2009年4月22日水曜日

「ストレスの対処方法」について

ゲスト/五稜会病院 千丈 雅徳 医師

ストレスについて教えてください

 精神的に負荷がかかることを「ストレス」といいます。ストレスの原因は環境や人間関係、経済的、物理的なものまでいろいろあります。ストレスが蓄積すると、イライラや無気力、食欲不振、不眠、うつなどの精神的な症状や、高血圧、胃潰瘍(かいよう)など身体的な症状が現れます。
 しかし、ストレスがまったく無く、平穏で退屈な生活は、挑戦する意欲や困難を乗り越える喜びを感じることができません。人間は適度なストレスと向き合うことによって刺激や緊張が生じ、張合いや生きがいを持って毎日を過ごすことができるのです。大切なのはストレスといかに上手に付き合うかということです。


ストレスの対処方法を教えてください。

 ストレス発散に効果的なのは、「Rest(休養)」「Recreation(気分転換)」「Relax(くつろぎ)」の3つのRです。心身に症状が出る前に3つのRを実践して心と体の健康を守りましょう。
しかし、自身では対処できないと感じたら、すぐに専門機関を訪ねてください。ストレスによる心身の不調で受診した場合、安定剤などの投薬治療のほかに、悩みを分かち合うカウンセリング、対人交流のスキルアップを目指しての認知行動療法などを行います。認知行動療法では、どういうときにどういった心理状態になるかを自身で認識するため、日記をつけるなどして、感情のコントロールを身に付けます。
 また、全国的な傾向として30~50代の男性で、ストレスからうつになる患者が多くなっています。その背景には失業、リストラなど仕事や経済的な不安、将来への不安があります。失職あるいは休職している場合は、パソコン操作などスキルアップをサポートしつつ、同じ悩みを抱える者同士で話し合うなどの復職プログラムを行っています。エアロビクスやウオーキングなどの運動療法も心身の健康を取り戻すのに効果的です。このようなプログラムを実践している病院は、全国的に増加傾向にあります。回復のためには、医師や専門スタッフなどのアドバイスやサポートを上手に利用し、ストレスに対処する能力を身に付けることが大切です。
 政治も経済も人間関係も不安定で長いトンネルの中にいるような私どもです。しかし、WBCで侍ジャパンが優勝して喜んだ方は多いことでしょう。それほどの大きな喜びではなくても、ふと出合ったささやかなうれしいことを心に温めて大切にしてまいりましょう。

2009年4月15日水曜日

「口腔乾燥症」について

ゲスト/石丸歯科 石丸俊春 歯科医師

口腔(こうくう)乾燥症について教えてください。

 口腔乾燥症は、何らかの原因で唾液(だえき)の分泌が抑制され、口腔内が乾燥することによって引き起こされるさまざまな症状のことをいいます。口腔内が乾燥すると、摂食や嚥下(えんげ)に問題が生じたり、発音が不明瞭(めいりょう)になりスムーズな会話ができなくなるなど、口腔機能障害が心配されます。また、唾液の分泌低下により、口腔内の洗浄作用や抗菌作用、pH緩衝作用が低下し、虫歯の多発、歯周病の増加などが心配されます。実際に口が渇いたという感覚はほとんどないため、自覚症状に乏しく、口臭や虫歯になって初めて気が付く場合が多いです。また、唾液にはインフルエンザなど空気による感染症の予防、義歯の安定、口内炎防止などの働きもあり、口腔乾燥症によってさまざまな症状に悩まされる恐れがあります。
 口腔乾燥症は、高齢者ばかりではなく若年層にもみられますが、主な原因としては水分の不足、唾液腺の機能低下、自律神経の不調、薬の副作用、シェーグレン症候群などが考えられます。

予防や改善にはどのようにすればいいですか。

朝食を食べないなど乱れた食生活、会話や動きの少ない長時間のデスクワーク、ストレスの増加などが、唾液の正常な分泌に悪影響を与えます。
唾液の分泌を促すには、以下のような点に気を付けるといいでしょう。
食事や運動などメリハリのある生活、会話機会を持つなど、バランスの良い暮らしを送る。
規則正しく、よくかんで、楽しく食事をする。
こまめに水分を補給する。
唾液腺のマッサージ。
特に高齢者の場合は、食事中の水分補給が大切です。逆に子どもの場合は、食事中に水やお茶で飲み下すと、唾液の分泌が悪くなる可能性があります。食事中の水分は控えめにしましょう。
唾液の分泌不全のほかに、口が閉じにくい、いびきなども口腔乾燥症の原因となります。口が閉じづらいのは、咬(か)み合わせが原因のこともありますから、専門医に相談するといいでしょう。いびきについては、睡眠時無呼吸症候群の可能性があれば内科を受診しましょう。

2009年4月8日水曜日

「内痔核(じかく)の注射療法」について

ゲスト/札幌いしやま病院 樽見 研 医師

内痔核について教えてください。

 痔核は痔の中でも最も多いタイプで、一般に「イボ痔」と呼ばれます。できる部位により、内痔核と外痔核があります。内痔核は、肛門奥の粘膜にある、クッションの働きをするやわらかい盛り上がりの部分が腫れて大きくなってしまう痔です。排便時のいきみ、肛門への負荷や高齢化により、外に出てしまうと脱肛といいます。
 初期には、出血はあっても排便時に肛門外に脱出しません。次に排便時に脱出し自然に元に戻るようになります。さらに進行すると指で押し込まないと戻らなくなり、最終的には常に肛門外に脱出するようになります。
 初期の段階では出血はしますが痛みはあまりなく、進行して痔核全体が肛門外に脱出して戻らなくなったり、頻繁に脱出すると、痔核の根元が裂けるなどして痛みを伴います。当初痛みがないために、受診をためらっているうちに重症化することも多い疾患です。

注射療法について教えてください。

 内痔核は初期では、外用薬や内服薬によって改善しますが、ある程度症状が進むと薬物療法では効果がなくなり、外科手術を行うしか治療法がなくなります。
しかし、最新の治療法として、痔核に直接薬液を注入するALTA注射療法が開発され、2005年に保険適応となりました。これは、注射薬を内痔核に直接注射することによって痔核を縮小させる方法で、メスを入れないため治療後の痛み、出血が少なく、ほとんどが1~2日程度の短期の入院でも治療できます。注射も麻酔をかけてから行うので苦痛はありません。正しく治療すれば副作用の心配もありません。治療後は3週間ほどで、痔核が徐々に縮小します。ただし、あまり進行した痔核では治療できないこともあり、この場合は従来通りの外科手術になります。
 ALTA注射療法は、患者側の負担が軽く合併症の危険もほとんどないのですが、技術的には高度で、講習を受けた専門医のみに施行が許されています。希望する人は、肛門科のある医院に直接尋ねてみるといいでしょう。
 痔もほかの病気と同様に早期治療が肝心です。恥ずかしいなどとは考えずに、気になったらすぐに受診してください。

2009年4月1日水曜日

「白内障」について

ゲスト/ふじた眼科クリニック 藤田 南都也 医師

白内障について教えてください。

 白内障は、目の中のレンズである水晶体が濁る病気です。水晶体が濁ると、視界がかすんだり、物が二重に見えたり、まぶしく見えたりします。進行とともに視力も低下します。一番多い原因は加齢による目の老化で、60歳代で70%、70歳代で90%、80歳以上となるとほぼ100%の人に白内障による視力低下が認められ、老人性白内障と呼ばれます。寿命が現在よりかなり短かった時代についた病名なので、老人と呼ぶのにふさわしくない年齢でも起こります。
 加齢以外の原因では、糖尿病、アトピー体質による発症、外傷などがあります。糖尿病の場合、高血糖が続くことで目の中の硝子体と呼ばれる成分に変化が起こり、早い人では30~40歳代で発症することもあります。アトピーから白内障になるのは、かゆみによる眼部への刺激、および体質が関係していると考えられます。外傷による白内障は、ボールが目にぶつかるなど強い物理的刺激によって発症します。この場合もほかの白内障と同様に自然に治癒することはありません。

白内障の治療について教えてください。

 初期には点眼薬で進行を遅らせることができる場合もありますが、一度起こった白内障を改善させることはできません。かつては、症状が進み、かなり見づらくなるまで待ってから手術をしていた時代があります。当時は現在より、手術のリスクが大きいとされていためです。しかし、最近では技術が大きく進歩し、精密な手術が行われるようになりました。その結果、白内障が進行するとかえって手術が難しくなるため、日常生活に不自由があれば、早めの手術が望ましい場合も増えて来ました。
 白内障手術の麻酔は基本的に局所麻酔で、麻酔時や手術中、手術後も強い痛みを感じることはほとんどありません。濁った水晶体を手術で取り除き、眼内レンズを埋め込む方法が一般的です。
 手術後早ければ翌朝にも視力回復を体感できますが、眼の状態が安定するまではしばらくかかります。強い近視だった人は、術後埋め込んだレンズによって屈折異常が改善し、普段の生活で眼鏡を必要としない時間が長くなることも多いです。
 一度手術した白内障が再発することはありません。ただし、眼内レンズを支えている嚢(ふくろのこと)の後ろが手術後数カ月~数年で濁る「後発白内障」になる可能性はあります。これも、レーザーを用いて外来で日帰り手術も可能です。