2005年1月19日水曜日

「増加する10代の人工妊娠中絶」について

ゲスト/札幌東豊病院 前田信彦 医師

若い年代の人工妊娠中絶が増えているそうですが。

 厚生労働省の2003年度の統計によると、19歳女性の50人に1人、18歳女性の64人に1人の割合で人工妊娠中絶が行われています。人工妊娠中絶全体の数字が減っている中で、10代から20代前半の中絶の割合が目立って増加しており、10代の中絶率は、10年前の約2倍になっています。また、北海道は中絶件数が全国で3番目と多く、特に10代の中絶件数では全国一という不名誉な数字になっています。実際に診療の現場にも、10代の患者さんが親御さんと一緒に受診するということが度々あります。性に関する情報があふれている現実の中で、性行動に関して歯止めがきかず、一方で生殖、避妊に関する正しい知識が欠如していることが背景にあります。
 妊娠中絶が増加するということは、すなわち性感染症の予防に関しても無防備だということを意味します。実際に性器クラミジアをはじめ、淋菌(りんきん)やHIV感染者が、若者の間で増加しています。

私たち大人が正しい知識を教えていかなくてはいけませんね。

 若者たちの無軌道な性行動は、大人社会の反映でもあります。とはいえ、社会全体の変化を待っている時間的ゆとりはありません。若者の性行動の抑止自体は困難であるという現実を踏まえ、現状の中で実態に即した性教育の必要があります。個々人によって、性への意識に格段の違いがある思春期の男女に対し、画一的な性教育は、確かに難しいことですが、家庭での性教育が一般的ではない日本においては、教育現場からのアプローチがもっとも容易です。
 教育現場における性教育は今までも実践されてきましたが、中絶や性感染症の数字を見る限り、十分な効果が得られているとはいえません。短期間での検証とより効果的な啓蒙(けいもう)に、早急に取り組まなければなりません。実際に人工妊娠中絶をする年代が高校生の年代から増加するということは、小学生から性に対する正しい知識とモラルを教え、中学生では現実的および実践的な性と避妊の知識を教育する必要があります。妊娠や中絶は心身に多大な影響を与えます。陰の部分も含めた性に関する教育、社会的啓蒙が急務です。

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