2010年3月24日水曜日

「裂肛(れっこう)」について

ゲスト/札幌いしやま病院 樽見 研 医師

裂肛について教えてください。
 一般に「きれ痔(じ)」といわれます。便が肛門(こうもん)部分を通過する際、肛門内側の皮膚が裂けることによって起こります。出血はごくわずかなことが多いのですが、強い痛みがあります。原因は硬い便によるもので、便秘しやすい女性に多い疾患です。便秘とは逆に繰り返す下痢が原因となることもあります。
 一度裂肛になると排便時に肛門が痛むために便意を我慢して、さらに便秘が悪化、裂肛も悪化するという悪循環も多くみられます。排便のたびに同じ所が繰り返し裂けたり、傷口に細菌が入るため炎症を起こしたり、傷が硬くなって潰瘍(かいよう)になったり、傷部分が盛り上がってイボができたりします。これによって肛門の括約筋が硬くなって肛門が狭くなり、排便時の痛みはさらに強くなり、ますます排便しづらく、裂けやすくなってしまいます。

予防法と治療法について教えてください。
 裂肛の予防で一番大切なのは、原因となる便秘を改善することです。便秘を防ぐには、まず規則正しい食生活を心掛けることです。特に朝食をしっかり取ることが大切です。水分不足は硬い便の原因になります。便を軟らかくするためにも、規則的な便通の習慣を付けるためにも、冷たい牛乳や水なども積極的に摂取し、胃腸に刺激を与えましょう。
 野菜、果実、イモ類、穀類、海藻など繊維質を多く含む食品も便秘解消に有効です。食物繊維は、体内ではほとんど消化されず、水を含む性質が大変に強いため消化管の中で水分を吸収して膨らみ、腸の運動を促します。
 ほかにも、患部を清潔に保ち、冷えや同じ姿勢を続けるなど、血行不良を招くことは避ける必要があります。
 治療としては、注入軟膏(なんこう)の処方が一般的です。市販薬もありますが、裂肛に合うもの合わないものがあるので、専門医の受診をお勧めします。
 慢性化して肛門が狭くなった場合は、麻酔をして、硬く狭くなった肛門の括約筋を、正常な状態になるまでマッサージして引き延ばす手技が効果的です。入院の必要も、痛みもなく、短時間で治療できます。

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