2005年1月5日水曜日

「ピロリ菌と胃・十二指腸潰瘍」について

ゲスト/やまうち内科クリニック 山内雅夫 医師

ピロリ菌について教えてください。

 正式にはヘリコバクター・ピロリといい、胃粘膜に住む細菌です。胃の中は、胃酸のため強い酸性を呈し、細菌が生き延びる環境ではないという先入観から発見が遅れ、存在が認められたのは20年ほど前です。ピロリ菌にはアンモニアを産生する能力があるので、胃酸を中和して胃の中でも生存できるのです。経口的に感染し、衛生状態の悪い地域や国で感染率が高いことが明らかにされています。日本では若い人の感染率は低いのですが、40歳以上では約80%の人が感染しています。これまでの研究で、ピロリ菌が胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の原因になっていることが解明されてきました。ピロリ菌感染=胃・十二指腸潰瘍になるというわけではありませんが、ストレス、喫煙、アルコールの過剰摂取などさまざまな要因が重なると胃・十二指腸潰瘍が発症します。また、ピロリ菌によって引き起こされた慢性胃炎から胃がんが発生することも推測されます。

胃・十二指腸潰瘍の治療方法をご紹介ください。

 以前の胃・十二指腸潰瘍の治療は、胃酸の分泌を抑制するH2ブロッカー投与が一般的でしたが、いったん治癒しても再発しやすく、再治療が必要でした。しかし潰瘍の主要な原因がピロリ菌であることが判明してからは除菌療法に変わりました。これは、胃の中のピロリ菌を駆除するために2種類の抗生剤を1週間内服し、さらにH2ブロッカーよりも強力に胃酸の分泌を抑制するプロトンポンプ・インヒビターを併用する方法です。ただし胃・十二指腸潰瘍の中にはピロリ菌が関与していないものもあり、除菌療法の対象外となります。ピロリ菌感染の有無を検索するには、内視鏡検査で胃粘膜を採取して顕微鏡的に調べる方法のほか、尿素呼気試験、糞(ふん)便検査法、採血による抗体の検査などの方法があり、比較的簡単に分かります。なお、胃・十二指腸潰瘍を有しないピロリ菌感染者(高度の慢性胃炎患者など)に対しても胃がん予防の見地から除菌療法をした方が良いとする意見もありますが、まだ明確な結論は出ていません。

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