2006年3月22日水曜日

「ピロリ菌」について

ゲスト/篠路病院 三浦 進 医師

ピロリ菌について教えてください。

 ピロリ菌は、1980年代に発見された比較的新しい細菌です。胃の粘膜を好んですみつき、胃酸から逃れるために粘液の下にもぐり込んでいます。日本人の場合、40歳未満でピロリ菌に感染している人は2~4割と少ないのですが、40歳以上になると 8割の人がピロリ菌に感染していると推計されています。これは戦後の衛生状態が悪かったことが原因として考えられています。
 国別では、北米・ヨーロッパに比べ、東南アジア・アフリカに多いのも衛生状態の地域的な違いによるもののようです。ピロリ菌陽性で萎縮(いしゅく)性胃炎のある人では、胃がんになる 確率が健康な人の約4倍といわれています。世界保健機構 (WHO)でも、ピロリ菌を発がん因子と規定しています。5年前にそのメカニズムが解明されましたが、ピロリ菌と胃がんの因果関係の高さは、タバコと肺がん、C型肝炎ウイルスと肝臓がんの関係と同程度のリスクになっています。さらにピロリ菌は悪性リンパ腫や狭心症・心筋梗塞(こうそく)の発症にも関与していると指摘されています。アメリカでは、潰瘍(かいよう)既往症の無い人でもピロリ菌に感染している人には、健康保険で除菌療法が行われていますが、日本でも胃・十二指腸潰瘍のある人の除菌治療には健康保険が適用されるようになりました。

ピロリ菌の有無はどのようにして分かりますか。

 ピロリ菌がいるかどうかは、検査で容易に分かります。検査は食後でもかまいません。検査薬を飲み、その前後に「息」を試験管に吹き込むだけの簡単な検査で、結果は4~5日後に判明します。ピロリ菌がいることが分かった人は、除菌療法をします。治療は薬を1週間、服用します。さらに1カ月後に確実に除菌されたかどうかの判定検査を行います。約8~9割の人は長年住み着いたピロリ菌から解放されると報告されています。それにより、潰瘍再発の危険性が2~8割減少するだけでなく、前述のように胃がんなどの病気にもなりにくくなります。ピロリ菌に感染している可能性がある人は、早めに検査を受けることをお勧めします。

2006年3月15日水曜日

「社会不安障害」について

ゲスト/メンタルケアさっぽろ西口クリニック 鈴木将覚 医師

社会不安障害について教えてください。

 人前に出ると極度に緊張してしまい、顔が赤くなったり、声や手足が震えたりして、思うように話ができなくなる症状で、一般に赤面症、あがり症などと呼ばれることもあります。程度の差はありますが、日本人には比較的多く、推定で人口の約1割程度の人が発症しているといわれています。もともとその人が持っている気質に、ストレスなど何らかのきっかけがあって発症する場合も少なくありません。きっかけはさまざまで、人前で本人にとっては大きな失敗を犯し、それ以降、人前に出ることが苦痛になるような場合が多いようです。
 例えば、会社の朝礼でスピーチをしなくてはならなくなった時に、上手にしゃべることができず、それがきっかけで、朝礼がある日は遅刻をしたり、休んだりということを繰り返します。子どもの患者さんも多く、学校での発表などが苦痛で、症状が重くなると学校へ行くことができなくなったりします。また、初対面の人に対して極端に緊張したり、人前で字が書けなくなるなど、特定の状況で症状が出る場合もあります。重くなると、本人の苦痛も大きく、社会生活にも支障を来しますから、我慢せず、早い段階で受診することをお勧めします。

治療方法や注意点について教えてください。

 「あがり症」は大なり小なり誰にでも見られる症状であるため、ともすれば「慣れれば大丈夫」などと、無理強いするような場面が見られますが、これは本人にとって、苦痛が増すばかりでプラスに働くとは限りません。診察を受けて、必要であれば抗不安薬、抗鬱(うつ)剤などを服用することも、症状の軽減に役立ちます。日常生活では、「緊張して当たり前」「本人が気にするほど周りの人は気にしていない」ことを自覚することが大切です。また、家族など周囲の人が「気にするな」と励ましたりせず、「つらいよね」と共感することで、本人の気持ちが和らぎます。社会不安障害は、神経症圏の中では改善しやすい病気です。「自分も…」と思い当たったら、早めに専門医を訪ねてください。

2006年3月8日水曜日

「人工透析」について

ゲスト/桑園中央病院 松井 傑 院長

人工透析について教えてください。

 腎臓には、体内の老廃物や余分な水分を除去し、血圧の調整や赤血球の生産を促すなどの働きがあります。慢性糸球体腎炎や糖尿病性腎症などの疾患によって、腎臓が十分に機能しなくなると人工透析による治療が必要となります。人工透析は、血液を体外に取り出して透析器(ダイアライザー)を通すことによって、血液中の老廃物や不要な水分を取り除き、血液を浄化して再び体内に戻す治療のことです。最近の糖尿病患者の増加により、人工透析が必要な患者が増えています。それに伴い人工透析を行う病院も増えてきました。
人工透析は週に3日、1回4時間程度かけて行われます。一般の人は透析に、「通常の社会生活が難しくなる」、「透析が始まったら、病気は徐々に進行する」などのマイナスイメージを持っているのではないかと思います。しかし、最近では、働く人が治療を受けやすいよう午後7時からの夜間透析の実施。旅行先での透析治療をバックアップするなど、透析患者の生活の質を落とさないよう努力する病院も少なくありません。透析治療については、経験の多い日本透析医学会認定医へ相談することも一つの方法です。

オンラインHDFについて教えてください。

 従来の透析法には、十分に除去できないβ(ベータ)2MGを代表とする物質の蓄積によって、さまざまな透析の合併症を引き起こすことがあります。オンラインHDF(血液ろ過透析)は、これらの物質をより効率良く除去する治療方法です。フィルターを使い透析液を清浄化して置換液として使用します。骨・関節痛、食欲不振、腎性貧血などに改善効果があるという報告を得ています。この治療法は保健適用になります。くわしくは、かかりつけの医師にご相談ください。

2006年3月1日水曜日

「男性型脱毛症」について

ゲスト/緑の森皮膚科クリニック 森 尚隆 医師

男性型脱毛症について教えてください

 男性型脱毛症は、主に前頭部と頭頂部が徐々に薄くなっていくもので、若い人では20歳過ぎからみられます。男性ホルモンが5α(アルファ)リダクターゼという酵素によって脱毛を引き起こす物質(DHT)に変化することや遺伝によって起こると考えられています。 5αリダクターゼの影響が働きにくい後頭部、側頭部は脱毛が起こりにくくなります。

治療法、予防法はありますか? 

 副作用が少なく有効性の高い飲む育毛剤が最近発売されました。これは、5αリダクターゼの働きを抑え、その結果DHTの生成を防ぐことによって、脱毛の進行を遅延させるといわれています。本来は、前立腺肥大や前立腺がんの治療薬として開発された医薬品ですが、発毛効果があることが分かり、育毛剤としての用途が広がりました。薄毛が気になり始めたときに対処するのが有効です。効果の判定には6カ月間飲み続ける必要があります。この薬を服用するには、医師の診断と処方せんが必要で、保険の対象にはなりませんから注意が必要です。
 日常生活の中での注意点としては、過労やストレスをできるだけ避け、睡眠や栄養を十分に取るようにします。喫煙は控えた方が良いでしょう。洗髪はできるだけ毎日行い、特にフケや頭皮の皮脂が気になるときは、念入りに洗いましょう。適切なシャンプーを選び、頭皮を十分マッサージして血行促進することが大事です。ただし、シャンプ-の使い過ぎや地肌をこすり過ぎることは逆効果です。すすぎは十分に行ってください。
 頭皮や髪の毛を健康にする栄養素は、タンパク質、ビタミンE、そしてシスチン(アミノ酸の一種)という成分です。タンパク質やシスチンは、髪の毛の原料となり、ビタミンEは頭皮の血行を良くします。また、海藻類に含まれるヨードという成分も、髪の毛を健康に保ち、抜け毛を予防するといわれています。これらの栄養素を含む食品を取ると効果が期待できます。また、ストレスは抜け毛の大きな原因となります。ビタミンB群やCを十分にとり、ストレスに対する抵抗力を付け、抜け毛を防ぐようにしましょう。

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