2006年12月27日水曜日

「新型インフルエンザ」について

ゲスト/つちだ消化器循環器内科 土田 敏之 医師

新型インフルエンザについて教えてください。

 中国、東南アジアを中心に発生している鳥インフルエンザは、新型インフルエンザと呼ばれています。従来のインフルエンザとはタイプが違い、平成15年(2003年)11月以降、タイなどの東南アジアにおいて256人が感染し、152人の死亡者がでています。(2006年11月1日現在)感染者、死亡者ともに若年者に多く、高齢者に少ないのが特徴です。ヒトは、このウイルスに対する免疫を持っていません。新型インフルエンザが世界中で流行すると、数百万人が死亡すると試算されています。  インフルエンザ感染の有無は、迅速診断キットで確認することになりますが、新型インフルエンザのキットは一般病院には用意されておらず、通常のインフルエンザ検査を行いますが、偽陰性で感染を見逃す可能性があります。治療は抗インフルエンザウイルス薬の内服が主になります。日本では、病院、国、都道府県で2500万人分の抗インフルエンザウイルス薬の備蓄を目標として、昨年から準備しています。

新型インフルエンザは予防できますか。

 予防としては、ワクチンがもっとも効果的です。ベトナムで発生した鳥インフルエンザに感染した患者から採取したウイルスをもとに作ったプロトタイプワクチンが来春までに実用化されます。しかし、鳥からヒトに感染したウイルスから作られたワクチンが、今後世界中で大流行する可能性のある、ヒト同士で感染する新型インフルエンザにどこまで効果があるか現時点では不明です。今のところこのワクチンで感染予防を期待しつつ、感染してしまったら抗ウイルス薬で治療するといったことになります。  しかし抗インフルエンザウイルス薬にも耐性ウイルスが確認されており、万能ではありません。 ただし、耐性ウイルスのために経過が悪化していった例は認められていませんので、しばらくは安心して使えると考えられます。また、抗インフルエンザウイルス薬による副作用の可能性がある異常行動については、その多くは2日以内に起こるので、服薬して48時間は患者を1人にしないようにすると安心です。

2006年12月20日水曜日

「不眠」について

ゲスト/メンタルケアさっぽろ西口クリニック 鈴木 将覚 医師

不眠に悩む人が多いそうですが。

 必要な睡眠時間は人それぞれですが、たいていの場合は6~8時間程度が適切です。一般的に「不眠」と呼ばれる睡眠障害には、主に4つのタイプがあります。寝ようと思っても寝つきが悪く、なかなか眠れない入眠困難。夜中に何度も目が覚めてしまい、再び寝つくのが難しい中途覚醒(かくせい)。朝早く目が覚めてしまい、眠れなくなってしまう早朝覚醒。十分な睡眠時間をとったつもりでも、ぐっすり眠った実感がない熟眠感の喪失。  人によって、さまざまな形で現れる睡眠障害ですが、日本人の約20%が不眠に悩んでいるといわれています。時々眠れない程度で、社会生活に影響がなければ心配ありません。しかし、不眠に悩む日が週に3回以上あり、それが続くようであれば、睡眠障害として対策を講じる必要があるでしょう。睡眠障害を放っておくと、日中眠気に襲われ、仕事や学業に集中できない、一日の疲れがとれず体力、免疫力が低下し、風邪などにかかりやすくなるなどの悪影響が懸念されます。

不眠を解消するにはどうしたら良いですか。

 不眠の原因としては、日中のストレス、悩み、環境の変化、体調不良、うつなどの精神的な病気などが挙げられます。不眠の原因を解消することも大切ですが、日常生活の中でリズムを作り、良質の睡眠を得られるようにすることも重要です。運動による適度な疲労感や睡眠前のリラックス、寝室や寝具の環境なども見直してみましょう。 
 それでも十分な睡眠がとれなかったら、心療内科・精神科などの専門医を受診してください。治療としては、睡眠導入剤、抗不安薬などの処方が中心になります。「睡眠薬に頼るのは怖い」という人も多いでしょうが、最近はさまざまなタイプの睡眠薬があります。「睡眠薬はクセになる」「睡眠薬を飲み続けると認知症になる」などは間違った知識です。適切な時期に適切な睡眠薬を服用することは、決して怖いことではありません。むしろ、睡眠薬を嫌って「寝酒」に頼りすぎアルコール依存症になったり、不眠が続いて体調を崩すほうが問題です。

2006年12月13日水曜日

「冬期間の痛み」について

ゲスト/円山リラクリニック 森田 裕子 医師

冬期間に生じる「痛み」について教えてください。

 痛みの種類には、急性のものと、神経痛など慢性のものがありますが、どちらも冬期間は増える傾向にあります。まず急性の痛みの原因として多いのは、転倒による打撲やぎっくり腰などのほか、雪道を歩くことによって筋肉に緊張を強いられたり、滑って不自然な力が入るなどです。また、慢性的な痛みの原因としては、寒さによる冷えによって、もともと持っていた関節リウマチ、変形性関節症、神経痛、頭痛などの症状が悪くなることが考えられます。
 骨折などの外傷は整形外科の受診をお勧めしますが、筋肉の凝りやリンパ管や血行の不良、原因がはっきりしない痛みに関しては、「痛みの治療」をするペインクリニックを受診するか、かかりつけの医師に早めに相談することをお勧めします。早めに治療を始めることにより悪化を抑えることが重要です。

痛みの治療法について教えてください。

 神経ブロック治療や中国鍼(はり)を使用した鍼治療、鍼に低周波通電を行って刺激を与える鍼電極低周波治療、体の内部まで温めて血行を良くすることにより痛みを和らげる光線療法、漢方薬の処方などもあります。神経ブロックとは痛みの伝達に関係する知覚神経や交感神経の周辺に局所麻酔薬を注射する方法です。その注射により、痛みを一時的に遮断し、交感神経の緊張を緩めることで血流を改善し、局所にたまった老廃物の排せつを促して痛みを軽減させる治療法です。これらの治療を個々の症状や痛みの原因に合わせて行います。
 自身でできる痛みの緩和法としては、急性の痛みには冷やしたり湿布することなどがあり、慢性の痛みには蒸しタオルやカイロで温めることなどがあります。
 冬期間の外出では、滑らない靴をはく、つえを活用する、体を冷やさない服装をすることなども大切です。特に、冬に外出機会が減って筋力が低下してしまうと転倒することも多くなるので、軽いストレッチを行ったり、ショッピングモールなどの暖かい場所で多めに歩くなど、日常の中で適度に体を動かすことも効果的です。

2006年12月6日水曜日

「加齢黄斑(おうはん)変性症の光線力学療法」について

ゲスト/大橋眼科 大橋勉 医師

加齢黄斑変性症とはどんな病気ですか。

 視野の中央がよく見えない、暗く見える、ゆがむといった症状が現れたら、加齢黄斑変性症が疑われます。人間の眼(め)は、角膜、水晶体、硝子体(しょうしたい)を通って、網膜の上に像を結んで物を見ます。その中心部は黄斑部と呼ばれ、物を見るために最も重要な部分です。この黄斑部に異常な老化現象が起こり、視力が低下する病気が加齢黄斑変性症です。原因は、健康な状態では存在しない新しい異常血管が、黄斑部の脈絡膜(網膜より外側に位置し、血管が豊富な膜)から発生し、網膜側に伸びてきます。この新しい血管は新生血管と呼ばれ、血管壁が大変もろいため、血液や血液成分が黄斑組織内に滲出(しんしゅつ)し、黄斑機能を妨げます。出血や滲出物によって、視力の低下や、物がゆがんで見えるなどの症状が出現します。放っておくと高度の視力障害や、最悪の場合失明することもあります。

治療法について教えてください。

 治療の一つとして、最近注目されているのが光線力学療法(PDT)です。光に対する感受性を持つ光感受性物質(ベルテポルフィン)を、ヒジの静脈から注射し、それが新生血管に到達したとき、非熱性の半導体レーザーを当てて、その光感受性物質に化学反応を起こさせます。そうすることによって、強い毒性のある活性酸素が発生し、新生血管の血管内皮細胞が破壊され、血管が閉塞(へいそく)します。この治療で使用するレーザーは通常のものと異なり、新生血管周囲の組織への影響は少なく、視力への影響は軽度です。しかし、まれに網膜出血が増加することがあります。一度傷ついた網膜は元に戻りませんが、新生血管をつぶすことによって病気の進行を止めることができます。初回の治療には2泊程度の入院が必要で、状態に応じて数回の治療が必要な場合もあります。もちろん、治療は健康保険が適用になります。
 加齢性黄班変性症は、早期に治療するほど効果が期待できます。視力の異常を感じたら、すぐに専門医を受診してください。道内で光線力学療法を実施している施設は少ないので、主治医によく相談してください 。

(眼科PDT研究会http://www.pdti.jp/参照)

2006年11月22日水曜日

「インフルエンザ」について

ゲスト/秀愛会内科・消化器科クリニック 高梨 良秀 医師

インフルエンザと風邪の違いについて教えてください。

 風邪の場合は、のどの痛み、鼻汁、くしゃみや咳(せき)などが中心で、重症化することはめったにありません。インフルエンザの場合は、当然例外はありますが、代表的症状として38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛など全身に症状が現れ、さらにのどの痛み、鼻汁なども見られます。また、気管支炎、肺炎、熱性けいれんなどを併発し、重症化することがあるのも大きな特徴です。特に、乳幼児や高齢者など体力がない人、呼吸器や心臓などに慢性疾患を持つ人は重症化することが多いので、十分に注意する必要があります。
インフルエンザは流行性疾患で、例年11月~4月に流行しますが、昨年などは暖かくなってからも局地的に流行がありました。一度流行すると、健康な人から高齢者、乳幼児まで、瞬く間に感染が広まってしまうのも、インフルエンザの恐ろしいところです。

予防と治療について教えてください。

 インフルエンザ予防の基本は、流行前のワクチン接種です。特に、重症化しやすい高齢者や乳幼児、集団感染しやすい学生、休みづらい職場に勤務している人や受験生は、予防接種を受けておくといいでしょう。年末から1月~2月に流行することが多いので、年内に接種することをお勧めします。また、インフルエンザは、罹患(りかん)者の咳、くしゃみ、唾液(だえき)などの飛沫(ひまつ)とともに放出されたウイルスを、鼻腔(びくう)や気管など気道に吸入することによって感染します。インフルエンザの流行時には、高齢者や慢性疾患を持っている人は、混雑している所への外出を控えましょう。室内の空気を乾燥させないことも大切です。
 インフルエンザにかかったら、早めに医療機関を受診し、休養を充分とりましょう。インフルエンザウイルス治療薬の抗ウイルス薬は、症状が出はじめてからの時間や病状によって効果が異なりますので、医師の判断が必要です。発症から一般的に48時間以内に服用すると、通常、発熱期間は1~2日間に短縮され、ウイルス排せつ量も減少します。インフルエンザに罹患したら、家でゆっくり休むことが、周囲に感染を広めないためにも重要です。

2006年11月15日水曜日

「寝たきり防止は口腔(こうくう)機能向上で」について

ゲスト/石丸歯科 石丸 俊春 歯科医師

口腔機能と寝たきりの防止について教えてください。

 近ごろ、要介護になる原因として、「加齢に伴う生活機能の低下」が重要視されています。衰弱、転倒、骨折、認知症、関節疾患などの生活機能の低下を防ぐためには、「よくかめる歯や義歯を確保し、かむ筋肉を鍛える」「食べ物を好き嫌いなくバランス良く食べて体力を保つ」などの対策が必要です。今年の4月から65歳以上の高齢者を対象にした介護予防のサービスも受け付けられるようになりました。

生活機能改善策として、

1)運動器具による機能の向上
2)栄養改善
3)口腔機能改善
4)認知症、うつ、閉じこもり予防などが柱として挙げられています。
 ここでは、口腔機能改善について説明します。年齢にかかわらず、以下の点に心当たりのある人は注意が必要です。
1)最近硬いものが食べづらくなった。
2)お茶や汁物などでむせることがある。
3)口の渇きが気になる。
4)30秒間で唾液(だえき)を3回以上連続して飲み込めない(反復唾液嚥下(えんげ)テスト)。
5)急激な体重変動がある。

問題があった場合はどうしたら良いでしょう。

 65歳以上で生活機能の低下を感じる場合は、「地域包括支援センター」か「介護予防センター」で、「基本健康診査」を受け、介護予防サービスを受けることをお勧めします。

日常生活では以下の実行を。

1)口腔内を清潔に保つこと。これは上気道感染、肺炎の予防につながります。
具体的には、
a)歯磨き、義歯の手入れ、舌のブラッシング
b)ブクブクうがい、ガラガラうがい
c)ほお内側の粘膜のマッサージ、唾液腺のマッサージ
d)舌を上顎(あご)につけて、ポンと音を鳴らす(舌の動きを良くする)などです。
2)よくかむことを心がける。摂食や嚥下機能向上、認知症防止につながります。
3)会話、歌、笑いの機会を多くする。表情筋、呼吸機能が鍛えられます。

 口腔機能というと口の中の問題と考えがちですが、運動機能、栄養摂取、会話などと深く関係する大切な機能です。「元気な口腔機能」は健康で幸せな人生の大切な条件です。

2006年11月8日水曜日

「長引く咳(せき)とマイコプラズマ肺炎」について

ゲスト/大道内科・呼吸器科クリニック 大道 光秀 医師

激しい咳が長引く疾患について教えてください。

 長引く咳の原因としては、結核や気管支喘息(ぜんそく)、アトピー咳嗽(がいそう)のほかに、百日咳、マイコプラズマ肺炎、クラミジア肺炎などが考えられます。夜中や朝方に咳が多いのは、咳喘息やアトピー咳嗽、百日咳である可能性が強く、マイコプラズマ肺炎、クラミジア肺炎の場合は、通常1日中咳が出ます。
 百日咳は、通常2歳以下の幼児に頻発する病気ですが、最近、大人での急性あるいは長引く咳の原因として注目を集めています。夜中に多く、発作性で激しい連続性の咳に引き続き、吸気時にヒューと音がしたり、嘔吐(おうと)したりします。大人から子どもへの感染も懸念されます。
 クラミジア肺炎は、微生物であるクラミジア・ニューモニアに感染することによって発症します。発熱後に激しい咳が3~4週間続きます。
 どちらもきちんと治療すれば、予後は良好ですが、治癒するまで数週間かかります。また、体力のないお年寄りや乳幼児は重症化することもあるので、入院治療が必要になる場合もあります。百日咳、クラミジア肺炎の流行性は、そう大きくありません。

マイコプラズマ肺炎はどうですか。

 最近になって、感染者が増えているのはマイコプラズマ肺炎です。微生物であるマイコプラズマ・ニューモニアに感染することによって発症します。かつては4年ごとのオリンピックの年に流行するといわれていましたが、最近では毎年のように流行しています。発熱後に激しい咳が長く持続します。
レントゲンで、陰影が出る場合は、マイコプラズマ肺炎を推定できますが、出ない場合はマイコプラズマ感染による咳と咳喘息やアトピー咳嗽との鑑別が必要となります。血液検査でマイコプラズマ抗体が陽性であれば診断できますが、抗体が陽性化するのに1~2週間かかりますので、初診時には推定のみとなります。一般的な細菌性肺炎は、体力のない高齢者や乳幼児がかかりやすいのですが、マイコプラズマ肺炎は、健康な大人でも罹患(りかん)します。多くの細菌に有効で、頻用されているセフェム系抗生剤が無効で、マクロライド系やテトラサイクリン系、ニューキノロン系抗菌剤が有効です。
家庭内で子どもと大人、職場などで大人と大人間の感染が見られますので、「子どもの病気」「大人はかからない」と思い込まず、乾いた咳が長く続く場合は専門医を受診してください。一度治癒しても、再感染することがありますから、流行期には、手洗い、うがいを徹底しましょう。

2006年11月1日水曜日

「緊急避妊ピル」について

ゲスト/産科婦人科はしもとクリニック 桑原 道弥 医師

緊急避妊ピルについて教えてください。

 通常のピルは、低用量ピルを日々定期的に内服することによって排卵を抑制し、妊娠しないようにしますが、緊急避妊ピルは無防備な性交の後に中用量ピル(ドオルトンまたはプラノバール)を飲むことで妊娠しないようにします。無防備な性交とは避妊しなかった、避妊に失敗した、レイプされたなどです。モーニングアフターピルとも呼ばれ、性交の72時間以内にできるだけ早く中用量ピルを2錠内服し、その12時間後に再度同じ薬を2錠内服します。120時間までであれば避妊効果はあるようですが、その効果は減弱するようです。
 この避妊法は受精卵が着床してからでは効果はありませんから、避妊法として確実ではありません。無防備な性交の後に緊急避妊ピルを72時間以内に内服した場合の妊娠率は3%前後という報告があります。ただし、排卵周辺期(排卵5日前頃~排卵日)に限れば、妊娠の可能性を75%減らす程度との報告があります。

副作用はありますか?

 副作用として、最も多い症状が吐き気です。およそ半数の人に現れます。食後の内服や就寝時に牛乳などとともに内服することで発現率が減少します。そのほかに、倦怠(けんたい)感、下腹部痛、頭痛、嘔吐(おうと)、めまい、乳房緊満感などがあります。内服後2時間以内に嘔吐した場合は、できるだけ速やかにもう一度同量の薬を内服する必要があります。内服が困難な場合は膣内投与という方法もあります。2時間以上経過していれば薬は十分吸収されていますので、追加投与の必要はありません。
内服のタイミングによっては、排卵の遅延が起こることがあります。この場合、内服後に妊娠する可能性があります。避妊が成功した場合は、内服後早ければ3~4日、遅くても3週間以内に月経が起こりますので、それまでは他の方法で避妊をしてください。
内服後3週間たっても月経が来ない場合は、妊娠の可能性があります。妊娠してしまった場合に、緊急避妊ピルが胎児に悪影響を及ぼすという報告はありません。

2006年10月25日水曜日

「口腔(こうくう)機能の老化予防」について

ゲスト/篠路病院 斉藤 巌 医師

老化予防について教えてください。

 加齢とともに、さまざまな機能が減退することを老化といいます。避けることはできませんが、日常生活の中のちょっとした努力で、老化を遅らせることができます(アンチエイジング)。例えば、歩くことで足腰が鍛錬され、考えることで脳の老化を予防する。みんなが知っていることですが、毎日実行しようと思うと、なかなか難しい。特に、病気やけが、体力低下などによって、家にこもりっきりになると、どんどん能力が減退し、外出が面倒になるという悪循環に陥ります。全身の老化予防というと、かなり広い範囲の話になってしまいます。ここでは、あまり知られていない口や舌を動かすことによる老化予防を紹介します。誰もが簡単に実行できる老化防止の対策です。高齢になると口や舌は食べること話すことから、食べる機能だけに退化しがちで、それさえもむせるなどして誤嚥(ごえん)性肺炎の原因になっていきます。脳神経系の老化変性による障害です。これを健全な方向に引き戻す練習として、シンプルな方法を患者さんに勧めています。

具体的な方法を教えてください。

 年を取ると人付き合いが減り、しゃべる機会が減ってしまいがちです。一人暮らしだと、さらにその傾向は顕著で1日中誰ともしゃべらないということも珍しくありません。口の開閉や発声を行わないと、会話に必要な発声筋がこわばり、筋力低下から舌足らず、スムーズに話すことができない構音障害になりやすくなります。また脳の血流が悪くなり、痴呆など全身の衰えにつながる可能性もあります。 
口腔機能の老化防止の方法としては、
(1)口を大きく開けたり閉じたりする
(2)舌を大きく出す、引く練習
(3)舌の形を細長くする、平べったくする。
(1)~(3)をいずれも10~20回行うという簡単な口の体操です。 

また、下顎(あご)からのどにかけてなでるようにマッサージするだけでも同様の効果があります。手が不自由な人には家族がやってあげるといいでしょう。顔全体をなでる自己マッサージも筋肉の緊張を解きほぐし、不安や抑うつ反応を和らげ、メンタルヘルスの自己コントロールになります。 充実した人生がより長く続くように、早めに老化予防に取り組みましょう。

2006年10月18日水曜日

「理想的な矯正治療の開始時期」について

ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治正光 歯科医師

歯の矯正治療には適正な開始時期というのがありますか。

 矯正治療の技術は躍進的に進歩しており、歯やその周りの歯周組織が健康であれば、年齢にかかわりなく、ほとんどの症例に対して治療可能であるといえます。骨格的偏位(ずれ)が前後左右的に大きい場合には、外科矯正やインプラント(人工歯根)矯正を併用することによって、きれいなかみ合わせにすることが可能です。

より理想的な矯正開始時期について教えてください。

 例えば、上顎(がく)前突(出っ歯)の場合、一般的に上あごが出ているように思われがちですが、下あごが小さいことが原因であることが多いのです。このまま放置して成人(あごの成長の望めない年齢)になると、抜歯や外科矯正になる可能性が高くなります。この場合の最適正時期は9~11歳です。バイオネーターなどの機能的顎矯正装置と呼ばれるものを夜間に寝るときだけ使用してもらうことで、下顎骨の前方成長を促し、バランスの取れた横顔にすることができます。横にも拡大することができるので、抜歯をしなくてはいけない確率も下げることになります。
すなわち、適正な時期に矯正治療を開始することで、骨格のコントロールを行い、上下顎をバランスの良い状態にして、抜歯率や外科矯正率を下げることができるのです。決して歯を抜く治療がいけない治療といっているのではなく、適正な時期に始めることにより選択肢が広がるということです。
また、下顎(がく)前突(受け口)の場合、一般的に下あごがより前方に成長するのを抑制したり、小さめの上あごが前方に成長するのを促進したりします。この場合、最適正時期は6~9歳です。乳歯列の時期に夜寝るときだけの装置で治療することもできます。
ご自分のお子さんが気になる場合は、いずれも、前歯だけを見ていたのでは判断が難しいので、左右的なずれも含めて、小学校低学年のうちに一度、専門医にご相談されることをお勧めします。

2006年10月11日水曜日

「子どもと大人の屈折異常」について

ゲスト/ふじた眼科クリニック 藤田 南都也 医師

子どもの屈折異常について教えてください

 屈折異常とは、近視や遠視、乱視などのことです。網膜より手前で焦点が結ばれてしまうのが近視、網膜より後ろに焦点がきてしまうのが遠視です。
 学童期の子どもで良く問題になるのが近視です。授業中に黒板の文字が見えづらくなったなどの症状が出たら、すぐに眼科を受診してください。近視には、いわゆる仮性近視の段階と、治らない近視があり、目薬の検査によってどちらか判明します。仮性近視の場合は、すぐにメガネを作らなくても、睡眠前の点眼や視能訓練などによって、ある程度改善が見込めます。近視の場合は、視力に合ったメガネをかけて、授業に遅れをとらないようにします。
 子どもで問題となるもう一つの屈折異常は遠視です。近くも遠くもはっきりと見えない状態なので、早めの視力矯正治療が必要です。遠視用メガネを日常的に使用しますが、「子どもにメガネはかわいそう」などといって、矯正を怠ると、脳の視力に関係する神経回路が育たず、そのまま成長し、弱視になってしまうことがあります。必ず治療は受けさせてください。強い乱視の場合も同様にメガネで矯正し、弱視予防の治療をします。いずれにしても遠視や乱視の治療は中学生になってからでは手遅れで、できれば小学校入学前の眼科受診が望ましいです。

大人の屈折異常について教えてください。

 加齢によって目の機能が衰えてきますが、代表的なものが老眼(老視)です。ピントを合わせる水晶体の厚さを調節する力が弱まり、近くや遠くのものが見えづらくなります。40歳以上で、最近ものが見づらくなったと感じたら老眼を疑ってください。こういう場合メガネをかけると見やすくなるだけではなく目も疲れにくくなります。さらに遠視の方の場合、目の中の圧力が高くなりやすく、緑内障になることもあります。緑内障を未然に予防するには、一度はきちんと検査を受けるといいでしょう。
一方、視力0.1以下の強い近視の人は、網膜はく離を起こしやすいので、眼底の散瞳検査をお勧めします。早いうちなら、レーザー治療が可能ですが、実際にはく離を起こしてしまうと、通常手術が必要になります。視界に黒い点や糸が浮遊する飛蚊(ひぶん)症が出てきたり、キラキラとした光を感じる光視症などの症状があったら、一度眼科の診察を受けてください。

2006年10月4日水曜日

「メタボリック・シンドロームと動脈硬化」について

ゲスト/大通り内科クリニック 小森克俊 医師

メタボリック・シンドロームとは何ですか。

 メタボリック・シンドロームは、2005年春に日本内科学会など8つの学会が合同で定義と診断基準を発表しました。欧米の診断基準との最大の違いは内臓脂肪の蓄積が必須条件となっていることです。ウエストまわり(一番細いところではなく、おヘソの部分)が、男性で85cm以上、女性で90cm以上。加えて、高中性脂肪血症、高血圧、糖尿病(予備軍を含む)のどれか2つ以上が当てはまれば、メタボリック・シンドロームと診断されます。糖尿病、高血圧、高脂血症などの生活習慣病は、それぞれの程度が軽くても、複数の症状が重なると動脈硬化の危険性が高まります。動脈硬化は、日本人の3大死因のうち、脳血管障害と心疾患をもたらす病因の一つとなっています。つまり、メタボリック・シンドロームと診断された場合は、動脈硬化となりうる可能性が高いということなのです。

メタボリック・シンドロームと診断された場合の注意点を教えてください。

 高脂血症、高血圧、糖尿病の中で、特に糖尿病は、ここ数年、日本で患者数が急増している生活習慣病です。糖尿病の主な原因は、食生活の欧米化による動物性脂肪の取り過ぎや運動不足です。健康維持には、糖質が60%程度、脂肪とタンパク質がそれぞれ20~25%程度の食事が理想的ですが、これは米や野菜、魚を中心とした一般的な和食の数値です。昔からこのような食事を続けてきた日本人は、欧米人に比べて膵臓(すいぞう)から分泌されるインスリンの量が少なく、元来糖尿病になりやすい体質を受け継いでいるといえます。肥満、高血圧の人、また、甘いもの、アルコール、高脂肪の食事を好む人は予備軍の可能性があります。ただし、体質も大きく関係しており、同じ生活をしても病気になる人とならない人がいます。近親者に糖尿病患者がいる場合は特に注意が必要です。40歳になったら年に1度は専門医の検診を受け、メタボリック・シンドロームと診断されたら、まずは食生活の改善と運動を心掛けましょう。健康で長生きするためには、まず自分が予備軍かどうかを知ることが大切です。

2006年9月27日水曜日

「更年期障害」について

ゲスト/札幌南二条産科・婦人科 熊井 健得 医師

更年期障害について教えてください。

 WHO(世界保健機関)では閉経を「卵巣における卵胞の消失による永久的な月経の停止」と定義しています。平均年齢はおよそ50歳です。
更年期に明確な定義はなく、一般に閉経前・閉経期、閉経後の40~60歳の期間を指します。この期間は卵巣の機能低下に伴う女性ホルモンの減少、欠落により心身にさまざまな症状が、不定愁訴として現れます。更年期の不定愁訴を更年期障害といい、症状によっては治療が必要となる場合があります。
具体的な症状としては、機能性出血、ほてり、のぼせ、異常発汗、動悸(どうき)、めまいなどの血管運動神経症状、憂うつ、不眠、頭重感などの精神神経症状などが挙げられます。また、性交時疼痛(とうつう)症、尿失禁、骨粗しょう症、高血圧などを伴う場合もあります。
さらに、高脂血症など加齢による症状や、子どもの独立など環境の変化による心因的症状などが重なることも多く、女性の心身に大きな変化が現れる時期です。

診察と治療について教えてください。

 診察は、初診時に月経歴と症状が出た時期、程度について問診で確認します。さらに、心理的要因が大きい場合は、環境や心理状態を把握するために、十分に時間をかけて問診します。加齢によるほかの病気の可能性を除外するために、血液や尿の検査、生化学検査、内診、子宮膣(ちつ)部細胞診、子宮内膜細胞診、経膣超音波検査による子宮・卵巣の疾患の有無も確認します。
 治療としては、ホルモン補充療法、漢方療法のほか、鎮痛剤、抗不安薬、抗うつ薬などによる対処療法を行います。心理的要因が大きい場合は心理療法の併用が有用です。ホルモン補充療法では、卵巣からの分泌不全の場合は、エストロゲンとプロゲストロンを投与しますが、子宮がない場合はエストロゲン単独になります。エストロゲンの投与によって、乳がん、単独療法で子宮内膜がんの発症のリスクが懸念されますが、適切な治療と定期的な各種がん検査を行っていれば、過剰に心配することはありません。リスクも含めて、信頼のおける主治医とよく話し合い、納得のいく治療を受けましょう。

2006年9月20日水曜日

「シミのタイプと治療法」について

ゲスト/宮の森スキンケア診療室 上林淑人 医師

シミについて教えてください。

 シミは、皮膚の深い部分(真皮)にメラニン色素が蓄積された状態をいいます。シミは取れないものと考えている人も多いようですが、実際には治療によって取ることが期待できるシミと、取ることが難しいシミがあります。  治療によって取ることが期待できるシミとしては、次のものが挙げられます。代表的なのは老人性色素斑です。これは茶色の円形で輪郭のはっきりしたシミで、主にほおや手の甲、前腕などに見られます。加齢によって出てくるシミですが、早い人では20代から出る人もいます。子供のころからほおや目の周りにあるそばかすも、治療可能なシミの一種です。脂漏(しろう)性角化症という、茶色の盛り上がったシミも治療が可能です。これは腫瘍(しゅよう)性のもので少しずつ大きくなりますので、気になる人は早めに専門医に相談すると良いでしょう。  治療はレーザー治療が一般的です。レーザー光が色素に反応して、皮膚内の色素を破壊することで改善します。しかし、レーザーといってもさまざまな種類があります。「Qスイッチ付アレキサンドライトレーザー療法」か「Qスイッチ付ルビーレーザー療法」がこれらの治療に最も適しています。治療効果には個人差がありますので医師と良く相談してください。

取ることが難しいシミにはどのようなものがありますか。

 肝斑(かんぱん)というほお骨のあたりに左右対称性に現れる茶色のシミがあります。主に女性に見られ、出産後や更年期に多く出現することから女性ホルモンが関係していると考えられています。これに対してレーザー治療を行うと、改善しないばかりか悪化することもあるので注意が必要です。ケガややけど、湿疹(しっしん)の後などに生じたシミや、行き過ぎた垢(あか)こすりによる背中のシミなどは、レーザー治療が有効でないことが多いです。  このようなシミには、脱色効果のあるハイドロキノンやビタミンC誘導体などの外用、ビタミンC、漢方薬などの内服が効果的なこともあります。  肝心なのは、日ごろからしっかり紫外線対策を行ない、シミを作らない、悪化させないことです。野菜や果物などで日常的にビタミンCを取ることも大切です。タバコはビタミンCを破壊すると言われているので、禁煙が望ましいでしょう。

2006年9月13日水曜日

運動によるストレスの軽減」について

ゲスト/五稜会病院 千丈雅徳 医師

ストレスについて教えてください。

 ストレスとは精神的に負荷がかかり、「ゆがみ」が生じることをいいます。精神を安定させたいと思う本能に反して、ゆがみで心身にさまざまな反応が生じます。ストレスの原因は、環境、人間関係、仕事、物理的、経済的なものまで、さまざまです。ストレスが蓄積すると、イライラや無気力、食欲不振、不眠、うつなどの精神的な症状だけでなく、高血圧、胃潰瘍(かいよう)など身体的にもさまざまな症状が現れます。
 多くの人はストレスにさらされながら日常生活を送っています。しかし、ストレスがまったくない生活というものも、心身に良い影響を与えません。平穏で退屈な生活は、挑戦する意欲や困難を乗り越える喜びを感じることができません。人は、適度なストレスと向き合うことによって、刺激や緊張が生じ、張り合いや生きがいをもって毎日を過ごすことができるのです。大切なのは、ストレスといかに上手に付き合うかということです。

ストレスにおける運動の効果について教えてください。

 ストレスケアのひとつに、作業療法というものがあります。多くの場合は集団でさまざまなプログラムに取り組みますが、エアロビクスやウオーキングなどの運動療法は、心身の健康を取り戻すのに有効です。しかし、集団に参加すること自体がストレスとなる場合もあります。このような場合は、無理せず個人での運動を勧めています。運動することによって、気持ちが楽になった、張り合いができたなどという心理的効果のほか、体脂肪や体重が健全に保たれ、食欲が増進したり、不眠が解消されるといった効果もあります。
 日常生活の中でも運動を上手に取り入れることによって、ストレスは解消され、身体の健康も取り戻せます。ただし、何事もやり過ぎは逆効果です。1日30分、週3回程度を目安に取り組んでみてはどうでしょう。ジムやプールに通うのもいいし、1駅分歩く、散歩から始めるというのでも構いません。万歩計をつけたり、体重や体脂肪を毎日計測すると、数値の変化が励みになり継続しやすくなります。

2006年9月6日水曜日

「脳梗塞(こうそく)・くも膜下出血と予防」について

ゲスト/コスモ脳神経外科 小林 康雄 医師

脳梗塞とくも膜下出血について教えてください。

 脳の血管の障害によって起きる脳卒中には、脳の血管が詰まる虚血性と、血管が切れたり破裂しておこる出血性があります。
 脳梗塞は虚血性の脳卒中で、脳の血管が血栓などによって詰まったり、動脈硬化によって血管が狭くなったり、血流が悪くなって起こる疾患です。
 脳疾患の中でもっとも多く生活習慣病が大きな背景となっており、糖尿病や高血圧症、高脂血症などと深く関係しています。 症状としては、手足のまひ・しびれ、口のもつれ、めまいなどで、一定時間で収まる一過性の発作の場合もあります。一時的に目が見えなくなったり、視野が狭くなることもあります。
 出血性の脳卒中には、脳を覆っているくも膜の下のすき間に出血が起きるくも膜下出血と、血管のもろい部分が破れて脳内に出血する脳内出血があります。
 くも膜下出血は脳卒中全体から見ると少ないほうですが、重篤状態になる確率が高く、症状としては、突然激しい頭痛や吐き気に襲われます。いつもと違う頭痛を感じたら、すぐに受診して下さい。脳卒中は、早期に適切な治療を受けることで予後を大きく左右します。

治療法、予防法について教えてください。

 脳梗塞の予防策・再発防止策としては、生活習慣病の改善が重要です。くも膜下出血の有効な予防策は確立されていませんが、「脳ドック」と呼ばれる脳の検査を行うことにより、まだ破裂していない脳動脈瘤(りゅう)などを発見することもでき、破裂を未然に防ぐ治療が可能になるなど、予防策を講じることができます。40歳代になったら、1~2年に1度は、脳ドックを受けることをお勧めします。
 レントゲン検査で頭と首の健康状態を調べ、MRI(※1)で脳の断層写真を見て、病気の有無や本人が気づかなかった過去の病気がわかります。
 MRA(※2)は血管の狭窄(きょうさく)や閉塞(へいそく)部分・脳動脈瘤の発見、動脈硬化の程度などがわかります。脳ドックは健康保険外になりますが、脳卒中は障害が残ったり、生命が危険にさらされる可能性が高い疾患です。自分の脳の健康は自分で守る時代です。積極的に予防策をとることをお勧めします。

※1)MRI:磁気共鳴画像装置
※2)MRA:磁気共鳴造影装置

2006年8月23日水曜日

「睡眠時無呼吸症候群と顎(がく)変形症」について

ゲスト/つちだ矯正歯科クリニック 土田康人 歯科医師

睡眠時無呼吸症候群(SAS)と顎変形症の関係について、教えてください

 SASは気道の閉塞(へいそく)によって起こる病気で、寝ている間に呼吸が止まるため、熟睡できない、昼間眠くて注意力に欠けるなどの症状があり、居眠り運転など重大な事故を引き起こす要因となることがあります。
 SASの原因としては、扁桃(へんとう)肥大、アデノイド、気道に舌が落ち込む、舌が大きい(巨舌症)、下顎(あご)が小さいまたは後退している(小顎症、下顎後退症)が考えられます。
 SASの治療法には、気道が閉塞しないように鼻にマスクをして空気を送り気道を広げる、マウスピースを着けて下顎を前に出して気道を広げる、扁桃肥大やアデノイドは除去してしまうなどの方法がありますが、いずれも根本的な治療にはなりません。

顎変形症によるSASの治療法について教えてください。

 顎変形症には、反対咬(こう)合(受け口)、上顎前突(出っ歯)、開咬(上下の歯がかんでいない状態)、顎偏位(顔や顎が曲がった状態)などがあり、変形が大きい場合、矯正治療だけでは治しきれず、外科手術を行います。もちろん、手術だけでかみ合わせの調整まではできませんから、手術前後に矯正治療も行います。手術はすべて口の中から行うので顔に傷が残ることもありません。また、矯正治療のみの場合は健康保険の対象外になりますが、外科手術を伴う場合は、手術と前後の矯正治療が健康保険の対象になります。
 下顎後退症(小顎症)は、文字通り下顎が後退していることで、横顔を見ると顎の部分が引っ込んでいます。下顎が後ろにあるために気道が狭くなり、SASになってしまうわけです。根本的な治療としては、引っ込んでいる下顎を前に引っ張り出す手術を行います。審美目的で美容整形外科による同様の治療が行われることもありますが、矯正治療は行わないため、かみ合わせの改善には至りませんし、健康保険も適用されません。
 反対咬合の方は、比較的進んで治療を受けられますが、下顎後退症は気付きにくいため、そのままにしている方が多く、SASの危険性を避けるためにも、ぜひ一度専門医の診察を受けることをお勧めします。

2006年8月16日水曜日

「アンチエイジング」について

ゲスト/緑の森皮フ科クリニック 森 尚隆 医師

アンチエイジングとは、どんなことか教えてください。

 日本語で「老化・加齢に対抗する」という意味です。「老化」のメカニズムが医学的に解明されつつある現在、それを積極的にコントロールすることで、いつまでも若々しく、元気でいようというのがアンチエイジングです。アンチエイジングの研究や取り組みが本格的になったのは最近のことで、新しい医学の分野として注目されています。

「しみ・しわ」など老化の代表的な症状も治療できるのでしょうか。

 現在、アンチエイジング治療として代表的なのが「フォトフェイシャルIPL」や「レーザー」などを使用する光療法です。「光による皮膚の老化は光が治す」といわれていますが、紫外線などによるしみやしわなどに対し、光治療はある程度の効果を手軽にもたらします。「フォトフェイシャルIPL」は、しみや血管拡張、毛穴、小じわなどを同時に改善する総合的な治療で、すぐにメイクが可能なことも特徴のひとつです。さらに光治療は、肌のたるみにも有効で、真皮層のみに光が作用し皮膚を引き締め、コラーゲンを増生させることで、たるみやしわを改善させるという新しい治療法も出てきています。
 また、RF(ラジオ波)と呼ばれる電波を使い、今まで治療が難しかったデリケートな目の周りのしわを、安全に改善するという治療法が登場し、注目されています。これは、吸引しながら電極で皮膚を挟み込み、RFを流すことでコラーゲンが熱収縮し、損傷治癒機転が働き、コラーゲンの生成が増幅されるという新しい技術によるものです。
 深くへこんでしまったしわには、ヒアルロン酸などを直接注入し、盛り上げてしわを目立たなくさせる方法もあります。治療後の腫れや痛みも少なく、効果の持続期間も以前より長くなっています。注入法は深く目立つしわに対して効果の高い治療法といえます。
 現在、アンチエイジング治療のほとんどは保険適用外なので、効果や費用などを担当医とよく話し合って、納得して行うことをお勧めします。

2006年8月9日水曜日

「腰痛」について

ゲスト/札幌一条クリニック 後藤康之 医師

腰痛について教えてください。

 痛みを訴える人の中で、肩凝りと並んで多いのが腰痛です。日本人の約6割が生涯のうちに一度は経験するといわれています。
 発症には、脊椎(せきつい)、筋肉、内臓、精神などが関与し、姿勢や疲労、運動、栄養の偏り、ストレスなどがきっかけになります。最近の傾向としては、20~30代で筋・筋膜性腰痛を訴える人が多く、立ち仕事や長時間の運転、急激なスポーツ、長時間のデスクワークや会議など、心因性、社会性要因の腰痛です。高齢者では、脊椎の老化変性による腰痛がほとんどです。

治療や予防について教えてください。

 大きく次の3つの腰痛に分けてみます。
「筋・筋膜性腰痛」は、腰(背)の部分の筋肉や筋膜に分布する神経の枝が、何らかの原因で刺激されて起こります。局所の血流不良によって凝りを生じ痛みになったり、腰部のねんざや重量物を持ち上げる時などに急激に発症することが多く、安静と薬物、理学療法によって大部分は軽快しますが、往々にして慢性化することがあり、局所への薬剤注入も有効です。
 「椎間板(ついかんばん)ヘルニア」は、椎間板間のクッションの役目を果たすものがはみ出し、隣接する神経を刺激し腰痛となります。急に腰から下肢にかけて激痛が生じ、身動きができなくなります。しばしば座骨神経痛を伴い、下肢の知覚異常や脱力感を訴えることも。急性期には神経ブロックによる治療がもっとも有効です。1カ月以上たっても痛みが続くときや再発を繰り返す場合は、手術も考える必要があります。 
 「脊(せき)柱管狭窄(きょうさく)症」はしばしば難治性で手術や神経ブロックなどでも十分な効果が得られないこともあります。薬物も鎮痛薬ではなくて抗うつ薬や漢方薬をうまく使う必要があります。
 腰痛を予防するには、良い姿勢を保ち、歩く時は6m先の床あたりを見るようにします。腰椎(ようつい)を支える腹筋や背筋を鍛え、肥満を解消し、できれば週に1、2度は水泳や散歩で心身をリラックスさせるといいでしょう。いわゆる生活習慣病にならないことも必要です。上手に付き合えば、腰痛は怖くありません。

2006年8月2日水曜日

「過活動膀胱(ぼうこう)と腹圧性尿失禁」について

ゲスト/芸術の森泌尿器科 斉藤誠一 医師

過活動膀胱について教えてください。

 過活動膀胱とは、男女を問わず、尿意が急に起こったり、抑えられなくなること(尿意切迫感)があり、さらに1日8回以上おしっこに行ったり(頻尿)、我慢することができない(切迫性尿失禁)などの症状がある場合を指します。膀胱炎や膀胱癌(がん)が原因の場合は除きます。
 高齢者人口の増加に伴い、頻尿、尿意切迫感や尿失禁の症状を持つ患者さんが増加し、大きな問題として世界的に注目されています。こうした情勢を受けて、2002年に「過活動膀胱」という新しい疾患の概念が提唱されました。患者数は極めて多いことが明らかですが、治療を受けている人はごくわずかです。「年齢のせいで仕方がない」「病院に行くのは恥ずかしい」「お産をすれば誰でもなる」「尿もれパッドやおしめをすればよい」といったあきらめ感や、羞恥(しゅうち)心などで治療を受けずにいます。おかしいと思ったら、恥ずかしがらずに、ぜひ専門医を受診してください。改善すれば、快適な生活を送ることができます。
 実際の診療では、病歴、診察、お腹から超音波の機械を当てる残尿測定、おしっこの検査が必要になります。排尿日誌(排尿の時間と排尿量)や水分摂取の記録も、診察する上で非常に役立ちます。治療としては、飲み物の飲み方や種類の変更、排尿を我慢するなどの行動療法だけで改善する場合もありますが、薬物による治療が中心になります。

腹圧性尿失禁について教えてください。

 女性の約3割が尿失禁を経験しているともいわれていますが、ほとんどがせきやくしゃみ、お腹に力を入れた際におしっこが漏れるという症状です。これは腹圧性尿失禁といって、骨盤の筋肉が緩むために起こります。複数回の出産経験がある、婦人科の手術を受けた、運動不足、肥満などが原因です。改善する方法としては、まず、骨盤底筋体操といって、肛門(こうもん)を閉じたり開いたりする運動をします。肛門、膣(ちつ)、尿道の筋肉は、どれか一つを鍛えると全部が鍛えられます。それでも改善しない場合、投薬による治療になります。ほかにペッサリーによる治療もありますが、どうしても治らない場合、最終的には手術が必要になることもあります。
 おしっこは、夜一度も起きずに、よほど水分を取らない限り4時間は我慢したいものです。最近は副作用の少ない良い薬が出ていますので、まずは専門医を受診し、相談することをお勧めします。

2006年7月26日水曜日

「ジェネリック医薬品」について

ゲスト/北海道大野病院附属駅前クリニック 古口 健一 医師

ジェネリック医薬品とはどういうものですか。

 新薬として開発された医薬品は20~25年の特許期間が定められており、その期間内に実際の治療に数多く使われることで、有効性や安全性が十分に確認されます。特許期間を過ぎると、他社が同じ薬品を製造・販売できるようになります。この場合、新薬に比べて試験項目が少ない分、研究費もかからないため、低廉な価格で提供することが可能となります。この後発医薬品のことをジェネリック医薬品と呼び、新薬の2~7割という低価格で販売されています。
 日本では最近になって、知名度が高まりましたが、欧米では、すでに50%以上がジェネリック医薬品になっています。日本での普及率は16%程度です。ジェネリック医薬品の普及は、個人の負担が軽くなるだけでなく、国の医療費の軽減にもつながるため、日本でも2002年から使用促進が国の方針として取り入れられました。

ジェネリック医薬品のメリット・デメリットを教えてください。

 第一のメリットとしては、何といっても価格が安いことです。長期にわたって服用が必要な薬であれば、医療費負担がぐっと軽減されます。第二に薬の味や大きさなどが改善され、先発の医薬品を上回る製品も見られます。
 デメリットとしては、品質のばらつき、薬物動態(薬物の吸収・分布・代謝・排せつ)の多少の差などが認められます。主成分は同じでも、そのほかの構成成分が違うため、それによるアレルギー症状を引き起こす可能性もあります。
 先発医薬品に比べ、流通に難がある、情報提供が新薬メーカーほど密ではないなどの問題点も挙げられます。また、例えば小児向けの新薬開発に長年取り組んでいるメーカーは、子どもが飲みやすいように工夫を重ねますが、後発医薬品では、そういった点に劣ることがあります。ごく少量の差で効果が違うデリケートな薬品では、適切な処方が難しい場合もあります。
 ジェネリック医薬品を希望するときは、メリット、デメリットについて正しく理解することが肝心です。遠慮せずに主治医に相談して、納得できる医薬品を選ぶことをお勧めします。

2006年7月19日水曜日

「VDT症候群」について

ゲスト/札幌エルプラザ阿部眼科 阿部 法夫 医師

VDT症候群について教えてください

 最近、目の疲労感を訴えて来院する患者さんの中に、目の症状以外のイライラ、不安、抑うつ状態など心の症状や、肩や首の痛みなどを訴える人が増えています。特に、一日中パソコンに向かう職業に就いている人に多くみられます。
 このようなパソコン業務に伴う眼精疲労、心の症状、頚肩腕(けいけんわん)障害の3つがそろうと、「VDT症候群(「テクノストレス眼症」ともいう)」と呼ばれます。VDTとは「Visual display terminal(視覚的表示端末)」の略称で、具体的にはテレビ、テレビゲーム、コンピューター、ワープロ、携帯電話などの表示画面を持つ装置のことを指します。最近はブラウン管から液晶、プラズマ画面に変化し、チラつかないなど性能は大幅に向上しましたが、依然として、作業画面、作業環境には改善すべき点も多いようです。

症状や予防法などを教えてください。

 VDT作業は労働現場から家庭、学校へと広がっています。コンピューターネット社会は長時間のVDT作業を伴なうため、目の疲れから始まって、徐々に心の疲れ、ストレス、肩こり、頭痛など全身症状へ移行し、疲労の回復が困難となった状態と考えられます。
 VDT症候群は、眼科的症状が主訴ですが、心療内科をはじめ多方面に及んでいるため単科での治療に苦慮し、他科受診を勧める場合もあります。眼愁訴を年齢的にみると、若年者ではコンタクトレンズに関連した目の乾き、ドライアイの訴えが圧倒的に多く、中高年では老視に伴った調節障害の訴えが多いようです。作業時間としては、4時間以上のVDT作業者に多いようです。特に7時間以上に及ぶようなソフト開発者などには、40歳以上なら軽い近用部分の入った眼鏡を勧める場合もあります。そのほか、遠視や混合乱視、眼位異常、不同視、緑内障など眼疾患のある方では、それなりの対策や治療を要します。
 結局のところ、眼科的な特効薬があるわけではなく、作業にあたる一人一人が、常に目や心の不調に注意を払い、作業時間・環境を整え、個々の症状に応じた予防策や対策を講じることが重要です。VDT作業のためのガイドラインが作成されていますので、参考にしてください。

2006年7月12日水曜日

「多毛症」について

ゲスト/アップルレディースクリニック 工藤正史 医師

多毛症について教えてください。

 多毛症とは、軟毛の硬毛化(軟らかい毛が硬くなること)のことをいうのであり、毛の本数自体が増えることではありません。女性や小児にみられる男性型の発毛状態をいいます。この男性型多毛症の90%は、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)と特発性多毛症が原因です。女性であっても、男性ホルモン(アンドロゲン)を分泌していますが、過剰分泌すると体毛が硬毛化し、本来軟らかくて目立たない部位の体毛が、毛深く見えるようになります。アンドロゲンとは、男性化作用を持つホルモンの総称で、思春期以降に精巣、卵巣、副腎から分泌されます。80%は卵巣から分泌され、通常は分泌量が少量であるため、脇毛、陰毛にのみ硬毛化が見られますが、過剰に分泌する場合は、ヒゲや髪、胸毛、背中、四肢の毛が硬毛化し、「多毛症」となります。

PCOSと多毛症の治療について教えてください。

 PCOSは、卵巣が多嚢胞化・腫大し、月経異常、無排卵を招き、不妊の原因となる症候群で、さまざまな症状の一つが多毛です。原因は黄体化ホルモン(排卵を指示するホルモン)が過剰分泌することによって、男性ホルモンの過剰分泌を引き起こすと考えられています。ただし、日本人で多毛を示すことはそれほど多くはありません。
 すでに生じてしまった硬毛の治療は、電気凝固、脱毛クリーム、脱色法、レーザー脱毛などの美容的脱毛療法しか方法はありません。新たな硬毛化を抑えるためには、薬剤、外科的療法によりますが、全身的多毛治療としては、低用量ピルと利尿薬のスピロノラクトンの薬剤療法をお勧めします。
 低用量ピルは、卵巣からの男性ホルモンの分泌を抑えます。スピロノラクトンは卵巣からの男性ホルモンの分泌を減少させ、多毛症を改善します。スピロノラクトンは、高血圧の治療薬ですが、正常な血圧に影響を及ぼすことは通常ありません。副作用として、不正出血や月経回数が多くなることがありますが、低用量ピルと併用することによって、コントロールが可能です。ただし、臨床的効果が認められるまで6カ月程度は必要です。

2006年7月5日水曜日

「咽喉(いんこう)頭酸逆流症(LPRD)」について

ゲスト/琴似駅前内科クリニック 高柳典弘 医師

咽喉頭酸逆流症について教えてください。

 胃酸が食道に逆流することによって起きる、さまざまな症状を総称して「胃食道逆流症(GERD)」と呼んでいます。主に、「胸やけ」「げっぷ」などの食道症状と、「狭心痛」「持続するせき」「咽喉頭異常感」などの食道外症状に大きく分けられます。LPRDは食道外症状の中でも、「のどがイガイガする」「詰まった感じがする」「飲み込みにくいように感じる」などの咽喉頭異常感や、「声が出しづらい」「声がかすれる」などの発声障害を主な症状とする耳鼻咽喉頭領域の疾患です。
胃酸の逆流によって耳鼻咽喉頭領域に症状を生じるメカニズムとして、咽喉頭へ逆流した胃酸による「直接障害説」と、食道への逆流が迷走神経を介した反射を起こすことによる「反射障害説」がありますが、まだはっきりと解明されていません。

LPRDの診断と治療について教えてください。

 診断は、胃酸の逆流を証明するために食道の入り口付近に電極を置いてpHを測定する「24時間pHモニタリング」という方法がありますが、実際の診察では、内視鏡検査による咽喉頭を含めた食道粘膜の状態を観察する方法が多く用いられます。内視鏡検査で異常が認められず、しかしLPRDの可能性が否定しきれない場合は、胃酸の分泌を強力に抑えるプロトンポンプインビター(PPI)を服用してもらい、症状が改善すれば治療的診断とすることがあります。
 治療に関しては、胃から食道への逆流を予防するために、油っこいもの、甘いものを控え、食後すぐに横にならないようにするなどの食生活の改善、肥満の解消、腹圧がかかるような前かがみの姿勢にならないなど、生活習慣の改善を行います。薬物療法としては、PPIによる内服薬が中心となりますが、咽喉頭は酸への感受性が一般に高く、食道症状を訴える患者さんより治療が難しい場合が多いです。しかし、ほとんどの場合生活改善と薬物療法でコントロールが可能です。症状がなかなか消失しない患者さんの場合は、ストレスなど心因的な要素が加わっている場合も多いので、抗不安薬や漢方薬を併用するのも、一つの方法です。

2006年6月28日水曜日

「舌側矯正」について

ゲスト/E-line矯正歯科 上野 拓郎 歯科医師

目立たない矯正治療について教えてください。

 歯の矯正を考えた場合、もっとも気になる点は「矯正器具が見える」ことだと思います。歯列矯正が当たり前のアメリカでは、気にする人は少ないのですが、国民性の違いからか、日本では器具が矯正治療を躊躇(ちゅうちょ)する大きな要因の一つになっています。特に、大人になってから矯正をはじめようとしている人や、思春期を迎えた子どもたちにとっては、矯正器具を受け入れられるかどうかが大きな問題となり、せっかくの歯並びを正しく美しくする機会を失うことにもなりかねません。
 また、球技や格闘技などのスポーツをしている人は、衝撃で矯正器具によって口の中を傷つけてしまうことがあります。さらに、管楽器を演奏する人にとっては、矯正器具が邪魔になりうまく演奏できないという問題があります。
 このような場合は、歯の裏側から矯正する舌側矯正をお勧めします。舌側矯正は、正面から見た限りでは、矯正器具が目に付かず、人に知られずに矯正することが可能です。どんなスポーツも問題なくでき、慣れれば管楽器の演奏も支障なくできます。


舌側矯正の詳細について教えてください。

 舌側矯正は、日本人によって開発されたもので、見た目を気にする日本では期待された治療法でした。しかし、歯の裏側に装置があるため、人によっては、しゃべりづらい、思い通りに発音できない、ブラッシングが難しいと感じる人もいます。また、治療期間が、通常の矯正に比べて長くなることがあるというのも問題でした。
 しかし、最近になって開発された、超小型のブラケットという矯正装置を使用することによって、これらの問題は解決しました。器具を装着したときの違和感が少なく、矯正期間も通常の場合と変わりません。ブラッシングも簡単です。
 矯正器具が気になって、治療に踏み切れない人は、ぜひ矯正専門医に相談してください。矯正治療は長期にわたるので、理想の治療を受けられるよう、納得いくまで話し合える専門医を見つけることが肝心です。

2006年6月21日水曜日

「動脈硬化とリンゴ型肥満」について

ゲスト/青木内科クリニック 青木伸 医師

動脈硬化症について教えてください。

 現在日本人の死因で多いのは脳梗塞(こうそく)、心筋梗塞などの動脈硬化症です。動脈硬化症になるハイリスク因子として、肥満が挙げられます。日本人は欧米人と違って極端な肥満の人は少ないですが、いわゆる小太り程度の人が多いようです。肥満には2種類あって、一つは女性に多く見られる皮下脂肪が増える下半身肥満で、洋なし型肥満と呼ばれます。このタイプの肥満は、病気とあまり関係ありません。もう一つが男性に多くみられる、内臓に脂肪が増えるリンゴ型肥満です。リンゴ型肥満は病気の発症と深い関係があります。このタイプの肥満かどうかは、おへその高さでウエスト周囲を測れば分かります。男性は85cm以上、女性は90cm以上あれば、リンゴ型肥満の疑いがあります。
 リンゴ型肥満の人が、同時に高血糖、高血圧、高脂血症を重複して伴っていると、健康な人に比べて動脈硬化性疾患の発症リスクが約30倍になるという報告もあります。この病状は代謝症候群(メタボリック症候群)として、医学界でも注目されています。

動脈硬化症の予防方法を教えてください。

 まず心掛けるのが、肥満の解消です。特にリンゴ型肥満の方はやせることが重要です。幸いリンゴ型肥満は、洋なし型肥満に比べ、食事と運動によって、やせる効果が出やすいです。食事は野菜、魚を中心に、薄味にします。ひと駅分歩くなど、日常的に体を動かすように努めることも大切です。毎日体重を量り、体重の動きをグラフで表記して貼り出し、やせる指標とすると、目標ができて効果的です。合併しやすい高血糖、高血圧、高脂血症も、やせることによって改善する症状なので、努力のしがいがあります。これらの病気には薬物治療が必要なこともありますので、まずは専門医に相談しましょう。コントロールがうまくいっているかどうかは、基準値があるので参考にするとよいでしょう。
 過去1~2カ月間の平均血糖値を表すHbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)の正常値は5.8%以下ですが、糖尿病がある場合は、HbA1cが6.5%以下、血圧は130/80mmHg以下、総コレステロールは200mg/dl以下、中性脂肪は150mg/dl以下にしておくと動脈硬化の予防になります。

2006年6月14日水曜日

「もの忘れと認知症」について

ゲスト/つちだ消化器循環器内科 土田 敏之 医師

「もの忘れ」について教えてください。

 物や人の名前、場所を忘れることを「もの忘れ」といいます。何をしようとしていたか、どこへ行こうとしていたか、物や人の名前などが、どうしても思い出せない。人間誰しも、こういった場面は経験したことがあるのではないでしょうか。もの忘れはどの人でも、ある程度はするものです。
 しかし、頻発したり、あまりに重要なことを忘れてしまうと、自分自身でもヒヤリとすることがあります。このような症状があれば、いくつかの診断が考えられます。
(1)加齢
(2)脳梗塞(こうそく)・脳出血・くも膜下出血後
(3)慢性硬膜下血腫
(4)水頭症
(5)転移を含めた脳腫瘍
(6)うつ病
(7)甲状腺機能低下症やアルコール中毒
(8)認知症(痴呆症)です。
 このうち、年齢に伴って記憶力が低下している場合は、一時的に物事を思い出せなくても、後になって思い出す場合がほとんどです。忘れてしまったという自覚もあります。日常生活に支障が出るほどのものではありません。脳の自然な老化現象であり、「ど忘れ」とも言います。

認知症とは異なるのですね。

 認知症によるもの忘れは、最近の出来事をすっかり忘れているにもかかわらず、本人にはその自覚がありません。認知症は、年寄りの病気と思われがちですが、高齢者以外にも起こります。今、映画や書籍などで話題になっている若年認知症は、18歳から64歳までの幅広い年齢層に発症します。日本では全国に約3万人の若年認知症患者がいるといわれています。働き盛りでの発症は、本人にとっても、家族にとっても、精神的、身体的、経済的負担になります。
 人の名前や物の置き場所、家や道順を忘れるなど、 もの忘れが突然ひどくなったり、進行するようなら、早めに受診してください。うつ病と混同されたり、加齢や多忙、環境のせいなどと放置していると症状が進行します。「おかしいな」と感じたら、本人はもちろん、周囲の人も受診を勧めてください。治療が早ければ、完治は無理でも、進行を遅らせることはできます。初期であるほど有効です。

2006年6月7日水曜日

「血尿」について

ゲスト/元町泌尿器科 西村 昌宏 医師

血尿について教えてください。

 血尿が出ても、痛みや発熱が伴わない場合、そのままにしている人も多いのではないでしょうか。血尿の原因として、膀胱(ぼうこう)炎や尿路結石などが考えられますが、これらは排尿時の痛みや、背中、脇腹に激痛を伴うので、容易に発見されます。急性膀胱炎は大腸菌などの細菌による炎症によって発症します。抗生物質などで治療すれば1週間ほどで治癒します。尿路結石は、尿中のカルシウム、マグネシウム、尿酸などが腎臓で結石となり、尿管や膀胱などに詰まって激しい痛みを起こす病気です。尿が濁ったり、血尿になったりします。利尿剤などで結石を排出させますが、結石が大きいなどで自然排出が困難な場合は、手術が必要になります。体の外から衝撃波を当てて砕石する「ESWL(体外衝撃波結石砕石術)」や、細い内視鏡を尿道、膀胱を通して尿管内に入れ、結石を直接見てレーザー照射で砕く「TUL(経尿道的尿管結石砕石術)」が一般的です。
しかし、膀胱炎や尿管結石のような自覚症状なしに、突然、肉眼でも明らかな真っ赤な尿が出た場合は、膀胱がんの疑いがあります。これは無症候性血尿と呼ばれるもので、膀胱がん、腎がん、前立腺がんなどの泌尿器系がんによって起こる場合もあります。「疲れているから」などと自分で判断せず、翌日血尿が治まったとしても、必ず泌尿器科を受診してください。

血尿が出た場合、どのような検査をするのですか。

 血尿が出た場合、特に中高年は泌尿器科全般にわたる精密検査が必要です。主な検査としては、尿の細胞検査、採血、超音波検査、排せつ性尿路X線撮影、CTスキャン、膀胱鏡検査などがあります。いずれも外来で行うことができます。膀胱がんは、早期発見の場合は内視鏡による切除手術で取り除くことができます。しかし腫瘍(しゅよう)の度合いによっては、膀胱を摘出して、小腸で人工的な膀胱を作らなければならない場合もあります。普段から、自分の尿の色をチェックすることはもちろん、血尿という体からのサインを見逃さず、健康診断などで尿に潜血反応があった場合、必ず専門医の診断を受けてください。

2006年5月31日水曜日

「紫外線防止」について

ゲスト/たけだ皮膚科スキンケアクリニック 武田 修 医師

紫外線について教えてください。

 紫外線には、UV-A波と、UV-B波、UV-C波などがありますが、B波の一部とC波はオゾン層に吸収されて地表には到達しません。紫外線が肌に与える影響は大きく、日焼け後のシミ、ソバカス、しわなどの皮膚の老化、そしてわずかながらも皮膚がんになる可能性さえあります。また、色白の人ほど紫外線には弱い傾向があります。これは皮膚のメラニン生成量が少ないことが関係しています。皮膚の色素が少ないため、紫外線に対する防御能力が弱いのです。女性の場合、20歳までに浴びる紫外線は、人生の半分以上といわれており、化粧をするようになると、それ以降に浴びる紫外線量はそう多くはありません。しかし、生まれた時からその間に蓄積された紫外線の影響が後年になって、シミやシワなどの光老化(紫外線による皮膚の老化現象)となって現れます。

紫外線の有効な防ぎ方を教えてください。

 子どものうちから、外に出る時は日焼け止めクリームを塗ることが望ましいでしょう。最近は皮膚に優しい子ども向けの日焼け止めクリームも多く市販されています。
 日焼け止め商品の効果の表示には、SPFとPAの2種類があります。SPFは、UV-B波を防ぐ効果を時間の長さで表す数値で、数値が大きいほど効果が高くなります。UV-A波を防ぐ指数がPAで、3段階あり“+”が多い方が効果大です。通常の生活であれば、SPF20~30程度PA++で十分です。ただし、汗をかいたり、時間がたつと効果が弱くなるので、朝に塗っても、さらに昼と夕方前くらいに塗り足すといいでしょう。
 また、日焼け止めには「紫外線吸収剤」「紫外線散乱剤」の2種類があります。「紫外線吸収剤」は、紫外線を吸収し熱などに変化させて放出し、肌を守りますが、肌が敏感な人は、かぶれることがあります。「紫外線散乱剤」は、紫外線を表面ではね返します。塗ると白浮きするのですが、肌の負担や刺激が少なく、「ノンケミカルタイプ」といわれています。肌の状態や環境などによって選ぶと良いでしょう。

2006年5月24日水曜日

「歯科検診後の治療」について

ゲスト/庄内歯科医院 庄内 淳能 歯科医師

春の歯科検診後の対応を教えてください。

 毎年春には、幼稚園、保育園、小学校、中学校、高校と、主な教育機関で歯科検診が行われます。検診の結果、何らかの異常がある、またはあるのではないかと疑われた場合、歯の健康診断の結果を知らせる用紙が渡されます。歯科検診には、大きな意義があります。毎年春に検診を行うことによって、虫歯や歯肉炎、歯列異常などの早期発見・早期治療が可能となるのです。治療が必要である旨の指示があったら、必ず歯科医を受診してください。
 ただし、検診用の椅子や照明、一人当たりにかけられる時間などを考慮すると、歯科医院で行う検診ほどに厳密ではありません。あくまで、目安として考え、異常が無くても、乳歯であれば3カ月に1度、永久歯なら1年に1度はかかりつけの歯科医に診てもらうようにしましょう。

子どもの歯について、注意点を教えてください。

 検診では、主に虫歯の有無、歯肉の状態、歯並び、生え変わりの状態について観察します。虫歯はもちろん治療を受けてください。特に乳歯や生えたばかりの永久歯は虫歯になりやすいので、早めに受診しましょう。どの歯が対象かわからない場合は、問い合わせると教えてくれます。歯肉の異常については、ブラッシングが原因であることが多いです。治療とともに正しいブラッシング指導を受け、低学年のうちは親が仕上げ磨き、高学年になっても磨けているかのチェックをしましょう。
 歯並びについては、かかりつけの歯科医から矯正歯科を紹介してもらいます。日本人の顎(あご)は、最近細くなる傾向にあり、歯並びの悪い人が増えています。歯並びが悪いと虫歯や歯肉炎になる確率も高くなり、また、学習や運動の能力にも影響することがあります。
 乳歯と永久歯が入り混じる混合歯列期は、正しい噛(か)み合わせに咬合(こうごう)誘導することが可能です。永久歯になってからの矯正治療に比べ、患者本人の負担も軽く、期間も短く治療することができます。

2006年5月17日水曜日

「糖尿病」について

ゲスト/やまうち内科クリニック 山内 雅夫 医師

糖尿病には2つのタイプがあるそうですね。

 飽食の時代といえる現在、日本では糖尿病患者が急増し、国民の1割以上が糖尿病もしくは糖尿病予備軍といわれています。
 糖尿病は高血糖が続く代謝疾患で、1型糖尿病と2型糖尿病に分類されます。すい臓のβ細胞から血糖を下げるインスリンというホルモンが分泌されていますが、1型糖尿病はこのすい臓β細胞が破壊されてインスリンの絶対的欠乏が生じる重篤なもので、急激な体重の減少が見られます。インスリンを補う必要がありますが、インスリンには飲み薬がなく、注射で投与しなければなりません。
 2型糖尿病は、インスリン分泌低下とインスリン抵抗性の増大によるもので、過食、肥満、運動不足などの生活習慣と遺伝的要因が関係しています。糖尿病の90%以上がこのタイプで、食事、運動療法が基本的な治療法となりますが、それだけでは不十分な場合は経口の血糖降下薬も使われます。経口血糖降下剤(内服薬)は、多くの新しい薬剤が登場し、治療薬の選択肢が広がりました。作用のしくみが異なる複数の薬を使用することも行われます。

糖尿病の症状について教えてください。

 尿量の増加とのどの乾き、多飲がまず挙げられますが、抵抗力が低下し感染症にかかりやすくなることもあります。糖尿病が進行すると体重は減少し、さらに重篤になると糖尿病性昏睡(こんすい)という意識障害が出現し、死に至ることもあります。
 しかし、より注意すべきことは、動脈硬化性疾患(狭心症、心筋梗塞=こうそく=、脳血管障害など)や糖尿病性細小血管合併症(網膜症、腎症、神経障害)などの合併症です。動脈硬化性疾患は、血圧、高脂血症、喫煙、肥満などが加わると、きわめて高率に発症します。糖尿病性網膜症は、中途失明の原因の第1位、糖尿病性腎症も人工透析が必要となる原因のなかで最も多い疾患です。糖尿病性神経障害は、手足のしびれ感、神経痛、性機能低下などさまざまな症状があり、頻度の高い合併症です。動脈硬化性疾患や糖尿病性細小血管合併症は、死に結びつくことも多く、これらの予防が糖尿病治療の最大の目的とされています。

2006年5月10日水曜日

「飛蚊(ひぶん)症」について

ゲスト/ふじた眼科クリニック 藤田 南都也 医師

飛蚊症について教えてください。

 白い壁や青空を見ていると、視界の中で、点や糸状、輪のような黒い物体が浮遊することがあります。暗い場所では見えず、視線を動かすとついてきます。これは飛蚊症といって、眼球内の粘性の透明な液体が詰まっている硝子体に、何らかの原因で濁りが生じ、明るい所を見たときに濁りの影が網膜に映るために起こります。
 濁りの原因には、生理的な原因によるものと病的な原因によるものがあります。生理的な飛蚊症については、胎生期に消失するはずの組織が硝子体内に残ってしまったために起こるものなどで、病気ではありません。しかし、飛蚊症が生理的なものか、病的なものかを本人が自覚症状で区別することは困難です。

飛蚊症の原因となる疾患について教えてください。

 飛蚊症の原因として最も多いのは、硝子体剥離(はくり)です。網膜に密着しているはずの硝子体がはがれ、接着部分が硝子体混濁となり、その影が飛蚊症として現れます。硝子体がはがれる原因は、加齢や強度の近視によって中に詰まっている物質が変性を起こすことによるものです。この場合は、特に治療する必要はありません。
 一方、網膜が硝子体によって引っ張られ、穴が生じる網膜裂孔(れっこう)も、飛蚊症の原因になります。放っておくと網膜剥離に進行する恐れがあります。網膜剥離は、重大な視力障害の原因となりますので、早急な治療が必要です。網膜裂孔はレーザーによる治療、網膜剥離は手術が一般的です。
 また、糖尿病や高血圧が原因で出血し、硝子体内に血液が入り込んで飛蚊症と感じることもあります。この場合は、目の治療と同時に原因となる疾患の改善が重要です。ほかに、ブドウ膜炎が原因で目に炎症が起こり、硝子体混濁が起こることもあります。
 いずれにしても、飛蚊症として重要にとらえなかったものが、後に大きな疾患の初期症状であったという場合が多いので、一度は眼科医で詳細に検査することをお勧めします。検査には、一定時間物が見づらくなる散瞳薬を点眼しますので、車を運転しての受診は避けた方がいいでしょう。

2006年4月26日水曜日

「妊娠中の体重管理」について

ゲスト/札幌東豊病院 菅原正樹 医師

妊娠中の体重管理について教えてください。

 妊娠中の体重管理は、より安全な出産のために重要です。妊娠中にどの程度の体重増加が適正かは、妊娠前の体重によって異なります。
 妊娠前のBMI(ボディー・マス・インデックスの略。「体重(kg)÷身長(m)の2乗」で算出される体格指数値)で、18.5以下の人は9~12kg、25以上の人が5~6kg、その間の人は7~12kg程度の体重増加が許容範囲です。それ以上の体重増加は、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)や妊娠糖尿病などのリスクを高め、産道に脂肪がついて難産や帝王切開の確率も高くなります。また、分娩(ぶんべん)時の出血量が増加することも多いです。
 逆に、最近のダイエット志向を反映して、妊娠中の体重増加が極端に少ない妊婦さんも増えてきました。妊娠中に必要な栄養をとらないと、妊娠週数に比例して体重の少ない赤ちゃんが生まれる確率が高くなります。体重の増加に気を付けると同時に、極端な食事制限は慎むべきです。

体重管理も含め、妊娠中はどのような点に気を付ければよいでしょうか。

 基本的には規則正しい生活を心掛けることが大切です。妊娠中だけではなく、出産後は赤ちゃんと生活することになりますから、三度の食事時間や就寝時間などが今まで不規則だった人は、子どもにとってより良い環境を作るためにも、生活習慣を見直す必要があるでしょう。
 お腹が大きくなると、動くのが億劫(おっくう)になりますが、特に安静の必要がない場合は積極的に動きましょう。水泳やマタニティービクスなどが流行していますが、特別なことをしなくても散歩やなるべく歩いて移動するなど、日常生活の中で動くように心掛けるといいでしょう。妊娠期間は9カ月の長丁場です。「こうしなくてはいけない」「これをしてはいけいない」と考えるより、無理せずできることから始めましょう。
 体重や栄養の管理については、不安があれば、かかりつけの産院の医師や栄養士に相談し、個々人の状況に応じたアドバイスを受けることをお勧めします。

2006年4月19日水曜日

「慢性の乾性咳嗽(がいそう)」について

ゲスト/大道内科呼吸器科クリニック 大道光秀医師

長引く咳(せき)について教えてください。

 咳が8週間以上続く場合を慢性咳嗽といい、原因として、気管支喘息(ぜんそく)、咳喘息、アトピー咳嗽、マイコプラズマ感染、クラミジア感染などが考えられます。
 咳には、大きく分けて、痰(たん)を伴う湿った咳の「湿性咳嗽」と、乾いた咳の「乾性咳嗽」の2種類があります。原因疾患は、湿性咳嗽では副鼻腔(びくう)気管支症候群、慢性気管支炎、気管支拡張症など、乾性咳嗽の代表的なものが、気管支喘息、咳喘息、アトピー咳嗽などです。最近は、乾性咳嗽によって受診する人が増えています。

乾性咳嗽について教えてください。

 ゼイゼイ、ヒューヒューなどの喘鳴(ぜんめい)および呼吸困難を伴い、肺機能で明らかに異常がみられる場合は気管支喘息の診断が容易にできます。しかし咳喘息やアトピー咳嗽は肺機能も正常です。
 咳喘息は、喘鳴を伴わない咳です。多くの場合、風邪をひいた後、咳だけがいつまでも続くといった状態で発症します。夜間や明け方に咳き込むことが多く、患者さんにとっては体力的にもつらい病気です。急に冷たい外気にあたったり、タバコの煙などによっても咳が誘発されます。咳喘息は、気管支喘息と同様に、気管・気管支が収縮するときに咳が出る病気ですから、気管支拡張剤で咳が改善します。咳が続くというだけで、特有の所見がないため、なかなか診断が絞りきれませんが、気管支拡張剤が有効であればアトピー咳嗽、心因性咳嗽などと見分けることができます。気管支喘息に移行することもあるので、適切な治療を受けましょう。
 アトピー咳嗽もゼイゼイなどの呼吸困難を伴わず、ハウスダストや花粉などアレルゲンを吸入することによって、アレルギー性の咳が続きます。気管支拡張剤が効かず、坑アレルギー剤がやや有効です。アレルゲンを突き止め、好発する季節には、抗アレルギー剤を内服し、それでも効果不十分な場合は吸入ステロイド剤を吸入します。
 咳喘息、アトピー咳嗽以外の乾性咳嗽では、ほかに、逆流性食道炎に伴う咳と心因性咳嗽があります。それぞれ、逆流性食道炎の薬、精神安定剤が有効です。夜間眠れないなど日常生活に支障をきたしたら、我慢せずに呼吸器の専門医を受診することをお勧めします。

2006年4月12日水曜日

「新生活によって起こるストレス性疾患」について

ゲスト/円山リラクリニック 森田裕子 医師

春になると新生活によるストレス性疾患が増えると聞きますが。

 春は変化の季節です。若者は、進入学、就職などで、生活環境ががらりと変わります。サラリーマンも、転勤、配置転換などで職場や住居が変化する人も多いでしょう。また、主婦にとっても配偶者の転勤に伴う引っ越しや単身赴任、進学、就職による子どもたちの独立など、生活の変化が起こりやすい時期です。
新しい環境での生活は、肉体的にも精神的にも緊張を強いられます。当初は緊張が続き、また新しい環境に慣れることが精いっぱいの状態で毎日を過ごします。体調の変化は、このような状態が1カ月程度続き、5月の連休が終わったころに現われます。症状はさまざまですが、多いのは胃腸障害、睡眠障害、無気力感、だるさなどです。肩こりや腰痛、頭痛が現れる人もいます。これらは、いわゆる「五月病」と呼ばれるもので、環境の変化がストレスとなって、心や体の重荷になっている状態です。放っておくと、胃潰瘍(かいよう)になったり、出社や登校ができなくなって引きこもってしまったり、うつ状態まで進行してしまうこともあります。

具体的な治療法と、注意点について教えてください。

 胃腸障害や睡眠障害にはその対処薬、体の痛みについては神経ブロックやハリ治療などの麻酔科的治療、うつ状態であれば抗うつ剤と、症状によって必要な治療を行い改善を試みます。あらゆる疾患と同様に、適切な治療が早ければ早いほど短時間で回復します。
 環境の変化にストレスやプレッシャーを感じるのは、当然のことです。趣味や気分転換の方法を見つけて、上手にリラックスし、ストレスを解消するようにしましょう。連休や週末を不規則に過ごすと、なかなか元通りの生活に戻れなくなります。食事や睡眠などの生活リズムを崩さないよう、休み中も規則正しく過ごすよう心掛けてください。
 ストレス性疾患は、誰もがなる可能性があります。周囲の人も「怠けている」などと、しかったり、焦らせたりせず、心身の疲れを理解し、ゆったりと過ごせる環境を作ってあげてください。

2006年4月5日水曜日

「更年期障害の薬物療法」について

ゲスト/はしもとクリニック 橋本 昌樹 医師

更年期障害の薬物療法について教えてください。

 主にホルモン補充療法と漢方療法があります。ホルモン補充療法(HRT)は、飲み薬と張り薬を中心に、エストロゲンというホルモンを補っていく治療法です。
 ほてり、のぼせ、動悸(どうき)、冷え、不眠、耳鳴り、肩こり、イライラといった症状が現れたら、まず、婦人科の専門医を受診しましょう。更年期障害であれば、診察と問診でおおよその見当がつきます。治療を始めると、早ければ1、2週間から1カ月ほどで、症状が劇的に改善されることも少なくありません。エストロゲンには骨の形成を促す作用があり、特に閉経後は急速に骨量が減りますので、ホルモン補充療法をすることにより、骨粗しょう症の予防にも大きな効果が期待できます。
 一方で、ホルモン治療に対しては、がんの発症を心配する人も少なくありません。米国の大規模臨床試験でホルモン補充療法を長期間(5~10年以上)続けると、乳がんや心臓病のリスクが高くなるという報告があります。6カ月から1年に一度の血液検査、子宮がん検査(頚部=けいぶ=、体部)、乳がん検査などが必要です。ホルモン補充療法には更年期のつらい症状を改善したり、骨粗しょう症の予防、さらに皮膚の若さを保つなどの効果もあります。薬の種類や組み合わせ、使用する期間などを考慮することにより副作用の少ない治療が可能です。

ホルモン治療を避けたい人は、どうしたら良いでしょうか。

 漢方治療は、ホルモン治療を希望しない方や、加齢の流れの中でつらい症状を一つずつゆっくり取り除きながらホルモンの減少に体を慣らしていきたいという方に向いている治療法です。漢方薬は幾つかの生薬を組み合わせて用いられ、体調や体質に合わせて様々な種類があります。例えば当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、加味逍遙散(かみしょうようさん)にはセリ科のトウキの根が入っていて、のぼせや発汗、冷えなどを改善する作用があります。病院、クリニックで処方する漢方薬はエキス剤(製薬会社が生薬をせんじて乾燥)が主で、健康保険が適用されています。

2006年3月22日水曜日

「ピロリ菌」について

ゲスト/篠路病院 三浦 進 医師

ピロリ菌について教えてください。

 ピロリ菌は、1980年代に発見された比較的新しい細菌です。胃の粘膜を好んですみつき、胃酸から逃れるために粘液の下にもぐり込んでいます。日本人の場合、40歳未満でピロリ菌に感染している人は2~4割と少ないのですが、40歳以上になると 8割の人がピロリ菌に感染していると推計されています。これは戦後の衛生状態が悪かったことが原因として考えられています。
 国別では、北米・ヨーロッパに比べ、東南アジア・アフリカに多いのも衛生状態の地域的な違いによるもののようです。ピロリ菌陽性で萎縮(いしゅく)性胃炎のある人では、胃がんになる 確率が健康な人の約4倍といわれています。世界保健機構 (WHO)でも、ピロリ菌を発がん因子と規定しています。5年前にそのメカニズムが解明されましたが、ピロリ菌と胃がんの因果関係の高さは、タバコと肺がん、C型肝炎ウイルスと肝臓がんの関係と同程度のリスクになっています。さらにピロリ菌は悪性リンパ腫や狭心症・心筋梗塞(こうそく)の発症にも関与していると指摘されています。アメリカでは、潰瘍(かいよう)既往症の無い人でもピロリ菌に感染している人には、健康保険で除菌療法が行われていますが、日本でも胃・十二指腸潰瘍のある人の除菌治療には健康保険が適用されるようになりました。

ピロリ菌の有無はどのようにして分かりますか。

 ピロリ菌がいるかどうかは、検査で容易に分かります。検査は食後でもかまいません。検査薬を飲み、その前後に「息」を試験管に吹き込むだけの簡単な検査で、結果は4~5日後に判明します。ピロリ菌がいることが分かった人は、除菌療法をします。治療は薬を1週間、服用します。さらに1カ月後に確実に除菌されたかどうかの判定検査を行います。約8~9割の人は長年住み着いたピロリ菌から解放されると報告されています。それにより、潰瘍再発の危険性が2~8割減少するだけでなく、前述のように胃がんなどの病気にもなりにくくなります。ピロリ菌に感染している可能性がある人は、早めに検査を受けることをお勧めします。

2006年3月15日水曜日

「社会不安障害」について

ゲスト/メンタルケアさっぽろ西口クリニック 鈴木将覚 医師

社会不安障害について教えてください。

 人前に出ると極度に緊張してしまい、顔が赤くなったり、声や手足が震えたりして、思うように話ができなくなる症状で、一般に赤面症、あがり症などと呼ばれることもあります。程度の差はありますが、日本人には比較的多く、推定で人口の約1割程度の人が発症しているといわれています。もともとその人が持っている気質に、ストレスなど何らかのきっかけがあって発症する場合も少なくありません。きっかけはさまざまで、人前で本人にとっては大きな失敗を犯し、それ以降、人前に出ることが苦痛になるような場合が多いようです。
 例えば、会社の朝礼でスピーチをしなくてはならなくなった時に、上手にしゃべることができず、それがきっかけで、朝礼がある日は遅刻をしたり、休んだりということを繰り返します。子どもの患者さんも多く、学校での発表などが苦痛で、症状が重くなると学校へ行くことができなくなったりします。また、初対面の人に対して極端に緊張したり、人前で字が書けなくなるなど、特定の状況で症状が出る場合もあります。重くなると、本人の苦痛も大きく、社会生活にも支障を来しますから、我慢せず、早い段階で受診することをお勧めします。

治療方法や注意点について教えてください。

 「あがり症」は大なり小なり誰にでも見られる症状であるため、ともすれば「慣れれば大丈夫」などと、無理強いするような場面が見られますが、これは本人にとって、苦痛が増すばかりでプラスに働くとは限りません。診察を受けて、必要であれば抗不安薬、抗鬱(うつ)剤などを服用することも、症状の軽減に役立ちます。日常生活では、「緊張して当たり前」「本人が気にするほど周りの人は気にしていない」ことを自覚することが大切です。また、家族など周囲の人が「気にするな」と励ましたりせず、「つらいよね」と共感することで、本人の気持ちが和らぎます。社会不安障害は、神経症圏の中では改善しやすい病気です。「自分も…」と思い当たったら、早めに専門医を訪ねてください。

2006年3月8日水曜日

「人工透析」について

ゲスト/桑園中央病院 松井 傑 院長

人工透析について教えてください。

 腎臓には、体内の老廃物や余分な水分を除去し、血圧の調整や赤血球の生産を促すなどの働きがあります。慢性糸球体腎炎や糖尿病性腎症などの疾患によって、腎臓が十分に機能しなくなると人工透析による治療が必要となります。人工透析は、血液を体外に取り出して透析器(ダイアライザー)を通すことによって、血液中の老廃物や不要な水分を取り除き、血液を浄化して再び体内に戻す治療のことです。最近の糖尿病患者の増加により、人工透析が必要な患者が増えています。それに伴い人工透析を行う病院も増えてきました。
人工透析は週に3日、1回4時間程度かけて行われます。一般の人は透析に、「通常の社会生活が難しくなる」、「透析が始まったら、病気は徐々に進行する」などのマイナスイメージを持っているのではないかと思います。しかし、最近では、働く人が治療を受けやすいよう午後7時からの夜間透析の実施。旅行先での透析治療をバックアップするなど、透析患者の生活の質を落とさないよう努力する病院も少なくありません。透析治療については、経験の多い日本透析医学会認定医へ相談することも一つの方法です。

オンラインHDFについて教えてください。

 従来の透析法には、十分に除去できないβ(ベータ)2MGを代表とする物質の蓄積によって、さまざまな透析の合併症を引き起こすことがあります。オンラインHDF(血液ろ過透析)は、これらの物質をより効率良く除去する治療方法です。フィルターを使い透析液を清浄化して置換液として使用します。骨・関節痛、食欲不振、腎性貧血などに改善効果があるという報告を得ています。この治療法は保健適用になります。くわしくは、かかりつけの医師にご相談ください。

2006年3月1日水曜日

「男性型脱毛症」について

ゲスト/緑の森皮膚科クリニック 森 尚隆 医師

男性型脱毛症について教えてください

 男性型脱毛症は、主に前頭部と頭頂部が徐々に薄くなっていくもので、若い人では20歳過ぎからみられます。男性ホルモンが5α(アルファ)リダクターゼという酵素によって脱毛を引き起こす物質(DHT)に変化することや遺伝によって起こると考えられています。 5αリダクターゼの影響が働きにくい後頭部、側頭部は脱毛が起こりにくくなります。

治療法、予防法はありますか? 

 副作用が少なく有効性の高い飲む育毛剤が最近発売されました。これは、5αリダクターゼの働きを抑え、その結果DHTの生成を防ぐことによって、脱毛の進行を遅延させるといわれています。本来は、前立腺肥大や前立腺がんの治療薬として開発された医薬品ですが、発毛効果があることが分かり、育毛剤としての用途が広がりました。薄毛が気になり始めたときに対処するのが有効です。効果の判定には6カ月間飲み続ける必要があります。この薬を服用するには、医師の診断と処方せんが必要で、保険の対象にはなりませんから注意が必要です。
 日常生活の中での注意点としては、過労やストレスをできるだけ避け、睡眠や栄養を十分に取るようにします。喫煙は控えた方が良いでしょう。洗髪はできるだけ毎日行い、特にフケや頭皮の皮脂が気になるときは、念入りに洗いましょう。適切なシャンプーを選び、頭皮を十分マッサージして血行促進することが大事です。ただし、シャンプ-の使い過ぎや地肌をこすり過ぎることは逆効果です。すすぎは十分に行ってください。
 頭皮や髪の毛を健康にする栄養素は、タンパク質、ビタミンE、そしてシスチン(アミノ酸の一種)という成分です。タンパク質やシスチンは、髪の毛の原料となり、ビタミンEは頭皮の血行を良くします。また、海藻類に含まれるヨードという成分も、髪の毛を健康に保ち、抜け毛を予防するといわれています。これらの栄養素を含む食品を取ると効果が期待できます。また、ストレスは抜け毛の大きな原因となります。ビタミンB群やCを十分にとり、ストレスに対する抵抗力を付け、抜け毛を防ぐようにしましょう。

2006年2月22日水曜日

「矯正治療の開始適正時期」について

ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治正光 歯科医師

矯正治療は治療の時期が重要だと聞きますが。

 矯正治療の技術は躍進的に進歩しており、歯やその周りの歯周組織が健康であれば、年齢にかかわりなく、ほとんどの症例に対して治療可能であるといえます。骨格的偏位(ずれ)が前後左右的に大きい場合には、外科矯正やインプラント矯正を併用することになりますが、きれいな咬(か)み合わせになることができます。

では、適正時期とはなんでしょうか。

 例えば、上顎(じょうがく)前突の場合、一般的に上顎(あご)が出ているように思われがちですが、下顎が小さいことが原因であることが多いのです。このまま放置して成人(顎の成長の望めない年齢)になると、抜歯や外科矯正になる可能性が高くなるのです。この場合の最適正時期は9~11歳です。バイオネーターなどの機能的顎矯正装置と呼ばれるものを夜間に寝るときだけ使用してもらうことで、下顎骨の前方成長を促し、バランスの取れた横顔にすることができます。横にも拡大することができるので、抜歯をしなくてはいけない確率も下げることになります。
 すなわち、適正な時期に矯正治療を開始することで、骨格のコントロールを行い、上下顎をバランスの良い状態にして、抜歯率や外科矯正率を下げることができるのです。決して歯を抜く治療がいけない治療といっているのではなく、適正な時期に始めることにより選択肢が広がると考えてください。
 また、下顎(かがく)前突の場合、一般的に下顎がより前方に成長するのを抑制したり、小さめの上顎が前方に成長するのを促進したりします。この場合、最適正時期は6~9歳です。乳歯列の時期に夜寝るときだけの装置で治療することもできます。
 ご自分のお子さんが気になる場合は、いずれも、前歯だけを見ていたのでは判断が難しいので、左右的なずれも含めて、小学校入学前後に一度、専門医にご相談されることお勧めします。

2006年2月15日水曜日

「加齢黄斑(おうはん)変性の光線力学療法」について

ゲスト/大橋眼科 大橋勉 医師

加齢黄斑変性とはどんな病気ですか。

 人間の眼(め)は、角膜、水晶体、硝子体を通って、網膜の上に像を写して物を見ます。カメラに例えると、網膜はフィルムにあたります。その中心部は黄斑部と呼ばれ、物を見るために最も重要な部分です。この黄斑部に、異常な老化現象が起こり、黄斑が変化して視力が低下する病気が、加齢黄斑変性です。視野の中央がよく見えない、暗く見える、ゆがむといった症状が現れ、時には失明に至る場合もあります。原因としては、健康な状態では存在しない新しい異常血管が、黄斑部の脈絡膜(網膜より外側に位置し、血管が豊富な膜)から発生し、網膜側に伸びてきます。この新しい血管は新生血管と呼ばれ、血管壁が大変もろいため、血液や血液成分が黄斑組織内に滲出(しんしゅつ)し、黄斑機能を妨げます。新生血管の成長による出血や滲出物によって、視力の低下や、物がゆがんで見えるなどの症状が出現します。治療が遅くなると、高度の視力障害が残ってしまいます。

治療法について教えてください。

 最近では、治療の一つして、光線力学療法(PDT)があります。光に対する感受性を持つ光感受性物質(ベルテポルフィン)を、肘(ひじ)の静脈に注射し、それが新生血管に到達したとき、非熱性の半導体レーザーを当てて、その光感受性物質に化学反応を起こさせます。そうすることによって、強い毒性のある活性酸素が発生し、新生血管の血管内皮細胞が破壊され、血管が閉塞(へいそく)します。この治療で使用するレーザーは、通常のものと異なり、新生血管周囲の組織への影響は少なく、視力への影響は軽度です。ただまれに、網膜出血が増加することがあります。一度傷ついた網膜は元に戻りませんが、新生血管をつぶすことによって病気の進行を止めることができます。必要に応じて、適度な期間を設けて数回治療が必要な場合もあります。また初回は、2泊程度の入院が必要になります。治療は健康保険の適用になります。
 加齢性黄班変性は、早期に治療するほど効果が期待できます。視界や視力の異常を感じたら、すぐに専門医を受診してください。道内で光線力学療法を実施している施設は限られています(眼科PDT研究会http://www.pdti.jp/参照)。希望する場合は、主治医によく相談することをお勧めします。

2006年2月8日水曜日

「いろいろなしみとその治療」について

ゲスト/宮の森スキンケア診療室 上林淑人 医師

しみについて教えてください。

 何らかの原因で皮膚内にメラニンという色素が残ってしまい、その周囲よりも茶色く認識される部分は、一般にしみといわれます。よく見られるしみとして、以下のものが挙げられます。
 1つは老人性色素斑といわれるもので、頬(ほお)や腕、手の甲などに主に見られ、境界のはっきりした円形のしみです。40歳以降に多く出現しますが、早い人ですと20歳代から出る人もいます。長期間紫外線によるダメージを受けてきたことが原因と考えられています。
 2つめは、雀卵斑(じゃくらんはん)で、いわゆる「そばかす」です。左右両頬に対称性に小さい色素斑が多数認められるもので、子供のころから見られるのが一般的です。
 3つめは、脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)です。表面がカサカサとした茶色から黒褐色の盛り上がった境界のはっきりしたしみで、主に顔や首に見られます。正確には皮膚腫瘍(しゅよう)の一種で、少しずつ大きくなります。「盛り上がったしみ」といえば分かりやすいでしょう。比較的高齢者に多く見られます。
 4つめは、肝斑(かんぱん)といわれるもので、頬骨の辺りを中心に左右対称性に広がる茶色から褐色のしみです。ほとんどが女性に見られ、妊娠や出産、閉経を契機に現れることが多いので、女性ホルモンとの関係が指摘されています。
 5つめは、色素沈着です。主に湿疹(しっしん)やニキビ、やけど、すり傷が治った後に茶色く残るものです。程度が軽ければ時間とともに、自然と消えます。

治療法について教えてください。

 老人性色素斑、雀卵斑はレーザー治療が最も効果的です。脂漏性角化症もレーザー治療が有効ですが、外科的な切除や液体窒素による凍結療法を行う場合もあります。肝斑はレーザー治療の適応にならないことが多く、ハイドロキノンやビタミンC誘導体など脱色効果のある外用剤の使用が中心になります。色素沈着は、基本的に日焼け止めなど紫外線対策を徹底すれば徐々に消えていきます。それでもなかなか消えない場合はハイドロキノンやビタミンC誘導体を使用します。
 しかし、しみのように見える皮膚がんも存在します。気になるしみがある場合はまず専門医の診察を受けて下さい。

2006年2月1日水曜日

「ストレス」について

ゲスト/五稜会病院  千丈  雅徳 医師

ストレスについて教えてください。

 精神的緊張のことをストレスといいますが、その度合いは性格や環境など個々人の要素によって異なります。ストレスはささいなことでも感じます。身近な例としては、暖かい屋内から戸外に出て、寒いと感じることもストレスです。また、昇進や進学など、一般的には良いことと思われるようなことでも、本人にとってはプレッシャーが強く、ストレスになることもあります。精いっぱい頑張ってきたのに、環境の変化などでその枠組みが変わることによって、不安を増加させるからです。ストレスを感じた場合、それをどう解消していくかが大きな問題です。うまく解消できれば深刻になることはないのですが、感情を抑え込む状態が続くと、心の病に発展する可能性があります。
 これといった原因がなく、身体がだるい、疲れがとれない、眠れない、いらいらするといった症状の多くは、ストレスが引き金となっており、主に身体症状の場合は「心身症」、精神症状の場合は「うつ」となります。代表的な身体症状は、高血圧、慢性胃炎、神経性皮膚炎などで、高血圧から不整脈、狭心症、心筋梗塞(こうそく)などの循環器疾患、胃炎から胃潰瘍(かいよう)や十二指腸潰瘍といった消化器疾患を引き起こしてしまうこともあります。うつの症状は悪化すると自殺に直結する可能性があります。

ストレスとどう付き合えばいいのでしょうか。

 日ごろからストレスを受けたときに、家族や友人など信頼できる人に相談することができれば、古典的ですがもっとも効果的な解消方法です。身近に本心をさらけだして素直に感情表現できる場があれば、心身症やうつに至ることは少ないでしょう。
 心身症やうつに陥りやすい人は、きまじめな人、体裁を気にする人で、逆にずぼらな人、いい加減な人はなりづらい傾向にあります。しかし、ストレス社会といわれる現代、心身症やうつになる可能性は誰にでもあります。うつかどうかを本人が見極めることは難しいのですが、職場に行きたくない、寝付けない、酒量が増えた、意欲が無くなったなどと感じるようになったら注意が必要です。周囲が本人より先に兆候に気付くこともあるでしょう。そのような場合は、気軽に精神科医や心療内科医を受診してください。風邪などの疾病と同様に早くに適切な治療を受ければ、回復も早くなります。

2006年1月25日水曜日

「舌痛症」について

ゲスト/石丸歯科 石丸俊春 歯科医師

舌に痛みを感じる舌痛症について教えてください。

 舌にピリピリとした痛みがあるが、舌自体には異常がない。しかし、 痛いし、食事や会話にも支障を来す、という患者さんの来院が増えてい ます。中には、舌がんではないかと不安に駆られている場合もあります。舌の痛みは体全体に影響を与え、食欲不振、急激な体重の減少、便秘、倦怠(けんたい)感、吐き気、頻尿、めまい、女性の生理不順、男性の性欲減退などのうつ状態の症状を訴える人も多くいます。また、ほかの症状として、苦味を感じる、口腔(こうくう)内にネバ ネバ感がある、味覚障害、歯の違和感、疼痛(とうつう)、顔面痛、顎(がく)関節痛、咀嚼(そしゃく)筋の痛み、噛(か)んだ気がしないなどの症状を呈することもあります。原因が分からず、このような症状を訴えると、一般的には精神科、神経科などの受診を勧められることが多いです。処方された抗不安薬、睡眠導入薬などの服用で、口腔乾燥、カンジダ性舌炎などの二次的症状を招き、さらに悪化させている場合もあります。

原因と治療法を教えてください。

 直接の原因となっているのは、不適合な冠、調整しても改善しない舌に触る義歯などが考えられます。また、歯の欠損を放置して起きる舌の弛緩(しかん)、嚥下(えんげ)時の舌の運動低下、噛みしめなどによってできる舌の異常緊張など、舌の機能不全が原因ということも多くあります。舌痛症を予防するには、普段から以下のことに気を付けましょう。 

(1)歯が抜けたら放置せず、義歯やブリッジの治療をする。 
(2)ペチャペチャと噛む人は、口唇を閉じてモグモグと奥歯を使って噛むことを心掛け、口唇の力を借りずに飲み込む。
(3)仕事やパソコン操作などに集中している時に、噛みしめて舌で歯の裏を押している人は、時々自分でチェックして舌を正しい位置に戻す。

 すでに舌に痛みのある人は、舌をスポットポジションに置くようにします。まず、上の前歯の裏側から約5mmの歯ぐきに舌の先端を置き、軽く口唇を閉じ、背筋を伸ばして鼻呼吸を心掛けます。さらに、唾液(だえき)腺のマッサージ、咀嚼回数を増やして唾液分泌を促すなどが効果的です。

2006年1月18日水曜日

「健康診断」について

ゲスト/北海道大野病院附属駅前クリニック 古口健一 医師

健康診断について教えてください。

 重大な疾患を予防するためにも、健康診断は重要です。サラリーマンの場合、事業所健診が年に1、2度あり、費用は事業者が負担します。主婦や高齢者、自営業者などは、札幌市の場合40歳以上なら「すこやか健診」を1200円の負担で受けることができます。内容は、問診、身体計測、聴打診、血圧測定、尿検査、血液検査、心電図検査、場合により、胸部X線撮影などが追加されます。また、胃・大腸がん、子宮がん、乳がん、肝炎ウイルス、肺がんなどの検診にも補助があります。詳細や金額については、関係機関にお問い合わせください。いずれも70歳以上、低所得世帯は費用が免除になります。そのほかの人間ドックなどの付加健診は、加入している保険、組合、共済などから補助がある場合もあります。

健康診断で異常が見つかった場合は、どうすればいいですか。

 健康診断(一次健康診断)で異常な所見が認められた場合、二次健康診断で精密検査・再検査を行います。健康保険を利用する場合は、会社か本人が負担します。労働保険加入者では労災保険二次健康診断が適応される場合があります。検査や負担金などが分からなければ、遠慮なく病院に尋ねましょう。分からない単語や、数値の意味なども、どんどん質問してください。検査の結果、専門医の受診・治療が必要で
あれば、適した病院を紹介します。検査が重複する場合もありますから、データや画像など、借りられるものは持参すると、費用と時間の無駄を省けます。病院によっては、紹介状がないと受診できない場合もあるので、紹介してもらってからの受診が基本になります。しかし、もし紹介状がなくても、「この病院で診てほしい」という希望があれば、病院に直接尋ねてみてください。最近はインターネットや本などで情報を得る患者さんも少なくないため、病院側も対応してくれる場合が多いです。
 病気の治療は早ければ早いほど効果が高く、期間も短く、医療費も安くすみます。40歳を過ぎたら、積極的に健康診断を受けてください。

2006年1月11日水曜日

「正常眼圧緑内障」について

ゲスト/ふじた眼科クリニック 藤田南都也 医師

正常眼圧緑内障について教えてください。

 まず緑内障についてですが、普段、目の中には房水という液体が循環していて、これがなんらかの原因で詰まってしまうと、眼圧が上昇して目が硬くなり、視野が狭くなります。これが一般的な緑内障のイメージです。ところが近年、国内で実施された緑内障疫学調査で、眼圧が正常であっても、緑内障を発症している人が多いという驚くべき結果が出ました。調査を受けた40歳以上の17人にひとりが、なんらかの緑内障を発症していて、その中の半数以上が正常眼圧緑内障であることが分かりました。
 正常眼圧緑内障の大きな特徴として、早期には自覚症状が現れないことが挙げられます。視野が狭くなり、階段でよくつまづくようになった、車の運転中、左側のガードレールばかりにこすってしまう、などの自覚症状が現れた時には、既に末期という危険が高く、放っておくと失明の恐れもあります。また緑内障は、病気が進行しても中心視力は保たれますので、一般的な視力検査で視力に問題がない、信号や新聞の文字がはっきり見えているという場合でも、安心はできません。

どんな治療法がありますか

 緑内障が発見された場合、治療によってそれ以上の進行を防ぐことは可能ですが、失った視野を取り戻すことはできません。ですから早期発見が何より重要です。治療法としては、点眼治療、内服治療、手術が挙げられます。早期であれば、点眼治療のみで高い効果を期待できます。
 ご家族や親戚に緑内障の方がいる場合は、リスクが高まるので注意が必要です。また、現在は発症していなくても、精密な眼底検査によって、今後緑内障にかかりやすい傾向にあるかどうかが分かります。正常眼圧緑内障で重要なポイントは、通常の眼圧検査では異常が発見されないということです。専門医による眼底検査と視野検査の両方を受けて初めて異常が発見されることも珍しくありません。これまで自分は大丈夫だと思っていたり、自覚症状がない場合も、加齢とともに発症することがありますので、気になる方は、一度専門医による検査を受けてみることをお勧めします。

2006年1月4日水曜日

「冬の胃腸病と細径胃内視鏡」について

ゲスト/大通り胃腸科クリニック 宮田敏夫 医師

冬に注意すべき胃腸の症状について教えてください。

 冬の食中毒の代表的なものはノロウイルスです。ノロウイルスは、汚染された飲食物を口にしたり、感染者からの二次感染によって広がります。中毒例の多くはカキなどの二枚貝によるもので、鮮度とは関係ないので、できる限り加熱した方がいいでしょう。主な症状は吐き気、下痢、発熱、腹痛などです。一般に症状は軽く1~2日で治りますが、老人や病人、乳幼児など、免疫力や体力が低下している場合は重症化することもあるので、注意が必要です。
 また、すしや刺し身などを食べた後に胃腸の激痛に見舞われることがあります。アニサキスという寄生虫によるもので、サバ、アジ、イカなどさまざまな魚に寄生しています。
 ほかにも、不規則な食生活や暴飲暴食で胃腸炎になったり、海外旅行で有害細菌などに感染したりと、年末から年始にかけては、胃腸科に駆け込む人も多くなります。食べ物はしっかり加熱したものを食べる、手をよく洗う、海外で生水は飲まないなど、予防策をとることをお勧めします。

胃内視鏡について教えてください。

 胃腸の不調で受診した場合は、胃カメラと呼ばれる、内視鏡検査を行う場合が多いです。胃がんの可能性を排除し、原因を特定するためです。胃カメラを体験した人であれば、お分かりでしょうが、決して楽な検査ではありません。特に、舌根を刺激されると吐き気を催す喉頭(こうとう)反射の強い人にとっては、非常につらい検査です。小さなカメラを丸ごと飲み込んでしまうカプセル内視鏡も開発されましたが、検査の精度を保つという点では電子スコープの方が優秀です。
 最近になって、ごく細い胃内視鏡が開発されました。従来のものが直径9~10mm程度であるのに対し、4.8mmと、約半分のサイズです。喉頭反射も起きづらく、場合によっては鼻から入れることもできます。この鼻から入れることのできる内視鏡の利点は、当事者の負担が軽いことと、診察中に会話ができるという点にあります。今まで「胃カメラがつらい」と検査を敬遠していた人も、細径胃内視鏡であれば安心ですから、一度病院に相談してみてください。