2008年6月18日水曜日

「ピロリ菌と胃の病気」について

ゲスト/やまうち内科クリニック 山内 雅夫 医師

ピロリ菌について教えてください。

ピロリ菌は、1983年にオーストラリアのワレンおよびマーシャル博士によって、初めて分離・培養されました。正式名称は、ヘリコバクター・ピロリという胃粘膜に生息するらせん形の細菌で、胃・十二指腸潰瘍(かいよう)、胃炎、胃がんの原因となっていることが分かっています。発見以前は、強酸性の胃の中で細菌は生存できないと考えられていましたが、ピロリ菌にはアンモニアを産生する力があり、胃酸を中和して胃の中でも生存できることが分かりました。 乳幼児期にピロリ菌に感染すると、慢性的な持続感染になりますが、成人以降の新たな感染は少ないと考えられています。日本では若い人の感染率は低いのですが、40歳以上では約80%もの人が感染しています。幼少時の衛生環境の差によるものと推測されます。 ピロリ菌に感染すると、まず胃粘膜に炎症が起こり(活動性胃炎)、この状態が長期間持続すると胃粘膜の委縮(委縮性胃炎)が進行しますが、この委縮性胃炎は前がん状態と考えられています。ピロリ菌感染者の一部に胃、十二指腸潰瘍が発症しますが、胃潰瘍患者の80%、十二指腸潰瘍の95%がピロリ菌陽性です。

ピロリ菌の除菌について教えてください。

胃・十二指腸潰瘍の主要な原因がピロリ菌であることが分かってきてから、治療法は大きく変わりました。除菌療法といい、ピロリ菌を駆除するために2種類の抗生剤を1週間内服し、加えて胃酸分泌を強力に抑制するプロトンポンプ・インヒビターを併用する方法です。この治療法によって、大部分の胃・十二指腸潰瘍の再発を防ぐことができます。もっとも、胃・十二指腸潰瘍の中にはピロリ菌が関与していないもの(鎮痛剤による潰瘍など)もあり、この場合は除菌療法の対象外です。
ピロリ菌感染の有無は、内視鏡検査で胃粘膜を採取して調べる方法のほか、尿素呼気試験、血清抗体測定、便中の抗原測定などがあり簡単に分かります。
なお、近年、委縮性胃炎に対しても胃がん予防の見地から、除菌療法をしたほうが良いという意見もあります。

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