2011年10月31日月曜日

顎(がく)関節症の矯正治療

ゲスト/つちだ矯正歯科クリニック 土田 康人 院長

顎関節症とはどのような病気ですか。

 顎関節症とは、口を十分に大きく開閉できなくなったり、口を開閉する時にカクカク(またはシャリシャリ)と音がしたり、下顎が左右にずれてガクガクしたりする状態をいいます。顎の関節は、耳の穴の前方1㌢くらいのところにあり、顎を開けたり閉めたりする役割を持っています。この関節がずれると、顎を開閉した時に関節が炎症を起こして痛んだり、関節が引っ掛かる感じになったり、口の開閉に不自由を来すようになります。
 顎関節症の原因は、まだはっきりとしない部分もあります。精神的ストレスや歯ぎしり、歯をかみしめる癖などさまざまで、それらが積み重なって許容限度を超えたときに起こると考えられています。反対咬(こう)合(受け口)、上顎前突(出っ歯)、開咬(奥歯はかんでいるが前歯は開いている状態)など、かみ合わせの悪さ(不正咬合)も顎関節症になりやすい要因の一つです。当然ながらそれがすべての原因ではありませんが、顎関節症になる人はかみ合わせが悪いことが多いのは事実として挙げられています。

顎関節症の矯正治療について教えてください。

 症状の程度によって異なりますが、スプリントと呼ばれるマウスピースのようなものを歯にかぶせる治療が一般的です。スプリントを使い、下顎を適切な位置(やや下顎を前方に出した位置)で安定させ、その位置できれいなかみ合わせをつくります。続いて、矯正治療をスタートさせます。歯並びを矯正したり、かみ合わせや顎のずれを修復したり、場合によっては、口腔内の金属冠を作り替えたりし、かみ合わせが安定するようにします。矯正治療によりかみ合わせを安定させておかないと、スプリントをはずした時に、下顎が元の悪い位置に戻ってしまう可能性があるからです。
 顎関節症は中・高校生〜成人にみられることが多く、小学生以下の子どもに発症するケースは少ないです。しかし、子どものうちの悪い歯並びやかみ合わせを放置してしまうと、大人になってから顎関節への悪影響が出る危険性があります。小児期に歯並び、かみ合わせの治療を行うことでこれらの心配を予防することができますので、少しでも不安を感じたら、早めに専門医にご相談ください。

ストレスの対処法

ゲスト/五稜会病院 千丈 雅徳 院長

ストレスについて教えてください。

 外部からのさまざまな刺激(ストレッサー)によって心や体に負担がかかり、心身にゆがみが生じることをストレスといいます。ストレスは、不眠やうつ、胃痛や頭痛、さらには胃・十二指腸潰瘍など、心と体に不調を引き起こします。仕事が忙し過ぎたり、合わなかったりするとストレスが生じますが、逆に暇すぎてもストレスが生じることもあります。職場やプライベートな場でも、人間関係によるストレスは大きなダメージを与えます。職場で感じるストレスの原因の第一位に人間関係が挙げられているほどです。また、本当は強いストレスが掛かっているにもかかわらず、本人は「ストレスがない」と感じていることがあります。心のストレスといえば、いやな出来事や哀しいことによって起こると思いがちですが、結婚、昇進など本人にとってはうれしい出来事でもストレスが生じることも少なくありません。こうしたストレスは、気づくのが遅れがちです。「何となく調子が悪い」といった心身の不調のシグナルを見逃さないようにしましょう。
 しかし、ストレスがまったく無く、平穏で退屈な生活では、挑戦する意欲や困難を乗り切る充実感を感じることはできません。人間は適度なストレスと向き合うことによって刺激や緊張が生じ、張り合いや生きがいを持って毎日を過ごすことができるのです。大切なのはストレスといかに上手に付き合うかということです。

どう対処すればいいですか。

 ストレス発散に効果的なのはRest(休養)、Recreation(気分転換)、Relax(くつろぎ)の3つのRと言われます。睡眠によって心身を休め、ストレスを癒やすことができます。しかし、何かのきっかけで睡眠不足が続くと、それ自体が大きなストレスになり、今度は不眠を引き起こすという悪循環に陥ることがあります。スポーツや趣味に没頭するなど、実生活とかけ離れた行為に集中したり、普段の生活圏を離れ自然の中で森林浴をするなど、心身のリフレッシュを図りストレスを改善することで、普段の状態を取り戻すことができます。しかし、思い通りにいかないとがっかりしてかえって大きなストレスを抱えることにもなります。
 一人で悩んでいると不安の種は大きくなります。誰かにストレスの原因を話すことでストレスを軽減させることができます。自分を理解し精神的に支えてくれる人を持っておくことが大切です。また、目の前のことだけに集中する、気掛かりなことは紙に書いて頭に残さない、休日は仕事を忘れて過ごす、悩みがあったら親しい人に早めに相談するなど、自分なりの対処法を身に付けて、ストレスがたまらないうちに解決するようにしましょう。
 ストレスに負けない心をつくるには、自分と向き合うことが大切です。ストレスの原因がどこにあるかなど現状の問題点を冷静に洗い出してみましょう。一つのことに集中して全力を注ぐ、プラス思考を心掛けてネガティブなことを言わない、成功した自分を繰り返しイメージするといった方法も効果的です。急に考え方を変えるのは難しいものなので、無理をせず、少しずつ始めると良いでしょう。
 身近に相談する相手がいなかったり、ストレスによる気分の大きな落ち込みを経験された場合は、心療内科や精神科を受診しましょう。しっかり話を聞いてくれる医師や臨床心理士を選ぶと良いでしょう。

2011年10月14日金曜日

帯状疱疹(ほうしん)

ゲスト/白石内科クリニック 干野 英明 医師

帯状疱疹とはどのような病気ですか。

 帯状疱疹は、子どものころにかかった水痘(水ぼうそう)のウイルスが体内に潜伏していて、何かのきっかけに再び活動することによって起こる皮膚の病気です。水痘にかかって治った後も、このウイルスは痛みや感覚などを伝える知覚神経節の中に隠れて何年も潜伏します。そして、免疫力が低下したときにウイルスが再活性化します。免疫力が低下する原因には、加齢、病気、疲労、ストレスなどがあります。免疫力の低下によって再活性化したウイルスは、神経に沿って増殖し、その先の皮膚に帯状の水ぶくれをつくります。
 日本では6人に1人がかかるといわれる身近な病気です。最近では若い年代にも増加しています。一度発症すると再発することはまれです。
 症状は、体の左右どちらか片側の皮膚にピリピリとした痛みが出現します。次に、痛みを感じた場所に赤い発疹ができ、神経の通り道に沿って線状、帯状に広がっていきます。発疹は水ぶくれとなって多くの場合激しい痛みを伴いますが、約2週間でかさぶたとなり、3週間ほどで治ります。
 痛みは水ぶくれが治るころに消えますが、長期間痛みが続く場合もあります。これは帯状疱疹後神経痛と呼ばれ、高齢者によく見られます。痛みは1〜3カ月ぐらいでなくなりますが、中には数年間にわたって続くこともあります。

帯状疱疹の治療について教えてください。

 帯状疱疹にかかったら、できるだけ安静を保ち、早期に治療を開始することが大切です。発疹が出て3日以内に治療を受ければ後遺症が残る確率は低くなり、皮膚の症状も軽くて済みます。発疹は全身どこにでも出る可能性がありますが、多いのは肋間(ろっかん)神経のある胸から背中にかけてです。顔や首、耳周辺に出た場合は、顔面神経麻痺(まひ)や難聴、味覚障害、失明に至るケースもあるので注意が必要です。
 治療薬には、抗ウイルス薬の軟こう、内服、点滴があります。補助的に非ステロイド系消炎鎮痛剤や抗うつ薬などが処方されることもあります。また、痛みが強い場合は、神経ブロックを行って痛みを止める方法があります。
 帯状疱疹にかからないようにするには、日ごろから栄養、睡眠などを十分に取り、適度に運動を行うなど、体力と免疫力を低下させないことが重要です。

加齢黄斑(おうはん)変性

ゲスト/大橋眼科 大橋 勉 院長

加齢黄斑変性とはどのような病気ですか。

 加齢黄斑変性は、加齢が原因で起こる眼疾患です。欧米では主要な失明原因の一つとして以前から知られていましたが、急激な高齢者人口の増加に伴い、日本でも患者数が増加しています。
 黄斑は、網膜の中でも視力をつかさどる重要な細胞が集中している部分で、物の形や大きさ、色、奥行き、距離などの情報の大半を識別しています。黄斑部が傷むと、見たい部分がゆがんで見える、ぼやけて見える、不鮮明になる、中心が暗く見えるなどの症状が現れます。
 加齢黄斑変性は、網膜に栄養や酸素を供給している脈絡膜から発生する新生血管の有無によって「滲出(しんしゅつ)型」と「萎縮型」とに分けられます。滲出型は、新生血管が発生し、出血など網膜の障害により起こるタイプで、進行が早く、急激に視力が低下していきます。萎縮型は、網膜の細胞が加齢により変性し、徐々に萎縮していきます。進行が緩やかなため、気付かない人もいます。しかし、時間の経過とともに滲出型に移行することもありますので、定期的に眼科医で検査を受ける必要があります。

加齢黄斑変性の治療について教えてください。

 病気の進行度や重症度、病型によって治療法は幾つかあります。
 滲出型の治療の中心的役割を果たしてきたのが「光線力学療法」です。眼の新生血管に集まる特殊な薬剤を注射し、そこに専用のレーザー光線を当てることにより、新生血管を閉塞させる方法です。1回の治療では効果が弱く、治療を複数回反復する必要があります。
 近年、滲出型の治療の主流になりつつあるのが「抗VEGF療法」という、新生血管の増殖や成長を抑える薬を、眼球の硝子体内に注射する方法です。導入期では、月1回の注射を3カ月間繰り返します。その後の維持期は、定期的に検査を行い、必要に応じて注射をします。視力維持のみならず視力改善の効果が期待できる治療法として注目されています。
 加齢黄斑変性から視力を守るには、早期発見が何よりも重要です。進行の早い滲出型でも早期に発見すれば、視力を維持・改善できる可能性が高くなります。物の見え方に異常を感じたら、すぐに眼科を受診してください。自覚症状がない人でも50歳を過ぎたら一度、眼底検査を受けられることをお勧めします。