2006年7月12日水曜日

「多毛症」について

ゲスト/アップルレディースクリニック 工藤正史 医師

多毛症について教えてください。

 多毛症とは、軟毛の硬毛化(軟らかい毛が硬くなること)のことをいうのであり、毛の本数自体が増えることではありません。女性や小児にみられる男性型の発毛状態をいいます。この男性型多毛症の90%は、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)と特発性多毛症が原因です。女性であっても、男性ホルモン(アンドロゲン)を分泌していますが、過剰分泌すると体毛が硬毛化し、本来軟らかくて目立たない部位の体毛が、毛深く見えるようになります。アンドロゲンとは、男性化作用を持つホルモンの総称で、思春期以降に精巣、卵巣、副腎から分泌されます。80%は卵巣から分泌され、通常は分泌量が少量であるため、脇毛、陰毛にのみ硬毛化が見られますが、過剰に分泌する場合は、ヒゲや髪、胸毛、背中、四肢の毛が硬毛化し、「多毛症」となります。

PCOSと多毛症の治療について教えてください。

 PCOSは、卵巣が多嚢胞化・腫大し、月経異常、無排卵を招き、不妊の原因となる症候群で、さまざまな症状の一つが多毛です。原因は黄体化ホルモン(排卵を指示するホルモン)が過剰分泌することによって、男性ホルモンの過剰分泌を引き起こすと考えられています。ただし、日本人で多毛を示すことはそれほど多くはありません。
 すでに生じてしまった硬毛の治療は、電気凝固、脱毛クリーム、脱色法、レーザー脱毛などの美容的脱毛療法しか方法はありません。新たな硬毛化を抑えるためには、薬剤、外科的療法によりますが、全身的多毛治療としては、低用量ピルと利尿薬のスピロノラクトンの薬剤療法をお勧めします。
 低用量ピルは、卵巣からの男性ホルモンの分泌を抑えます。スピロノラクトンは卵巣からの男性ホルモンの分泌を減少させ、多毛症を改善します。スピロノラクトンは、高血圧の治療薬ですが、正常な血圧に影響を及ぼすことは通常ありません。副作用として、不正出血や月経回数が多くなることがありますが、低用量ピルと併用することによって、コントロールが可能です。ただし、臨床的効果が認められるまで6カ月程度は必要です。