2009年2月25日水曜日

「鼻から入れる内視鏡」について

ゲスト/やまうち内科クリニック 山内 雅夫 医師

鼻から入れる内視鏡について教えてください。

今まで、胃内視鏡検査をする場合、口から入れる経口内視鏡を用いるのが一般的でしたが、最近は、鼻を経由する経鼻内視鏡の使用が増えてきました。経鼻内視鏡はかなり以前からあったのですが、近年性能が格段に良くなったため、導入する医療機関が急増しています。
 弾力性のあるしなやかなチューブで、直径は5㎜台と、一般的な経口内視鏡の9㎜に比べても極めて細く、スムーズに挿入することができます。画像もクリアな高画質で、視野が広く、ごく小さな病変も発見することが可能です。
 経口内視鏡は挿入時、舌の付け根部分に触れるため、吐き気がしたり、苦しかったりで、患者側の負担が大きかったのですが、鼻から入れると吐き気をもよおすこともなく、痛みもほとんど感じません。診察中に医師と会話ができることも、医師と患者双方にとって大きなメリットになっています。
 また、鎮静剤の使用は不必要ですので、検査後ただちに車の運転なども可能です。

実際にはどのように行いますか。

上腹部症状のある場合はもちろん、たとえ無症状でも中年期以降の方には定期的な胃カメラによる検査が望まれます。
まず、鼻づまりがあるか、鼻血が出やすいかなど鼻の状態を確かめます。鼻の状態によっては、経鼻内視鏡ができないこともあります。前処置として、鼻腔(びくう)に局所血管収縮剤をスプレーし、鼻の通りを良くして出血をしにくくします。鼻腔に麻酔薬を注入してから、麻酔薬を塗った内視鏡と同じ太さの柔らかなチューブを挿入し、鼻腔の局所麻酔を行います。これによって、内視鏡が通過するときの痛みが抑えられます。局所麻酔なので、眠くなったりすることはありません。この後、内視鏡が鼻から挿入され、鼻腔、のど、食道、胃、十二指腸と順次観察がなされ、通常数分以内に終了します。
がんや潰瘍(かいよう)など、食道や胃、十二指腸などの疾患は、早期発見、早期治療が完治への近道です。経口内視鏡を嫌うあまり受診が遅れて症状が進行していることもあります。鼻からの内視鏡は患者側の負担が少ないので、内視鏡検査が苦手でちゅうちょしている人は、一日も早く医師に相談してほしいと思います。

2009年2月18日水曜日

「不妊治療」について

ゲスト/札幌駅前アップルレディースクリニック 工藤 正史 医師

不妊について教えてください。

生殖機能が正常なカップルの場合、3カ月以内に約50%、6カ月以内に約70%、1年以内に90%近くが妊娠に至るとされています。不妊治療をいつ開始するかは、夫婦の年齢と妊娠を希望する程度によります。わが国では、2年以上経過しても妊娠が成立しない場合を不妊症と見なし、検査治療を開始することが一般的ですが、欧米では1年という見解が有力です。生殖医療が急速に進歩した現在においても依然として、多くの施設における最終的累積妊娠率(すべての初診患者で最終的に妊娠に至る率)は、50%程度です。残りの50%は、治療が中断されたことになります。不妊症は、ほかの疾患と異なり、治療しなくても本人への影響はありません。その意味では、不妊は病気とはいえないかもしれません。

不妊治療する場合の注意点を教えてください。

 不妊で悩むカップルは10組に1組と多く、2006年は、出生児の55.5人に1人(年間1万9587名)が体外受精・顕微授精などの高度不妊治療によって誕生しているのが現実です。
いつ不妊治療を開始するかは、個人差はありますが、35歳を過ぎると妊娠する能力は低下するので、なるべく早く始めた方が妊娠の確率が高くなるといえます。
治療後2年以内に妊娠する割合は、初診時の年齢が35歳未満で75%なのに対し、35歳以上では50%に低下するとされています。また、38歳を超えている場合は、体外受精胚移植における妊娠率も低下することから、できるだけ早期に治療を開始することが望ましいです。不妊治療を始めると、当然妊娠への期待が高まり、月経が来ると挫折感を感じるなど、心理的消耗を強く感じる場合があります。
人によっては治療期間が数年にわたる場合も少なくありません。さらに、治療の開始と同様に、いつまで治療をするかも難しい問題です。治療を開始する前に、いつまで、どこまでの治療を求めるかを考えておくことも大切です。
不妊治療は、努力をしても報われないかもしれないゴールの見えないマラソンに例えられます。しかし、このマラソンは決して競争ではありません。時には、コースを変更したり、少し休むことが必要です。大切なのは、自身とパートナーの気持ちだと思います。

2009年2月12日木曜日

「歯周病と矯正治療」についてお話を伺いました。

ゲスト/E-line矯正歯科 上野 拓郎 歯科医師

歯周病について教えてください。

 35歳以上の8割を超える人がかかっているといわれる歯周病。歯や歯ぐきの周りに付くネバネバとしたプラーク(歯こう)が原因となる、歯の周辺組織の病気です。初期は歯ぐきが赤く腫れている状態で、歯を磨いた時や堅いものをかむと出血し、歯と歯ぐきの間に浅い歯周ポケットができ、歯肉炎と呼ばれます。
 さらに炎症が進むと、歯周ポケットが深くなり、歯槽骨と呼ばれる歯を支えている骨を溶かし始めます。この状態を歯周炎と言いますが、虫歯のような痛みがないため、なかなか自分では気が付かず、進行すると歯槽骨がやせ、歯がグラグラするようになり、放っておくと最終的には抜けてしまいます。
 歯周病は細菌による感染症であり、同時に生活習慣病という側面もあります。ストレスや喫煙、間食などが症状を悪化させます。

歯周病と矯正治療について教えてください。

 かみ合わせ、歯並びが悪いと、どうしても磨き残しができやすくなり、歯周病になる確率が高くなります。特に上顎(がく)前突や開咬(かいこう)は、口が閉じづらく歯ぐきが乾きやすいため、歯周病のきっかけになります。かみ合わせると、一部分だけ強く当たる場合も注意が必要です。
きれいな歯並びであれば、正しくブラッシングができ、歯周病の予防になります。
最近では、大人になってから矯正治療を始める人も珍しくありませんが、歯周病を持った患者さんも少なくありません。このような場合は、歯科医と矯正歯科医が連携し、まず歯周病の症状を改善した後に、矯正治療を始めるというのが一般的です。
また、矯正治療中の器具によってブラッシングがうまくできないと、歯周病の原因となるプラークが残りやすくなるので、注意が必要です。
矯正治療も歯周病予防も、長く自分の歯で食事を楽しむために重要です。歯の手入れを完璧に、と思っても素人の手では限界があります。定期的にプロによる歯のクリーニングPMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)を受け、プラークコントロールをした上で、自分自身の手によるセルフケアを行いましょう。

2009年2月4日水曜日

「マイコプラズマ感染症」について

ゲスト/琴似駅前内科クリニック 高柳 典弘 医師

マイコプラズマ感染症について教えてください。

 マイコプラズマは、正式には「Mycoplasma pneumoniae」という名前で、細胞壁を持たないため細菌とウイルスの中間に位置する病原体といわれています。以前は4年に一度オリンピックのある年に流行し、好発年齢は乳幼児から若年成人に多いといわれていましたが、近年その傾向は失われ、毎年、地域的に小流行がみられ、秋季から冬季にかけてやや多くなる傾向にあり、高齢者の感染も増加しています。感染の頻度は小児で6割以上、成人では実に9割以上の人が一度は感染しているとされており、日常よくみられる感染症です。
 マイコプラズマによる肺炎は、肺炎全体の30~40%を占めているとされていますが、実際に感染して肺炎までに至る頻度は3%前後で、その発生率はかなり低いと思われます。感染様式は感染患者からの飛沫(ひまつ)感染により、病原体は進入後、粘膜表面の細胞外で増殖を開始し、気管、気管支などの粘膜上皮を破壊します。気道粘液への病原体の排出は初発症状出現後、2~8日とみられ、潜伏期は4日~3週間。最初の吸入菌量によって変わります。

症状、治療について教えてください。

 主な症状は発熱と咳(せき)です。最初は全身けん怠感、発熱と頭痛で始まることが多く、咳は初発症状出現後3~5日くらいから始まり、経過に従い徐々に強くなり、解熱後も3~4週間と長期間続きます。症状は罹患(りかん)年齢によってかなり差があり、また中耳炎、発疹(はっしん)、無菌性髄膜炎、脳炎、肝炎、溶血性貧血、心筋炎、関節炎など、さまざまな疾患を引き起こすことも特徴の一つです。
最近ではマイコプラズマ感染が喘息(ぜんそく)の発症や悪化に関連することが指摘されており、抗生剤を投与して治療したことにより喘息が改善したという報告も多く見られます。治療としては、ペニシリン系やセフェム系の抗生剤は効かないため、マクロライド系やテトラサイクリン系あるいはニューキノロン系の抗生剤を一定期間投与することで改善します。
予防に関しては、流行時の手洗い、うがいの励行などの一般的な予防法と、感染者との濃厚な接触を避けることです。