2011年6月27日月曜日

緑内障への備え

ゲスト 札幌エルプラザ 阿部眼科 阿部 法夫 院長

緑内障とはどのような病気ですか。
 厚労省の調査によると、緑内障はわが国の失明原因の第1位を占めています。40歳以上では17人に1人、70歳以上では10人に1人の割合で緑内障の患者さんがいるというデータもあります。緑内障有病率は、年齢とともに増加していくことが知られており、日本の少子高齢化に伴って、今後ますます患者さんの数は増えていくことが予想されます。
 緑内障の自覚症状としては、見えない場所が出現する、あるいは見える範囲が狭くなるのが一般的です。しかし、病気の進行は緩やかなので、初期は視野障害があってもまったく自覚しないことがほとんどです。また、急激に眼圧が著しく上昇した場合(急性緑内障発作)は、眼痛、充血、目のかすみのほか、頭痛や吐き気を自覚することもあります。こういう場合は、急速に視野の欠損が悪化し、失明の恐れもありますので、すぐに治療を受ける必要があります。
 最近、緑内障の日本全国で過去に行われた大規模疫学調査から、日本人はどの地区でも、眼圧が正常範囲であるにもかかわらず緑内障になっている「正常眼圧緑内障」の患者さんの数が世界でトップクラスに多いことや、北海道地区と沖縄地区では急性緑内障発作を引き起こすタイプの緑内障およびその危険性のある予備軍が、他の地区と比べ有病率が2倍以上であることが示されました。

緑内障の診断、治療について教えてください。
 最近の緑内障の診断と治療の進歩は目覚ましく、「緑内障=失明」という概念は古くなりつつあります。急性緑内障まで進行するものは有病率0.4%とまれで、一般には早期発見・治療によって病状をコントロールできるということを理解してください。
 緑内障診断は眼圧だけでなく、眼底検査による視神経繊維の欠損の読影なども必要となります。治療方法としては、点眼薬などの薬物療法、レーザー治療、手術などがあり、緑内障のタイプやそれぞれの人に適した治療方針を決定していきます。
 成人の眼科受診率は意外に少なく、中には眼科だけは一度も受診したことがないという人も多数いるようです。長寿社会の今日、目の健康は人生の内容の質、社会的な生活の質を維持する意味からも非常に重要です。気になることがある人もない人も、一度専門医を受診しての総合的な検査をお薦めします。

乳がん検診

ゲスト 南郷にじの橋メディカルクリニック 工平 美和子 院長

乳がんについて教えてください。
 年間約4万人の方がかかり、1万人以上の方が亡くなっている乳がんは、現在日本の女性のがんの中で患者数の最も多いがんです。約20人に1人の女性が生涯いつか乳がんにかかるといわれ、今後も増加が予想されています。さらに、乳がんにかかるピークは40〜50代。仕事や子育てに多忙を極める時期であり、ご本人だけでなく周囲も巻き込み、大変な影響を及ぼしてしまうケースも多いようです。
 その一方で、乳がんは早期に発見できれば、約90%の人が治癒する「治すことができる」数少ないがんです。初期の段階で見つけさえすれば、ほとんど命を脅かすことはありません。また、早期発見なら乳房を温存するなど、自分の希望する手術法や治療法を医師と相談して選択できる可能性も高くなります。乳がんは見つかることが恐いのではなく、知らないままでいるのが恐い病気なのです。


乳がん検診について教えてください。
 乳がんの早期発見には、定期的な検診の受診と自己検診が何よりも重要です。医療機関での乳がん検診では、「視触診」「マンモグラフィー」「超音波検査」などが行われます。視触診は、乳房を観察し、乳房やリンパ節の状態を触っての検査です。マンモグラフィーは、乳房専用のX線装置で、小さなしこりだけでなく、乳がんの初期状態である微細石灰化を発見し、触っても分からない早期乳がんを見つけることができます。現在、厚労省は40歳以上の方を対象に、2年に1度、視触診とマンモグラフィーによる乳がん検診を推奨していますが、受診率は「2割台」に推移している状況です。受診率が低い理由の一つに、マンモグラフィー検査への恐怖心があるようです。確かに、撮影の準備のため乳房を圧迫する際に多少の痛みを伴いますが、わずか数秒で終わる撮影ですから、そこから得られる安心に勝るものはないと思います。
 超音波検査は、超音波を乳房にあててエコーを画像として診断する方法です。この検査では、マンモグラフィーでは映し出せないしこりを見つけることができます。しかし、逆に超音波検査では、マンモグラフィーで検出できる微細な石灰化は、見つかりにくい傾向があります。このように二つの画像診断は、それぞれ得意な分野が異なるため、両者を併用することが大切といえます。

2011年6月8日水曜日

矯正治療

ゲスト/E-line矯正歯科 上野 拓郎 院長

なぜ、矯正治療が必要なのですか。

 夏休みの前までに多くの学校、幼稚園などで歯科検診の結果のお知らせをいただくと思います。それまで本人、ご家庭の方が気にしていなくても「歯並び」に関しての指摘を受けることがあります。ショックかもしれませんが、多くの場合は何らかの歯並びの不調和があるはずです。
 歯並びが悪いと、歯磨きが隅々までできず、虫歯や歯周病の原因になります。しっかりとかんで食べられないので、胃腸など消化器官にも大きな負担がかかります。前歯がかみ合わない開咬(かいこう)や、下の顎(あご)が出ている反対咬合(こうごう)などのケースでは、発音に影響する場合があります。審美面で劣等感を抱くことも考えられます。実際に正しい歯並び、かみ合わせになると、口元を隠さずに笑顔を見せるようになり、表情が驚くほど明るくなります。また、正しいかみ合わせでよくかむということは、脳の発達に良い影響を及ぼすという研究結果もあります。
 きれいな歯並びを持つことは、口の中の健康、そして全身の健康を維持することにつながります。気になる点があってもなくても、また検診で指摘を受けたのであれば必ず、一度は専門医を受診することをお薦めします。

矯正治療への関心が高まっていますが。

 正しい歯並びが、機能面、健康面、審美面でいかに重要であるかが、日本でも広く認知されてきました。矯正治療に恥ずかしさや後ろめたさを感じることなく、堂々と矯正器具を装着する人が増えています。最近では、芸能人でも歯の表側に矯正器具を装着したまま、テレビや雑誌に登場している姿をよく見かけます。
 矯正治療が多くの人々に受け入れられ始めた要因として、矯正器具の著しい進歩があげられます。かつては歯の前面に光るメタルの矯正器具が主流でしたが、現在では目立たないワイヤーや透明な素材のブラケット(矯正装置)によって、スマートに矯正することができます。それでも抵抗がある場合には、ブラケットを歯の裏側に付ける見えない治療方法もあります。
 どのような方法、装置を選択するかは、個々人の歯の状態や年齢、環境などが関わってきます。矯正治療は長期にわたるので、理想の治療を受けられるよう、納得いくまで話し合える専門医を見つけることが大切です。

2011年6月7日火曜日

脂漏(しろう)性皮膚炎

ゲスト/宮の森スキンケア診療室 上林 淑人 院長

脂漏性皮膚炎とはどのような病気ですか。 

 体の中で脂の多い部分(頭、鼻の周り、耳など)に起こる皮膚炎です。頭皮では、脂っぽいフケや皮膚の赤み、顔では鼻の周囲や髪の生え際、耳などに脂っぽい赤みが見られ、ボロボロと皮がむけるようになります。個人差はありますが、かゆみを伴うこともあります。
 原因は、体質や睡眠不足、ストレスなどによる皮脂の過剰分泌、化粧品の刺激による肌への負担、洗顔不足などのスキンケア不足、不規則な食生活や野菜不足によるビタミンB不足などさまざまですが、原因がはっきり分からないことも多く、診断では似たような症状を伴うアトピーやしゅさ、ニキビとの鑑別が重要です。治療は炎症を抑える塗り薬が中心となります。必要に応じてビタミン剤や、かゆみを抑える内服薬を処方することもあります。また漢方薬の内服の併用が有効である場合もあります。脂漏性皮膚炎は症状が治まったり、再発したりするのが特徴ですので、根気よく治療を続けることが大切です。

脂漏性皮膚炎の予防について教えてください。

 脂漏性皮膚炎の予防法としては、日常生活の改善が挙げられます。脂肪分の多い食事に偏らないように、野菜や果物を十分に摂取してバランスの良い食生活を心掛けることが重要なポイントです。特に、脂漏性皮膚炎に有効とされているビタミンBを含む緑黄色野菜を十分に取るようにしましょう。また、ストレスや疲労を少しでも軽減するように注意し、規則正しい生活、十分な睡眠をとることも大切です。そのほか、小まめな入浴、洗髪、洗顔で全身を清潔に保つこと、日光(紫外線)を長時間浴びるのを避けることなどに気を付けるといいでしょう。
 この季節は、入学や就職、引っ越しなど新生活をスタートさせる人の多い時期です。自分を取り巻く環境の変化によって緊張を強いられたり、不安を感じたりすることがストレスとなって、脂漏性皮膚炎を引き起こしているケースもよく見受けられます。しぶとく再発しやすい皮膚炎ではありますが、医師の正確な診断と適切な治療を受ければ、気にならない程度にうまくコントロールできる疾患です。フケや頭のかゆみ、顔の赤みでお悩みの人は、自己判断せずに、医師の診断を受けてください。