2010年8月4日水曜日

「うつ病」

ゲスト/医療法人社団 正心会 岡本病院 山中 啓義 副院長

うつ病とはどのような病気ですか。
 日本のうつ病患者は、推定で450〜600万人といわれています。日本人の13人に1人が、一生のうちで一度はうつ病にかかるという報告もあります。しかし、実際に病院・診療所を訪れている人や治療を行っている人は全体の1割程度でしかありません。うつ病は特別な病気ではなく、発症率の高い、誰でもかかる可能性のある病気であること、そして、うつ病はきちんと診察を受け、適切な治療を受ければ治すことのできる病気であることを理解してください。
 誰にでもある憂うつな感じは、気分転換などによって大抵は数日のうちに回復します。しかし、うつ病になると、症状の状況が好転したり、周囲の援助があったりしても、気分の晴れない状態などが2週間以上にわたって続きます。よく見られる心の症状としては、「気力が出ず、何事も面倒に感じる」「好きなことを楽しめない」「興味がわかない」などが挙げられます。朝の調子が悪く、夕方から少し楽になるという症状もうつ病には特徴的です。また、うつ病には睡眠障害や疲労・倦怠(けんたい)感、食欲低下・体重減少などの身体的な症状が現れることも多くあります。
 うつ病は、ストレスなどで生じた脳内物質のバランスの乱れが原因で起こる脳の病気です。決して「心の弱い人がかかる病気」や「心の持ちようで克服できる病気」ではないことを十分に知る必要があります。

うつ病の治療について教えてください。
 うつ病の治療は「休養」「薬物療法」「環境調整」が3本柱となります。
 まずは心身ともにしっかりと休養を取ることが大切です。周りの人たちは、決して怠けているわけではなく、何もできないことに本人が一番苦しんでいることを理解してあげてください。また、うつ病になっている人に励ましは禁句です。「しっかりして」「頑張って」という言葉は、かえって追い詰めてしまうことになります。
 薬物療法は、主に抗うつ薬を使います。脳の機能を正常に戻すには、適切な内服薬を継続して服用することが大切です。投与初期には副作用(口の渇きや便秘、排尿困難など)の出現に注意しながら、徐々に薬剤を増やしていきます。医師の指示通りに内服していれば、依存や中毒になることは少ないでしょう。
 個人を取り巻く環境に着目した治療も重要です。多くのうつ病の発症にはストレスが絡んでいるので、可能ならそのストレスを軽減する必要があります。環境調整には職場、家族、友人などの理解が必須です。
 うつ病は、症状が一進一退するため、治療が長期にわたることもあります。治癒途中で悪化することがあっても、悲観せずじっくり回復を待ちましょう。

人気の投稿

このブログを検索