2010年10月6日水曜日

「過敏性腸症候群」

ゲスト/佐野内科医院 佐野 公昭 院長

過敏性腸症候群とはどのような病気ですか。
 下痢や便秘などを繰り返し起こし、腹痛を主とするおなかの症状があるのに、検査をしても原因となる異常が見つからない病気です。症状は大きく分けて、頻繁におなかが痛くなり、下痢をするタイプ(下痢型)、便秘が続き、排便の前におなかが苦しくなるタイプ(便秘型)、下痢と便秘を繰り返すタイプ(混合型)の三つに分けられます。便通の異常以外に、いつもおなかが張った感じがする、便が残っているような気がする、おなかがゴロゴロ鳴るといった症状を伴う場合もあります。
 過敏性腸症候群の症状に悩んでいる人は、全人口の約10%といわれ、ここ数年で増加傾向にあります。しかし、実際に医師の診察を受けている人はその半数以下であり、多くの人が一時的な下痢や便秘と思い込んで、市販の薬で対処するなど自己流の治療を行っているようです。
 過敏性腸症候群の原因は、まだはっきりと解明されてはいませんが、不規則な生活習慣や食習慣の乱れ、ストレスなどが関係しているのではないかと考えられています。感染性腸炎に罹患(りかん)した後に発症する場合もあります。

過敏性腸症候群の治療について教えてください。
 問診で症状を聞き、血液や便、X線(レントゲン)撮影などの検査を行います。必要があればバリウム検査や大腸内視鏡検査なども行い、炎症や潰瘍(かいよう)など別の病気がないかを調べます。
 過敏性腸症候群は、その主な原因が心理的・精神的な問題と深く関係している場合が多いため、まず病気についてよく理解し、病気が起こった背景を明らかにし、医師と深い信頼関係をもって二人三脚で治療を進めることが重要です。治療の主軸となるのは、生活習慣と食事の改善です。毎日決まった時間に食事を取る、夜遅くの飲食は避ける、適度な運動をする、睡眠をしっかりとるなど、規則正しい生活を送れるよう支援していきます。また、下痢や便秘などの症状を改善するために、内服薬による加療を行います。場合によって、軽い精神安定剤や抗うつ剤などを処方することもあります。
 「たかが便秘」「単なる下痢」だからと便通の異常や腹部の張り、残便感などの症状を放っている人もいますが、中には深刻な病気が潜んでいる場合もあります。このような症状でお悩みの人は一度、専門医(消化器内科など)を受診することをお勧めします。

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