2008年2月27日水曜日

「メタボリック・シンドローム」について

ゲスト/大通り内科クリニック 小森 克俊 医師

メタボリック・シンドロームについて教えてください。

メタボリック・シンドロームがこのように注目を浴びるのは、生活習慣病と密接に関係しているからです。肥満、特に内臓に脂肪が蓄積し、さまざまな生活習慣病を引き起こしやすくなっている状態を指し、2005年春に日本内科学会など8つの学会が合同で定義と診断基準を発表しました。  肥満には、下腹部や腰のまわりなどに脂肪が蓄積する「皮下脂肪型肥満」と、内臓に脂肪が蓄積する「内臓脂肪型肥満」の2タイプがあります。「内臓脂肪型肥満」は外見からの判断が難しいですが、おヘソの部分が男性で85cm以上、女性で90cm以上、これに加えて、高脂血症、高血圧、糖尿病(予備軍を含む)のどれか2つ以上が当てはまれば、メタボリック・シンドロームと診断されます。 高血圧や糖尿病などの生活習慣病は、それぞれの程度が軽くても、複数の症状が重なると動脈硬化が早く進行します。動脈硬化は日本人の3大死因のうち、脳血管障害と心疾患をもたらす病因の一つ。メタボリック・シンドロームと診断されたら、動脈硬化となりうる危険が高いということです。

日常生活で、気をつけなければならない点は?

糖尿病の主な原因は、食生活の欧米化による動物性脂肪の取り過ぎや運動不足。健康維持には、糖質が60%程度、脂肪とタンパク質がそれぞれ20~25%程度の食事が理想的ですが、これは米や野菜、魚を中心とした一般的な和食の数値と同じです。昔からこのような食事を続けてきた日本人は、欧米人に比べて膵臓(すいぞう)から分泌されるインスリンの量が少なく、元来糖尿病になりやすい体質を受け継いでいるといえます。体質にもよりますが、肥満、高血圧の人や、甘いもの、アルコール、高脂肪の食事を好む人は糖尿病予備軍の可能性があります。食事の内容をすぐに切り替えるのが難しければ、食べる量を減らし、適度な運動をするだけでも症状の改善が見込めます。  健康で長生きするには、まず自分が予備軍かどうかを知ることが大切。40歳になったら年に1度は専門医の検診を受けましょう。

2008年2月20日水曜日

「喫煙と禁煙」について

ゲスト/つちだ消化器循環器内科 土田 敏之 医師

タバコの害が注目されています。

禁煙エリアの設置や、公共空間での分煙の徹底など、近年はタバコの煙に対する認識が厳しいものになってきています。特に実際に喫煙する行為よりも、非喫煙者の受動喫煙の害が注目されています。 実際に、タバコには化合物が約4000種類も含まれ、その化合物には60種類の発がん物質が含まれています。喫煙時に直接口に入る「主流煙」と、タバコの先端から立ち上ぼる「副流煙」の二種類の煙がありますが、主流煙は600℃、副流煙は300℃で、副流煙は燃焼温度が低く、また吸い込まれないので十分な酸素が供給されないため、不完全燃焼になりやすいという特徴があります。さらに、副流煙はフィルターにかからないので、有害成分は副流煙の方が1.2~170倍も多いのです。 これら有害な煙を吸うと、 疫学上がんになる可能性のある臓器は、口腔(こうくう)、咽頭(いんとう)、喉頭(こうとう)、食道、肺、すい臓、子宮頸(けい)部、腎臓、膀胱(ぼうこう)です。ただし、発がん物質の解毒能力には個人差があり、がん発症の有無、時期に違いがでます。

がん以外にも健康に悪影響がありますか。

狭心症や心筋梗塞(こうそく)、脳梗塞、腹部大動脈瘤(りゅう)、慢性動脈閉塞(へいそく)症などの重篤な疾病のほか、虫歯、口臭、高コレステロール血症、骨粗しょう症の危険因子でもあります。 さらに、最近は睡眠時無呼吸症候群と喫煙の関係が注目されています。主な症状であるイビキが、喫煙者に多いことは以前からいわれており、喫煙による炎症が上気道の腫れ、狭窄(きょうさく)を引き起こすことや、睡眠時のニコチン不足により睡眠が不安定となることが原因といわれています。 風邪も喫煙者は治りづらいのですが、喫煙によってせきやばい菌をのどから排除する線毛が減り、のどが汚れたままの状態で、さらに気管支周囲の炎症や気道の破壊で粘膜の抵抗力を低下させます。 タバコを止めようとする意志があるならば、ニコチンガム(禁煙率約30%、薬局または病院で処方)、 ニコチンパッチ(禁煙率約70%、病院のみで処方)があります。また飲む禁煙薬が近々認可される予定ですので、病院で相談するといいでしょう。

2008年2月13日水曜日

「物忘れと認知症」について

ゲスト/西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 医師

物忘れについて教えてください。

「物忘れが増えて心配」と外来を受診する人が増えています。脳ドックも、以前は脳卒中の予防が主な受診動機でしたが、認知症への恐れから受けるという方が増えています。今後ますます進む高齢化社会において、単に長生きするだけではなく、生活の質を維持したいと考える人が増えていると感じます。 「物忘れ」は誰でも経験があるものですが、問題となるのは「病的な物忘れ」です。「昨晩のおかず」が何だったか忘れてしまうことはあっても、食事したこと自体を忘れてしまうことは、普通の物忘れではまずありえません。認知症の場合、食事したこと自体を覚えていないのです。このような、「物忘れ」の質的変化が見られたら病気のサインと考えてください。病気が進行するにしたがって、判断力が低下し、次第に生活に支障を来すようになります。

治療、予防法を教えてください。

認知症を治す薬はありませんが、進行を遅らせる薬があるので、早い段階で認知症を発見し、投薬を開始することが重要です。外来では、まず問診をし、記憶や判断力のテスト、画像診断などを行います。一番重要なのは問診で、特に付き添いの家族からの情報が診断の決め手になることが多いのです。物忘れの回数が以前に比べて著しく増えている、物忘れの質が変化したなどという場合は、家族が異常を感じ取っていることがほとんどです。画像診断では認知症症状を起こすほかの病気を鑑別します。水頭症や硬膜下血腫などは認知症として放置されていることも多いのですが、これらは、手術による治療が可能です。アルツハイマー型認知症は脳の一部に委縮が起こるなど特徴的な所見があるので、軽い症状でも治療を開始する決め手になります。 認知症の予防策として、野菜や果物を積極的に取り、肉類より魚類を多く食べることが挙げられます。定期的な有酸素運動も有効です。生活習慣病の予防にもなりますから、ぜひ実践してください。加えて、体をよく動かし、他人とのコミュニケーションを持ち、心に適度な刺激を与えることも効果的です。

2008年2月6日水曜日

「顎(がく)関節症」について

ゲスト/つちだ矯正歯科クリニック 土田 康人 歯科医師

顎関節症について教えてください。

口を開閉するたびに「カクカク」「シャリシャリ」と音がしたり、開閉時に下顎(あご)が左右にズレてガクガクする、口がスムーズに開かない、などといった症状を顎関節症といいます。痛みがある場合とない場合があります。20〜30代の女性に多く、小・中学生ではほとんどみられません。 顎関節症の原因は、実のところはっきりと分かっていません。いくつかの要因が重なって発症するものと考えられます。食いしばりや歯ぎしり、偏った咀嚼(そしゃく)などが原因として挙げられます。ストレスによって発症することもあり、受験期に発症し、受験が終わるとうそのように治ってしまうこともあります。 原因として、一番多いのは、やはり咬(か)み合わせです。治療した歯が、1本高い低いという程度でも咬み合わせに異常が生じ顎関節症を誘発することがあります。反対咬(こう)合、上顎前突、開咬、顎偏位症(下顎が左右とちらかに曲がっている)など、顎関節に負担がかかる人は、注意が必要です。

治療、予防について教えてください。

顎関節症の程度によりますが、治療としては、スプリントと呼ばれるマウスピース状のものを使うのが一般的です。歯の一部または全体を覆うもの、上顎用、下顎用などがあります。スプリントによって、顎関節や筋肉への負担を軽くして、歯ぎしりや食いしばりを緩和します。痛みのない咬み合わせを見つけ、その位置で安定させ、きれいな咬み合わせを作ります。 このような処置で改善できないほど重症の顎の異常の場合は、外科矯正が必要になることもあります。いずれにしても症状が軽い方が治療も早くできますので、顎関節に異常を感じたら、矯正歯科や口腔(こうくう)外科など専門医を受診してください。 日常生活の中では、片側でかむ癖や、ほおづえも顎関節症を誘発します。うつ伏せ寝、左右寝る向きの偏りも、顎関節に悪影響を与えます。また、子どもに顎関節症はみられませんが、咬み合わせや歯並びの異常は、将来原因となり得ます。早めの矯正治療で正しい咬み合わせ、歯列にすることによって、潜在的な要因を取り除くことができます。