど問題は大きくなりがちです。早期に治療すれば、穏やかに生活できる時間を長くすることができます。
 もし認知症と診断されたら、症状の進行によっては市町村の窓口で介護保険制度に基づく申請を行いましょう。認定された要介護度の程度に応じて、訪問介護、通所介護、短期入所生活介護などの介護支援サービスが受けられます。認知症の介護は長期に及びます。家族間で問題を抱え込まず、医師、看護師、福祉関係者など専門家と相談していくことが大切です。

2012年10月24日水曜日

肌質や季節の変化に合わせたスキンケア


ゲスト/宮の森スキンケア診療室 上林 淑人 院長

スキンケア化粧品(基礎化粧品)の上手な選び方、使い方について教えてください 。
 スキンケア化粧品にはクレンジング、洗顔料、化粧水、美容液、乳液、クリームなどたくさんの種類が存在します。ブランドや過剰な宣伝に流されてしまいがちですが、自分の肌質や肌の状態に合うものを選ぶことが基本です。肌に合わないものや必要ないものを使うと、逆に肌のコンディションを悪くしてしまうこともあります。
 またスキンケア化粧品は、毎回、すべての種類を使うのが最適とは限りません。例えば、ニキビのできている肌には、油分を控えめにした方がいいのですが、「毎日の習慣だから」とオイルの多いクリームを付けてしまうと肌に負担を掛けてしまいます。その化粧品が自分にとってどのような効果があるのかを見極めて、使う量を調節したり、使うのを一旦やめたりすることも大事です。
 どんな人でも季節によって肌のコンディションは変わります。季節の影響を受ける肌をよく見ながら、スキンケア化粧品を使い分けたり、使い方を工夫したりする必要もあります。

肌質や季節の変化に合わせたスキンケアとはどのようなものですか。
 肌質は、大まかに「脂性肌」「普通肌」「乾燥肌」の3タイプに分けられます。脂性肌は、テカリやベタつきが目立つ肌質。乾燥肌は、しっとり感の足りないカサカサした肌質です。脂性肌タイプのスキンケアのコツは、丁寧な洗顔で余分な皮脂を取り除くこと、油分を過剰に補わないことです。一方、乾燥肌タイプは、肌に水分をしっかり保たせるために、保湿成分を含んだ乳液やクリームで油分を補うことが大切です。
 季節の移り変わりは、気温や湿度が変化するので、肌の状態にも変化を感じがちです。これまでと同じスキンケアで刺激を感じたりするなど、肌の調子が優れない場合は、肌が不安定になっているサインかもしれません。例えば、夏、汗などで皮脂が大量に出る場合、美容液やクリームを付けすぎると、肌がベタつき、吹き出物などの原因になります。人によっては化粧水だけで十分です。一方、空気の乾燥するこれからの季節は、美容液や乳液を使っても、肌がカサつき、かゆみを伴うことがあります。保湿力に優れたクリームでしっかり潤いを与えましょう。夏のさっぱりとしたケアから、秋冬のしっとりとしたケアへの切り替えが大切です。

2012年10月17日水曜日

強迫性障害


ゲスト/医療法人社団 正心会 岡本病院 山中 啓義 副院長

強迫性障害とはどんな病気ですか。
 強迫性障害は不安障害の一型であり、生涯有病率は1~2%程度です。男女比はほぼ同等で、平均発症年齢は20歳前後、男性がより早期発症の傾向があり、女性では結婚や出産に関わる時期の発症が多いとされています。
 強迫性障害の中核をなす症状は、反復的・持続的な思考や衝動、イメージにとらわれる「強迫観念」と、手洗い、確認などの繰り返しや儀式行為、数を数えるなど心の中の行為を含む「強迫行為」からなります。例えば、急いで外出したが鍵を掛けたか、試験に間違った答えを書かなかったか、手を洗ったが、まだ汚れがついているのではないか、大事な物を捨ててしまったのではないか、不吉な数が過剰に気になるなど、きっと間違いないと思いながら不安になるが、もう確かめようがない、この不安感を極端にしたものが、この病気の特徴といえるでしょう。一般的に、この病気の人たちは、このような観念、行為の無意味さや不合理性、過剰性を十分に認識し、何とかコントロールしようと試みているものの、不安に圧倒されて思うようにならず、大きな葛藤やストレスを感じています。このような不安や緊張、ストレスにより「うつ病」を合併することも多いとされています。

強迫性障害の治療法について教えて下さい。
 これらの症状が日常生活、社会生活に支障を来していれば、治療が必要となります。治療法はいくつかありますが、まずは薬物療法が有効とされています。第一選択薬としてSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)である、パロキセチン、フルボキサミンが、第二選択薬として三環系抗うつ薬であるクロミプラミンが有効とされています。これらの効果はゆっくり現われますので、8~12週間は継続してみるべきでしょう。
 また、カウンセリングとして、「認知行動療法」、「暴露反応妨害法」という治療法も有効とされています。これらの施行に当たっては、症状の程度なども含め、担当医との相談が必要となるでしょう。大切なことは、強迫性障害という病気の特徴を知ることです。そして、この病気は性格や意志の弱さとは関係ないことです。治療は長期にわたる場合もあります。状態に一喜一憂せず、ゆっくりと回復を待ちましょう。思い当たる症状があれば、まず精神科・心療内科を受診して相談してみてください。

2012年10月10日水曜日

世界初:アミノ酸測定によるがんリスク予測検査(AICS:アミノインデックス)


ゲスト/札幌駅前アップルレディースクリニック 工藤 正史 院長

AICSとはどのような検査ですか。
 AICSとは、Amino Index Cancer Screening(アミノインデックスキャンサースクリーニング)の略で、血液中のアミノ酸濃度から健康状態や疾病の可能性を明らかにします。健康な状態ではアミノ酸濃度は一定に保たれますが、がんの人では各種アミノ酸濃度バランスが変化します。この変化から子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がん、乳がん、胃がん、肺がん、大腸がん、前立腺がんのリスクを予測します。一度の採血で複数のがんのリスクを同時に予測できます。ただし、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんは3種まとめて1種類の検査となります。
 現在、AICSは次の3種類で自費となります。①女性・5種(1.子宮・卵巣がん、2.乳がん、3.胃がん、4.肺がん、5.大腸がんのリスクを調べます。料金は2万円前後です)、②女性・2種(1.子宮・卵巣がん、2.乳がんのリスクを調べます。料金は1万円前後です)、③男性・4種(1.胃がん、2.肺がん、3.大腸がん、4.前立腺がんのリスクを調べます。料金は2万円前後です)。対象年齢は、子宮・卵巣がんは20〜80歳、前立腺がんは40〜90歳、胃がん・肺がん・大腸がん・乳がんは25〜90歳です。

検査の数値からどのようなことが分かりますか。
 AICS値は、0.0〜10.0の間の値を取り、がんである確率が高いほど、高い数値になり、ランクA・B・Cに判定されます。
 がんの有病率は約0.1%といわれています。例えば、1万人の中には10人の胃がん患者がいると考えられます。AICS値の分布からランクAには8000人中2.5人、ランクBには1500人中2.4人、ランクCには500人中5.1人胃がん患者がいると推測します。このようにランクA→B→Cの順番でがんリスクは高くなるといえます。ただし、あくまでもリスクの予想です。病気の診断ではありません。ランクCだからといって、がんと決まるわけではありません。考え方としてリスクが高いと判定されたら、しっかりと精密検査を受ける必要があるということです。
 AICSは、アミノ酸のサプリメント、スポーツ飲料、牛乳、ジュースなども控えて、食後8時間以上を空け、午前中に採血を行います。妊娠中は対象外です。

2012年10月3日水曜日

ドライアイ


ゲスト/札幌エルプラザ 阿部眼科 阿部 法夫 院長

BUT短縮型ドライアイについて教えてください。
 目の表面の涙は、主涙腺で作られる液層と、マイボーム腺などで作られる油層の2層構造からなっています。液層の分泌減少や油層の減少は、蒸発亢進(こうしん)をまねき、量的減少を伴うドライアイの原因となります。このほかに、質的悪化が原因となるドライアイがあります。これが、BUT短縮型ドライアイです。
 BUT(Breakup Time)とは涙液層破壊時間のことで、まばたきをしないで涙の膜が破壊されるまでの時間のことです。これは涙が水滴化しないで、薄い涙の膜を作るために重要なムチンが関係しているといわれています。このタイプのドライアイは、まばたき直後から涙の膜の中に数個のダークスポット(黒い筋)が現れ、強い乾燥感、痛みを訴え、目を開けていられなくなります。しかし、涙の量に問題がなく、角膜の乾燥による傷もないので、見逃されやすい症状です。パソコンワーカーや、コンタクトレンズ使用者、比較的若い年齢層に多いといわれています。ドライアイは秋から冬にかけて悪化の傾向があり、これからの季節、特に注意が必要な疾患です。
 ドライアイには乾燥だけではなく、視機能の異常、眼精疲労などの多彩な症状を伴います。また、涙には目の乾燥予防だけではなく、角膜への酸素や栄養の供給、角膜表面との摩擦や感染の防止、ゴミやほこりの洗浄など、多彩な働きがあるのです。

各種ドライアイの原因と治療法を教えてください。
 長時間のパソコン使用やエアコンや暖房の使用、コンタクトレンズの装用は、ドライアイの原因となる可能性があります。量的減少を伴うドライアイには、従来からの点眼薬として、水分補給のための人工涙液と、保水、角膜の傷の修復のため、ヒアルロン酸が使われています。点眼薬で効果が十分ではない場合は、涙点プラグという、涙の流出口である涙点を閉鎖する治療を行います。質的悪化が原因となるBUT短縮型ドライアイには、ジクアホソルナトリウム、レバミピドの入った点眼液が使われています。刺激感がやや強い難点はありますが、6週間程度我慢していると改善が見られるケースも多く見られます。自己判断で市販薬で治療されている方も多いのですが、アレルギーを合併しているケースや、シェーグレン症候群、糖尿病など全身疾患に伴うもの、向精神薬・抗ヒスタミン薬などの薬剤による、涙腺神経ブロック作用など、原因はさまざまです。また、瞼が閉じられない顔面神経麻痺、夜間兎眼(とがん)など、眼科での鑑別や精密検査を必要とする場合もあります。気になる方は一度眼科の受診をお勧めします。

2012年9月26日水曜日

ぜんそくの最近の動向


ゲスト/医大前南4条内科  田中 裕士 院長

ぜんそくの最近の動向を教えてください。
 気管や気管支に慢性的な炎症が起きて狭くなり、呼吸が苦しくなるぜんそく。子どもに多い病気ですが、近年、高齢者のぜんそくが増えています。高齢者のぜんそくの特徴は、呼吸時に「ゼイゼイ」「ヒューヒュー」する「ぜん鳴(めい)」のない場合が多く、よくみられる症状は息切れです。ぜんそく特有の症状がないため、息切れがあってもぜんそくとは思わずに「年のせいだから」と自己判断してしまう人が珍しくありません。高齢者は呼吸機能が弱っており、ぜんそくが重症化しやすいので、早めの対処が肝心です。
 子どものぜんそくでは、運動中や運動後にせき込むといった症状が出る「運動誘発性ぜんそく」が増えています。運動時以外に症状はあまり出ないため、治療していない子どもも多いとされています。年を重ねてぜんそくの発作を誘発するケースもあるので、注意が必要です。
 近年、ぜんそくの原因の多様化・複雑化があり、治療が混乱している例も見受けられます。同じ薬のままで症状が改善しない場合などは、主治医に伝えて、原因を絞り込む検査や薬の変更を相談されてはいかがでしょう。

ぜんそくの診断、治療について教えてください。
 ぜんそくの診断では、ぜん鳴や呼吸困難があるかどうかが重要な判断材料になります。また、問診に加えて肺機能の検査やアレルギー、気管の炎症状態などを調べる検査も行われます。さらに、ぜんそくに似た病気もあるので、鑑別のための検査も必要です。中でも、呼気中の一酸化窒素濃度を調べる検査、気道の過敏さを測定する検査は、初期のぜんそくの発見、診療の難しいぜんそくの診断、ぜんそくの程度や経過を診るのに有効な検査といえます。
 現在のぜんそく治療は、気道の炎症を抑えて発作を起こさないようにする薬物療法が中心です。かつては、吸入薬の種類が少なく、副作用が出たら代わりに使える薬がありませんでしたが、近年は吸入薬の種類も増えています。
 ぜんそくの患者さんは、症状がない時も気管支の炎症が慢性的に続いています。そのため炎症を改善し、次の発作が起こらないように予防することが重要なのです。「最近、発作が起こらないから」という理由だけで、薬の量を減らしたり、治療を中断したりするのは絶対にやめましょう。

2012年9月19日水曜日

緑内障診断の大きな進歩


ゲスト/ふじた眼科クリニック 藤田 南都也 院長

緑内障とはどのような病気ですか。
 緑内障とは、眼圧の上昇などにより網膜が圧迫され、視野が狭くなる病気です。40歳以上の日本人の20人に1人が緑内障だと分かっています。原因は遺伝的な要因が大きく、加齢とともに症状が出てきます。血縁関係者に緑内障患者がいる人は特に注意が必要です。
 現在の医療技術では緑内障によって一度失われた視界を戻すことはできません。そのため、治療は視野の減少を抑えることが目的となります。点眼薬で眼圧をコントロールし、進行を抑えていきます。以前は内服薬や手術が必要になる場合もありましたが、効果の高い点眼薬の出現により、最近は少なくなっています。
 緑内障は目の痛みや充血などの自覚症状がなく進行することが多く、末期の状態になるまで、視野が狭くなるなどの症状を自覚しません。そのため、患者さん自身が病気であることに気付かず、最悪の場合、失明に至る恐れがあります。そうならないためにも、定期的に検査を行い、早期発見・治療を開始することが何よりも大切です。

緑内障の診断方法について教えてください。
 従来の緑内障の診断は、視野検査のほか、眼底の視神経乳頭のへこみや網膜の微妙な色調の変化を診察して進行の程度を判断していました。しかし、近年はOCT(光干渉断層計)という検査機器を使い、瞳を広げずに網膜の厚さを測定し、緑内障の有無やその進行を調べるのが一般的になりつつあります。
 OCT検査は、網膜のわずかな変化さえ検出できる精度の高い検査です。従来の検査では確認できなかった、視野異常が出現あるいは進行する前の初期の緑内障の診断を下すことができ、より早期の治療を開始できます。また、緑内障と強度近視や脳梗塞、先天性の眼底疾患などの視野異常を来す病気を合併した場合、視野異常のどれくらいの割合が緑内障によるものかを従来よりも正確に区別できます。そのため、不必要と思われた点眼治療を中止したり、逆に今後の悪化防止のための点眼治療を的確に開始したりするなど、診断・治療方針の決定や、治療の効果判定に非常に有用です。
 OCT検査は、放射線を使用しないため安全で、短時間で終了し、痛みもありません。また、1回の検査にかかる費用も安いので、40歳を過ぎたら一度は受診されることをお勧めします。

2012年9月12日水曜日

矯正治療


ゲスト/E-line矯正歯科 上野 拓郎 院長

矯正に対する最近の傾向について教えてください。
 日本人選手の活躍に一喜一憂し、スポーツの素晴らしさをあらためて実感した世界的なスポーツの祭典。その報道の中で仕事柄、どうしても各国選手の口元が気になりました。会場の声援に応える時、日本人の多くは、あまり口を開かずに、微笑んでいるのに対し、欧米人は大きく歯を見せて笑います。白い歯が輝く、はじけるような笑顔は、言葉が通じなくても異文化間の緊張をほぐし、見ているこちら側も明るく、すてきな気分にさせてくれるものでした。
 欧米では歯に対する意識が高く、痛みなどの症状がなくても定期的に検診を受けることが常識になっています。加えて、歯並びの良さや美しさがステータスを現すという価値観があるため、親は早い時期から子どもにオーラルケアを指導します。近年、日本でも正しい歯並び・かみ合わせが、機能面、健康面、審美面でいかに重要であるかが認知されてきました。矯正治療に恥ずかしさを感じることなく、堂々と矯正器具を装着する人が増えています。芸能人でも歯の表側に矯正器具を装着したまま、テレビや雑誌に登場している姿をよく見かけるようになりました。

なぜ、矯正治療が必要なのですか。
 歯科矯正は、他の病気を治すのと同じように、歯の正常なそしゃく機能を回復させることと、健やかな体を作るために必要な治療です。歯並びやかみ合わせが悪いと、虫歯や歯周病の原因になるばかりか、胃腸など消化器官にも大きな負担がかかります。発音にも影響し、審美面で劣等感を抱くことも考えられます。実際に、正しい歯並び、かみ合わせになると、口元を隠さずに笑顔を見せられるようになり、表情が驚くほど明るくなります。健康と自信に満ちた明るい笑顔は、男性であっても女性であっても、その人をより魅力的にします。歯並びやかみ合わせが悪いことを気にして不自然な笑顔になっているとしたら、それはとても残念なことです。
 歯並び、かみ合わせのタイプや程度によって治療に最適な時期や内容は異なります。矯正歯科専門医院では相談のみでも受けられますので、気軽に相談してみましょう。相談料は無料から3千円程度の医院がほとんどのようです。また、矯正治療は一部を除き自由診療になりますので、費用についても相談の際に聞いてみましょう。

2012年9月5日水曜日

関節の痛み


ゲスト/北海道内科リウマチ科病院 清水 昌人 副院長

関節に痛みを伴う病気について教えてください。
 膠原(こうげん)病の一つである関節リウマチが代表的なものです。進行すると関節の骨が溶けてくるのが特徴です。そのほかの膠原病には、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、多発性筋炎、強皮症、混合性結合組織病などがあり、いずれも関節痛を引き起こします。
 シェーグレン症候群は、主に唾液腺と涙腺が障害される疾患で、唾液や涙が減少し、口が渇く、目が乾くといった症状のほか、冷たい物に触れると手足の指が真っ白に変色する症状(レイノー現象)がみられることもあります。一部には発熱、リンパ節腫脹(しゅちょう)、間質性肺炎など全身症状を伴い、約25〜40%の割合で慢性甲状腺炎(橋本病)を合併します。
 全身性エリテマトーデスは、主に若い女性に発症する自己免疫疾患の代表です。顔面や手指に特徴的な発疹が出現し、発熱などの全身症状とともに、腎臓や中枢神経、肺などいろいろな臓器に障害を起こす場合があります。
 皮膚筋炎、多発性筋炎は、筋肉に炎症が起こり、筋肉痛や筋力の低下が現れます。進行すると階段の昇降やしゃがみ立ちなどが困難になり、日常生活に支障を来します。強皮症は、皮膚が徐々に固くなる病気で、肺や消化管、腎臓などにも障害を引き起こします。混合性結合組織病は、全身性エリテマトーデスと筋炎、強皮症の3つの膠原病の症状がいくつか組み合わさって現れ、レイノー現象のほか、手指がソーセージのように腫れる現象も多くみられます。

膠原病以外に関節痛を伴う病気はありますか。
 代表的なものに脊椎関節炎があります。体軸を中心とした疼痛(とうつう)と、四肢を主体とした疼痛がいろいろ組み合わさって起こる疾患です。これは、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患、手のひらや足の裏の発疹、目の疾患であるぶどう膜炎などに合併して起こることが知られています。
 また、感染症に伴うものでは、子どもの病気である伝染性紅斑(リンゴ病)が大人に感染した時に生じる関節炎が有名です。そのほかに、軟骨が変形し機能障害を来す変形性関節症や、尿酸が関節にたまることで結晶化し、炎症を引き起こす痛風などが挙げられます。
 いずれにしても関節痛が続く場合には専門医を受診し、その原因を正しく診断してもらい、治療にあたることが大切です。

2012年8月22日水曜日

こむら返り


ゲスト/つちだ消化器循環器内科 土田 敏之 院長

こむら返りについて教えてください。
 こむらとは、ふくらはぎのことで、ふくらはぎや足の裏の筋肉が突然けいれんを起こし、強い痛みを伴うのが、こむら返りです。医学的には「骨格筋の不随意で激痛を伴う急激なけいれん」とされています。数分間という短時間の発作であることがほとんどで、痛みが鎮まった後も鈍痛が残る場合もあります。筋肉を収縮させる神経の刺激が持続的に起こることによるもので、その原因はよく分かっていません。
 こむら返りは、急に激しい運動をした時や、水泳などで冷たい水に入った時、就寝中に足を伸ばした時に起こりやすく、下痢、嘔吐(おうと)などによる脱水症状や熱中症の際にもみられます。筋肉に関わるナトリウム、カリウムなど電解質のバランスの崩れも原因となります。このほか、内分泌・代謝の異常、甲状腺機能の異常、糖尿病、腎不全、肝硬変、降圧剤の内服や血液透析などで起こるケースもあります。立ち仕事の多い人やお年寄り、妊婦に比較的多くみられ、ふくらはぎだけではなく足の指や太ももに起きる場合もあります。

こむら返りが起きた時にはどうしたらいいですか。
 まず、けいれんして硬くなっている筋肉を強く押さえてください。そして、もう一方の手で足の親指からつま先全体を頭側に引っ張ります。そうすると、けいれんが治まってきますので、筋肉を温めるようにマッサージを続けます。冷やすとすぐに再発するので注意が必要です。その後、消炎鎮痛軟こうの外用や湿布を貼付し、痛みが強ければ痛み止めを飲んでもかまいません。数日は無理な運動は避けましょう。
 運動前に十分にストレッチをすること、夏場は小まめに水分補給して脱水症状に気を付けること、冬場はできるだけ筋肉を冷やさないような工夫をすることなどが、こむら返りの予防策といえます。
 急にこむら返りが起きるようになったら、それは運動不足や偏った食事など生活の乱れのサインかもしれません。自分の生活を見直してみるのがいいでしょう。数カ月に一度程度なら経過をみてもいいですが、週に一度以上起き、それが長期間続いていたり、就寝中など安静時にも繰り返したりするようであれば、何か別な病気や原因が潜んでいる可能性も考えられますので、我慢せずに医師に相談してみましょう。

2012年8月15日水曜日

かぜとまぎらわしい病気「喉頭アレルギー」

ゲスト/琴似駅前内科クリニック 高柳 典弘 院長

喉頭アレルギーとはどのような病気ですか。

 せき、鼻水、喉の痛みなどの「風邪」に似た症状を来たし、風邪薬を服用してもよくならない、そのような患者さんが非常に増えています。一方、日本人の3人に1人が何らかのアレルギーを持っているとされており、アレルギーが原因で起こる病気も急増しています。その一つに風邪とまぎらわしい、アレルギーが原因で起こる「喉頭アレルギー」があり、近年注目されています。
 喉頭アレルギーは、急激に喉が腫れて空気の通り道が狭くなり、呼吸ができなくなる急性型(あるいはアナフィラキシー型)と、ぜんそくやアレルギー性鼻炎のように比較的緩やかな経過をたどる慢性型に分類されます。風邪と紛らわしいのは、慢性型の喉頭アレルギーで、さらに花粉など原因が明らかな季節性のものと、原因の特定が困難な通年性のものに分けられます。
 症状は、喉のかゆみ、イガイガ感、痰(たん)がからんだような感じ、ヒリヒリ、チクチクする感じの咽頭痛などの咽喉頭異常感と、喘鳴(ぜんめい)と呼ばれるゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音を伴わない長引くせきというのが2大症状となります。花粉症のある方はその季節によっては、くしゃみ、鼻水、鼻づまりも伴います。

喉頭アレルギーの診断、治療について教えてください。
 診断は先に述べた症状に加えて、血液検査、胸部レントゲン検査、肺機能検査により明らかな炎症、感染症、腫瘍、異物を認めず、また内視鏡で胃・食道の逆流、鼻水が喉に流れていく症状(後鼻漏)が認められないことなどから診断されます。しかし、通年性の喉頭アレルギーは、せきぜんそくやアトピー咳嗽(がいそう)など症状の似た病気があるので、見分けるのが難しいこともあります。
 慢性型の喉頭アレルギーの治療は、アレルギーの原因が特定できれば、その原因抗原からの予防や除去が基本となります。温度差など気候の影響である場合や、原因が特定できない場合は、季節性、通年性を問わずアレルギー性鼻炎に準じた抗ヒスタミン薬やステロイド吸入などの治療が有効です。
 風邪と診断され、薬を内服してもよくならない場合、喉のかゆみや痰がからむような感じの症状が続いている場合は、喉頭アレルギーの可能性も考えられますので、専門の医療機関を受診することをお勧めします。

2012年8月8日水曜日

甲状腺の病気


ゲスト/やまうち内科クリニック 山内 雅夫 院長


甲状腺の病気について教えてください。
 甲状腺は、首の前面、喉仏の下にあるチョウの羽を広げたような形の器官で、甲状腺ホルモンを分泌する役割を果たしています。甲状腺ホルモンは、人間の体の新陳代謝や成長をつかさどる大切なホルモンの一つ。甲状腺ホルモンが多くなったり、少なくなったりすることで、全身にさまざまな異常をもたらします。甲状腺疾患を患う患者さんは、女性に多く、日本全体では700万人ともいわれていますが、その内500万人は病気であることに気付いていないと推定されています。
 主な甲状腺の病気として、甲状腺ホルモンの過不足によるものと甲状腺腫瘍があります。
 甲状腺ホルモンの分泌異常は、大部分が甲状腺に対する自己抗体が関与しているもので、誰にでも起こり得る病気ですが、遺伝的な要因が大きいとされています。

甲状腺の病気の中で、代表的なものについて教えてください。
 最もよく知られている病気が「バセドー病」です。甲状腺ホルモンが過剰に産生されるため、動悸(どうき)、頻脈、多汗、手指のふるえ、易疲労感、体重減少、食欲亢進(こうしん)などの甲状腺機能亢進症状が現れ、甲状腺の腫脹(しゅちょう)、眼球突出なども見られます。
 しっかり食べているのに体重が減少する、健康診断でコレステロール値が低下し、アルカリフォスファターゼが上昇しているなどの異常所見が診断の糸口となることもあります。
 逆に甲状腺ホルモンが不足し、甲状腺機能低下症を呈するものの代表が「橋本病(慢性甲状腺炎)」です。寒がり、無気力、易疲労感、体重増加、甲状腺腫大などの症状が現れ、進行すると記憶力低下、眼瞼浮腫なども起こります。中年以降の女性で物忘れなどが有る場合には注意する必要があります。
 甲状腺腫瘍は甲状腺超音波検査で比較的容易に発見することができるようになりました。90%が良性、10%が悪性とされており、吸引細胞診などで確定診断をする必要があります。
 症状が多岐にわたり、更年期障害など、ほかの病気と間違われやすいのが甲状腺の病気です。頻度が高いわりに、症状が軽いことも多いため、見逃されたり、放置されたりしているケースが多くみられます。血液検査、甲状腺超音波検査など診断の技術は進歩しており、各種の治療法も確立されていますので、症状が進んでしまう前に早めに治療を受けることが何よりも大切です。

2012年8月1日水曜日

歯周病


ゲスト/まるやまファミリー歯科 小川 拡成 院長


歯周病について教えてください。
 患者さんの口から歯垢(プラーク)の小さな塊を取って、「この白い物は何でしょう?」と尋ねると、ほとんどの人は「食べかす」だと答えます。でも実はプラークの正体は、食べかすではなく、食べかすに含まれる糖分を餌にして繁殖する細菌の塊なのです。位相差顕微鏡を使ってプラークを拡大して見てみると、その場でウヨウヨと活発に動く数十種類の細菌を目にすることができます。歯周病の多くは、このプラークが原因によって起こります。
 私は学生時代、当時歯周病治療・研究の日本の第一人者であった北大名誉教授のI先生に次のようなお話を伺いました。「ばい菌が気持ちよく暮らし、繁殖していくためには、温度と水分と栄養が欠かせない。私たちの口腔内は、ばい菌にとって最高級のマンションといえるもの。年中摂氏37度に保たれ、3度の食事のほか、甘いお菓子や飲み物も付いている。ただし、マンションにはトイレがないという欠陥があり、酸性のおしっこをいつも掛けられれば虫歯になるし、毒性の強い排泄物が垂れ流されれば、歯肉に慢性の炎症が起こってしまう。マンションに掃除を担当する雇い人はいないので、クリーニングはオーナーである自分自身の役割。もし面倒くさがり、掃除をサボれば、最高級のマンションもあばら屋になってしまう」。私もよく患者さんにこの話をするのですが、この話を聞いた皆さんは、食事の後や寝る前の歯磨き(ブラッシング)に励むようになります。

歯周病の治療と予防について教えてください。
 歯周病の治療と予防の鍵を握っているのは、口腔内のプラークの清掃責任者、つまり患者さん自身にほかなりません。歯科医だけがどんなに治療に張り切ったところでムダなことです。毎日のブラッシングが十分でなければ、全ての歯を失う危険性があることや、天然歯を1本でも多く残すことは、総義歯になるのと比べて雲泥の差があることなども、よく理解していただきたいと思います。
 若い時に、歯茎の中に入ったばい菌を放置しておくと、気付かないうちに骨が溶けて、結果的に歯を失うことになりかねません。もし気になる症状があれば、今すぐ歯科医院を受診して、ブラッシング指導を受け、プラーク・歯石をしっかり取ってもらうことをお勧めします。

2012年7月25日水曜日

肝臓の病気


ゲスト/佐野内科医院 佐野 公昭 院長


肝臓とはどのような器官なのですか。
 肝臓は、成人でおよそ1500gもあるヒトの臓器で最大の器官です。肝臓は、血液によって運ばれてくる栄養分を蓄えたり、それらを体に必要な別の物質につくり変えたり、また、血液中に入り込んだ体に有害な物質を分解し、無毒化する働きなど、人体にとって重要な役割を担っており、「人体の化学工場」ともいわれています。
 また肝臓は、「沈黙の臓器」とも呼ばれます。ひどく傷んでも痛みを感じることがほとんどなく、病気になっても自覚症状が出にくい臓器だからです。肝臓の病気を疑う症状として、体のだるさや食欲不振、黄疸(おうだん)、褐色尿などが挙げられますが、具合が悪いなと感じるころには、肝臓は取り返しがつかないほどダメージを受けているケースもあります。肝臓の健康には常に気を付けていくことが大切です。

肝臓の異常を早期に発見するにはどうしたらいいのですか。
 特定健診をはじめとする健康診断の検査結果を上手に生かすことです。血液検査のなかにGOT(AST)、GPT(ALT)という項目があると思います。これらはともに細胞内に分布し機能している酵素です。細胞が障害されたりすると血液中に逸脱して値が上昇します。かつてはどちらも40〜45くらいまでは正常値とされていましたが、現在は31以上の数値を示していると、肝臓に異常がある可能性が高いことが分かってきました。
 例えば、慢性肝炎の約90%は、ウイルス性肝炎であるといわれています(B型肝炎が約20%、C型肝炎が約70%)。ウイルス性の慢性肝炎は、徐々に病気が進み、やがては肝硬変まで進行します。また、肝臓にがんができるリスクも高くなります。輸血や一部の血液製剤などが感染の原因といわれていますが、感染原因が不明の場合も少なくありません。GOT、GPTの値が31以上で、過去に肝炎ウイルスの検査を受けたことがない人は、一度肝炎ウイルス検査を受けることをお勧めします。自治体によって異なりますが保健所や医療機関などで検査を無料、ないしは安く受けられる制度がありますので、それらを利用するのも一つです。
 肝臓の病気の早期発見、早期治療には、血液検査の異常などから「沈黙の臓器」の声なき声を聞く姿勢が大切です。

2012年7月18日水曜日

関節リウマチのトータルマネジメント


ゲスト/佐川昭リウマチクリニック 佐川 昭 院長


関節リウマチのトータルマネジメントとはどういうことですか。
 「関節リウマチのトータルマネジメント」という言葉が、昨今よく用いられるようになってきました。これは、関節リウマチ治療に関するいくつかの側面を言い表しています。一つは、関節リウマチの治療には単に薬物療法や手術療法、リハビリテーションといった治療手段だけではなく、基礎療法といわれる教育や指導、さらには日常生活のケアを含んだ多面的なアプローチが必要不可欠であるということ。もう一つは、関節リウマチは全身性で病態が多様であるため、医療現場において医師や看護師だけでなく、薬剤師、栄養士、理学療法士、作業療法士などさまざまな職種が連携したチーム医療が求められていることを示しています。また、関節リウマチは、感染症や合併症の悪化、薬の副作用が一部の患者に起こり得るため、入院設備の整った医療機関との連携も必要であり、同時に、整形外科や呼吸器科、消化器科との連携も重要であること。さらには、患者が安全・安心に治療を継続し、生活の質を向上できるように、往診や訪問看護、在宅指導などを行う地域医療機関やケアマネージャーとの連携が欠かせないことも意味します。

関節リウマチの治療の現在とその課題について教えてください。
 関節リウマチは、日本では60〜70万人の患者がいると推定されています。患者の男女比では、女性が男性の3倍ほどです。発症年齢は30〜60代が最も多いのですが、若い人でも発症することがあります。
 新しい診断基準や診断技術の進歩、生物学的製剤の登場によって、関節リウマチは早期に発見し、早期に適切な治療を開始すれば寛解(症状が落ち着き進行しない状態)も目指せるようになってきました。とはいえ、生物学的製剤での治療効果が望めない患者もいまだ数多く、長期にわたった定期的かつ手厚い診療を必要としています。また、生物学的製剤の適応なのに、専門医が不在、副作用に対処する医療連携ができていない、コメディカル(医師と協同して医療を行う医療従事者)が力を発揮できていない、などの理由で使えないこともあります。さらに、高額な薬剤費が掛かることから、患者さんへの負担も大きくなっており、関節リウマチの治療にはまだ克服していかなければならない課題も多く残されています。

2012年7月13日金曜日

舌側(ぜっそく)矯正


ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治 正光 院長


矯正に対する最近の傾向について教えてください。
全身の健康やQOL(生活の質)の向上を考える上で、歯のかみ合わせが重要な役割を果たしていることが、一般の方々にも認知されるようになりました。それに伴って、歯列のでこぼこや、上顎(がく)前突、下顎前突、さらに顎(あご)の左右のズレを気にする人が増えてきました。
 以前、お子さんの歯の矯正で通われている女性から「上顎前歯が出て、下顎がでこぼこしているのがコンプレックス。矯正治療を考えているが、この年齢だし気後れしてしまう」という相談がありました。この女性に限らず、多くの人から同様の相談を受けます。そんな時には、「もし、同年代の人が矯正治療をしているのを見掛けたら、あなたはどう思いますか?」と尋ねます。すると、ほとんどの人が「大人になってからよく決断した、偉いと思う」と答えます。矯正治療は決して恥ずかしいものではないのです。
 咬合(こうごう)の大切さを認識し、矯正治療を受けようという前向きな姿勢を隠す必要はありませんが、人知れず治療したいという希望も分かります。特に社会人で、接客業など日常的に多くの人に接する職業の人はそう考えるでしょう。また、思春期のお子さんが矯正装置を気にする心情も理解できます。そういう場合は、舌側矯正をお薦めしています。

舌側矯正について教えてください。
 歯の裏側、つまり舌側に矯正装置を入れます。表からは装置が目に付かないので、矯正していることに全く気付かれないという魅力があります。ただし、表側(唇側)からの矯正に比べると、発音が不明瞭、食事や歯みがきがしづらいという問題がありました。しかし、近年これらの問題点を改善した舌側矯正装置が開発されました。従来のものと比べて、非常に薄く、小さくなっています。話しづらい、食事がしにくい、舌が痛いといった、舌側矯正ならではの不快な点が、飛躍的に改善されました。人と話すことが多い職業の人や、口内の違和感に対する不安が理由で、今まで舌側矯正へ踏み切れなかった人にもお薦めできます。矯正治療の期間は、裏側でも表側でもそんなに違いはありません。
 自身の歯並びに気になることがあったら、心と体の健康のためにも、ぜひ一度矯正歯科医に相談してください。なお、特殊な病気による不正咬合以外は、一般に健康保険が適用になりませんので費用に関しても、事前に矯正歯科医に聞いてみると良いでしょう。

女性の痔(じ)と直腸ポケット


ゲスト/札幌いしやま病院 川村 麻衣子 医師


女性の痔について教えてください。
 痔は男性に多い病気と思われがちですが、実は女性こそ痔を招く原因を抱えています。例えば、便秘症。便が硬くなり、無理に排便しようと肛門を傷付けることがあります。妊娠や出産も痔の原因の一つ。妊娠すると便秘を起こしやすく、また肛門周辺がうっ血しやすくなります。出産時の息みも、肛門に大きな負担をかけます。このように女性の場合、痔の原因は女性特有の身体機能が関連していることが多いのです。痔は「痔核(いぼ痔)」「裂肛(切れ痔)」「痔ろう(あな痔)」の3種類に分けられますが、女性に最も多くみられるのは裂肛です。排便時の痛みや出血、排便後にじんとした痛みが続くなどの症状があります。
 痔は女性にとっては医師にも相談しにくい病気です。しかし「恥ずかしい」と思って受診をためらっていると、症状は進行してつらくなるばかりです。また、お尻からの出血は大腸がんなどの病気が隠れている場合もあります。お尻に出血や痛みなどの症状があらわれたら、自己判断せずに専門医を受診することをお勧めします。

直腸ポケットとはどのような病気ですか。
 直腸に起因する女性特有の排便障害で、直腸膣壁弛緩(しかん)症とも呼ばれます。排便時に息むと、直腸と膣の間の壁(膣壁)が、膣方向へポケット状に膨らみ、便が引っ掛かって通りが悪くなります。症状は、肛門の直前で便が止まってしまう、肛門の周りを指で圧迫しないと便がでない、残便感があるなどで、ひどい便秘の人は直腸ポケットの疑いがあります。生まれつき膣壁が薄い、出産による膣壁の広がりや加齢による筋肉の衰えなど、先天的、後天的、両方の原因が考えられます。治療は、まず食生活や生活習慣の改善によって便秘を解消することです。便が柔らかくなれば排便がしやすくなります。それでも改善しなければ、下剤を服用する方法もあります。
 ポケットが大きいと、通常の便秘治療では排便障害が改善されません。その場合は、手術によってポケットを縫い縮める方法も有効です。ポケットそのものは良性疾患ですが、習慣的に下剤に頼っていると、大腸がんなどの病気を見落とす危険もあります。便秘で悩んでいる人は、原因を知るためにも、一度専門医に相談することをお勧めします。

2012年6月27日水曜日

顎(がく)関節症の矯正治療


ゲスト/つちだ矯正歯科クリニック 土田 康人 院長


顎関節症とはどのような病気ですか。
 顎関節症とは、口を十分に大きく開閉できなくなったり、口を開閉する時にカクカク(またはシャリシャリ)と音がしたり、下顎が左右にずれてガクガクしたりする状態をいいます。顎の関節は、耳の穴の前方1㌢くらいのところにあり、顎を開けたり閉めたりする役割を持っています。この関節がずれると、顎を開閉した時に関節が炎症を起こして痛んだり、関節が引っ掛かる感じになったり、口の開閉に不自由を来すようになります。
 顎関節症の原因は、精神的ストレスや歯ぎしり、歯をかみしめる癖などさまざまで、それらが積み重なって許容限度を超えたときに起こると考えられています。顎の骨の形や大きさの異常、位置バランスの崩れが原因で起こる顎変形症の症状──反対咬(こう)合(受け口)、上顎前突(出っ歯)、開咬(奥歯はかんでいるが前歯は開いている状態)など、かみ合わせの悪さ(不正咬合)も顎関節症になりやすい要因の一つです。当然ながらそれが全ての原因ではありませんが、顎関節症になる人はかみ合わせが悪いことが多いのは事実として挙げられています。

顎関節症の矯正治療について教えてください。
 症状の程度によって異なりますが、スプリントと呼ばれるマウスピースのようなものを歯にかぶせる治療が一般的です。スプリントを使い、下顎を適切な位置(やや下顎を前方に出した位置)で安定させ、その位置できれいなかみ合わせをつくります。続いて、矯正治療をスタートさせます。歯並びを矯正したり、かみ合わせや顎のずれを修復したり、場合によっては、口腔内の金属冠を作り替えたりし、かみ合わせが安定するようにします。矯正治療によりかみ合わせを安定させておかないと、スプリントをはずした時に、下顎が元の悪い位置に戻ってしまう可能性があるからです。
 顎関節症は中・高校生〜成人にみられることが多く、小学生以下の子どもに発症するケースは少ないです。しかし、子どものうちに悪い歯並びやかみ合わせを放置しておくと、大人になってから顎関節への悪影響が出る危険性があります。小児期に歯並び、かみ合わせの治療を行うことでこれらの心配を予防することができますので、少しでも不安を感じたら、早めに専門医にご相談ください。

2012年6月25日月曜日

現代型不眠


ゲスト/医療法人社団碩心会北海道大野病院附属駅前クリニック 古口 健一 院長


現代型不眠とはどのような病気ですか。
 なかなか寝付けない、夜中や早朝に目が覚める、熟睡感が得られない…。何かと忙しい現代社会では、多くのストレスにさらされ不眠に悩む人が少なくありません。従来の不眠の多くは「精神生理性不眠」と呼ばれ、精神的なストレスや身体の痛み・不快感、アルコールの過剰摂取などが原因で、眠りに対する不安や緊張が大きくなり、脳が興奮して眠れなくなるというものです。昨今、日本人の取り巻くさまざまな環境変化に伴い、新しいタイプの「現代型不眠」を患う人が増えています。
 現代型不眠は、夜型のライフスタイルや、夜間にテレビ、パソコン、携帯電話などの明るい光を受けることなどによって、眠りを促すホルモンである「メラトニン」の分泌量が減少し、「体内時計」が乱れることでもたらされる不眠です。人間の体には、約24時間のサイクルに合わせて、意識しなくても決まった周期で体の働きを整える体内時計が備わっていますが、これが乱れ、「夜になったので眠くなる」という規則正しい睡眠と覚醒のリズムに障害が起こっているのです。メラトニンは年齢が上がるほど分泌量が減るため、高齢者ほどリスクが高いといわれています。

現代型不眠の治療について教えてください。
 現代型不眠の原因である体内時計の乱れを整えるためには、「起きる時間を毎日一定にする」「就寝1〜2時間前に、ぬるめのお風呂に入る」「寝酒をやめる」など日々の生活習慣の改善を心掛けることが大切です。生活習慣の改善だけでは不十分で、睡眠や日中の生活に支障が出る場合は、薬物による不眠症治療が必要となります。現在では、従来の鎮静型睡眠薬だけでなく、体内時計に作用するメラトニンの分泌を促進する薬も登場しているので、薬剤選択の幅は広がっています。
 たかが不眠、命には関わらないだろうと侮ってはいけません。不眠や不眠による体調不良を放置すると、肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病の発症・悪化にも影響を及ぼすことが分かってきています。きっかけは何であっても、不眠はこじらせる前に治療を始めることが大切です。よく眠れないことを一人で悩んでいると、睡眠を過剰に意識し、かえって眠れなくなってしまうこともあります。そうなる前に、早めに医師に相談することをお勧めします。

2012年6月13日水曜日

人間関係のストレス


ゲスト/医療法人社団五稜会病院 千丈 雅徳 院長


人間関係のストレスと、その対処法について教えてください。
 人は一人では生きていけませんが、人間関係がこじれると大変な苦痛を伴います。同じように、人間は適度なストレスを必要としますが、過大な人間関係のもつれによるストレスを背負い込むと、深刻な事態を招き、抑うつ状態や身体疾患に発展することもあります。心の問題は、適度さを求めれば求めるほど手に入らなくなります。「普通」という物差しが分からなくなります。本当に厄介ですね。
 例えば、親子、兄弟姉妹、夫婦、義理の親子など身近な人間関係では、直球で感情をぶつけすぎて傷つけ合ったり、それとは全く逆に、本音を明かせずに不満を抱えてしまうことがあります。職場、取引先など、苦手で相性が合わなくても、毎日接しなければならない場合は強いストレスを伴いますね。また、ご近所の人たちとは、お互いに良い雰囲気の関係を保たなければなりません。さらに、PTAや保護者会など、子どもを介した人間関係では、子どもの保護者である親としての管理責任が問われ、緊張感を伴います。
 こんな大変な人間関係の中で生き抜いていく私たちにとって、ストレスをためこまないで、「普通」に日常生活を送ることはできるのでしょうか?
 決定的な方法はないでしょうが、いくつかの予防法はあります。
 まず、普段の生活圏を離れて自然の中で森林浴をするなど、心身をリフレッシュして普段の状態を取り戻すことができます。
 また、一人で悩んでいると不安の種はどんどん膨らむので、誰かに事情を話すことでストレスを軽減させることができます。
 さらに、目の前のことだけに集中したり、気掛かりなことは紙に書いて頭に残さないようにしたりして、ストレスがたまらないうちに解決することも可能です。
 質の良い眠りはストレスから心身を守ります。お好みの音楽を聴くことでも緊張を和らげてリラックス感が得られます。ペットを飼うことで、一人暮らしの寂しさを癒やしたり、リラックス感を得ている方も多くいらっしゃいます。
 ストレスに負けない心を作るには、自分と向き合うことが大切です。今の問題点を冷静に洗い出して整理してみたり、プラス思考を心掛けてネガティブなことを言わないようにしたり、心地よい自分を繰り返しイメージするといった方法も効果的です。
 ストレスには、十分な休息が必要です。「怠けている」と思わず「私が今すべきことは休むこと」と割り切って、気持ちを楽にして何もしない時間をつくるように心掛けましょう。
 いろいろ工夫しても対応しきれなくて、気分の大きな落ち込みを伴ってしまっている場合には心療内科や精神科を受診してみるのも良いでしょう。

2012年6月6日水曜日

喘息とアレルギー性鼻炎の合併について


ゲスト/白石内科クリニック 干野 英明 医師


喘息とアレルギー性鼻炎の関連を教えてください。
 喘息は、気道に慢性的な炎症が生じてその中が狭くなり、気道が過敏になることを特徴とする呼吸器疾患です。繰り返し起こる咳、喘鳴(ぜんめい)、呼吸困難などが主な症状です。喘息の原因にはさまざまなものがありますが、アレルギー素因は危険因子の代表的なものです。中でも、アレルギー性鼻炎は、喘息との関連が従来より指摘されています。
 わが国において、喘息に合併するアレルギー性鼻炎の頻度は、最近行われた調査によると、15才以上の成人喘息では約67%でした。一方、小児喘息では、別の調査で約75%という結果が出ています。これらの結果から、喘息は高率にアレルギー性鼻炎を合併していることが分かります。合併率は、年齢で見ると若い人ほど高く、加齢とともにやや減少するようです。
 喘息とアレルギー性鼻炎は、共通点が多いことがいわれています。アレルギーの起こるメカニズムは、共にIgE抗体を介した即時型アレルギー反応です。ダニやハウスダスト、犬や猫の毛、花粉など、共通する抗原が多いのも特徴です。上気道の鼻の粘膜でも下気道の粘膜でも、好酸球などの炎症細胞の浸潤は同じように認められます。最近では、上気道と下気道を連続した構造と考え、喘息とアレルギー性鼻炎の合併を、気道全体における一つの疾患と捉えて治療していこうという動きがあります。

どのような治療法がありますか。
 成人喘息の長期管理薬の第一選択は、吸入ステロイドです。アレルギー性鼻炎を合併している場合は、その治療も重要であり、抗ヒスタミン薬やロイコトリエン受容体拮抗薬などを併用します。わが国では、抗ヒスタミン薬のうち、第二世代の一部に喘息の保険適用があります。ロイコトリエン受容体拮抗薬は、アレルギー性鼻炎にも喘息にも保険適用があります。小児喘息では、内服薬のロイコトリエン受容体拮抗薬から始めて、吸入ステロイドを併用していくのが基本です。
 最後に、アレルギーの治療の根本は、原因となるアレルゲンからの回避ですから、ダニやペットなどの吸入アレルゲンの飛散を減らすために、環境整備が重要であることはいうまでもありません。

2012年5月23日水曜日

脳梗塞(こうそく)について


ゲスト/コスモ脳神経外科 小林 康雄 院長


脳梗塞について教えてください。
 脳梗塞は虚血性の脳卒中で、脳の血管が血栓などによって詰まったり、動脈硬化によって血管が狭くなるなどして起こる疾患です。その背景となるのは基本的には、メタボリック症候群です。内臓脂肪が過剰になると、糖尿病や高血圧症、高脂血症といった生活習慣病を併発しやすく、動脈硬化が急速に進行します。
 脳梗塞の症状としては、半身不随、半身麻痺、しびれ、感覚の低下、手足の運動障害、意識障害、言語障害、昏睡などが挙げられます。突然起こる場合が多いのですが、場合によっては予兆となる症状があります。半身のしびれ、口のもつれなどで、このような症状が表れた場合は、迅速にかかりつけ医の指示をあおぐか、脳神経外科へ直行することをお薦めします。発症後3時間以内であれば、血栓や塞栓(そくせん)を溶かす薬を使って治療します。効果があれば、比較的後遺症が軽くすみます。投薬治療ができない場合は手術となりますが、この場合も治療までに要する時間が短いほど、後遺症を軽くすることができます。いかに迅速に治療を始めるかが、予後に大いに関係してきます。
 
脳梗塞を予防するにはどうすればいいですか。
 30代、40代で動脈硬化が始まりますから、会社などの健康診断でメタボリックシンドロームの兆候があれば、普段の生活習慣を見直しましょう。食事は塩分を控え日本食中心にし、適度な運動、禁煙、節酒を心掛ける。ストレスや寝不足などで疲労が蓄積しないように規則正しい生活を目指しましょう。
 また、健康診断で不安要素があったり、動脈硬化症の近親者がいる場合は、一度「脳ドック」を受けることをお薦めします。レントゲン検査で頭と首の健康状態を調べ、MRI(磁気共鳴画像装置)で脳の断層写真を撮り、MRA(磁気共鳴血管造影)で血管の狭窄(きょうさく)や閉塞(へいそく)部分・脳動脈瘤(りゅう)の発見、動脈硬化の程度などを調べます。健康保険の適用外になりますが、1~2時間程度で受けられます。脳梗塞は一度発症すると命にかかわり、後遺症の影響も大きい疾患です。自分の健康・生活を守るためにも、予防を心掛けましょう。

2012年5月16日水曜日

思春期のメンタルヘルス


ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 江川 浩司 診療部長


思春期のメンタルヘルスについて教えてください。
 思春期(おおむね10〜18歳の中高生)は、第二次性徴がみられ、心と体が子どもから大人へと変化・成長する時期です。一方で、心と身体のバランスが不安定になりやすく、さまざまな問題が生じやすい時期でもあります。
 情報過多の現代社会では、情報が複雑に操作され、何が正しく何が間違っているのか、大人でも判断が難しい状況です。情報の意味の伝わり方が必ずしも正確なものとはならない場合も多く、まだ心身ともに未熟な子どもにとっては誤解につながることも多いようです。迷いや不安、混乱や絶望など、そうした思いと常に向き合わざるを得ない子どもたちの精神的なストレスは相当なものです。爆発寸前までストレスを抱え込んでいるのに、うまく言葉にすることができなかったり、また、両親に心配を掛けてはいけないという思いから、なかなか自分の気持ちを伝えることが難しかったりします。

思春期の心の病気への対応について教えてください。
 思春期の問題行動としては、不登校が最も多く、引きこもりや自傷行為、自殺、性的非行などが挙げられます。一過性であることも多いのですが、その裏に精神疾患が隠れている場合もあります。近年、増加傾向にある不登校は、環境不適応などさまざまな要因で起こります。対人関係の困難、学習困難、いじめなどに起因したものや、広汎性発達障害を背景に持つものもみられます。解決、対応方法に一般論はありません。しかし、時間をかければ必ず改善、解決の糸口を見い出すことができます。
 心の病気は、脳の機能不全によって発生するものがほとんどです。つまり、誰にでも起こり得る、ごく普通の病気なのです。例えば、うつ病は風邪のようにありふれた病気であるという意味合いで、「心の風邪」という別名があるほどです。
 心の病気は治療が遅れるほどに、生活への障害が大きくなる傾向がある病気です。また思春期に始まった心の病気は、成人期まで続いたり、再発したりするケースが多いので、一層早期発見・早期治療が重要となります。
 子どもの日々の様子から、おかしな変化を感じられるようになったら、それは子どもが発している「SOS」の信号なのかもしれません。過剰に悲観的にならず、また自分たちだけで解決しようとせず、早めに専門医に相談することをお勧めします。

2012年5月9日水曜日

更年期障害について


ゲスト/札幌駅前アップルレディースクリニック 工藤 正史 院長


更年期障害とはどのような病気ですか。
 30代後半〜40代前半になると、卵巣機能が徐々に低下し始め、50歳前後に「閉経(1年以上の無月経の状態)」を迎えます。閉経年齢が早いか遅いかは個人差があります。閉経をはさんだ前後10年を「更年期」といい、女性ホルモンの分泌量が急激に減少するために、月経異常やのぼせ、火照り、目まい、疲労感、不眠、憂うつ感など、さまざまな症状が出ます。この中で日常に差し支えるようなものを「更年期障害」といいます。
 更年期の女性は骨粗鬆(しょう)症にもかかりやすいとされます。骨粗鬆症による骨折は、脳血管障害に次いで高齢者が寝たきり状態になる原因の第2位となっているので注意が必要です。また、閉経後のコレステロールの上昇が原因で、血管の老化が進み、狭心症や心筋梗塞、脳の血行障害を起こすケースもみられます。
 20〜30代といった若い年代の女性が、一見更年期障害と同じような症状を発症することがありますが、これは真の更年期障害とはいえず、多くの場合ストレッサーが隠されています。ストレッサーとはストレスを与える刺激のことです。


更年期障害の検査・治療について教えてください。
 更年期障害は、身体的要因だけでなく、対人関係、家族の問題などの社会的・環境的要因が複雑に絡み合って起こるとされているので、検査は問診が重要となります。血中のホルモン量を調べるための血液検査や超音波検査なども行います。
 治療は、漢方薬と女性ホルモンを補充する薬物療法が基本となります。加齢とともに減少した女性ホルモンを補い、不足することにより現れる症状を軽減するのがホルモンの補充療法です。閉経以降に起こりやすくなる生活習慣病や骨粗鬆症、予防医学としてのアンチエイジングへの効果も期待されています。
 閉経は女性のライフサイクルの中で必ず起こるイベントであり、更年期は避けては通れない大事な時期です。更年期障害とどう向き合い、改善していくか。まずは一人一人が更年期医学についての正しい知識や情報を身に付ける必要があります。例えば、女性ホルモンの補充療法をどう捉えるかは、その人の考え方や人生観にもよりますが、自分でもしっかり勉強し、ある程度理解した上で、専門医に問い掛けていく姿勢も大切です。

2012年4月25日水曜日

親知らずと自家歯牙(しが)移植

ゲスト/医療法人社団アスクトース 石丸歯科診療所 近藤 誉一郎院長

「親知らず」は、なぜ抜歯することが多いのですか。
 「親知らず」は、20歳以降、もっとも遅く形成される永久歯で、一番奥に生えてくる歯のことです。「親知らず」が生えてくる頃には、親がその歯を見る機会がないということから、この名が付いたといわれています。
 噛(か)み合わせに問題のない「親知らず」を無理に抜く必要はありません。しかし、「親知らず」は横や斜めに生えたり、生えきらなかったりすることがほとんどで、歯磨きが上手にできず、虫歯や歯茎の腫れを引き起こすなど口腔内のトラブルの原因になりがちです。親知らずのせいで噛み合わせが悪くなり、顎(がく)関節症になるケースもあります。
 親知らずの治療は、一番奥の歯なので治療器具が届きにくく、その後のメンテナンスも難しいので、治療をしたとしても高確率で再発します。そのため「親知らず」は、治療よりも抜歯をお勧めするケースが多くなるのです。

歯を失った場合、抜いた「親知らず」を移植する治療があると聞いたのですが。
 虫歯などで歯を失った場合、ブリッジや取り外し式の入れ歯、インプラントなどにより義歯で補う治療がありますが、「親知らず」を抜き、それを失った歯の部位に移植する治療もあり、これを自家歯牙移植といいます。移植する「親知らず」の根の状態が良いこと、移植場所の骨や歯肉の量が十分であること、「親知らず」と移植場所の大きさがある程度合致していることなどの条件がそろえば、生きた天然の歯を取り戻すことができる有効な治療法です。
 自家歯牙移植では、歯を移植した後に新しい骨が形成され、顎(あご)の骨にしっかりと定着します。メンテナンスを続けることで自分の歯として安定した状態を保つことができます。自分の歯であるため噛み心地がよく、他の歯に余分な負担も掛けません。もともと自分の体にあった歯を移植する点で、異物を使用しないという安心感もあります。
 自家歯牙移植は抜歯と移植を同時に行いますので、外科的処置において患者さんの負担がやや大きくなり、治療期間も移植してから噛めるようになるまで2〜3カ月必要です。費用は保険が適用されるケースが多いです。
 自家歯牙移植を検討されるのであれば、自分の「親知らず」がどういう状態なのか、将来移植に使用できるのかなど、まずは専門医に一度ご相談ください。

2012年4月18日水曜日

遺糞(いふん)症

ゲスト/札幌いしやまクリニック 樽見 研 医師

遺糞症とはどのような病気ですか。
 遺糞症とは4歳ぐらいから学童期の排せつ機能が自立すべき年代での排せつ障害で、トイレではなく下着の中や床の上など、本来排便してはいけない場所や状況で排便をしてしまうことをいいます。国際的な診断基準では、4歳以上になっても不適切な場所での排便を月に1回以上認め、それを3カ月以上繰り返す状態と定義されています。
 遺糞症の原因としては、慢性的な便秘のほか心理的ストレスが挙げられますが、一般的には便秘を伴うことが多いです。便秘を放置すると排便時に苦痛を感じて排便を我慢するようになります。あるいは、遊びに夢中になるなどして便意を我慢することを続けます。その結果、排便反射が弱くなり、便意を感じにくくなっているため、気付かないうちに便を漏らしてしまうのです。また、肛門を締める筋肉の機能が低下している場合もあります。
 子どもに便秘が起こる原因としては、排便時に緊張して便が出にくくなることや、排便時に肛門を傷つけてしまい、痛みを感じた経験から排便に恐れを持つことなどが考えられます。また、幼稚園への入園、小学校への入学など環境の変化やトイレに行きたくないなどのストレスがきっかけとなって、便秘や遺糞症が起こることも多いです。

遺糞症の治療について教えてください。
 便秘が遺糞症の原因となっている場合には、下剤やかん腸を用いて直腸にたまった便を排せつさせます。一方、子どもの生活習慣の改善も大切で、治療の基本は排便のリズムを取り戻させることになります。毎朝食事をしたら排便を行うといった排便習慣を付けさせることによって、規則的な排便を促します。
 直腸に便をためないようにしていると、次第に直腸の排便反射が戻ってきて、1日分の便量で便意を感じるようになり、自分で排便ができるようになります。1回の治療・指導で可能な子もいれば、数カ月かかる子もいます。
 また、家族など周囲の人間は、子どもが便を漏らしたからといって、いきなり叱りつけてしまうと、かえって逆効果になります。叱らず、焦らず、様子を見ながら排便を促すようにしましょう。子どもが余計なプレッシャーを感じないようにしてあげることが大切です。幼いころのトイレトレーニングの不足、早すぎるトイレトレーニングは、子どもに過度のストレスを与えてしまうケースもありますので注意が必要です。

2012年4月11日水曜日

最新の糖尿病治療薬

ゲスト/医療法人社団 青木内科クリニック 青木 伸 院長

最新の糖尿病治療薬について教えてください。
 糖尿病治療薬の最近の進歩は目覚ましいものがあります。飲み薬では、高血糖の時にだけすい臓からインスリンを分泌させ、正常血糖へ下げる「DPP-4阻害薬」があります。この薬は理論的には低血糖を起こさず治療できる新薬です。糖尿病の平均血糖の指標であるHbA1cを下げる効力は1.0%前後。この薬と同じ系統の注射薬も登場し、「GLP-1受容体作動薬」と呼ばれています。この注射薬のHbA1cを下げる効力は1.6%前後。現在は1日1回の注射が必要ですが、将来的には1週間に1回で済む注射薬も出る予定です。この系統の注射薬は、すい臓のインスリンを出す細胞を保護し、インスリンの分泌を弱らせない作用も持ち合わせているといわれています。
 一方、インスリン注射薬に眼を向けると、「持効型インスリン(1回の注射で24時間効果を持続する長時間作用型インスリン)」があります。飲み薬の治療が効かなくなる症例でも、飲み薬をそのまま服用しながら、1日1回の持効型インスリンの注射を加えると血糖が改善する症例もあります。「混合型インスリン」は、持続型インスリンと超速効型インスリンの合剤ですが、超速効型インスリンの含有率が50%〜70%の製剤が最近使用できるようになりました。食後血糖の高い症例を治療するのに便利なインスリンです。

糖尿病の治療について教えてください。
 糖尿病の治療が良好といえる目安はHbA1cが6.5%以下になっている場合です。糖尿病の患者さんの約半数が高血圧と脂質異常症(高脂血症)を合併しているといわれています。糖尿病を合併した高血圧の治療はとても重要で、血圧の治療目標値は130/80mmHg以下です。自宅で簡易血圧測定器を使用して治療に役立てる方法もあります。この場合使用する測定器は、指先や手首に巻くタイプのものではなく、上腕に巻くタイプのものをお勧めします。脂質異常症の治療目標値は、LDL-コレステロール(悪玉コレステロール)が120mg/dl以下です。以上のようなさまざまな基準値を長期間保てば、眼底出血(失明)、腎臓の悪化(透析)、足の潰瘍・壊疽(えそ)による足の切断など糖尿病に由来する重症の合併症にならなくて済みます。それ以外にも脳梗塞(こうそく)、心筋梗塞などの予防にもつながります。

2012年4月4日水曜日

動脈硬化

ゲスト/みどり内科クリニック 小田 朗 副院長

動脈硬化とはどのような病気ですか
 動脈硬化とは、血管の弾力性が失われて硬くなり、血液の通り道が狭くなったり、血液の流れが滞ったりする状態を指します。血管が完全に詰まったり、血管の内側からはがれ落ちた物質が血液中を流れ、細い血管を詰まらせたりするケースもあります。脳につながる大切な血管である頸(けい)動脈が硬くなると、脳に十分な血液が流れなくなる恐れもあります。
 動脈硬化は、サイレントキラー(静かなる殺人者)ともいわれています。それは動脈硬化そのものには自覚症状がないからです。加齢とともに静かに進行し、ある日突然、脳卒中や心筋梗塞など命にかかわる疾患を起こして初めて動脈硬化に気付くというケースも多いのです。
 動脈効果を引き起こす原因としては、高血圧、高脂血症、糖尿病、メタボリック・シンドローム、肥満、喫煙、動脈硬化の家族歴などが挙げられます。動脈硬化はある日急に表れる症状ではなく、若い頃からの生活習慣の積み重ねによる“血管の履歴書”といえます。つまり、動脈硬化の予防は若いうちから行う必要があるのです。

動脈硬化の予防について教えてください。
 動脈硬化の予防には、定期的な検査を受診することが何よりも大切です。特に有効と思われる検査が、頸(くび)の左右に超音波をあてる頸動脈エコーです。この検査では、動脈硬化を簡単に視覚化して調べることが可能です。痛みや被ばくもなく定期的に検査を行えます。検査効果を過去のデータと比較できるので、高血圧、高脂血症などの治療が適切かどうか、実際に動脈硬化の進行を阻止できているかどうかの効果判定ができ、その結果に応じて治療を変更したり、生活習慣の改善を促したりすることができます。患者さんと医療者が共通の目標を持つ動機付けになるという利点もあります。さらに、頸動脈は全身の血管の中で、もっとも動脈硬化が生じやすいという特徴があるので、全身の動脈硬化の“代表”として捉えることもできます。
 頸動脈エコーは、動脈硬化のある人、動脈硬化が疑われる人には保険適用があります。動脈硬化のリスク要因を持つ人、検診などで脳梗塞が疑われたり、無症候性脳梗塞があると指摘された人は、一度頸動脈エコーで動脈硬化の状態を自分の目で確かめてみることをお勧めします。

2012年3月28日水曜日

コンタクトレンズの取り扱い方

ゲスト/札幌エルプラザ 阿部眼科 阿部 法夫 院長

コンタクトレンズ初心者が注意すべき点を教えてください。
 この春、コンタクトレンズ(CL)の使用を考えている人も多いと思います。ところでCLが医療機器の中でもっともリスクが高いとされる“高度管理医療機器”に分類されていることをご存じですか。緑膿菌やアカントアメーバーという原虫による重篤な角膜感染症の報告、装用者の10%にみられるCL関連眼障害への適切な管理が必要なためです。ただし、ほとんどは軽度の障害なので、必要以上に怖がることはありません。
 CLにもハードやソフトなどいくつかの種類はありますが、いずれも装用中の角膜はドライアイ、低酸素状態になります。装用時間の限度を超えたり、装用したままの就寝を繰り返したりすると、角膜障害を引き起こし、感染症などにもかかりやすくなります。また、使い捨て、頻回交換、定期交換が定められているタイプのレンズでは、使用期限を厳守する必要があります。

眼障害を引き起こさないためのレンズケアについて教えてください。
 まず、日ごろからせっけんを使って丹念に手指を洗う習慣をつけてください。レンズに付着したタンパク、脂肪などはアレルギー性結膜炎の原因となります。漬け置き洗浄を指定しているレンズもありますが、片面20秒以上のこすり洗いは絶対に必要です。洗浄・すすぎ・保存・消毒を1液で行うソフトCL用消毒液(MPS)を使う場合も同様です。
 乱視のある人はレンズ選びの誤りも眼障害の原因となります。また、アレルギー結膜炎やドライアイなどの眼の病気のある人は、適切なレンズを使用し、装用ルールを守り、きちんとレンズケアをしていても眼障害を起こすことがあります。
 近年、化粧品がCLの表面に付着していることが、眼障害の原因となっているケースが目立ちます。化粧の前にCLを入れること、化粧を落とす際にまずCLをはずすこと、そして、指先に残ったアイシャドウやクレンジングがCLに付着しないように気を付けることを徹底しましょう。また、まつ毛の生え際より内側にアイメークをすると、マイボーム腺という涙成分の中の脂成分の分泌の減少により、ドライアイや感染症を誘発しやすくなるので注意が必要です。
 装用ルール・時間・サイクルの厳守と丁寧なケアはもちろんですが、定期的な眼検診も必須です。少しでも違和感を感じたら、すぐに眼科を受診することをお勧めします。

2012年3月24日土曜日

便秘

ゲスト/医療法人社団 いし胃腸科内科 石忠明副院長

便秘の原因について教えてください。
 一般的には便回数が週2回以下の状態を便秘と呼んでいます。排便の頻度も大事ですが、それよりも規則的に、すっきりと残便感のない排便ができているかが重要です。
 一般的に女性の方が便秘になりやすく、慢性的な便秘に長年苦しんでいる女性も多いようです。女性が便秘になりやすい主な原因は、腹筋が弱い、運動不足、加齢、ストレスが挙げられます。
 原因や症状は人それぞれ異なりますので、まずは自分の便秘の原因を見つけることが大切です。腸閉塞(へいそく)、大腸がん、虫垂炎など腹部を手術した後の癒着が原因となって便秘が引き起こされることがあります。また、精神的ストレスにより自律神経のバランスが乱れ、便秘がちになるケースもあります。加齢による腹筋の筋力低下や、体内の水分不足が便秘の原因になっていることもあります。このほか、薬の副作用による便秘の可能性も考えられます。

便秘の治療について教えてください。
 便秘の治療の基本は、生活習慣の改善と食生活の改善、下剤の使用です。規則的な排便習慣を身に付け、便意を逃がさないようにします。大腸の運動を活発にさせるため、軽めの運動を心掛けることや、ストレスをためずに発散することも大切です。また、朝、昼、晩の規則正しい食事と食物繊維の多い野菜や果物、海草類をたっぷり取るようにしましょう。適度な水分の摂取も大事です。下剤を服用する場合は、便秘の原因や症状に応じて、薬が使い分けられます。下剤はあくまでも一時的な治療であり、正しい生活習慣を身に付け、腸内の環境を整え、自然な排便のリズムを作る心掛けが大切です。
 下剤の使用が逆効果になることもあります。糞便が固い方は柔軟化させる内服薬、腸の動きが低下している方は腸を刺激して出す薬が効果的です。自己判断で、安易に市販の下剤に頼るのは危険です。長期間便秘が改善しない場合は、大腸がんなど重大で深刻な原因が隠れているケースもあります。一度専門医を受診し、便秘の原因をきちんと見極め、適切な対処を行うようにしましょう。

2012年3月14日水曜日

長引くせき

ゲスト/医大前南4条内科 田中 裕士 院長

長引くせきの原因について教えてください。
 「風邪をひいた後、いつまでもせきが残っている」「せき・たんがずっと続いて苦しい」など、長引くせきに悩んでいる患者さんが増加しています。せきというのは、風邪以外にも、さまざまな呼吸器の病気によって現れる症状の一つです。また、せきの原因が一つだけでなくいくつも重なって長引いているケースもあります。そのうち治まるだろうと放置していると、夜眠れなくなる可能性もあるので、きちんと原因を見極め、それに応じた治療をする必要があります。
 せきには3週間ほどで治まる急性のせきと、8週間以上続く慢性のせきがあります。急性のせきの場合、一般的な風邪、マイコプラズマ肺炎や百日咳(ぜき)、結核などの感染症が原因であることが多く、慢性の場合は感染症以外が原因であることが多いです。感染症以外によるせきの原因として代表的なものには、ぜんそく、せきぜんそく、アトピー咳嗽(がいそう)、胃食道逆流症、慢性閉塞(へいそく)性肺気腫(COPD)のほか、アレルギー性鼻炎や心因性によることもあり、肺がん、間質性肺炎でも症状が進行するとせきが出るようになります。
 特定の季節だけせきが出るケースは、アレルギーが原因によるせきの疑いがあります。スギ花粉がほとんど飛散しない北海道では、春の花粉症といえばシラカバ花粉症です。北海道では3月からハンノキ、4月中旬からシラカバの花粉の飛散時期なので注意が必要です。

長引くせきの診断と治療について教えてください。
 せきの持続期間やせきが出る時間帯、たんの有無などから原因を考え、必要に応じて胸部エックス線検査や血液検査、喀痰(かくたん)検査を行うことで診断します。さらに、精密な検査が必要であれば、肺機能検査や気道過敏性検査、呼気一酸化窒素測定などを行い、せきの原因を(場合によっては複数に重なり合った原因を)特定していきます。
 せきを完全に止めるには、原因になっている病気を治さなければなりません。せきの背後にある病気によって適切な治療はさまざまです。長引くせきに対し、自己判断でせき止めを服用していても、ほとんど効果は期待できません。むしろ害になることもあります。たかが“せき”だからと軽く考えず、まずは専門医療機関を受診して、正しい診断を受けることをお勧めします。

2012年3月7日水曜日

職場のメンタルヘルス

ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 橋本 真一 医師


職場におけるメンタルヘルスについて教えてください。
 平成10年以降、自殺者総数が3万人を超えるという事態が続く中で、労働者の自殺者数も高い水準で推移しています。日々の診療の中で、仕事上のストレスを抱えて、うつ状態になっている方が増えていることを実感します。以前は、過重労働(長時間労働)によるうつ状態、近年は、従来の概念では捉えきれないうつ病、いわゆる“現代型うつ”の症状で受診される方が目立ちます。
 身体疾患と同様に心の病気も、早期発見・早期治療が重要です。初期対応が遅れると、病状が悪化し、治るまで長期化することもあります。ところが多くの企業では、メンタルヘルスの不調者に対し、必ずしも適切に対応できているとはいえず、職場復帰に関してもさまざまな問題が起きているケースがみられます。回復状況はどのくらいか、出社に耐えられるかどうかなど、それぞれの事例を正確に評価、把握できていないことが主な理由で、会社の規模にもよりますが、産業医がうまく機能していないことが大きな課題として挙げられます。
 うつ病に対する正しい知識と対処方法が、職場でますます求められるようになっています。組織としてはストレスケアと啓発教育、産業医が機能する体制の整備など支援強化を重視する必要があります。

職場のメンタルヘルス対策について教えてください
 働く人やその家族、上司や管理職などの企業側、双方がメンタルヘルスに気を配ることが大切です。セルフケアとしては、例えばよく眠れない、食欲がないなどの状態が2週間以上続いている場合は、うつ病など心の病気のサインである可能性がありますので、社内の産業医に相談する、または外部の専門医療機関を受診することをお勧めします。上司など管理職の立場であれば、日ごろから部下に対する観察、気付き、声掛けなどが必要です。遅刻や欠勤が増える、元気がない、不注意からの失敗が増えるなど、目に見えて変化が分かるサインが多くあります。ストレスのサインを見つけたら、管理職から歩み寄り、社員と面接し、必要なら社内外の専門機関への相談を勧める必要があります。
 職場のメンタルヘルス対策のために、企業の立場に立った支援、助言をしてくれる機関に各都道府県の「産業保健推進センター」「地域産業保健センター」がありますので、これらを利用するもの一つの手です。

2012年2月29日水曜日

入れ歯

ゲスト/庄内歯科医院 庄内 淳能 院長

入れ歯にはどんな種類がありますか。
 取り外しのできる人工の歯のことを入れ歯と言います。失った歯を治療する方法の一つです。入れ歯は大きく分けて、部分入れ歯と総入れ歯の二つがあります。部分入れ歯は、失った歯の本数に関係なく、部分的に歯が失われた場合に使われ、総入れ歯は歯を全て失った場合に用いられます。
 部分入れ歯は、人工の歯と、歯を支える部分(義歯床)、自分の歯に掛けるバネの三つの部分からなります。取り外しができ、手入れが簡単であることや、失った歯が1本の場合から多数の場合まで対応できることなどが特徴ですが、義歯床がプラスチックなどで作られている場合に違和感を感じやすいことや、バネの部分が外から見えるため審美性に劣ることなどのデメリットもあります。口腔(こうくう)内の違和感や審美的な問題を解消するために、自費診療の治療として、義歯床が金属の入れ歯やバネのない入れ歯、マグネット式の入れ歯など、新しいタイプの入れ歯も登場しています。それぞれに特徴があり、患者さんの口腔内の状態によって向き不向きがあります。歯科医師とよく相談して決めるのがいいでしょう。

入れ歯のアフターケアについて教えてください。
 入れ歯を初めて入れた時はぎこちなく感じるものです。歯茎が腫れたり、傷ついたりすることがあるかもしれませんが、そこからが治療のスタートだと考えることが大切です。時間をかけて少しずつ調整を重ねて、個々の歯茎に合った入れ歯を作り上げていきます。完全な調整が終わるまでには、かなりの時間(回数)を要する場合があることを理解してください。少しでも痛みを感じるときは、決して我慢せずに、すぐに歯科医院で調整してもらいましょう。入れ歯の調整は繊細な作業なので、自分で調整するのは絶対に禁物です。入れ歯の調整のほかに、入れ歯の周りの歯の状態も確認しなければなりませんので、定期的な検診も必要になります。
 入れ歯にはいろいろな素材が使われています。素材によって性質が異なるため、ケアの方法にも違いがあります。自分の使っている入れ歯の素材をきちんと知り、それぞれに適したケアを行いましょう。
 歯茎の状態は毎日変化していますので、時間が経てば必ず入れ歯は合わなくなってきます。約2年を目安に、新しく作り替えることをお勧めしています。

2012年2月15日水曜日

関節リウマチの診断と治療

ゲスト/北海道内科リウマチ科病院 清水 昌人 副院長

関節リウマチとはどのような病気ですか。
 関節リウマチは原因不明の自己免疫性疾患の一つです。細菌やウイルスから自分を守るべき白血球(リンパ球)が、自分の関節を攻撃し関節に炎症を引き起こします。全ての関節が侵される可能性がありますが、比較的小さな関節に起こることが多いのが特徴で、関節炎が長く続くと関節の軟骨や骨が破壊され、関節が変形を起こすようになり、日常生活に支障を来します。また、炎症が強い場合には全身症状として微熱、倦怠(けんたい)感を来し、さらに関節外症状として間質性肺炎、胸水などの肺病変や血管炎(下腿(かたい)潰瘍やしびれなど)などを合併することもある全身性疾患です。

関節リウマチの診断と治療について教えてください。
 2010年に関節リウマチの分類基準が改定されました。新しい基準はより早期に関節リウマチの診断を確定し、早期治療による患者さんの予後改善に寄与しています。関節リウマチの診断は、専門医による問診、診察、検査などから判断しますが、血液検査やレントゲン検査のほか、最近では関節エコーや関節MRI(磁気共鳴画像装置)による検査が有用と考えられています。通常の検査では検出できない炎症を発見できる関節エコーや関節MRIは、早期診断に利用するだけでなく、より正確に病状を評価しそれに基づいて治療を強化することで、患者さんの予後を改善することも期待できます。
 治療の中心は薬物療法で、関節の炎症を抑え、関節破壊の進行を防ぐことが目標です。抗リウマチ薬の投与を開始し改善に乏しければ、痛みだけでなく、関節破壊の進行も抑制できる生物学的製剤(現在6種類)の導入を検討します。生物学的製剤は、患者さんの約80%に効果があり、効果発現が早いという特徴があります。また、抗リウマチ薬の中心として使われてきたメトトレキサートが昨年2月より最大8錠まで増量可能となり、これまで効果が不十分であった患者さんに対し増量により効果が得られるようになりました。
 関節リウマチは全身の病気なので、薬物治療のみでなく、一般内科、整形外科、リハビリ科など診療科を超えた医療連携、チーム医療が重要となります。手首、足趾(そくし)、特に手指の関節に原因不明の痛みや腫れのある方は、関節リウマチの疑いがありますので、一度専門医を受診されることをお勧めします。

2012年2月8日水曜日

目の屈折矯正手術(レーシック)

広域医療法人社団メディカルドラフト会 錦糸眼科 矢作 徹 医師

レーシック治療を受ける際のポイントを教えてください
 イントラレーシックなどの屈折矯正手術は、必ずしも緊急性・必要性がある治療ではありません。メガネやコンタクトレンズの使用で悩んでいる方にとって、屈折矯正手術は生活をより快適に変えてくれる新しい選択肢ですが、治療を希望される方は、カウンセリングや診察で十分に説明を受けて、屈折矯正について正しく理解し、そして十分に納得した上で治療に臨むことが大切です。
 レーシック治療にはいくつかの種類がありますが、個々の目の状態によって最もふさわしい術式を選ぶことも重要です。現在は視力向上のみならず、収差(夜間の見えにくさの原因)を補正するアスフェリック(非球面)照射など、見え方の質も向上させる術式も登場しています。使用するレーザー装置の性能も重要です。
 性能の高いレーザー装置を使用しても、治療に必要な検査結果や術者の経験が不足している場合などは、望んでいる結果が得られないこともあります。長くレーシック治療に携わり、症例数の多い医療機関を選択するのも、レーシック治療を受ける際のポイントの一つです。実際に医療機関を訪れた時、検査や治療に関する説明が不十分と感じた場合には、セカンドオピニオンを求めて他の医療機関を受診することをお勧めします。また、治療費は自由診療となり、当院では両眼で8万〜33万円です。なお、費用は医療機関により異なります。

レーシック治療の予後について教えてください。
 現在に至るまで数多くの症例が報告されているレーシック治療は、視力に悩む方にとって、裸眼で生活できる可能性が高まる治療法です。しかし、治療を受けることで必ずしも1.0以上の視力になるとは限りません。
 レーシック治療は、レーザー装置に角膜の度数・曲率半径・照射域・形状などのデータを入力し、角膜をレーザーで削り、角膜の屈折率を変え、網膜にピントを合わせて視力を矯正する手術です。ただし、データの測定値には多少の誤差が生じます。また、測定できない角膜の含水量によっても切除量が変化します。こうしたさまざまな要因が治療に影響し、術後も矯正が不足し、再治療が必要なケースもあります。
 術後、良好な視力が得られた場合でも、パソコン作業などで近くを見続ける環境にいると、再び近視が現れることもあります。その予防として、術後に近視予防のメガネを渡している医療機関もあります。詳しくは、初診検査時に医師にお尋ねください。

2012年2月6日月曜日

現代人の顔の骨格と歯並び

ゲスト/E-line矯正歯科 上野 拓郎 院長

現代人の顔の骨格の特徴について教えてください。
 昔の日本人の顔は、顔幅が広く、顎がしっかりした骨格が一般的でしたが、最近の若い世代の顔の骨格は、顎がせまく、したあごがとがった面長型が非常に多く見られます。日本人の食生活が急激に変化し、軟らかい食べ物が主流となった昨今。咀嚼(そしゃく)回数が極端に減り、顎や口周辺の筋肉が衰えたことが原因だといわれています。
 また、日本人の頭の形を容器に例えると、丸い容器で、欧米人は縦長の容器だといえます。縦長の容器は奥行きがあり、きれいに歯が並びますが、同様の数の歯を丸い容器に入れようとすると、奥行きがないため、どうしても無理が生じてきます。結果、奥の歯が内側に倒れ、歯が凸凹に生えてくるのです。これを不正咬合(こうごう)といいます。最近の研究で、現代人は歯のサイズが大きくなっているという報告がありました。現代人の永久歯の標準本数は28本ですが、若い世代では24本しか生えていない人も珍しくありません。このように、顎が狭くなったことで、現代人は歯にさまざまなトラブルを抱えるようになったのです。

歯科矯正を始めるための適切な時期について教えてください。
 食生活の変化により、今後も若い世代の不正咬合は増えていくでしょう。成長期にある子どもは、成長を利用しながら理想的な噛(か)み合わせに誘導していくことができます。注意したいのは、歯科矯正を始めるタイミングは個々で違うということ。お子さんの歯並びが気になるという人は、就学時前に一度、矯正歯科で検診を受け、治療を始める適切なタイミングを医師に診断してもらうことをお勧めします。
 正しい歯並びを得ることで、食べ物をしっかり噛んで食べられるようになることはもちろん、発音もよくなり、また審美的にもきれいな口元になります。口元にコンプレックスを感じている人にとっては大きな自信となるでしょう。日本では歯科矯正に対する認識が欧米に比べるとまだ低く、矯正治療に抵抗感を示す人も少なくありません。しかし、歯科矯正は、他の病気を治すのと同じように、歯の正常なそしゃく機能を回復することと、健やかな体を作るために必要な治療です。少しでも気になることがあれば、気軽に専門医に相談してみてください。

2012年1月25日水曜日

COPD(慢性閉塞〈へいそく〉性肺疾患)

ゲスト/医療法人社団 大道内科・呼吸器科クリニック 大道 光秀 院長

COPDについて教えてください。
 COPDは、日本語で「慢性閉塞(へいそく)性肺疾患」と訳されます。患者さんの数が増え、最近では新聞やテレビなどでも病名を目にするようになりました。気道の空気の流れが慢性的に悪くなり、咳(せき)や痰(たん)、労作時の息切れが出てきて、最後は呼吸困難になる病気です。以前では、肺気腫や慢性気管支炎という病名で言われていましたが、それらの病気になってしまう過程や終末像として、COPDという病名が普及してきました。
 COPDは肺の生活習慣病ともいえます。初期には咳や痰、坂道や急いだ時の息切れといったありふれた症状で、ただ風邪が長引いているだとか、「年齢のせい」と思っていて、気付かないうちにゆっくりと症状が進行し、病院を受診した時にはかなり悪化しているというケースが多いのです。また、それまで症状がなくても、風邪やインフルエンザなどの感染症がきっかけで咳、痰、呼吸困難の症状がつよく出てきて、はじめてCOPDをもっている事が分かることがあります。またCOPDは冬に症状が悪化し、夏には改善します。
 病変は、肺胞と気道に起こります。肺胞を仕切る壁である肺胞壁が壊れると、血管も壊れてしまい、ガス交換の効率が悪くなります。肺の弾性力が減るので、息を吐く時に気管支を拡げる力が減り、空気の流れが悪くなります。一方、気道では炎症を繰り返すことで過剰に痰が分泌され、気管支の粘膜も厚くなり、気道を狭くし空気の流れを悪化させます。

COPDの患者が増えてきたのはなぜですか。
 COPDの主な原因は喫煙や大気汚染ですが、日常の診療のイメージでは喫煙によるものがほとんどです。喫煙による肺の障害は男性より女性が強く、女性の喫煙率が高い北海道では女性患者が増加しています。
 COPDは軽いうちであれば禁煙や気管支を拡げる薬の吸入や飲み薬での治療が可能ですが、症状が進めば呼吸困難のため日常の生活が困難になり、高濃度の酸素を吸入する「在宅酸素療法」などが必要になります。咳や痰、労作時の息苦しさなどを感じたら、肺の機能検査を受けてください。早期に発見し、治療することが重要で、生活習慣病ですから治療は長期に渡ります。予防法は、何といっても禁煙です。最近では病院でも禁煙を積極的にサポートしていますから、禁煙に失敗した人は、一度相談してみることをお勧めします。

2012年1月18日水曜日

白内障

ゲスト/ふじた眼科クリニック 藤田 南都也 院長

白内障について教えてください。
 人間の目はカメラに例えることができますが、白内障はカメラのレンズにあたる水晶体が濁ってくる病気です。進行すると、ものがかすんで見える、ぼやけて二重に見える、明るい所へ出るとまぶしくて見えにくい、などの症状が現れます。
 白内障の原因で最も多いのは、目の老化によるもので、70歳代以上になるとほぼすべての人に、白内障による視力低下が認められます。アトピー性や糖尿病、外傷による白内障は、若いうちから発症することもあります。また、生まれつき水晶体が濁っている先天性白内障もあります。
 年を取ると避けられない病気なので、ある程度の年齢になれば定期的な検診が必要です。白内障は進行するにつれ、水晶体が硬くなり、治療が難しくなります。何となく目がかすむ、ものが見えにくいといった症状を感じたら、早めに専門医の診察を受けるようにしましょう。

白内障の治療について教えてください。
 白内障が軽度で、視力に影響が小さい場合は、点眼薬によって病気の進行を抑える治療が行われます。しかし、濁った水晶体を元に戻す薬はありませんので、進行した白内障には手術が行われます。
 患者さんの全身状態や通院に問題がなければ日帰り手術ができます。年齢や体の状態によっては入院が必要となりますので、医師と相談して決めてください。
 手術は、濁った水晶体を超音波で砕き、「眼内レンズ」と呼ばれる人工のレンズを入れます。眼内レンズによっては近視や遠視などの屈折異常を治すこともできます。手術は通常局所麻酔で行い、痛みはほとんどありません。手術時間は通常10〜数十分程度が一般的です。
 術後は、早ければ翌朝には視力改善を体感できますが、目の状態が安定するまでは点眼加療が必要です。当院では術後約1週間は、紫外線をカットし、ホコリなどから目を守る保護メガネを装用していただきます。
 手術を一度行えば、再度白内障になることはありません。眼内レンズは半永久的に持ちます。ただし、時々、水晶体が包まれていた薄い膜に濁りが出てくる場合があり、これを後発性白内障と呼びます。その際はメスを入れる必要はなく、レーザーを使って濁りを取ることができ、視力はすぐに回復します。

2012年1月11日水曜日

鼻から入れる内視鏡

ゲスト/やまうち内科クリニック 山内 雅夫 院長

鼻から入れる内視鏡について教えてください。
 これまで、胃内視鏡検査は口から入れる経口内視鏡を用いるのが一般的でした。しかし、最近は「経鼻内視鏡検査」という鼻から挿入する方法で検査が行われることも増えてきました。経鼻内視鏡はかなり以前からあったのですが、近年は性能が良くなり、導入する医療機関が急増しています。
 弾力性のあるしなやかなチューブで、直径は5㎜台と、一般的な経口内視鏡の9㎜に比べて細く、スムーズに挿入することができます。画像もクリアな高画質で、視野が広く、ごく小さな病変も発見することが可能です。
 経口内視鏡は挿入時、舌の付け根の舌根という部分に内視鏡が触れることで、検査の最中に「オエッ」という吐き気を催すことがあるなど、患者さんの負担が大きかったのですが、経鼻内視鏡では鼻から挿入した内視鏡は鼻腔(びくう)を通って食道に入るため、嘔吐(おうと)感や痛みもほとんどありません。また、検査中に医師と会話できることも、医師と患者さん双方にとって大きなメリットになっています。さらに、鎮静剤の使用が不必要なので、検査後ただちに車の運転なども可能です。

実際にはどのように行いますか。
 最初に鼻づまりがあるか、鼻血が出やすいかなど鼻の状態を確かめます。鼻の疾患がある場合などは、経鼻内視鏡が使用できないこともあります。前処置として、鼻腔に局所血管収縮剤をスプレーし、鼻の通りを良くして出血をしにくくします。鼻腔に麻酔薬を注入してから、麻酔薬を塗った内視鏡と同じ太さの柔らかなチューブを挿入し、鼻腔の局所麻酔を行います。これによって、内視鏡が通過するときの痛みが抑えられます。局所麻酔なので、眠くなったりすることはありません。この後、内視鏡が鼻から挿入され、鼻腔、のど、食道、胃、十二指腸と順次観察がなされ、通常数分以内に終了します。
 がんや潰瘍など、食道や胃、十二指腸などの疾患は、早期発見、早期治療が完治への近道です。「検査が怖い」「以前すごくきつかった」など経口内視鏡を嫌うあまりに受診が遅れて症状が進行していることもあります。経鼻内視鏡は患者さんの体への負担が少ないので、内視鏡が苦手でちゅうちょしている人は、一日も早く医師に相談してほしいと思います。

2012年1月6日金曜日

秋から冬にかけての悩み・乾燥肌

ゲスト/宮の森スキンケア診療室 上林 淑人 院長

乾燥肌について教えてください。
 秋から冬にかけて寒い季節に、多くの人が悩まされる肌のトラブルといえば乾燥肌です。皮脂欠乏症または乾皮(かんぴ)症ともいい、中高年の手足、特に膝から下の皮膚によくみられます。皮膚が乾燥して、カサカサした状態になり、ひどくなると白く粉をふいたり、ひび割れてうろこのようになったりします。ある程度乾燥すると、それだけでかゆみを伴い、掻(か)くと悪化して皮膚炎を起こす場合もあります(皮脂欠乏性湿疹)。
 皮膚表面を覆う脂分など、皮膚の潤い(水分量)を保つ成分が、加齢などにより減ったり、不足することが乾燥肌の原因です。また、外気や室内の乾燥、皮膚を強く洗い過ぎるといった生活習慣なども原因の一つと考えられています。乾燥してカサカサした皮膚は、目に見えない細かな傷がたくさん付いた皮膚ともいえます。これらの傷からいろいろな刺激物が入り込んでかゆみを起こし、さらなる皮膚トラブルの原因となります。放っておくとますます症状は悪化しますので、早い時期から治療することが大切です。

乾燥肌の治療と対策について教えてください。
 治療は、傷ついた皮膚の表面に潤いを与える保湿剤が中心となります。皮膚のダメージに応じて、かゆみや炎症を抑える塗り薬、飲み薬を処方することもあります。ただの乾燥肌と思っていたのが実際にはアトピー性皮膚炎だったというケースや、かゆみの症状には別の皮膚の病気が隠れていたというケースもありますので、自己判断に頼らず、専門医と相談の上で治療することをお勧めします。
 乾燥肌対策として日常生活で気を付けたいポイントは、①保湿クリームなどを小まめに塗り、皮膚の潤いを保つこと。特にお風呂上がりに塗るのが効果的です。②お風呂で体をゴシゴシと洗いすぎないこと。あかこすりやナイロンタオルで皮膚を強くこすると、皮脂がどんどん失われていきます。また、せっけんには汚れと一緒に脂分を落とす成分が含まれているので、使い過ぎには注意が必要です。③室内を適切な湿度に保つこと。空気が乾燥すると、皮膚の乾燥やかゆみもひどくなります。特に冬期間は室内が乾燥しがちなので、加湿器などで部屋の湿度を保つようにしましょう。

子どもの歯科矯正治療

ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治 正光 院長

子どもの矯正治療について教えてください。
 お子さんの歯並びが気に掛かり、矯正が必要かどうか判断に迷われる人も多いと思います。子どもの歯並びのチェック方法の一つとして、お子さんの口元を顔の正面から観察することをお勧めします。上の前歯と下の前歯の真ん中の位置が一致していればひと安心ですが、ずれている場合は、矯正の必要があると考えられます。
 出っ歯や受け口といった上下の顎が前後に大き過ぎたり小さ過ぎたりという骨格的な問題は、一般の人にも気付きやすいのに対し、左右のずれは発見しにくいものです。自然な矯正治療なら、顎骨(がっこつ)の成長コントロールが可能な9〜10歳までに行うのが理想的です。この時期なら就寝時に、バイオネーターやFKO(エフカーオー)と呼ばれる機能的顎(がく)矯正装置を装着し、ずれた顎の骨を中央に移動させます。子どもの成長能力を生かしたもので、痛みはほとんど感じられず、日中は装着する必要がありません。ずれの程度にもよりますが、装着期間は平均で半年から1年。経過観察のための通院は、1〜3カ月に1度が目安です。
 ずれの原因には、歯そのものがずれている場合もあり、永久歯がそろってからでも治療は可能です。その場合は、抜歯する可能性が高くなりますが、きれいに治療できることが多いです。判断は非常に難しいので、ぜひ専門医にご相談ください。

家庭でチェックするための別の方法はありますか。
 頬づえやかみ癖、就寝時の体位が左右どちらかに大幅に偏っている場合などは、左右のずれを引き起こす原因となることがあります。上の前歯と下の前歯の中央の位置が一致しているのを確認したら、次は鼻の先端を基準に、顔の中央に前歯の中心が沿っているかを確認してください。ずれの原因は一見して分かるものではなく、万が一、骨格のずれを歯のずれと勘違いして放っておくと、矯正に最適な成長期を逃してしまう場合もあります。
 子どものうちの悪い歯並びやかみ合わせを放置してしまうと、大人になってから心理的な悪影響を及ぼしたり、虫歯や歯周病、顎関節への影響が出てくる場合もあります。小児期に歯並び、かみ合わせの治療を行うことで、これらの心配を減らすことができます。少しでもおかしいなと感じたら、早めに専門医に相談することをお勧めします。また、歯科矯正は自由診療となりますので、費用についてもその際に問い合わせると良いでしょう。

心の病気とそのサインについて

ゲスト/医療法人社団 正心会 岡本病院 島子 智之 医師

心の病気の初期症状とそのサインについて教えてください。
 睡眠異常(不眠・過眠)、食欲異常(過食・拒食)、やる気が出ない、そわそわして急に落ち着かなくなる、人と接したくないというのが、心の病の代表的な初期症状です。趣味や好きだったものに急に興味を持たなくなる、示さなくなるといった場合も注意が必要です。一般的に、そういった症状が2週間程度続く場合は、心の病のサインだと考えてください。
 最近では、テレビやインターネットの情報だけで、自分の病気を判断して「自分はうつ病だ」と思い込んでしまう人が多くみられます。それらの情報は、正しいものもありますが、間違った情報も数多く含まれています。すべてをうのみにして、病気でもないのにふさぎ込んでしまっては、別の病気を発症してしまう可能性も考えられます。
 心の病は、早期発見・早期治療が肝心です。体がだるい、食欲がない、よく眠れないなど、自分の体調がいつもと違うと感じたら、まずは一度専門病院を受診することをお勧めします。

心の病は、どのような人が発症するのでしょうか。
 心の病は年々、発症数が増加傾向にあり、現在では日本人の5人に1人がうつ病を発症しているといわれています。また、うつ病以外にも、不安障害やパニック障害などさまざまな心の病が存在しています。ストレス社会で生きる私たちにとって、心の病はいつ、誰が発症してもおかしくない、非常に身近な病気といえます。
 しかし、「精神科」や「心療内科」と聞いただけで、受診をためらう人が少なくありません。時代とともに改善されてきたと思われますが、心の病が一種特別な病気とみなされることがあり、カウンセリングに通っていることを周りの人に悟られたくないと考える人が多いようです。心の病気は自分の病のつらさと、周りに理解してもらえないつらさで、二重につらい病気です。辛さを我慢している状態が続くと、病状が悪化し大変なことになってしまうケースもあります。だからこそ、家族や友人、会社の同僚など、本人以外の第三者が心の病の症状や治療などについて正しく理解し、病気の兆候を見逃さないようにすることが重要なのです。心の病は、専門医による適切な治療はもちろんですが、周囲の人が病気への理解を示し、共感してあげることが一番の特効薬といえます。