2004年4月7日水曜日

「ピロリ菌」について

ゲスト/やまうち内科クリニック 山内雅夫 医師

ピロリ菌について教えてください。

 正式にはヘリコバクター・ピロリという胃粘膜に住む細菌です。胃酸により強い酸性となっている胃の中では、細菌が生存できないと考えられていたために発見が遅れ、1983年に初めて報告されました。ピロリ菌はアンモニアを産生し、胃酸を中和して胃の中で生存することができます。予防方法は明らかにされていませんが、感染経路は経口感染とされ、衛生状態の悪い国や地域で感染率が高いことがわかっています。日本では中高年層の感染率が高く、40歳以上の約80%が感染しています。ピロリ菌は胃・十二指腸潰瘍(かいよう)、慢性胃炎および胃がんの主な原因であることがわかっています。感染イコール胃潰瘍というわけではありませんが、ストレスや喫煙、アルコールやカフェインの過剰摂取、鎮痛剤の服用などさまざまな要因が重なると、胃・十二指腸潰瘍が発症する危険が高くなります。また、ほとんどの胃がんが、ピロリ菌によって引き起こされた高度の慢性胃炎を発生母地とすることも明らかになってきています。

ピロリ菌を除菌する方法はありますか。

 数年前まで胃・十二指腸潰瘍の治療は、胃酸の分泌を抑えるH2ブロッカーの投与が一般的でしたが、再発率が高く、そのたびに再治療が必要でした。しかし潰瘍の主な原因がピロリ菌と判明してからは、2種類の抗生剤を1週間内服し、さらにH2ブロッカーより強力に胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ・インヒビターを併用する除菌療法が行われるようになり、大部分の再発を防ぐことができるようになりました。もっともピロリ菌が関与していない胃・十二指腸潰瘍の場合は、除菌療法は対象外です。ピロリ菌感染の有無は、内視鏡検査で胃粘膜を採取して調べる方法のほか、尿素呼気試験、血清抗体測定、便中の抗原測定などがあり、比較的簡単にわかります。なお近年、胃・十二指腸潰瘍を有しない高度の慢性胃炎に対しても、胃がん予防の見地から除菌療法が必要という意見が有力になってきていますが、日本ではまだ保険診療が認められていません。

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