2005年9月28日水曜日

「網膜はく離」について

ゲスト/あびこ眼科クリニック 安孫子 徹 医師 

網膜はく離について教えてください。

 網膜とは、眼球壁の内膜で、カメラのフィルムに相当する部分です。光を感じる感覚網膜が、その土台となる網膜色素上皮からはがれるのが、網膜はく離です。網膜はく離が生じると、はく離部分に対応する視野が見えにくくなり、網膜の中央部分である黄斑まではがれると著しく視力が低下します。網膜はく離の原因で代表的なものは、網膜の裂孔(裂け目)から眼球内の水分が網膜の後ろに流れ込み、はがれていく裂孔原性網膜はく離です。眼球内の大部分は硝子(しょうし)体という無色透明のゼリー状の組織で占められていますが、加齢とともに液体となって収縮していきます。網膜の変性などで硝子体と網膜が強く癒着している部位があると、収縮する硝子体に網膜が引っ張られ、引き裂かれて裂孔となり、網膜はく離につながります。硝子体には加齢により濁りが生じ、糸くずやリング状の黒い影がヒラヒラ見えることがあります。これは飛蚊(ひぶん)症といい、多くは生理的なもので心配いりませんが、網膜裂孔が生じるときに網膜血管が切れて出血したり、裂孔を通して色素上皮細胞が硝子体中に飛散すると、飛蚊症が極度に増加します。

裂孔原性網膜はく離の治療について教えてください。

 網膜裂孔の原因となった硝子体の網膜牽引(けんいん)を緩めて、網膜の後ろにたまった液体を排出し、裂孔をふさいで治療します。方法としては、眼球の外側からシリコン性のバンドを縫い付けて眼球壁を内陥させるやり方と、眼球内部に手術器具を挿入し、硝子体を切除し、眼内にガスを注入するやり方があります。いずれも入院しての治療になります。網膜はく離が生じる前の網膜裂孔の段階で発見できれば、レーザー網膜光凝固術によって、裂孔周囲を固着させ、網膜はく離を予防することができます。入院の必要もなく、外来治療によって短時間で行うことが可能です。
 飛蚊症が極端に強まった人、あるいは網膜周辺の変性を伴うことの多い強度の近視の人は、ぜひ一度、眼科専門医による眼底検査を受け、網膜はく離の予防に努めましょう。

2005年9月21日水曜日

「冠動脈バイパス手術」について

ゲスト/北海道大野病院附属はまや循環器クリニック 浜谷秀宏 医師

狭心症の治療方法について教えてください。

 心臓は休みなく働いている臓器で、常に多くのエネルギーを必要としています。このため、心臓の表面には冠動脈という直径2~4mmの血管が走っていて、この冠動脈により、心臓にも血液が常に供給されています。この冠動脈に動脈硬化が進行し、内側に狭い部分ができ、心臓が必要とする血液を十分に供給できなくなる病気が狭心症です。
 治療法としては、大きく三つの方法があります。一つ目は薬による治療法です。薬で症状が十分に改善されなければ、二つ目はカテーテルという細い管を使用し、冠動脈の狭い部分を風船などで広げる治療法
(PCI)があります。PCIは、技術の著しい進歩により、治療成績も飛躍的に向上しています。ただし、冠動脈の狭い部分が、広げるには困難な場所であったり、広げなければならない個所がたくさんある場合などは、三つ目の治療法の冠動脈バイパス手術という手術があります。

冠動脈バイパス手術について教えてください。

 冠動脈バイパス手術とは、冠動脈の狭くなった部分の下流に別の血管(バイパス)をつないで、血液の流れを回復させる手術です。バイパスに使用される血管としては、肋骨(ろっこつ)の裏側を走行している内胸動脈という血管や、胃の縁を走行する胃大網動脈という血管を使います。場合によっては、腕の動脈や足の静脈も使われます。バイパス血管をつなぐ部分の冠動脈は直径2~3mmですので、細かな技術を要します。そのため、冠動脈にバイパスをつないでいる間は、心臓を一時的に停止させて、心臓の代わりに人工心肺という一種のポンプで酸素を含んだ血液を全身に循環させながら手術を行います。
 ところが、ここ数年、人工心肺を使用しない、つまり心臓を停止させない状態のまま、冠動脈バイパスをつなぐことも行われるようになってきました。ポンプを使用しないので、オフポンプバイパス術あるいは心拍動下バイパス術と呼ばれています。人工心肺を使用しない分、体にはやさしい手術ですが、外科医にとっては、より熟練した技術が必要で、経験の多い信頼できる病院を選ぶことが大切です。

2005年9月14日水曜日

「子どもの虫歯予防」について

ゲスト/庄内歯科医院 庄内 淳能 歯科医師

子どもの歯のケアについて教えてください。

 歯の管理は生まれた時から始まります。まれに、生まれた時点で歯が生えている子どもがいますが、これは先天性歯といい、多くの場合過剰歯です。反対側の歯茎を傷つけたり、授乳がうまくいかないことがあるので、すぐに小児専門の歯科医に行ってください。また、歯が生える前に口の中をガーゼでぬぐうお母さんがいますが、特に必要ではなく、むしろ傷つけたり、雑菌が入る可能性があります。
 歯が生え始めるのは生後6カ月くらいからです。最初の歯が生えたら、小児歯科へ行って、フッ素を塗布しましょう。子どもの場合はう蝕(虫歯)の進行が早いので、3カ月に一度は検診を受けるのが理想的です。離乳食で注意してほしいのが、一度大人の口に入れた食べ物やはしなどを子どもの口に入れないことです。虫歯はミュータンス菌によって感染するものなので、大人の唾液(だえき)のついた食品や食器で、赤ちゃんの口にうつしてしまう可能性が大きいのです。とはいえ、ミュータンス菌から一生守ることは難しいので、なるべく感染を防ぎながら、虫歯予防を徹底させなくてはいけません。

効果的な虫歯の予防方法を教えてください。

 予防のための定期検診は、子どもに「歯科医院=恐ろしい」というイメージを植え付けないためでもあります。検診では痛いことをしません。もし検診で虫歯を発見しても、小さな虫歯の治療で済むはずです。逆に虫歯が痛むようになってからでは、歯科医嫌いになり、ますます虫歯を増やすことになります。定期的に歯科医を受診していると、歯並びの異常や、将来歯並びに影響する舌の悪癖などを早期に発見できます。仮に矯正が必要になっても、早くに治療を組み立てられます。
 家庭での虫歯予防は、ブラッシングです。歯が一本でも生えたら、歯磨きのスタートです。大人がしっかりと磨いてください。「嫌がるから」と、きちんと磨かないと、歯磨きを習慣づけることができません。3歳ころからは自分で磨かせ、必ず大人が仕上げをしてください。小学校5年生くらいまでは、歯磨き後の仕上げ点検をしてあげてください。

2005年9月7日水曜日

「関節の音」について

ゲスト/山口整形外科クリニック 山口秀夫 医学博士 

関節の音について教えてください。

 指を引っ張ったり、首を曲げたりすると「ポキッ」「ポキッ」と音が鳴ることがよくあります。これは関節を急に引っ張ったり、曲げたりすることによって、関節内が真空になり、関節液中の窒素が気化し、それがはじけることによって生じる音です。このような音は特に心配することはありません。
 しかし、膝(ひざ)の音の場合は、病気である可能性が高いので、注意が必要です。膝の曲げ伸ばしで、膝蓋骨(いわゆる「お皿」と呼ばれる部分)の内側に、「コクン」「コクン」と引っ掛かるような音や感触があったら、棚障害という病気が考えられます。これは、大腿(だいたい)骨と膝蓋骨の間にある、棚と呼ばれる膜が、厚くなったりさけたりして、曲げ伸ばしの際にお皿の下に挟まれ、音と痛みを生じさせます。棚は生まれつきある人とない人がいて、若くして膝の痛みを訴える場合はこの病気である可能性があります。
 座っていた姿勢から立ち上がろうとした時に、膝が伸ばせなくなり、内側や外側に激痛を感じ、ゆっくり伸ばそうとすると、何度目かに「クキッ」と音が鳴り、伸ばせるようになったら半月板障害が考えられます。膝にはクッションの役目をする半月板という軟部組織があります。半月板は膝の内側と外側の二カ所に存在しており、クッションの役目のみならず、関節の安定性にかかわる非常に重要な組織です。急に関節をひねったり、何度も同じ動作を繰り返すことで、傷つくことがあります。スポーツ選手に多い病気です。
 歩いている時いつも「ジャリッ」「ジャリッ」と音がしたら、変形性関節症という病気でしょう。膝関節内の軟骨の摩耗や骨の変形が原因で、主に加齢によって引き起こされます。
 いずれにせよ膝から聞こえる音は、関節内の軟部組織(関節包、滑膜、半月板)が関節軟骨に挟まれて発生します。長期にわたってこの状態が継続すると、関節軟骨を傷つけたり、関節に水がたまる関節炎を起こすことになります。膝から音が聞こえたら、ぜひ早めに整形外科の専門医の診察を受けられることをお勧めします。