2007年7月25日水曜日

「麻疹(ましん)」について

ゲスト/つちだ消化器循環器内科 土田 敏之

麻疹について教えてください。

 「麻疹」は、一般的に「はしか」と呼ばれる、麻疹ウィルスの飛沫(ひまつ)感染によって発症する疾患です。感染力が非常に強く、抗体を持たない人がウィルスに接すると、90%以上の確率で感染します。流行する時期は春から夏にかけてで、感染すると、まず発熱、咳、鼻汁といった風邪症状が起こり、3~4日おいて全身に赤い発疹(はっしん)が出ます。風邪症状から発疹が消えるまでの期間は、感染力があります。
 麻疹から肺炎や脳炎といった合併症が起きることもあります。頭痛を訴えたり、激しい嘔吐(おうと)などの症状があるときは、脳炎の可能性、呼吸が苦しい時は肺炎の可能性が疑われます。いずれの場合も早急に病院へ行ってください。脳炎は麻疹が治癒して、外出許可がおりてからも、1000人中1人程度の割合で発症します。
 麻疹の予防法としては、ワクチンが唯一です。また、友達や家族など身近に麻疹患者が発生した場合は、72時間以内にワクチンを打てば発症の確率を下げることが出来ます。
 本州では昨年末から流行しており、5月から道内でも流行の兆しがみられます。一昨年まで麻疹ワクチンは一回接種でしたが、打ち忘れ防止、また一回では免疫が弱かった場合も考慮し、免疫を上げるために昨年から二回接種になりました。二回目は幼稚園年長のお子さん対象で、無料で打てるのですが、接種に来るお子さんは二割程度です。近年麻疹発症者が少なく、接触する機会が減ったため追加免疫を得にくく、一歳で得た免疫が10年で消えてしまう人もいます。その場合、ワクチン効果は10年と考えることになります。アメリカでは二回接種で、発症者は年間100人以下に抑えられています。二回目のワクチンを早めに受けることをお勧めします。
 ただし、ステロイドや免疫を抑制する薬を服用中の場合はワクチンを打てません。詳しくは担当医にご相談下さい。D3型とD5型が今まで日本で流行していた麻疹のタイプでしたが、韓国や中国で流行するH1型が日本に入ってきました。寒い時期にも発生し、大人もかかりやすい特徴があります。このH1型にも現在の予防接種は効果があります。

2007年7月18日水曜日

「行楽シーズンの皮膚トラブル」について

ゲスト/宮の森スキンケア診療室 上林 淑人 医師

夏の行楽シーズンに増える皮膚トラブルについて教えてください

 山や海へ出掛けたり、汗をかいて肌の清潔を保てなかったりで、皮膚トラブルはほかの季節よりも増加する傾向にあります。
特に「ダニ」にかまれて来院する人が増えます。原因となるマダニは、山林に生息し、人や動物の皮膚に食いつき吸血します。登山やハイキング、キャンプなどでかまれる場合が多く、首や頭など露出している部分、露出していない部分でも洋服の中に入っていろいろな部分に取り付きます。自分の目で見えない部分をかまれた場合は、気が付かないこともあります。体長は2㎜から7㎜程度で、吸血することによって体が大きく膨らみます。少し引っ張った程度では離れず、無理矢理取ろうとすると、虫体の一部(アゴの部分)が皮膚の中に残ってしまうことがあります。放置すると、場合によってはライム病という感染症を発症することがあるので注意が必要です。野山から帰ったら、全身をチェックするのが大切です。子どもの体は大人がよく調べてあげてください。もしマダニを発見したら無理に取ろうとせず、出来るだけ早く専門医を受診してください。かまれている部分の皮膚ごと除去し、虫体を外科的に取り除く必要があります。さらに感染症予防に抗生物質の内服が必要になることがあります。

ダニのほかに気を付けることはありますか。

 アレルギー体質の人は、蚊やブヨなどに刺されるとひどく腫れることがあります。場合によっては、蜂窩織炎(ほうかしきえん)という重度の皮膚感染症を合併し治療が長引くことがあります。また、ウルシなど植物によるかぶれもかなり長引く傾向にあります。これらに対する治療はステロイド剤の外用が中心です。程度によっては抗アレルギー剤の内服を併用することもあります。
 日差しの強い日に出掛ける場合は、日焼けや日光アレルギーを防ぐために、日傘や帽子を、さらに日焼け止めクリームを活用して下さい。
 夏は、なるべく小まめにシャワーを浴びたり、ぬれたタオルで汗によるべとつきをぬぐい取ったりして、肌を清潔に保ちましょう。暑い季節は皮膚炎が悪化しやすいので、まずは予防、そして早めの治療を心掛けましょう。

2007年7月11日水曜日

「矯正治療の理想的な開始時期」について

ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治 正光 歯科医師

矯正治療を始めるのに年齢は関係ありますか。

 矯正治療の技術は躍進的に進歩しており、歯やその周りの歯周組織が健康であれば、年齢にかかわりなく、多くの症例に対して治療可能であるといえます。骨格的偏位(ずれ)が前後左右に大きい場合には、外科矯正やインプラント(人工歯根)矯正を併用することによって、きれいなかみ合わせにすることが可能です。大人になってから矯正治療を始め、コンプレックスがチャームポイントに変わったという人も少なくありません。

より理想的な矯正開始時期はありますか。

 上顎(がく)前突(出っ歯)を例にすると、一般的に上あごが出ているように思われがちですが、下あごの小ささが原因であることが多いです。このまま放置して成人(あごの成長の望めない年齢)になると、抜歯や外科矯正になる可能性が高くなります。9~11歳で矯正を始めれば、バイオネーターなどの機能的顎矯正装置と呼ばれるものを夜間に寝るときだけ使用し、下顎骨の前方成長を促し、バランスの取れた横顔にすることができます。横にも拡大することができるので、抜歯をする確率も下がることになります。
 すなわち、矯正治療はいくつでも始められますが、適正な時期に開始することで、骨格のコントロールを行い、上下顎をバランスの良い状態にして、抜歯率や外科矯正率を下げることができるのです。決して歯を抜く治療がいけない治療といっているのではなく、適正な時期に始めることによって選択肢が広がるということです。
また、下顎前突(受け口)の場合、一般的に下あごがより前方に成長するのを抑制したり、小さめの上あごが前方に成長するのを促進したりします。この場合、最適正時期は6~9歳です。乳歯列の時期に、就寝時の装置で治療することもできます。
 お子さんの歯並びが気になる、親御さんの歯並びが悪く、将来が心配という場合は、いずれも、前歯だけを見ていたのでは判断が難しいので、左右のずれも含めて、小学校低学年のうちに一度、専門医に相談することをお薦めします。

2007年7月4日水曜日

「白内障の日帰り手術」について

ゲスト/さかた眼科ファミリークリニック 坂田 信義 医師

白内障について教えてください。

人間の目には水晶体と網膜があります。カメラに例えると、水晶体がレンズ、網膜がフィルムの役割を果たしますが、水晶体が濁って光が通過しづらくなったり、光が乱反射して網膜に鮮明な像が結べなくなり、視力が低下するのが白内障です。アトピー性皮膚炎や糖尿病といった全身疾患に合併するもの、外傷性など原因はさまざまですが、大半が加齢による老人性白内障。60歳前後から増加し、70歳代後半でピークに達します。焦点が合わない、かすむなど症状は人それぞれで、日常生活に支障がなければ、点眼薬などで進行を遅らせることは可能ですが、濁った水晶体を元に戻すことはできません。

症状が進行した場合、どのような治療法がありますか?

事に支障をきたす、外出すると極端に見えにくい、免許の更新ができないなど、日常生活で不自由を感じるようであれば、手術を行います。視力、眼圧、網膜の状態を調べる眼底検査、水晶体の濁りの状態を調べる細隙(さいげき)灯顕微鏡検査など、事前に1時間程度の検査を行った上で、術後に通院が可能か、家族の協力が得られるか、重篤な合併症がないかなどの問診も行い、手術の実施を決定します。

手術はどのような方法で行いますか?

顕微鏡を使った細かい手術で、時間は10~15分程度。点眼による局部麻酔の後、濁った水晶体を超音波で砕いて吸い出し、人工の眼内レンズを挿入します(超音波水晶体乳化吸引術)。折りたたみ可能なシリコンまたはアクリルレンズです。手術後は20~30分ほど安静にしていただき、眼帯をして、帰宅が可能です。眼帯は翌日からはずすことができます。手術後は目が充血したり、ゴロゴロしたりしますが、1週間程度で和らぎます。眼内レンズはピントを合わせる調整力がなく、薄い眼鏡が必要になる場合もありますので、手術後1カ月ほどして、視力が安定してから作るとよいでしょう。症状が進行すると、水晶体の核を丸ごと取り出す手術が必要になる場合もあるので、見えづらいなと感じたら、早めに専門医を受診することをお勧めします。