2006年2月22日水曜日

「矯正治療の開始適正時期」について

ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治正光 歯科医師

矯正治療は治療の時期が重要だと聞きますが。

 矯正治療の技術は躍進的に進歩しており、歯やその周りの歯周組織が健康であれば、年齢にかかわりなく、ほとんどの症例に対して治療可能であるといえます。骨格的偏位(ずれ)が前後左右的に大きい場合には、外科矯正やインプラント矯正を併用することになりますが、きれいな咬(か)み合わせになることができます。

では、適正時期とはなんでしょうか。

 例えば、上顎(じょうがく)前突の場合、一般的に上顎(あご)が出ているように思われがちですが、下顎が小さいことが原因であることが多いのです。このまま放置して成人(顎の成長の望めない年齢)になると、抜歯や外科矯正になる可能性が高くなるのです。この場合の最適正時期は9~11歳です。バイオネーターなどの機能的顎矯正装置と呼ばれるものを夜間に寝るときだけ使用してもらうことで、下顎骨の前方成長を促し、バランスの取れた横顔にすることができます。横にも拡大することができるので、抜歯をしなくてはいけない確率も下げることになります。
 すなわち、適正な時期に矯正治療を開始することで、骨格のコントロールを行い、上下顎をバランスの良い状態にして、抜歯率や外科矯正率を下げることができるのです。決して歯を抜く治療がいけない治療といっているのではなく、適正な時期に始めることにより選択肢が広がると考えてください。
 また、下顎(かがく)前突の場合、一般的に下顎がより前方に成長するのを抑制したり、小さめの上顎が前方に成長するのを促進したりします。この場合、最適正時期は6~9歳です。乳歯列の時期に夜寝るときだけの装置で治療することもできます。
 ご自分のお子さんが気になる場合は、いずれも、前歯だけを見ていたのでは判断が難しいので、左右的なずれも含めて、小学校入学前後に一度、専門医にご相談されることお勧めします。

2006年2月15日水曜日

「加齢黄斑(おうはん)変性の光線力学療法」について

ゲスト/大橋眼科 大橋勉 医師

加齢黄斑変性とはどんな病気ですか。

 人間の眼(め)は、角膜、水晶体、硝子体を通って、網膜の上に像を写して物を見ます。カメラに例えると、網膜はフィルムにあたります。その中心部は黄斑部と呼ばれ、物を見るために最も重要な部分です。この黄斑部に、異常な老化現象が起こり、黄斑が変化して視力が低下する病気が、加齢黄斑変性です。視野の中央がよく見えない、暗く見える、ゆがむといった症状が現れ、時には失明に至る場合もあります。原因としては、健康な状態では存在しない新しい異常血管が、黄斑部の脈絡膜(網膜より外側に位置し、血管が豊富な膜)から発生し、網膜側に伸びてきます。この新しい血管は新生血管と呼ばれ、血管壁が大変もろいため、血液や血液成分が黄斑組織内に滲出(しんしゅつ)し、黄斑機能を妨げます。新生血管の成長による出血や滲出物によって、視力の低下や、物がゆがんで見えるなどの症状が出現します。治療が遅くなると、高度の視力障害が残ってしまいます。

治療法について教えてください。

 最近では、治療の一つして、光線力学療法(PDT)があります。光に対する感受性を持つ光感受性物質(ベルテポルフィン)を、肘(ひじ)の静脈に注射し、それが新生血管に到達したとき、非熱性の半導体レーザーを当てて、その光感受性物質に化学反応を起こさせます。そうすることによって、強い毒性のある活性酸素が発生し、新生血管の血管内皮細胞が破壊され、血管が閉塞(へいそく)します。この治療で使用するレーザーは、通常のものと異なり、新生血管周囲の組織への影響は少なく、視力への影響は軽度です。ただまれに、網膜出血が増加することがあります。一度傷ついた網膜は元に戻りませんが、新生血管をつぶすことによって病気の進行を止めることができます。必要に応じて、適度な期間を設けて数回治療が必要な場合もあります。また初回は、2泊程度の入院が必要になります。治療は健康保険の適用になります。
 加齢性黄班変性は、早期に治療するほど効果が期待できます。視界や視力の異常を感じたら、すぐに専門医を受診してください。道内で光線力学療法を実施している施設は限られています(眼科PDT研究会http://www.pdti.jp/参照)。希望する場合は、主治医によく相談することをお勧めします。

2006年2月8日水曜日

「いろいろなしみとその治療」について

ゲスト/宮の森スキンケア診療室 上林淑人 医師

しみについて教えてください。

 何らかの原因で皮膚内にメラニンという色素が残ってしまい、その周囲よりも茶色く認識される部分は、一般にしみといわれます。よく見られるしみとして、以下のものが挙げられます。
 1つは老人性色素斑といわれるもので、頬(ほお)や腕、手の甲などに主に見られ、境界のはっきりした円形のしみです。40歳以降に多く出現しますが、早い人ですと20歳代から出る人もいます。長期間紫外線によるダメージを受けてきたことが原因と考えられています。
 2つめは、雀卵斑(じゃくらんはん)で、いわゆる「そばかす」です。左右両頬に対称性に小さい色素斑が多数認められるもので、子供のころから見られるのが一般的です。
 3つめは、脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)です。表面がカサカサとした茶色から黒褐色の盛り上がった境界のはっきりしたしみで、主に顔や首に見られます。正確には皮膚腫瘍(しゅよう)の一種で、少しずつ大きくなります。「盛り上がったしみ」といえば分かりやすいでしょう。比較的高齢者に多く見られます。
 4つめは、肝斑(かんぱん)といわれるもので、頬骨の辺りを中心に左右対称性に広がる茶色から褐色のしみです。ほとんどが女性に見られ、妊娠や出産、閉経を契機に現れることが多いので、女性ホルモンとの関係が指摘されています。
 5つめは、色素沈着です。主に湿疹(しっしん)やニキビ、やけど、すり傷が治った後に茶色く残るものです。程度が軽ければ時間とともに、自然と消えます。

治療法について教えてください。

 老人性色素斑、雀卵斑はレーザー治療が最も効果的です。脂漏性角化症もレーザー治療が有効ですが、外科的な切除や液体窒素による凍結療法を行う場合もあります。肝斑はレーザー治療の適応にならないことが多く、ハイドロキノンやビタミンC誘導体など脱色効果のある外用剤の使用が中心になります。色素沈着は、基本的に日焼け止めなど紫外線対策を徹底すれば徐々に消えていきます。それでもなかなか消えない場合はハイドロキノンやビタミンC誘導体を使用します。
 しかし、しみのように見える皮膚がんも存在します。気になるしみがある場合はまず専門医の診察を受けて下さい。

2006年2月1日水曜日

「ストレス」について

ゲスト/五稜会病院  千丈  雅徳 医師

ストレスについて教えてください。

 精神的緊張のことをストレスといいますが、その度合いは性格や環境など個々人の要素によって異なります。ストレスはささいなことでも感じます。身近な例としては、暖かい屋内から戸外に出て、寒いと感じることもストレスです。また、昇進や進学など、一般的には良いことと思われるようなことでも、本人にとってはプレッシャーが強く、ストレスになることもあります。精いっぱい頑張ってきたのに、環境の変化などでその枠組みが変わることによって、不安を増加させるからです。ストレスを感じた場合、それをどう解消していくかが大きな問題です。うまく解消できれば深刻になることはないのですが、感情を抑え込む状態が続くと、心の病に発展する可能性があります。
 これといった原因がなく、身体がだるい、疲れがとれない、眠れない、いらいらするといった症状の多くは、ストレスが引き金となっており、主に身体症状の場合は「心身症」、精神症状の場合は「うつ」となります。代表的な身体症状は、高血圧、慢性胃炎、神経性皮膚炎などで、高血圧から不整脈、狭心症、心筋梗塞(こうそく)などの循環器疾患、胃炎から胃潰瘍(かいよう)や十二指腸潰瘍といった消化器疾患を引き起こしてしまうこともあります。うつの症状は悪化すると自殺に直結する可能性があります。

ストレスとどう付き合えばいいのでしょうか。

 日ごろからストレスを受けたときに、家族や友人など信頼できる人に相談することができれば、古典的ですがもっとも効果的な解消方法です。身近に本心をさらけだして素直に感情表現できる場があれば、心身症やうつに至ることは少ないでしょう。
 心身症やうつに陥りやすい人は、きまじめな人、体裁を気にする人で、逆にずぼらな人、いい加減な人はなりづらい傾向にあります。しかし、ストレス社会といわれる現代、心身症やうつになる可能性は誰にでもあります。うつかどうかを本人が見極めることは難しいのですが、職場に行きたくない、寝付けない、酒量が増えた、意欲が無くなったなどと感じるようになったら注意が必要です。周囲が本人より先に兆候に気付くこともあるでしょう。そのような場合は、気軽に精神科医や心療内科医を受診してください。風邪などの疾病と同様に早くに適切な治療を受ければ、回復も早くなります。