2005年10月26日水曜日

「インフルエンザ」について

ゲスト/つちだ消化器循環器内科 土田敏之 医師 

インフルエンザについて教えてください。

 インフルエンザと、風邪と呼ばれる普通感冒とは、原因となるウイルスが異なります。風邪はのどや鼻に症状が現れるのに対し、一般にインフルエンザは突然の高熱や関節痛、筋肉痛といった症状が現れます。例年12月ごろから流行が始まり、3月下旬まで罹患(りかん)者が多く出ます。ただ、咋シーズンのインフルエンザは例年と異なり、1月から流行が始まり、6月上旬まで患者が見られました。微熱や平熱ということも多く、風邪との鑑別に苦労しました。
 インフルエンザが怖いのは、小児や高齢者がかかると気管支炎や肺炎、まれに脳炎などの合併症を起こし、重症化することです。体力が低下していたり、気付くのが遅れると、命にかかわることもあります。

インフルエンザの予防について教えてください。

 まず、帰宅時のうがいや手洗いは必ず実行してください。インフルエンザ患者のせき、くしゃみなどから飛沫(ひまつ)感染する場合が多いのです。湿度が下がるとのどの粘膜が乾燥し、免疫が低下してインフルエンザに罹患しやすくなります。室内では加湿器などを使用し、40~50%の湿度を保ちましょう。流行期の外出時にはマスクで乾燥を防ぐようにすると効果があります。もちろん、普段からの体調管理も重要です。バランスの取れた食事、十分な睡眠や休息を取り、体力低下を招かないように心掛けましょう。
 予防接種も有効です。特に、高齢者、気管支ぜんそくや肺気腫などの慢性肺疾患のある方、心疾患患者、透析患者、免疫が低下している方などは、ぜひ接種してください。さらに、社会的要因として、旅行や結婚式などの予定のある方、妊娠予定している方、受験生とその家族、小児と接している方、4日間程度の自宅療養が困難な方などにも、予防接種をお勧めします。
 予防接種の対象となるのは6カ月以上の小児、成人です。ただし重症の卵アレルギーの方は接種できません。予防接種は授乳中の方には可能ですが、 妊娠中の場合はかかりつけ医にご相談下さい。ワクチンによって、胎児に影響があったという報告はありません。

2005年10月19日水曜日

「前立腺がん」について

ゲスト/元町泌尿器科 西村昌宏 医師 

前立腺がんについて教えてください。

 前立腺は男性特有の臓器で、膀胱(ぼうこう)の出口で尿道を取り巻いている組織です。排尿回数の増加(特に夜間の排尿が2回以上起きる)、下腹部の不快感、排尿開始までに時間がかかる、尿が細い、残尿感があるといった症状は、良性の前立腺肥大症と、悪性の前立腺がんの初期症状の両方に共通します。正確な検査前にどちらかを判断することはとても難しく、また肥大症にがんを併発している例も珍しくはありません。そのため、「50歳を過ぎたらこんなものだろう」と安易に考えて放っておくと、がんの発見を遅らせることになります。
 前立腺がんの検査は、直腸からの触診や、超音波、MRI(磁気共鳴画像装置)などが有効ですが、血液検査による選別で手軽に検査することも可能です。血液を採取し、前立腺から分泌されるタンパク質の一種である前立腺特異抗原(PSA)を測定し、4.0~10.0ng/ml位だと前立腺がんの疑いが強くなります。さらに10.0ng/mlを超えた場合は、前立腺がんである可能性が高いといわざるをえません。

治療法と予防について教えてください。

 病気の進行度によって異なりますが、前立腺内にがんが限局している場合は、前立腺の全摘出が主体になります。お腹を切らずに腹腔(ふくくう)鏡を用いることもあり、術後の回復も早くなります。手術がどうしても嫌な場合は放射線による治療になります。放射線治療も有効ですが、放射線治療後の手術は極めて困難なので、注意が必要です。さらに進んだ状態である場合は、残念ながら手術の対象になりません。注射や内服薬で男性ホルモンを下げてがんの進行を抑える治療が一般的です。場合によっては、男性ホルモンを抑えるために精巣の切除をする場合もあります。
 予後のことを考えても、初期に発見することが肝心です。そのためには、先に述べた症状がなくても50歳を過ぎたら、少なくとも年に一度は血液検査によって、PSAチェックを行ってください。わが国においても、近年死亡者が増加してきている病気の一つですから、積極的に検査を受けるよう心掛けることが、何よりの予防となります。

2005年10月12日水曜日

「少ない永久歯(先天欠如)」について

ゲスト/つちだ矯正歯科クリニック 土田 康人 歯科医師 

生まれつき通常より歯が少ないということがあるのでしょうか。

 以前テレビでも「10年前に比べて現代人は歯の数が減っている」という特集がされていましたが、最近確かに生まれつき歯の数が少ない人「先天欠如」が増えているように感じます。乳歯が抜けたのに、いつまでも永久歯が生えてこない、もしくはいつまでも乳歯のままで生え変わる気配がなく、レントゲンで調べても永久歯が見えない場合です。6歳臼歯がいつまでも生えてこないという場合もあります。今まで診察した中では、本来あるべき永久歯が8本も欠けているという人がいました。本人が気付いて歯科医を訪ねる場合もありますし、ほかの歯の治療の過程で見つかる場合もあります。
 歯の数が少ないはっきりとした原因は分かりませんが、よくいわれているのは、人類の進化とともに、歯が退化傾向にあるということです。つまり、歯が少ない現代人は進化した形なのかもしれません。歯が少ないと咬(か)み合わせが崩れ、顎(がく)関節症などの原因になることがあります。
 また、逆に歯が多い「過剰歯」も見られます。上顎前歯部分に多く、隣の歯の根を溶かすなど、悪さをすることも多く、注意が必要です。

実際の治療について教えてください。

 足りない歯の個所にもよりますが、欠如した歯を補うために、奥歯から順に歯を移動して、空間を埋めます。永久歯が足りないと分かったら、なるべく早い時期から矯正治療を行い、歯を寄せたり押したりして、将来的には、見た目も機能面でも問題ないような歯並びにすることが可能です。また、なるべく乳歯を長持ちさせて、抜けたらブリッジにするという方法もありますが、その場合欠如している歯の前後の歯を削らなければなりません。健康な歯を削ることに抵抗がある人も多いでしょうから、やはり早めの受診で、治療の方針を話し合うことが大切です。ブリッジをするにしても、事前に矯正治療でやりやすい配置にすることが可能です。いずれにしても、生え変わり時期には、一度じっくりと矯正専門医で診察してもらい、本数を含め咬み合わせなどを検査してもらうと安心です。

2005年10月5日水曜日

「動脈硬化と肥満」について

ゲスト/青木内科クリニック 青木伸 医師 

動脈硬化症になりやすい体質というのはありますか。

 現在日本人の死因で一番多いのは脳梗塞(こうそく)、心筋梗塞などの動脈硬化症です。この病気になりやすい人の特徴が、最近明確になってきました。
 第一に肥満していることが挙げられます。日本人は欧米人と違って極端な肥満の人は少ないですが、いわゆる小太り程度の人が多いようです。肥満には2種類あって、一つは女性に多く見られる皮下脂肪が増える下半身肥満(別名:洋なし型肥満)です。この肥満は病気とはあまり関係ありません。もう一つが男性に多くみられる、内臓に脂肪が増えるビア樽型肥満(別名:リンゴ型肥満)です。ビア樽型肥満は病気の発症と深い関係があります。このタイプの肥満かどうかは、おへその高さでウエスト周囲を測れば分かります。男性は85cm以上、女性は90cm以上あれば、ビア樽型肥満です。
 ビア樽型肥満の人が、同時に糖尿病、高血圧、高脂血症を伴っていると、健康な人に比べて30倍も動脈硬化になりやすいのです。この病状は代謝症候群(メタボリック症候群)として、医学界でも注目されています。

動脈硬化症の予防方法を教えてください。

 第一に心掛けるべきなのが、肥満の解消です。特にビア樽型肥満の方はやせることが重要です。幸いなことに、ビア樽型肥満の方が、食事と運動によってやせようと努力すると、効果が出やすいのです。食事は野菜、魚を中心に、薄味にするようにします。ひと駅分歩くなど、日常的に体を動かすように努めましょう。毎日体重を量り、脱衣所に体重の動きをグラフで表記して張り、やせる指標としておくのも、目標ができて効果的な方法だと思います。合併している糖尿病、高血圧、高脂血症も、やせることによって改善する病気なので、努力のしがいもあると思います。これらの病気には薬物治療が必要なこともありますので、まずは専門医に相談するのがよいでしょう。治療がうまくいっているかどうかは、基準値がありますので、参考にするとよいでしょう。
 糖尿病はHbA1cが6.5%以下、血圧は130/80mmHg以下、総コレステロールは200mg/dl以下、中性脂肪は150mg/dl以下です。

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