2006年6月14日水曜日

「もの忘れと認知症」について

ゲスト/つちだ消化器循環器内科 土田 敏之 医師

「もの忘れ」について教えてください。

 物や人の名前、場所を忘れることを「もの忘れ」といいます。何をしようとしていたか、どこへ行こうとしていたか、物や人の名前などが、どうしても思い出せない。人間誰しも、こういった場面は経験したことがあるのではないでしょうか。もの忘れはどの人でも、ある程度はするものです。
 しかし、頻発したり、あまりに重要なことを忘れてしまうと、自分自身でもヒヤリとすることがあります。このような症状があれば、いくつかの診断が考えられます。
(1)加齢
(2)脳梗塞(こうそく)・脳出血・くも膜下出血後
(3)慢性硬膜下血腫
(4)水頭症
(5)転移を含めた脳腫瘍
(6)うつ病
(7)甲状腺機能低下症やアルコール中毒
(8)認知症(痴呆症)です。
 このうち、年齢に伴って記憶力が低下している場合は、一時的に物事を思い出せなくても、後になって思い出す場合がほとんどです。忘れてしまったという自覚もあります。日常生活に支障が出るほどのものではありません。脳の自然な老化現象であり、「ど忘れ」とも言います。

認知症とは異なるのですね。

 認知症によるもの忘れは、最近の出来事をすっかり忘れているにもかかわらず、本人にはその自覚がありません。認知症は、年寄りの病気と思われがちですが、高齢者以外にも起こります。今、映画や書籍などで話題になっている若年認知症は、18歳から64歳までの幅広い年齢層に発症します。日本では全国に約3万人の若年認知症患者がいるといわれています。働き盛りでの発症は、本人にとっても、家族にとっても、精神的、身体的、経済的負担になります。
 人の名前や物の置き場所、家や道順を忘れるなど、 もの忘れが突然ひどくなったり、進行するようなら、早めに受診してください。うつ病と混同されたり、加齢や多忙、環境のせいなどと放置していると症状が進行します。「おかしいな」と感じたら、本人はもちろん、周囲の人も受診を勧めてください。治療が早ければ、完治は無理でも、進行を遅らせることはできます。初期であるほど有効です。