2006年8月23日水曜日

「睡眠時無呼吸症候群と顎(がく)変形症」について

ゲスト/つちだ矯正歯科クリニック 土田康人 歯科医師

睡眠時無呼吸症候群(SAS)と顎変形症の関係について、教えてください

 SASは気道の閉塞(へいそく)によって起こる病気で、寝ている間に呼吸が止まるため、熟睡できない、昼間眠くて注意力に欠けるなどの症状があり、居眠り運転など重大な事故を引き起こす要因となることがあります。
 SASの原因としては、扁桃(へんとう)肥大、アデノイド、気道に舌が落ち込む、舌が大きい(巨舌症)、下顎(あご)が小さいまたは後退している(小顎症、下顎後退症)が考えられます。
 SASの治療法には、気道が閉塞しないように鼻にマスクをして空気を送り気道を広げる、マウスピースを着けて下顎を前に出して気道を広げる、扁桃肥大やアデノイドは除去してしまうなどの方法がありますが、いずれも根本的な治療にはなりません。

顎変形症によるSASの治療法について教えてください。

 顎変形症には、反対咬(こう)合(受け口)、上顎前突(出っ歯)、開咬(上下の歯がかんでいない状態)、顎偏位(顔や顎が曲がった状態)などがあり、変形が大きい場合、矯正治療だけでは治しきれず、外科手術を行います。もちろん、手術だけでかみ合わせの調整まではできませんから、手術前後に矯正治療も行います。手術はすべて口の中から行うので顔に傷が残ることもありません。また、矯正治療のみの場合は健康保険の対象外になりますが、外科手術を伴う場合は、手術と前後の矯正治療が健康保険の対象になります。
 下顎後退症(小顎症)は、文字通り下顎が後退していることで、横顔を見ると顎の部分が引っ込んでいます。下顎が後ろにあるために気道が狭くなり、SASになってしまうわけです。根本的な治療としては、引っ込んでいる下顎を前に引っ張り出す手術を行います。審美目的で美容整形外科による同様の治療が行われることもありますが、矯正治療は行わないため、かみ合わせの改善には至りませんし、健康保険も適用されません。
 反対咬合の方は、比較的進んで治療を受けられますが、下顎後退症は気付きにくいため、そのままにしている方が多く、SASの危険性を避けるためにも、ぜひ一度専門医の診察を受けることをお勧めします。

2006年8月16日水曜日

「アンチエイジング」について

ゲスト/緑の森皮フ科クリニック 森 尚隆 医師

アンチエイジングとは、どんなことか教えてください。

 日本語で「老化・加齢に対抗する」という意味です。「老化」のメカニズムが医学的に解明されつつある現在、それを積極的にコントロールすることで、いつまでも若々しく、元気でいようというのがアンチエイジングです。アンチエイジングの研究や取り組みが本格的になったのは最近のことで、新しい医学の分野として注目されています。

「しみ・しわ」など老化の代表的な症状も治療できるのでしょうか。

 現在、アンチエイジング治療として代表的なのが「フォトフェイシャルIPL」や「レーザー」などを使用する光療法です。「光による皮膚の老化は光が治す」といわれていますが、紫外線などによるしみやしわなどに対し、光治療はある程度の効果を手軽にもたらします。「フォトフェイシャルIPL」は、しみや血管拡張、毛穴、小じわなどを同時に改善する総合的な治療で、すぐにメイクが可能なことも特徴のひとつです。さらに光治療は、肌のたるみにも有効で、真皮層のみに光が作用し皮膚を引き締め、コラーゲンを増生させることで、たるみやしわを改善させるという新しい治療法も出てきています。
 また、RF(ラジオ波)と呼ばれる電波を使い、今まで治療が難しかったデリケートな目の周りのしわを、安全に改善するという治療法が登場し、注目されています。これは、吸引しながら電極で皮膚を挟み込み、RFを流すことでコラーゲンが熱収縮し、損傷治癒機転が働き、コラーゲンの生成が増幅されるという新しい技術によるものです。
 深くへこんでしまったしわには、ヒアルロン酸などを直接注入し、盛り上げてしわを目立たなくさせる方法もあります。治療後の腫れや痛みも少なく、効果の持続期間も以前より長くなっています。注入法は深く目立つしわに対して効果の高い治療法といえます。
 現在、アンチエイジング治療のほとんどは保険適用外なので、効果や費用などを担当医とよく話し合って、納得して行うことをお勧めします。

2006年8月9日水曜日

「腰痛」について

ゲスト/札幌一条クリニック 後藤康之 医師

腰痛について教えてください。

 痛みを訴える人の中で、肩凝りと並んで多いのが腰痛です。日本人の約6割が生涯のうちに一度は経験するといわれています。
 発症には、脊椎(せきつい)、筋肉、内臓、精神などが関与し、姿勢や疲労、運動、栄養の偏り、ストレスなどがきっかけになります。最近の傾向としては、20~30代で筋・筋膜性腰痛を訴える人が多く、立ち仕事や長時間の運転、急激なスポーツ、長時間のデスクワークや会議など、心因性、社会性要因の腰痛です。高齢者では、脊椎の老化変性による腰痛がほとんどです。

治療や予防について教えてください。

 大きく次の3つの腰痛に分けてみます。
「筋・筋膜性腰痛」は、腰(背)の部分の筋肉や筋膜に分布する神経の枝が、何らかの原因で刺激されて起こります。局所の血流不良によって凝りを生じ痛みになったり、腰部のねんざや重量物を持ち上げる時などに急激に発症することが多く、安静と薬物、理学療法によって大部分は軽快しますが、往々にして慢性化することがあり、局所への薬剤注入も有効です。
 「椎間板(ついかんばん)ヘルニア」は、椎間板間のクッションの役目を果たすものがはみ出し、隣接する神経を刺激し腰痛となります。急に腰から下肢にかけて激痛が生じ、身動きができなくなります。しばしば座骨神経痛を伴い、下肢の知覚異常や脱力感を訴えることも。急性期には神経ブロックによる治療がもっとも有効です。1カ月以上たっても痛みが続くときや再発を繰り返す場合は、手術も考える必要があります。 
 「脊(せき)柱管狭窄(きょうさく)症」はしばしば難治性で手術や神経ブロックなどでも十分な効果が得られないこともあります。薬物も鎮痛薬ではなくて抗うつ薬や漢方薬をうまく使う必要があります。
 腰痛を予防するには、良い姿勢を保ち、歩く時は6m先の床あたりを見るようにします。腰椎(ようつい)を支える腹筋や背筋を鍛え、肥満を解消し、できれば週に1、2度は水泳や散歩で心身をリラックスさせるといいでしょう。いわゆる生活習慣病にならないことも必要です。上手に付き合えば、腰痛は怖くありません。

2006年8月2日水曜日

「過活動膀胱(ぼうこう)と腹圧性尿失禁」について

ゲスト/芸術の森泌尿器科 斉藤誠一 医師

過活動膀胱について教えてください。

 過活動膀胱とは、男女を問わず、尿意が急に起こったり、抑えられなくなること(尿意切迫感)があり、さらに1日8回以上おしっこに行ったり(頻尿)、我慢することができない(切迫性尿失禁)などの症状がある場合を指します。膀胱炎や膀胱癌(がん)が原因の場合は除きます。
 高齢者人口の増加に伴い、頻尿、尿意切迫感や尿失禁の症状を持つ患者さんが増加し、大きな問題として世界的に注目されています。こうした情勢を受けて、2002年に「過活動膀胱」という新しい疾患の概念が提唱されました。患者数は極めて多いことが明らかですが、治療を受けている人はごくわずかです。「年齢のせいで仕方がない」「病院に行くのは恥ずかしい」「お産をすれば誰でもなる」「尿もれパッドやおしめをすればよい」といったあきらめ感や、羞恥(しゅうち)心などで治療を受けずにいます。おかしいと思ったら、恥ずかしがらずに、ぜひ専門医を受診してください。改善すれば、快適な生活を送ることができます。
 実際の診療では、病歴、診察、お腹から超音波の機械を当てる残尿測定、おしっこの検査が必要になります。排尿日誌(排尿の時間と排尿量)や水分摂取の記録も、診察する上で非常に役立ちます。治療としては、飲み物の飲み方や種類の変更、排尿を我慢するなどの行動療法だけで改善する場合もありますが、薬物による治療が中心になります。

腹圧性尿失禁について教えてください。

 女性の約3割が尿失禁を経験しているともいわれていますが、ほとんどがせきやくしゃみ、お腹に力を入れた際におしっこが漏れるという症状です。これは腹圧性尿失禁といって、骨盤の筋肉が緩むために起こります。複数回の出産経験がある、婦人科の手術を受けた、運動不足、肥満などが原因です。改善する方法としては、まず、骨盤底筋体操といって、肛門(こうもん)を閉じたり開いたりする運動をします。肛門、膣(ちつ)、尿道の筋肉は、どれか一つを鍛えると全部が鍛えられます。それでも改善しない場合、投薬による治療になります。ほかにペッサリーによる治療もありますが、どうしても治らない場合、最終的には手術が必要になることもあります。
 おしっこは、夜一度も起きずに、よほど水分を取らない限り4時間は我慢したいものです。最近は副作用の少ない良い薬が出ていますので、まずは専門医を受診し、相談することをお勧めします。