2009年8月26日水曜日

「矯正治療の理想的な開始時期」について

ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治正光 歯科医師

矯正治療を始めるのに年齢は関係ありますか。
 矯正治療の技術は躍進的に進歩しており、歯やその周りの歯周組織が健康であれば、年齢にかかわりなく、多くの症例に対して治療可能であるといえます。骨格的偏位(ずれ)が前後左右に大きい場合には、外科矯正やインプラント(人工歯根)矯正を併用することによって、きれいなかみ合わせにすることが可能です。大人になってから矯正治療を始め、コンプレックスがチャームポイントに変わったという人も少なくありません。

より理想的な矯正開始時期はありますか。
 上顎(がく)前突(出っ歯)を例にすると、一般的に上あごが出ているように思われがちですが、下あごの小ささが原因であることが多いです。このまま放置して成人(あごの成長の望めない年齢)になると、抜歯や外科矯正になる可能性が高くなります。9~11歳で矯正を始めれば、バイオネーターなどの機能的顎矯正装置と呼ばれるものを夜間に寝るときだけ使用し、下顎骨の前方成長を促し、バランスの取れた横顔にすることができます。横にも拡大することができるので、抜歯をする確率も下がることになります。
 すなわち、矯正治療はいくつでも始められますが、適正な時期に開始することで、骨格のコントロールを行い、上下顎をバランスの良い状態にして、抜歯率や外科矯正率を下げることができるのです。決して歯を抜く治療がいけない治療といっているのではなく、適正な時期に始めることによって選択肢が広がるということです。
 また、下顎前突(受け口)の場合、一般的に下あごがより前方に成長するのを抑制したり、小さめの上あごが前方に成長するのを促進したりします。この場合、最適正時期は6~9歳です。乳歯列の時期に、就寝時の装置で治療することもできます。
 お子さんの歯並びが気になる、親御さんの歯並びが悪く、将来が心配という場合は、いずれも、前歯だけを見ていたのでは判断が難しいので、左右のずれも含めて、小学校低学年のうちに一度、専門医に相談することをお薦めします。

2009年8月19日水曜日

「潰瘍性大腸炎」について

ゲスト/琴似駅前内科クリニック 高柳典弘 医師

潰瘍(かいよう)性大腸炎とは、どんな病気ですか。
 大腸の粘膜に炎症が起こり、びらんや潰瘍ができる病気であり、特定疾患(難病)に指定されています。なぜ炎症が起こるかについては、まだ解明されていませんが、最近の研究から遺伝、環境、免疫学的異常が複雑に絡みあって発症するのではないかと考えられています。日本では、1980年代から急速に増加し、現在9万人を超える患者がいます。発症率は男女ほぼ同数で、発症年齢は20代をピークに高齢になるほど減少しますが、60代前半に軽度の増加があります。
 大腸は内側から粘膜層、粘膜下層、筋層、漿(しょう)膜から成り立っていますが、潰瘍性大腸炎はこのうち粘膜層、粘膜下層を中心に炎症が生じ、重篤になると潰瘍が筋層に達することもあります。また、直腸から結腸までの炎症の広がり方によって直腸炎型(直腸のみに炎症)、左側大腸炎型(直腸から横行結腸の左半分までの炎症)、全大腸炎型(大腸全体の炎症)の主に3タイプに分類されます。いつも同じタイプであるというわけではなく、炎症の状況によって変化します。

具体的な症状と治療法について教えてください。
 症状としては下痢や腹痛、粘血便などの大腸の局所症状に加え、発熱、吐き気、頻脈、貧血などの全身症状が起こる場合もあります。さらに合併症として大腸からの出血、穿孔(せんこう)、中毒性巨大結腸症などの腸管に起こるものと、結節性紅斑(こうはん)、壊疽(えそ)性膿皮症などの皮膚症状、結膜炎、虹彩炎などの眼球状、関節痛、関節炎、膵(すい)炎、胆管炎などの腸管以外に出る合併症もあります。
 多くの場合、症状が悪化している時期(活動期)と炎症が落ち着いている時期(緩解期)を繰り返しながら長期間の経過をたどります。原因が解明されていないため、根治は難しく、大腸の炎症を抑えて症状を緩和し、炎症のない状態である緩解(かんかい)期をいかに長く維持していくかが治療目的となります。食事や日常生活の指導、薬物投与、重症例では外科手術を行う場合もあります。10年以上の長期経過例では大腸ガンの発生リスクが高くなるので、定期的な内視鏡による検査が必要です。

2009年8月12日水曜日

「胃食道逆流症」について

ゲスト/佐野内科医院 佐野 公昭 医師

胃食道逆流症について教えてください。
 胃液が食道に逆流することによって起こります。食道粘膜の炎症(ただれ)を伴うものを逆流性食道炎、伴わないものを非びらん性胃食道逆流症と分けています。胸やけ、口の中に酸っぱい液が込み上げてくる、げっぷが出る、のどの違和感、しわがれ声、咳(せき)、心臓・胸部の痛みなどが主な症状です。以前は日本では少ない病気でしたが、食生活の欧米化や高齢化によって患者数が増えました。また、ヘリコバクター・ピロリに感染していない人のほうが、胃酸の分泌が活発なため発症しやすいともいわれています。
 胃食道逆流症が起こる原因として次のことが考えられます。胃の入り口部分を噴門(ふんもん)といいますが、通常はぎゅっと締まっていて胃の中に入った食物などが食道に逆流しないようになっています。加齢などによって、噴門がゆるんだ状態になると、胃液の逆流がおきます。このほかに、食道や胃の蠕動(ぜんどう)運動の低下、肥満やガードルなどの締め付けによる腹圧の上昇、胃液の分泌増加、骨粗鬆(しょう)症などで背中の骨が曲がってくることなども関係していると考えられています。不快感や胸やけによる不眠などのため、日常生活に対する影響が大きいのがこの病気の特徴です。ごくまれにですが、逆流を繰り返しているうちにガンが発生することもあります。

診察、治療について教えてください。
 まずは問診を行い、胃食道逆流症の可能性が高ければ内視鏡検査を勧めています。「胃カメラは苦手」という人も多いでしょうが、鼻から入れる経鼻内視鏡なら不快感も減りぐっと楽になります。検査では胃液の逆流による食道の炎症(ただれ)の有無のほか、潰瘍(かいよう)やガンなどの異常がないかを調べます。胃食道逆流症と診断した場合には胃酸の分泌を抑える内服薬により治療を開始します。
 ほとんどの場合内服薬で症状が改善しますが、食生活や生活習慣の見直しなども大切です。脂肪分の多い食事や炭酸飲料、アルコールなど胸やけを起こしやすいものを控え、腹八分目を心掛けます。就眠前の飲食を避けることも大切です。少なくても2時間前、できれば3時間前からは飲食を控えるようにしてください。就寝時に体の左側を下にすると症状が軽減することがあります。

2009年8月5日水曜日

「リウマチとその治療」について

ゲスト/佐川昭リウマチクリニック 佐川 昭 医師

リウマチについて教えてください。
 関節リウマチは、40歳以上の女性に特に多く発症する疾患で、自己免疫疾患である膠原(こうげん)病の一つです。ほかの全身性エリテマトーデスなどの膠原病に比べ患者数が多いのが特徴です。
 初期症状としては、手のこわばり、関節痛などが代表的です。起床時の痛み、こわばりが何日も続くようなら、関節リウマチの可能性があります。リウマチ専門医を受診した場合は、まず問診で症状の経過と今の状態を確認します。続いて、関節の痛みや腫れ、熱感、屈曲など患部診察を行い、さらに採血やレントゲン写真などで総合的に診断します。レントゲン写真での診断が難しい場合は、超音波診断(関節エコー)やMRI(磁気共鳴画像装置)で詳細に検査します。リウマチもほかの疾病と同様に、早期に発見し、治療を開始することが、その後の症状改善に役立ちます。

リウマチの治療について教えてください
 関節リウマチの場合は、患者さん本人によく理解していただけるよう、病状を説明します。治療の中心は薬物投与ですが、日常生活での注意点を勉強し、リハビリの重要性を実感することもリウマチ治療では重要です。初期治療としては、関節破壊を予防するために、抗リウマチ薬の処方をスタートします。さらに、消炎鎮痛剤、局所または少量のステロイドも考慮します。同時に理学療法、作業療法を用いたリハビリテーションを進めます。このような治療を3カ月以上行っても、痛みや腫れが持続し、炎症反応が見られる場合は、初期治療の効果が不十分であったと考えられます。
 次の段階として、抗リウマチ薬のメトトレキサート製剤による治療を行います。それでも十分に効果が得られないようであれば、点滴薬や皮下注射薬などの生物学的製剤による治療を行います。生物学的製剤は、近年導入された新薬で、現在4社で製造しており、リウマチ治療に効果をあげています。ただし、感染症にかかりやすくなる、高価であるなどの問題点もあります。リウマチは完治の難しい病気ですが、あきらめずに上手に付き合っていくという心構えを持つことが肝心です。