2011年5月6日金曜日

大腸憩室(けいしつ)

ゲスト/佐野内科医院 佐野 公昭 院長

大腸憩室とはどのようなものですか。

 大腸憩室は、大腸の壁の一部が外へ袋状に飛び出しているものです。分かりやすくいうと大腸にできたくぼみです。憩室には先天的なものと後天的なものがありますが、ほとんどは後天性です。便秘や、下痢と便秘を繰り返す便通異常などで腸管内の圧力が上がり、腸管の弱い部分から粘膜が外側に膨らんだ状態が大腸憩室で、加齢により腸の壁が弱くなっていたり食生活の欧米化が原因と考えられています。
 大腸憩室があっても、多くは症状がありませんが、時に便秘、下痢などの便通異常や腹痛など、過敏性腸症候群と似た症状を起こすことがあります。原因不明の腹痛で検査をして、憩室が原因だったというケースも見受けられます。
 憩室に炎症を起こすことを憩室炎、憩室が沢山あることを憩室症と言います。
 憩室の中に便がつまるなどして憩室炎を発症すると腹痛の他に発熱や出血して下血などの症状が出現します。ひどい場合には穿孔と言って腸に穴が開いてしまい腹膜炎を起こすこともあります。高血圧や動脈硬化のある方、非ステロイド性抗炎症薬(痛み止め)やアスピリンなどの薬を服用している方は危険性が高いと言われています。

大腸憩室の治療について教えてください。

 特別な合併症がなく、無症状なら放置しておいてよいのですが、合併症を予防する意味で、できるだけ食物繊維成分の多い食事を摂取し、便通を整えることを心掛けるとよいでしょう。豆類やポップコーンなどは控えた方がよいです。憩室炎を発症した場合は、軽症の場合は食事を制限して腸の安静に努め、発熱などの症状を伴う場合は抗生物質を服用したりします。重症の場合は入院し、絶食して抗生物質を含めた点滴による治療を行います。大量の下血が持続する場合は内視鏡を用いて出血している憩室にクリップをかけて止血することもあります。腸に穴が開いてしまった場合には緊急に手術が必要になります。
 大腸憩室は、大腸がんとともに年々増加の傾向にあります。憩室の有無を確認するには、大腸の内視鏡やバリウム検査が有効です。検査を受けた時には憩室がないか確認しておくよいでしょう。将来的に憩室炎などのトラブルを引き起こすかもしれないと心にとどめておくことで、いざという時に慌てずにすみます。また、憩室が見つかった人は、腹痛や下血で病院を受診した際、憩室があると申し出ることで、診断や治療をスムーズに進めることができます。

人気の投稿

このブログを検索