2005年12月28日水曜日

「高血圧症」について

ゲスト/秀愛会内科・消化器科クリニック 高梨 良秀 医師

高血圧症について教えてください。

 血圧はさまざまな要因で変動するものです。病院の外来で測ると、高くて驚いたという経験のある人も多いことと思います。外出先であることや、医師や看護師の前で緊張してしまい、普段より血圧が高くなるのは当然です。正確な血圧を知るためには、家庭での血圧測定が必要です。家庭用血圧計の中では、指先や前腕部で測定するタイプのものより、上腕部で測定するものがより正確です。決まった時間に毎日2~3回測定し、その中間の値をとり、測定前の30~15分は安静にします。測定値は記録し、治療計画の判断材料として、かかりつけの医師に見せます。さらに正確な血圧を計る24時間血圧計もあります。1日を通して血圧の変動をモニターするので、時間ごとの薬の効果などを詳しく知ることができます。特に明け方は薬効が切れ、血圧が高くなりやすいので、一度は24時間計測してもらうと安心です。

適正な血圧値と治療、注意点を教えてください。

 以前は収縮期血圧(最大血圧)150ミリメートルHg、拡張期血圧(最小血圧)90ミリメートルHg以下であれば良いとされてきましたが、現在は、成人で最大血圧140ミリメートルHg、最小血圧90ミリメートルHg以下にすべきとされています。最大・最小血圧のどちらかが正常値より高ければ、高血圧と判断されます。頭が重いなど自覚症状がある場合もありますが、症状がないまま高血圧が進行している人も多いです。高血圧の人は、高脂血症や糖尿病などにもなりやすく、さまざまな生活習慣病の要因となります。血管や心臓に負担がかかり、動脈硬化が進行し、脳出血、脳梗塞(こうそく)、心筋梗塞、腎不全など重大な合併症を引き起こす可能性があります。高血圧であると診断されたら、医師の指示に従って薬の服用を続けてください。最近はいろいろなタイプの薬品が開発され、症状や生活習慣に合った薬が処方されます。
 日常生活では、塩分を控えた和食中心の食生活を心掛け、ストレスをため込まず、適度な運動を長く続けることが大切です。冬は、特に温度差が大きいことによって、一気に血圧が変動します。寝室と廊下やトイレ、脱衣所と浴室などの温度差を少なくしたり、外出するときは暖かい服装をするなどしましょう。

2005年12月21日水曜日

「前立腺肥大症の手術」について

ゲスト/芸術の森泌尿器科 斉藤誠一医師

前立腺肥大症について教えてください。

 前立腺肥大症は50歳を過ぎた男性ならいつかは覚悟しておかなければならない病気です。夜間、トイレに何度も起きるようになり、排尿に勢いがなくなったり、尿がなかなか出なくて、公衆トイレで後ろに人が並ぶようになったら、疑いが濃厚ですので受診してください。初期であれば、投薬で改善しますが、いずれ薬も効かなくなります。また、医療費負担は今後も増える一方ですから、いつまでも効果が少ない治療にお金をかけることも考えものです。
 日本のように、誰もが医療保険に入っているわけではない米国では、薬による治療は割高なため、手術を選ぶ人がほとんどです。
 かつては、薬で十分に改善しなければ電気メスによる内視鏡的手術しかありませんでした。しかし、現在はいろいろな治療法があり、患者さんの症状や状況に応じた治療を選ぶことができます。その中の一つに、入院せずに外来で簡単に受けられる高温度治療があります。体への負担が軽くて済むのですが、問題点は効果が長く続かないことです。

手術はどのようなものですか。

 一番確実な治療法は電気メスで前立腺を削り取り、尿の通りを改善します。しかし、数日の入院が必要で、また手術中はもちろんですが、退院してから大量に出血することがあります。
 電気メス以外で、前立腺を削り取ることができ、出血が少なく、入院期間を短縮できる方法として、ホルミウムレーザーによる手術があります。かつてのレーザーはやけどをつくって肥大部分を小さくしますが、尿を出すための管を数日入れておかなければなりませんでした。しかし、このホルミウムレーザーは、ほとんど出血なく前立腺を削り取ることができます。特に大きな前立腺には有効です。出血が少ないため、尿を出すための管を早く抜くことができ、早期の退院が可能になりました。順調であれば、2~3日の入院で済みます。また、電気メスによる手術と違い、手術中に水が体内に入って気分が悪くなったり、血圧が下がるなどのリスクもありません。削り取った前立腺の組織で、がんの検査もできます。
 前立腺肥大症の場合、血液検査でPSA値(前立腺から分泌される酵素たんぱくの血液中の量)が高いなど、がんの疑いがなく、自分自身が現在の尿の状態で困っていなければ、何も焦る必要はありせん。自分の都合に合わせた時期に、一番自分に合った治療法を選択されるといいでしょう。信頼できる医師に納得のいくまで相談して治療方針を決めてください。

2005年12月14日水曜日

「痔核(じかく)の手術」について

ゲスト/土田病院 平池 則雄 医師

排便時の出血について教えてください。

 可能性としては、大腸がん、大腸ポリープ、大腸憩室出血、潰瘍(かいよう)性大腸炎、クローン病などが上げられます。しかし、もっとも確率が高いのが痔です。痔は大きく分けて痔核(イボ痔)、裂肛(切れ痔)、痔ろう(あな痔)の3つに分けることができます。この中で、もっとも患者数が多いのが、痔核です。排便時の力みによって、肛門粘膜が引っ張られ、伸びてしまったのが痔核になります。便秘の人やトイレが長い人、ドライバーやオペレーターなど一日中座っている人、出産経験のある女性にも多く見られます。
 痔核には、直腸粘膜の部分にできる内痔核と、外の皮膚の部分にできる外痔核があります。内痔核の場合、初期では痔核が肛門から飛び出ることはありません。しかし、排便時に出血したり、痛みや違和感を覚えることがあります。内痔核の症状が進むと、痔核が大きくなり、肛門から出てきます。指で押し込むと戻りますが、さら進むと痛みが強く、指で戻せなくなり、長時間立ったり、スポーツをしているだけで飛び出すようになることもあります。

治療法について教えてください。

 便秘や下痢を解消するために食生活に注意を払い、入浴で患部を清潔にすることによって、肛門の負担を減らす生活療法や、出血や痛みを緩和する坐(ざ)剤、軟膏などの外用薬、血流改善を目的とした内服薬も症状に合わせて処方します。
 これらの治療で改善しない場合は、手術を行います。痔核の手術法としては、痔核部分を切除して血管をしばる結さく切除術が一般的ですが、5~6年ほど前に日本に導入されたPPH法という術式があります。特殊な器械を肛門から挿入し、緩んだ粘膜の切除と縫合を同時に行います。痛みや入院日数の面で、患者の負担が極端に少なくなる画期的な手法です。しかし、導入している病院が限られており、また重症化している場合は用いることができません。まずは、病院に相談してください。

2005年12月7日水曜日

「加齢黄斑変性」について

ゲスト/札幌エルプラザ阿部眼科 阿部 法夫 医師

加齢黄斑変性について教えてください。

 加齢黄斑変性は50歳ころから始まり、特に日本では男性に多い目の難病です。従来は欧米に多い眼疾患でした。ところが、1998年から福岡県久山町で行われた調査報告によると、累積5年発症率は0.8%とアメリカ、オーストラリアでの結果と同程度で、日本において増加傾向にある疾患と推定されています。この結果から、日本での50歳以上の人口の、30~40万人の患者数が見込まれています。
 黄斑とは眼底の中心部のことで、特に文字を読んだりするのに大事な場所です。眼球の中でも強い光を常に受け、最も新陳代謝が活発に行われています。加齢によって老廃物の処理能力が落ち、黄白色の塊(ドルーゼン)となって黄斑部にたまることから、この病気がはじまります。進行すると、さらに色素沈着や脱色素が起き、最後には出血によって文字が読めなくなってしまいます。加齢黄斑変性は、早期の軽症例(A:ドルーゼン・B:色素沈着や脱色素)と末期の重症例(出血を含む)に分けられます。久山町の調査結果によるとそれぞれ12.8%(A:9.6%、B:3.2%)、0.87%と報告されています。男女比は早期では差はないものの、末期では男性の方が3~4倍多いとの報告でした。以上の調査から、加齢黄斑変性の予備軍は10人に1人、重症例の有病率は100人に1人程度となります。

診察や治療法を教えてください。

 最近の蛍光眼底撮影や断層撮影の進歩によって、日本人の場合、出血の原因の30~50%はポリープ状の新生血管であることが特定されるようになりました。レーザーや手術、薬物による治療も、著しい進歩がみられるようになりました。また、これらの病変の進行防止には禁煙とビタンC・E、ベータカロチン、ルテイン、酸化亜鉛などの適度なサプリメントが有効という報告もされています。目の難病ではありますが、進行防止のためには早期の発見が重要となります。初期は見ようとする中心部が見えにくかったり、ゆがみがあったり、暗かったりしますが、片目から始まることが多く気が付きにくいようです。「老眼だろう」と決め付けず、見づらくなったら、眼科専門医で精密眼底検査を受け、確認することをお勧めします。

2005年11月30日水曜日

「帯状疱疹(たいじょうほうしん)後神経痛」について

ゲスト/札幌一条クリニック 後藤 康之 医師

帯状疱疹後神経痛について教えてください。

 帯状疱疹は、日本人の10~20%の人が、生涯に一度は罹患(りかん)するといわれています。子どもの頃にかかった水ぼうそうのウイルスが、完治後も体内に残り、病後や疲労時、ストレスを感じた時など、体力や免疫力が低下したときに活動をはじめ、発症します。神経に沿って胸から脇腹、背中、三叉(さんさ)神経沿いなどに赤い発疹(はっしん)とチクチクした痛みが現れます。化膿(かのう)するなど、よほど重症でなければ、発疹そのものは2~3週間程度で治りますが、痛みだけが残る場合も多く、これを帯状疱疹後神経痛といいます。服が触れても痛いという状態にまでなることもあり、また目に出ると失明するケースもあります。痛みが原因で、不眠や食欲不振などに陥り、体力低下を招くことも少なくありません。発症から3カ月を過ぎると、治療にも時間が掛かります。痛いと思ったら我慢せず、すぐに痛みの専門医を訪ねてください。

どのような治療をするのでしょうか。

 早期に抗ウイルス剤を点滴、または内服で投与します。これは内科や皮膚科でも日常行う治療です。痛みをとることを目的としたペインクリニックでは、注射で局所麻酔薬などを神経周辺に入れ、神経の働きを止める神経ブロック療法を行います。血流を促進し、痛みを発する物質を押し流すレーザー治療や、鎮痛剤、漢方薬などを併用することもあります。さらに、精神的なストレスが原因で発症した場合は、抗うつ剤、抗不安薬などを併用します。
 いずれにしてもある程度の治療期間が必要です。根気強く治療を続ければ、ほぼ完治するので、あきらめずに治療を続けてください。
 帯状疱疹の予防法は残念ながら今のところありませんが、体力や免疫力の低下が発症の引き金になっているので、なぜそうなったかを考えることも重要です。帯状疱疹をきっかけに検査で、ほかの病気が見つかることもあります。糖尿病など生活習慣病の予防に努め、体力低下を招かず、ストレスをうまく和らげる生活を心がけることも大切です。

2005年11月16日水曜日

「咳喘息(せきぜんそく)」について

ゲスト/琴似駅前内科クリニック 高柳 典弘 医師

風邪の後、いつまでも咳が続くことがありますが。

 咳の持続期間により、発症から3週間を「急性咳嗽(がいそう)」、3~8週間を「遷延性咳嗽」、8週間以上続き場合を「慢性咳嗽」といいます。近年特に、慢性咳嗽の罹患(りかん)者が増加しています。慢性咳嗽の3大原因として、咳喘息、アトピー咳嗽、副鼻腔気管支症候群があげられますが、そのうち、もっとも頻度の高い咳喘息について説明します。
 咳喘息は8週間以上の空咳が続きますが、実際には8週間以前に医療機関を受診することが多いため、咳の症状を訴えるすべての人に対して、咳喘息を念頭においた診療が必要です。咳喘息は、気管支喘息のようにゼイゼイしたり、呼吸が苦しくなることはなく、胸部レントゲンを撮っても、原因となるような異常所見は認められません。
 咳喘息は、アレルギーの関与によって気管支が過敏になり、温度の変化や話をするだけで、咳が出やすい状態になります。また、夜間から早朝にかけて悪化することが多く、秋に多く見られるなど季節性を示す場合もあります。痰(たん)はないか、あっても少量で、風邪などのウイルス感染後、寒冷刺激、運動、喫煙などが症状を悪化させることがあります。

診断と治療法方について教えてください。

 気道の過敏性を調べる検査が診断の参考になりますが、専門的施設以外では施行しにくいことから、通常診療において咳喘息を疑う場合、治療に有効な気管支拡張剤を試験的に使用し、咳の改善傾向が見られれば、咳喘息と診断して差し支えないと考えられています。
 治療は、先に述べた気管支拡張剤が有効ですが、これのみで症状が完全に消失する例は少なく、また、咳喘息の約30%の患者が数年のうちに気管支喘息に移行することが知られています。そのため、気管支喘息への移行を予防するためにも吸入ステロイドを早期に使用することが一般的です。また、咳が完全に消失してからも長期的に経過観察をすることが肝心です。
 風邪をひいた後に咳だけ長く続く場合や病院で「風邪」と診断されて薬を飲み続けても咳だけとれない場合は、専門医を訪ねることをおすすめします。

2005年11月9日水曜日

「これからの矯正治療」について

ゲスト/E-line矯正歯科 上野拓郎 歯科医師

矯正器具に抵抗があって治療をちゅうちょする人もいるかと思いますが。

 美しい歯並びが、機能面、健康面、審美面で、いかに重要であるかが、日本でも広く認知されてきました。最近では、気軽に矯正専門医を訪ねる人も増えてきました。矯正治療が一般の人々に広く受け入れられはじめた要因として、矯正器具の著しい進歩が上げられます。かつては、歯の前面にギラッと光っていたメタルの矯正器具。確かに目につくし、特に大人の方には抵抗感のあるものでした。しかし、今では、目立たないワイヤーや透明なプラスチックやセラミックなどのブラケット(矯正装置)によって、スマートに矯正することができます。また、歯の裏側(舌側)から矯正することで、年ごろの女性や、接客業、営業職など、見た目が気になる人にとっても、抵抗なく治療を受けることができるようになりました。また、裏側からの治療のメリットとして、スポーツをする人の口のけがの危険性や、管楽器で演奏する人の吹きにくさが少ないということが挙げられます。

最先端の矯正治療について教えてください。

 この1~2年の間に矯正治療が大きく変わってきました。まず裏側から治療するブラケットのサイズが、従来の半分以下の大きさまで縮小し、装着時の違和感がぐっと軽減されました。小型化によって、清掃性も良くなり、話にくさを訴える患者さんも非常に少なくなりました。また表側のブラケットでは、ワイヤーとの摩擦の少ないものが開発され、今までより格段に装着感が良く、治療期間もかなり短くなりました。さらにインプラントが、矯正治療に応用されるようになりました。インプラントを顎(あご)の骨に埋め込み、固定源として使用する方法で、違和感が少なく、患者さんの負担も軽く、矯正期間も短縮できます。今後、期待されている矯正装置として、透明のマウスピース状の型を一人一人の歯型に合わせて何通りも作り、ちょっとずつ歯を移動させるという方法も登場しました。どのような方法、装置を選択するかは、個々人の歯の状態や年齢、環境などがかかわってきます。まずは矯正専門医で、気軽に相談してみることをお勧めします。

2005年11月2日水曜日

「不妊治療」について

ゲスト/アップルレディースクリニック 工藤 正史 医師 

不妊治療について教えてください。

 不妊治療に関心のある人の多くが、治療によって、本当に子どもができるのだろうかと、不安に思っていることでしょう。多くの施設における最終的累積妊娠率(すべての初診患者で最終的に妊娠に至る率)は50%程度です。残りの50%は、治療が中断されたことになります。不妊に悩むカップルは10組中1組(潜在不妊人口120万前後)と多く、さらに、現在、出生児の100人に1人(年間1万2千人以上)が体外受精など高度不妊治療の結果、誕生しているのが現状です。ただし、体外受精といっても妊娠の成功率は決して高いものではありません。30歳前半までは30~40%前後の成功率であったものが、35歳を過ぎると20%以下、40歳を過ぎると10%以下になると考えられています。
 近年、結婚及び妊娠、出産年齢の高齢化が進んでいます。加齢による受精能力は30歳代初めころから徐々に低下しはじめ、35歳を過ぎると次第に加速します。35歳では、25歳の女性に比べて出産できる確率は半分になるという報告もありますので、不妊治療は早めに開始することが大切です。また、1/3は男性に原因があります。不妊症の場合は、夫婦揃って検査や治療に臨む必要があります。

費用の面でちゅうちょする人も多いと思いますが。

 札幌市では不妊治療の支援事業を行っています。札幌市が指定する医療機関で、特定不妊治療を受けた法律上のご夫婦である方が対象です。一年度10万円を上限として要した費用の1/2の額を通算2年間助成する制度です。ご夫婦の所得によっては制限があります。詳しくは札幌市不妊専門相談センター(TEL011-511-4500)に問い合わせるか、ホームページ(http://www.city.sapporo.jp/eisei/funin)をご覧ください。札幌市以外の住所を有する方は、お近くの保険福祉事務所または北海道保険福祉部こども未来づくり推進室(TEL011-231-4111内線25-770)へお問い合わせください。
 不妊治療は、努力しても報われないこともあり、ゴールの見えないマラソンに例えられます。このマラソンは決して競争ではありません。「つらい、疲れた」と感じたら、途中でコースを変更したり、リフレッシュのために少し休まれることも大切です。

2005年10月26日水曜日

「インフルエンザ」について

ゲスト/つちだ消化器循環器内科 土田敏之 医師 

インフルエンザについて教えてください。

 インフルエンザと、風邪と呼ばれる普通感冒とは、原因となるウイルスが異なります。風邪はのどや鼻に症状が現れるのに対し、一般にインフルエンザは突然の高熱や関節痛、筋肉痛といった症状が現れます。例年12月ごろから流行が始まり、3月下旬まで罹患(りかん)者が多く出ます。ただ、咋シーズンのインフルエンザは例年と異なり、1月から流行が始まり、6月上旬まで患者が見られました。微熱や平熱ということも多く、風邪との鑑別に苦労しました。
 インフルエンザが怖いのは、小児や高齢者がかかると気管支炎や肺炎、まれに脳炎などの合併症を起こし、重症化することです。体力が低下していたり、気付くのが遅れると、命にかかわることもあります。

インフルエンザの予防について教えてください。

 まず、帰宅時のうがいや手洗いは必ず実行してください。インフルエンザ患者のせき、くしゃみなどから飛沫(ひまつ)感染する場合が多いのです。湿度が下がるとのどの粘膜が乾燥し、免疫が低下してインフルエンザに罹患しやすくなります。室内では加湿器などを使用し、40~50%の湿度を保ちましょう。流行期の外出時にはマスクで乾燥を防ぐようにすると効果があります。もちろん、普段からの体調管理も重要です。バランスの取れた食事、十分な睡眠や休息を取り、体力低下を招かないように心掛けましょう。
 予防接種も有効です。特に、高齢者、気管支ぜんそくや肺気腫などの慢性肺疾患のある方、心疾患患者、透析患者、免疫が低下している方などは、ぜひ接種してください。さらに、社会的要因として、旅行や結婚式などの予定のある方、妊娠予定している方、受験生とその家族、小児と接している方、4日間程度の自宅療養が困難な方などにも、予防接種をお勧めします。
 予防接種の対象となるのは6カ月以上の小児、成人です。ただし重症の卵アレルギーの方は接種できません。予防接種は授乳中の方には可能ですが、 妊娠中の場合はかかりつけ医にご相談下さい。ワクチンによって、胎児に影響があったという報告はありません。

2005年10月19日水曜日

「前立腺がん」について

ゲスト/元町泌尿器科 西村昌宏 医師 

前立腺がんについて教えてください。

 前立腺は男性特有の臓器で、膀胱(ぼうこう)の出口で尿道を取り巻いている組織です。排尿回数の増加(特に夜間の排尿が2回以上起きる)、下腹部の不快感、排尿開始までに時間がかかる、尿が細い、残尿感があるといった症状は、良性の前立腺肥大症と、悪性の前立腺がんの初期症状の両方に共通します。正確な検査前にどちらかを判断することはとても難しく、また肥大症にがんを併発している例も珍しくはありません。そのため、「50歳を過ぎたらこんなものだろう」と安易に考えて放っておくと、がんの発見を遅らせることになります。
 前立腺がんの検査は、直腸からの触診や、超音波、MRI(磁気共鳴画像装置)などが有効ですが、血液検査による選別で手軽に検査することも可能です。血液を採取し、前立腺から分泌されるタンパク質の一種である前立腺特異抗原(PSA)を測定し、4.0~10.0ng/ml位だと前立腺がんの疑いが強くなります。さらに10.0ng/mlを超えた場合は、前立腺がんである可能性が高いといわざるをえません。

治療法と予防について教えてください。

 病気の進行度によって異なりますが、前立腺内にがんが限局している場合は、前立腺の全摘出が主体になります。お腹を切らずに腹腔(ふくくう)鏡を用いることもあり、術後の回復も早くなります。手術がどうしても嫌な場合は放射線による治療になります。放射線治療も有効ですが、放射線治療後の手術は極めて困難なので、注意が必要です。さらに進んだ状態である場合は、残念ながら手術の対象になりません。注射や内服薬で男性ホルモンを下げてがんの進行を抑える治療が一般的です。場合によっては、男性ホルモンを抑えるために精巣の切除をする場合もあります。
 予後のことを考えても、初期に発見することが肝心です。そのためには、先に述べた症状がなくても50歳を過ぎたら、少なくとも年に一度は血液検査によって、PSAチェックを行ってください。わが国においても、近年死亡者が増加してきている病気の一つですから、積極的に検査を受けるよう心掛けることが、何よりの予防となります。

2005年10月12日水曜日

「少ない永久歯(先天欠如)」について

ゲスト/つちだ矯正歯科クリニック 土田 康人 歯科医師 

生まれつき通常より歯が少ないということがあるのでしょうか。

 以前テレビでも「10年前に比べて現代人は歯の数が減っている」という特集がされていましたが、最近確かに生まれつき歯の数が少ない人「先天欠如」が増えているように感じます。乳歯が抜けたのに、いつまでも永久歯が生えてこない、もしくはいつまでも乳歯のままで生え変わる気配がなく、レントゲンで調べても永久歯が見えない場合です。6歳臼歯がいつまでも生えてこないという場合もあります。今まで診察した中では、本来あるべき永久歯が8本も欠けているという人がいました。本人が気付いて歯科医を訪ねる場合もありますし、ほかの歯の治療の過程で見つかる場合もあります。
 歯の数が少ないはっきりとした原因は分かりませんが、よくいわれているのは、人類の進化とともに、歯が退化傾向にあるということです。つまり、歯が少ない現代人は進化した形なのかもしれません。歯が少ないと咬(か)み合わせが崩れ、顎(がく)関節症などの原因になることがあります。
 また、逆に歯が多い「過剰歯」も見られます。上顎前歯部分に多く、隣の歯の根を溶かすなど、悪さをすることも多く、注意が必要です。

実際の治療について教えてください。

 足りない歯の個所にもよりますが、欠如した歯を補うために、奥歯から順に歯を移動して、空間を埋めます。永久歯が足りないと分かったら、なるべく早い時期から矯正治療を行い、歯を寄せたり押したりして、将来的には、見た目も機能面でも問題ないような歯並びにすることが可能です。また、なるべく乳歯を長持ちさせて、抜けたらブリッジにするという方法もありますが、その場合欠如している歯の前後の歯を削らなければなりません。健康な歯を削ることに抵抗がある人も多いでしょうから、やはり早めの受診で、治療の方針を話し合うことが大切です。ブリッジをするにしても、事前に矯正治療でやりやすい配置にすることが可能です。いずれにしても、生え変わり時期には、一度じっくりと矯正専門医で診察してもらい、本数を含め咬み合わせなどを検査してもらうと安心です。

2005年10月5日水曜日

「動脈硬化と肥満」について

ゲスト/青木内科クリニック 青木伸 医師 

動脈硬化症になりやすい体質というのはありますか。

 現在日本人の死因で一番多いのは脳梗塞(こうそく)、心筋梗塞などの動脈硬化症です。この病気になりやすい人の特徴が、最近明確になってきました。
 第一に肥満していることが挙げられます。日本人は欧米人と違って極端な肥満の人は少ないですが、いわゆる小太り程度の人が多いようです。肥満には2種類あって、一つは女性に多く見られる皮下脂肪が増える下半身肥満(別名:洋なし型肥満)です。この肥満は病気とはあまり関係ありません。もう一つが男性に多くみられる、内臓に脂肪が増えるビア樽型肥満(別名:リンゴ型肥満)です。ビア樽型肥満は病気の発症と深い関係があります。このタイプの肥満かどうかは、おへその高さでウエスト周囲を測れば分かります。男性は85cm以上、女性は90cm以上あれば、ビア樽型肥満です。
 ビア樽型肥満の人が、同時に糖尿病、高血圧、高脂血症を伴っていると、健康な人に比べて30倍も動脈硬化になりやすいのです。この病状は代謝症候群(メタボリック症候群)として、医学界でも注目されています。

動脈硬化症の予防方法を教えてください。

 第一に心掛けるべきなのが、肥満の解消です。特にビア樽型肥満の方はやせることが重要です。幸いなことに、ビア樽型肥満の方が、食事と運動によってやせようと努力すると、効果が出やすいのです。食事は野菜、魚を中心に、薄味にするようにします。ひと駅分歩くなど、日常的に体を動かすように努めましょう。毎日体重を量り、脱衣所に体重の動きをグラフで表記して張り、やせる指標としておくのも、目標ができて効果的な方法だと思います。合併している糖尿病、高血圧、高脂血症も、やせることによって改善する病気なので、努力のしがいもあると思います。これらの病気には薬物治療が必要なこともありますので、まずは専門医に相談するのがよいでしょう。治療がうまくいっているかどうかは、基準値がありますので、参考にするとよいでしょう。
 糖尿病はHbA1cが6.5%以下、血圧は130/80mmHg以下、総コレステロールは200mg/dl以下、中性脂肪は150mg/dl以下です。

2005年9月28日水曜日

「網膜はく離」について

ゲスト/あびこ眼科クリニック 安孫子 徹 医師 

網膜はく離について教えてください。

 網膜とは、眼球壁の内膜で、カメラのフィルムに相当する部分です。光を感じる感覚網膜が、その土台となる網膜色素上皮からはがれるのが、網膜はく離です。網膜はく離が生じると、はく離部分に対応する視野が見えにくくなり、網膜の中央部分である黄斑まではがれると著しく視力が低下します。網膜はく離の原因で代表的なものは、網膜の裂孔(裂け目)から眼球内の水分が網膜の後ろに流れ込み、はがれていく裂孔原性網膜はく離です。眼球内の大部分は硝子(しょうし)体という無色透明のゼリー状の組織で占められていますが、加齢とともに液体となって収縮していきます。網膜の変性などで硝子体と網膜が強く癒着している部位があると、収縮する硝子体に網膜が引っ張られ、引き裂かれて裂孔となり、網膜はく離につながります。硝子体には加齢により濁りが生じ、糸くずやリング状の黒い影がヒラヒラ見えることがあります。これは飛蚊(ひぶん)症といい、多くは生理的なもので心配いりませんが、網膜裂孔が生じるときに網膜血管が切れて出血したり、裂孔を通して色素上皮細胞が硝子体中に飛散すると、飛蚊症が極度に増加します。

裂孔原性網膜はく離の治療について教えてください。

 網膜裂孔の原因となった硝子体の網膜牽引(けんいん)を緩めて、網膜の後ろにたまった液体を排出し、裂孔をふさいで治療します。方法としては、眼球の外側からシリコン性のバンドを縫い付けて眼球壁を内陥させるやり方と、眼球内部に手術器具を挿入し、硝子体を切除し、眼内にガスを注入するやり方があります。いずれも入院しての治療になります。網膜はく離が生じる前の網膜裂孔の段階で発見できれば、レーザー網膜光凝固術によって、裂孔周囲を固着させ、網膜はく離を予防することができます。入院の必要もなく、外来治療によって短時間で行うことが可能です。
 飛蚊症が極端に強まった人、あるいは網膜周辺の変性を伴うことの多い強度の近視の人は、ぜひ一度、眼科専門医による眼底検査を受け、網膜はく離の予防に努めましょう。

2005年9月21日水曜日

「冠動脈バイパス手術」について

ゲスト/北海道大野病院附属はまや循環器クリニック 浜谷秀宏 医師

狭心症の治療方法について教えてください。

 心臓は休みなく働いている臓器で、常に多くのエネルギーを必要としています。このため、心臓の表面には冠動脈という直径2~4mmの血管が走っていて、この冠動脈により、心臓にも血液が常に供給されています。この冠動脈に動脈硬化が進行し、内側に狭い部分ができ、心臓が必要とする血液を十分に供給できなくなる病気が狭心症です。
 治療法としては、大きく三つの方法があります。一つ目は薬による治療法です。薬で症状が十分に改善されなければ、二つ目はカテーテルという細い管を使用し、冠動脈の狭い部分を風船などで広げる治療法
(PCI)があります。PCIは、技術の著しい進歩により、治療成績も飛躍的に向上しています。ただし、冠動脈の狭い部分が、広げるには困難な場所であったり、広げなければならない個所がたくさんある場合などは、三つ目の治療法の冠動脈バイパス手術という手術があります。

冠動脈バイパス手術について教えてください。

 冠動脈バイパス手術とは、冠動脈の狭くなった部分の下流に別の血管(バイパス)をつないで、血液の流れを回復させる手術です。バイパスに使用される血管としては、肋骨(ろっこつ)の裏側を走行している内胸動脈という血管や、胃の縁を走行する胃大網動脈という血管を使います。場合によっては、腕の動脈や足の静脈も使われます。バイパス血管をつなぐ部分の冠動脈は直径2~3mmですので、細かな技術を要します。そのため、冠動脈にバイパスをつないでいる間は、心臓を一時的に停止させて、心臓の代わりに人工心肺という一種のポンプで酸素を含んだ血液を全身に循環させながら手術を行います。
 ところが、ここ数年、人工心肺を使用しない、つまり心臓を停止させない状態のまま、冠動脈バイパスをつなぐことも行われるようになってきました。ポンプを使用しないので、オフポンプバイパス術あるいは心拍動下バイパス術と呼ばれています。人工心肺を使用しない分、体にはやさしい手術ですが、外科医にとっては、より熟練した技術が必要で、経験の多い信頼できる病院を選ぶことが大切です。

2005年9月14日水曜日

「子どもの虫歯予防」について

ゲスト/庄内歯科医院 庄内 淳能 歯科医師

子どもの歯のケアについて教えてください。

 歯の管理は生まれた時から始まります。まれに、生まれた時点で歯が生えている子どもがいますが、これは先天性歯といい、多くの場合過剰歯です。反対側の歯茎を傷つけたり、授乳がうまくいかないことがあるので、すぐに小児専門の歯科医に行ってください。また、歯が生える前に口の中をガーゼでぬぐうお母さんがいますが、特に必要ではなく、むしろ傷つけたり、雑菌が入る可能性があります。
 歯が生え始めるのは生後6カ月くらいからです。最初の歯が生えたら、小児歯科へ行って、フッ素を塗布しましょう。子どもの場合はう蝕(虫歯)の進行が早いので、3カ月に一度は検診を受けるのが理想的です。離乳食で注意してほしいのが、一度大人の口に入れた食べ物やはしなどを子どもの口に入れないことです。虫歯はミュータンス菌によって感染するものなので、大人の唾液(だえき)のついた食品や食器で、赤ちゃんの口にうつしてしまう可能性が大きいのです。とはいえ、ミュータンス菌から一生守ることは難しいので、なるべく感染を防ぎながら、虫歯予防を徹底させなくてはいけません。

効果的な虫歯の予防方法を教えてください。

 予防のための定期検診は、子どもに「歯科医院=恐ろしい」というイメージを植え付けないためでもあります。検診では痛いことをしません。もし検診で虫歯を発見しても、小さな虫歯の治療で済むはずです。逆に虫歯が痛むようになってからでは、歯科医嫌いになり、ますます虫歯を増やすことになります。定期的に歯科医を受診していると、歯並びの異常や、将来歯並びに影響する舌の悪癖などを早期に発見できます。仮に矯正が必要になっても、早くに治療を組み立てられます。
 家庭での虫歯予防は、ブラッシングです。歯が一本でも生えたら、歯磨きのスタートです。大人がしっかりと磨いてください。「嫌がるから」と、きちんと磨かないと、歯磨きを習慣づけることができません。3歳ころからは自分で磨かせ、必ず大人が仕上げをしてください。小学校5年生くらいまでは、歯磨き後の仕上げ点検をしてあげてください。

2005年9月7日水曜日

「関節の音」について

ゲスト/山口整形外科クリニック 山口秀夫 医学博士 

関節の音について教えてください。

 指を引っ張ったり、首を曲げたりすると「ポキッ」「ポキッ」と音が鳴ることがよくあります。これは関節を急に引っ張ったり、曲げたりすることによって、関節内が真空になり、関節液中の窒素が気化し、それがはじけることによって生じる音です。このような音は特に心配することはありません。
 しかし、膝(ひざ)の音の場合は、病気である可能性が高いので、注意が必要です。膝の曲げ伸ばしで、膝蓋骨(いわゆる「お皿」と呼ばれる部分)の内側に、「コクン」「コクン」と引っ掛かるような音や感触があったら、棚障害という病気が考えられます。これは、大腿(だいたい)骨と膝蓋骨の間にある、棚と呼ばれる膜が、厚くなったりさけたりして、曲げ伸ばしの際にお皿の下に挟まれ、音と痛みを生じさせます。棚は生まれつきある人とない人がいて、若くして膝の痛みを訴える場合はこの病気である可能性があります。
 座っていた姿勢から立ち上がろうとした時に、膝が伸ばせなくなり、内側や外側に激痛を感じ、ゆっくり伸ばそうとすると、何度目かに「クキッ」と音が鳴り、伸ばせるようになったら半月板障害が考えられます。膝にはクッションの役目をする半月板という軟部組織があります。半月板は膝の内側と外側の二カ所に存在しており、クッションの役目のみならず、関節の安定性にかかわる非常に重要な組織です。急に関節をひねったり、何度も同じ動作を繰り返すことで、傷つくことがあります。スポーツ選手に多い病気です。
 歩いている時いつも「ジャリッ」「ジャリッ」と音がしたら、変形性関節症という病気でしょう。膝関節内の軟骨の摩耗や骨の変形が原因で、主に加齢によって引き起こされます。
 いずれにせよ膝から聞こえる音は、関節内の軟部組織(関節包、滑膜、半月板)が関節軟骨に挟まれて発生します。長期にわたってこの状態が継続すると、関節軟骨を傷つけたり、関節に水がたまる関節炎を起こすことになります。膝から音が聞こえたら、ぜひ早めに整形外科の専門医の診察を受けられることをお勧めします。

2005年8月24日水曜日

「胃ポリープ」について

ゲスト/やまうち内科クリニック 山内 雅夫 医師

胃ポリープについて教えてください。

 胃ポリープとは胃内腔(ないくう)へ突出した隆起性病変の総称ですが、通常はがんを除いたものをいい、胃底線ポリープ、過形成ポリープ、胃腺腫の3種類に分類されます。
 胃底線ポリープは、胃の上部(食道側)から中部に見られる表面が平滑な小さな半球状のポリープで、正常な周囲の胃粘膜と同じ色調です。胃酸などを分泌する胃底線が増殖したもので、しばしば多発しますが、がん化することはありません。
 過形成ポリープは、半球または球形で、茎を有するものも見られます。赤色で、ときにはイチゴ状になることもあります。直径10mm以下のものが多いのですが、大きなもの、特に20mm以上のものになるとびらん、出血を伴い、まれにがん化していることがあります。
 胃腺腫はやや白っぽい扁平(へんぺい)隆起で、良性とがんの境界領域の病変です。大きいものでは腺腫の
一部ががん化していることがあり、注意が必要です。
 胃ポリープに特有の症状はありませんが、過形成ポリープと胃腺腫は、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染による萎縮(いしゅく)性胃炎を有する胃粘膜にできるので、萎縮性胃炎の症状すなわち胃部不快感、腹満感などを伴うことがあります。萎縮性胃炎は、粘膜が薄くなり胃腺が働かなくなって粘膜が萎縮する疾患です。

胃ポリープの検査、治療について教えてください。

 胃内視鏡検査を行い、ポリープなどの病変の一部を採取することを生検といい、病変の全体を電気的に焼き切って採取することを内視鏡的ポリープ切除術(内視鏡的胃粘膜切除術)といいます。これらによって得られた検体を顕微鏡的に検索することによって、病変部の正確な診断が可能となります。一般的にはまず生検が行われ、その結果がんである、あるいはがんが疑わしいと診断された場合に、治療の意味合いも兼ねて内視鏡的ポリープ切除術が行われます。大きな過形成ポリープ、あるいは胃腺腫ではがん化の可能性がありますので、内視鏡的ポリープ切除術が望ましいと考えられています。胃ポリープに対し、薬物治療は通常行われていません。

2005年8月17日水曜日

「成人の歯科矯正治療」について

ゲスト/北大前矯正歯科クリニック 工藤 章修 歯科医師

成人の矯正治療について教えてください。

 現在、成人の矯正治療は少なくありません。噛(か)み合わせが悪い、骨がずれているなど、先天的な問題を抱えながら、子どものころに矯正治療を行う機会がなかった人もいます。また、歯槽膿漏(のうろう)、歯茎(ぐき)の炎症など、後天的な環境因子によって歯がずれる、顎(あご)がガタガタする、という問題を抱えることもあります。このような、機能的な問題を解消するために歯科矯正を行う人は、全体の2~3割。残りは、容貌(ようぼう)を整えたいという、審美的な面が動機になることが多いようです。
 矯正治療は、個人差はありますが、平均して2年から3年半の期間がかかりますから、期間や費用について、専門医と納得のいくまで話し合ってください。自分の歯の問題点と治療方法のほか、矯正後は顔の形が変わること(たいてい顔貌は改善します)もあるので、医学的見地から筋道を立てて説明してもらうのがよいでしょう。通院にかかる時間と仕事の両立、治療の継続が生活にどの程度影響するかなど、心配事をすべて解消してから、治療に臨むことをお勧めします。

矯正装置が目立つのではないかと心配なのですが。

 矯正装置は現在、装着時の違和感を与えないように、医療サイドからもさまざまな材質のものが提供されています。最も目立たないものは、インビジブル・ブレイス(舌側矯正装置)という、歯の裏側に装着する装置。しかし通常の装置に比べ、食べづらさ、話しづらさを訴える人もいます。歯の表側に装着するものでも、光の透過度が歯の色に近く、目立たない、審美的な矯正装置もあります。また、「見せて楽しもう」という逆転の発想で、カラフルな矯正装置を着ける人も増えています。数十色のパステルカラーから選べるものもあります。どの装置にも一長一短があるので、よく説明を受けたうえで、選ぶことが大切です。いずれの場合も、歯並びが良くなり、口元の美しさが出てくれば、矯正装置そのものは、それほど目立たなくなり、気にならなくなります。
 歯科矯正は、本人の満足感も大切です。歯並びで少しでも気になる点があれば、一度専門医に相談してみることをお勧めします。

2005年8月10日水曜日

「子宮筋腫」について

ゲスト/札幌東豊病院 黒木 勝円 医師

子宮筋腫について教えてください。

 子宮筋腫とは平滑筋と呼ばれる子宮の筋肉組織から発生する良性の腫瘍(しゅよう)で、成熟女性の3、4人に1人の割合で出現する極めて高頻度な疾患です。年代的には40代以上に多いのですが、20代でも珍しくありません。症状としては、過多月経、不正出血、それらによる貧血、時に月経困難などがあります。特に過多月経は粘膜下筋腫に顕著です。子宮筋腫があると、不妊や不育症の原因になることもあります。発生のメカニズムは、いまだに不明ですが、女性ホルモン(エストロゲン)がその発育に関係しているといわれています。
 筋腫は発生部位によって、漿膜(しょうまく)下筋腫、筋層内筋腫、粘膜下筋腫の3つに分けられます。不妊や不育症の原因になりやすいのが、子宮内腔に突出する粘膜下筋腫です。診断は問診、内診、超音波診断、場合によってMRI(磁気共鳴画像)などの検査を行って確定します。子宮筋腫と鑑別の必要な疾患としては、子宮腺筋症(子宮内膜症の一種)、充実性卵巣腫瘍、頻度は非常にまれですが悪性度の高い子宮肉腫などがあります。

子宮筋腫の治療方法について教えてください。

 筋腫の場所、大きさ、症状の有無・程度などによって治療方法は異なります。筋腫が小さく、症状もなければ、そのまま経過観察をする場合もあります。症状が軽ければ、筋腫を成長させるエストロゲンを人工的に止め、偽閉経状態にするホルモン療法を用いることもあります。筋腫による症状があったり、筋腫が不妊や不育症の原因になっている場合は手術を行います。かつては、妊娠希望のない場合は腹式あるいは膣(ちつ)式による子宮全摘出術、妊娠希望のある場合は腹式による子宮筋腫核出術が一般的でした。最近はそれに加え医療機器の進歩により子宮鏡や腹腔鏡による手術も行われてきています。特に粘膜下筋腫には子宮全摘出が一般的でしたが、レゼクトスコープという内視鏡によって筋腫だけを切り取る手術が主流になってきています。子宮筋腫はがんなどと違い悪性ではない分、大きさ、症状、妊娠の希望、年齢など総合的に考えて、治療方針を決める必要があります。納得できるまで主治医に相談することをお勧めします。

2005年8月3日水曜日

「動脈硬化を予防するために」について

ゲスト/大通り内科クリニック 小森 克俊 医師

動脈硬化について教えてください。

 動脈硬化は、日本人の3大死因のうち、がんを除く、脳血管障害と心疾患をもたらす病因の一つとなっています。そして、動脈硬化を起こしやすくする要因となるのは、糖尿病、高血圧、高脂血症などの生活習慣病です。それぞれの生活習慣病の程度は軽くても、これらのリスクをたくさん持っていると動脈硬化の危険性が高まります。近年、このような状態をメタボリック・シンドロームと呼ぶようになりました。2005年春には、日本内科学会など8つの学会が合同で日本のメタボリック・シンドロームの定義と診断基準を発表しました。欧米の診断基準との最大の違いは内臓脂肪の蓄積が必須条件となっていることです。ウエスト回り(一番細いところではなく、おヘソの部分)が、男性で85cm以上、女性で90cm以上。加えて、高中性脂肪血症、高血圧、糖尿病(予備軍を含む)のどれか2つ以上が当てはまれば、メタボリック・シンドロームと診断されます。

メタボリック・シンドロームと診断されたら、どのような点に注意すればいいですか。

 高脂血症、高血圧、糖尿病の中で、特に糖尿病は、ここ数年、日本で患者数が急増しています。糖尿病の主な原因は、食生活の欧米化による動物性脂肪の取り過ぎや運動不足です。健康維持には、糖質が60%程度、脂肪とタンパク質がそれぞれ20~25%程度の食事が理想的ですが、これは米や野菜、魚を中心とした一般的な和食の数値です。昔からこのような食事を続けてきた日本人は、欧米人に比べてすい臓から分泌されるインスリンの量が少なく、元来糖尿病になりやすい体質を受け継いでいるといえます。肥満、高血圧、甘いもの、アルコール、高脂肪の食事を好む人は予備軍の可能性があります。ただし、同じ生活をしても体質的に病気になる人とならない人がいるので、近親者に糖尿病患者がいる場合は要注意です。健康で長生きするためには、まず自分が予備軍かどうかを知ることが大切です。40歳を過ぎたら、年に1度は専門医の検査を受け、メタボリック・シンドロームと診断されたら、まずは食生活の改善と運動を心掛けましょう。

2005年7月27日水曜日

「慢性咳嗽(がいそう)」について

ゲスト/大道内科・呼吸器科クリニック 大道 光秀 医師 

しつこく長引くせきについて教えてください。

 せきが8週間以上続く場合を専門的には慢性咳嗽といいます。その原因を大きく分けると、
(1)肺がん
(2)微生物による感染症(結核、マイコプラズマ肺炎など)
(3)アレルギーによるもの 
(4)間質性肺炎 
(5)肺気腫などがあります。
原因を調べるために、胸のレントゲン撮影、たんの検査、肺機能検査をします。マイコプラズマ肺炎、結核、間質性肺炎などはレントゲン写真で異常な影があることから分かります。小さな影はコンピューター断層写真(CT)を撮ることで診断します。結核は過去の病気と思われがちですが、抵抗力の落ちた高齢の方がかかりやすく、集団感染をも引き起こします。良い薬がありますので、きちんと服用すれば6カ月で治ります。

最近では、どのような原因が多いですか。

 最近多いのが、アレルギーによるせきです。熱がなく、レントゲンも正常なのに、せきが続く場合は、アレルギーによるせきが考えられます。日中よりも夜間に多く、せきで眠れないこともあります。これには、
(1)せきとぜんそく、
(2)アトピー咳嗽の2種類があります。
以前は、ぜんそくというとゼーゼーするのが特徴でしたが、最近はゼーゼーのない、せきだけの「せきぜんそく」が増えています。ゼーゼーするぜんそくは、肺機能検査をすると分かります。ゆっくり吸ったり吐いたりする肺活量は正常ですが、大きく吸って、一気に吐く量(1秒量)が低下します。しかし、せきぜんそくでは1秒量も正常のため、喘息かどうか決めるのが難しいです。せきぜんそくの場合、気管支拡張剤が効きます。一方、アトピー咳嗽は、ハウスダストや花粉などアレルゲンによってアレルギー性のせきが続くのですが、気管支拡張剤が効かず、抗アレルギー剤が効きます。この両者を区別するのは、せきせんそくでは3割がゼーゼーするぜんそくに移行するので、ぜんそくの治療を長く続ける必要があるからです。アトピー咳嗽では、アレルゲンを突き止め、発生する季節のみ、せき止めと抗アレルギー剤を服用するだけで良いです。少ないながら、最近増えてきた原因として、逆流性食道炎に伴うせきがあります。逆流性食道炎の薬がよく効きます。せきが続くと体力を消耗させます。原因を特定し、それに合った治療を受けましょう。

2005年7月20日水曜日

「矯正治療の開始適正時期」について

ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治 正光 歯科医師 

矯正治療は開始の時期が重要だと聞きますが。

 まず、知っていただきたいのは、矯正治療の技術は日進月歩で進歩しており、歯や歯周組織が健康であれば、年齢にかかわりなく、ほとんどの症例に対して治療可能であるということです。成人であっても、矯正治療によって美しい歯並びにすることができます。また、上顎(あご)、下顎のずれ、骨格的偏位が前後左右に大きい場合には、外科手術を伴う矯正や、インプラント矯正を併用して、きれいな咬(か)み合わせにすることができます。すでに成人しており、矯正治療は無理だと考えている人も、一度専門医を訪ねて相談してみるといいでしょう。歯並びや咬み合わせが正しいと、顎関節症などの疾患になりづらいだけではなく、自分に自信を持つことができます。

では、適正時期とは何でしょうか。

 例えば、上顎前突の場合、一般的に上顎が出ているように思われがちですが、下顎が小さいことが原因であることが多いのです。その状態のまま放置して成人になり、顎の成長が望めなくなった場合、抜歯や外科矯正になる可能性が高くなります。しかし、最適正時期である9~11歳であれば、バイオネーターなどの機能的顎矯正装置と呼ばれるものを寝るときだけ使用するだけで、下顎骨の前方成長を促し、バランスの取れた横顔にすることができます。横にも拡大することができるので、抜歯する確率も下げることになります。
 すなわち、適正な時期に矯正治療を開始することで、骨格のコントロールを行い、上下顎をバランスの良い状態にし、抜歯率や外科矯正率を下げることができるのです。決して歯を抜く治療がいけない訳ではなく、適正な時期に始めることによって選択肢が広がると考えてください。
 また下顎前突の場合は、下顎がより前方に成長するのを抑制したり、小さめの上顎が前方に成長するのを促進したりします。この場合の最適正時期は6~9歳です。お子さんの歯並びが気になる場合は、前歯だけでは判断が難しいので、小学校入学前後に、一度左右のずれも含めて専門医に相談することをお勧めします。

2005年7月13日水曜日

「陥入爪(かんにゅうそう)」について

ゲスト/緑の森皮フ科クリニック 森 尚隆 医師

陥入爪とはどのような症状でしょうか。

 つめの端が丸く巻いて生え、皮膚の中にめり込んでいく状態のことです。多くは足の親指にでき、一般に「巻きづめ」と呼ばれます。原因は、合わない靴を履いている、歩き方に癖がある、スポーツをしている、立ち仕事が多いなどの外的刺激の場合もありますが、深づめによるものが特に多いです。歩いたときに床からの力で皮膚がつめの縁から持ち上がり、つめを押して巻きづめになります。症状は、赤み、腫れ、痛みの出現する炎症期から始まり、皮膚につめが陥入し膿(うみ)が貯留する化膿(かのう)期へと進みます。さらに、つめの刺激に反応し、赤い肉が盛り上がってくる肉芽期となります。多くの患者さんは、痛みの原因であるつめを深く切って、痛みを和らげようとします。この行為が症状を悪化させることになります。深づめすること自体が、皮膚を傷つけます。つめの形状は、側縁で固定されることにより保たれているため、そこが切られて遊離した状態が続くと、つめの変形が進行します。また、つめを切った外側に、つめの一部がトゲ状に埋没されている場合が多く、それが刺激の原因になります。陥入爪はつめの根元の段階で既に巻いています。先端だけを切り取ってもまた下から巻いたつめが次々と生えてくるので、つめの形状をすっかり治してしまわない限り、炎症や化膿を繰り返してしまいます。

治療法と予防を教えてください。

 治療法は、つめを一部切除する、つめの根本を切除する、超弾性ワイヤーや形状記憶合金プレートなどの新素材を用いて、つめを徐々に良い形へと矯正する方法などがあります。また化膿した場合は、抗生物質などで炎症を抑えます。盛り上がった肉芽は硝酸銀などで切除し、圧迫固定して治療します。重症のものは炭酸ガスレーザーで切除します。
 予防としては、つめは深づめせずに両端の角を四角くします。端を丸く切るとつめが食い込みやすくなります。つめを内側に押しつける幅の狭い靴は避け、足先の横方向に余裕のあるデザイン、サイズを選ぶようにしてください。

2005年7月6日水曜日

「前回帝王切開後の経膣分娩(ぶんべん)」について

ゲスト/医療法人社団 産科婦人科 はしもとクリニック 桑原 道弥 医師 

前回の分娩は帝王切開で、今回は経膣分娩というのは可能ですか

 帝王切開をしたときの原因が今はなく、今回の妊娠に関して経膣分娩をすることに関して問題点がなければ、一般的には60~80%で経膣分娩ができるといわれています。帝王切開を受けた方が次回以降の分娩で、経膣分娩をする際に、最も問題となるのは子宮破裂です。子宮破裂はおよそ1%の確率で起こるといわれており、その発生は突発的です。ひとたび起これば、赤ちゃんが死亡する可能性はかなり高く、たとえ助かったとしても高率で脳性まひや精神発育遅滞が起こります。帝王切開後の経膣分娩における分娩前後の赤ちゃんの死亡率は、予定帝王切開をした場合の10倍以上になるといわれています。また、子宮破裂は母体死亡の原因となることもあるので、慎重に考えなくてはなりません。
 今から十数年前、アメリカでは帝王切開の率がかなり高くなり、医療費を抑えることを目的に帝王切開後の経膣分娩が推奨されるようになりました。日本でも追随して経膣分娩が推奨されるようになりましたが、その後、アメリカで追跡調査をしたところ、子宮破裂に関連する有害事象のために総医療費が逆に高くなったため、現在では帝王切開後の経膣分娩を逆に制限する方向になってきています。

帝王切開には危険はないのでしょうか。

 まったく危険がないわけではありません。特に最近は、帝王切開後に血栓症による重篤な合併症が多いといわれており、その予防に努める必要があります。また、麻酔に関連するトラブルもあります。しかし、赤ちゃんに関しては帝王切開の方が、経膣分娩よりも安全です。それでも、帝王切開後に経膣分娩をしたいということであれば、かかりつけの病院、担当の医師とよく相談してください。
 アメリカでは、産科医師、麻酔科医師、小児科医師など十分なスタッフと設備があり、24時間緊急帝王切開が迅速に行える施設でということになっています。子宮破裂の発生から17分以内に帝王切開で赤ちゃんを娩出した例では、赤ちゃんに後遺症はなかったという報告がありますので、そのような対応ができる施設かどうかが重要です。

2005年6月22日水曜日

「パニック障害」について

ゲスト/メンタルケアさっぽろ西口クリニック 鈴木将覚 医師 

パニック障害について教えてください。

 パニック障害は、20年ほど前から分類されるようになった比較的新しい疾病です。それ以前には不安障害の一つとして認識されていました。症状としては、突然、動悸が激しくなり、息苦しくなったり、めまいや冷や汗、手足の震えに襲われます。初発時や症状の強い人は、このまま心臓発作や呼吸困難を起こして死んでしまうのではないかという恐怖を感じます。救急車を呼ぶこともまれではありません。患者さんは、まず自分の心臓などに原因があるのだろうと、内科を受診しますが、内科的には何も問題がありません。この時点でパニック障害であると判断され、心療内科や神経科の受診を勧められれば、早くに治療を開始できます。

原因や治療方法、対処方法を教えてください。

 パニック障害は、人口の2%程度の割合で発症し、男女ともなりますが、20~30代の女性に比較的多くみられます。原因は特定されていませんが、自律神経の一時的な乱れによる交感神経の誤作動によって症状が引き起こされると考えられます。そのきっかけとなるのは、疲労やストレスなど、ささいなことである場合が多いのです。一度経験すると、「いつなるんだろう」「次は死んでしまうかも」「最初になった場所や経験によって、再度発作に襲われるのでは」と不安を感じるようになり、この予期不安によって、また発作を誘発することになります。
 治療法としては、安定剤、抗うつ薬などの服用によって発作を抑えつつ、心理面で不安が起きにくいようにケアをします。不安は打ち消そうとするとかえって意識してしまいます。即効性のある薬をお守り代わりに携帯し、「パニック発作が起きなければラッキー」くらいの気持ちで対処し、もし発作に見舞われても10分ほどで治まるのだから、大丈夫だと理解しておくといいでしょう。ある程度の期間、治療を受ければほとんど治る病気です。ただし、治療を受けず不安感を我慢し、外出を控えた結果、気分がふさいでうつ状態に陥ってしまうと治るのに時間がかかります。早めの治療で、早期に回復することができます。

2005年6月15日水曜日

「歯ぎしりと昼間の噛(か)みしめ」について

ゲスト/石丸歯科 石丸俊春 歯科医師

歯ぎしりと噛みしめについて教えてください。

 歯ぎしりというと、睡眠中にキリキリと不快な音をたてるというイメージがありますが、食事以外で上下の歯の異常な接触「噛みしめ」を含めて、ブラキシズムと呼ばれています。ブラキシズム習癖は決して珍しいものではなく、90%以上の人に見られ、ほとんどの場合は問題なく生活しています。しかし最近ブラキシズムによって、さまざまな病状を訴える患者さんが増えています。原因の一つはストレスと考えられています。

就寝時の歯ぎしりについて教えてください。

 就寝時の歯ぎしりは、一緒に寝ている人が週に5回以上の歯ぎしり音を確認した場合が診断基準となります。歯の痛みや摩耗(まもう)など、悪影響がある場合はナイトガード(歯ぎしり防止装置)の装着など治療方法も確立しています。また、子どもの歯ぎしりは、乳歯と永久歯の混合時によくあることなのでほとんど心配する必要はありません。

昼間の噛みしめとはどんな状態でしょうか。

 音がしないので自覚がないまま、歯の痛み、摩耗、破折、歯肉炎、歯周炎、顎(がく)関節症などの原因となっていることがあります。さらに、顔面痛、頭痛、耳鳴り、めまい、肩こり、腕のしびれ、腰痛、舌痛症、むちうち症状、けん怠感など、一般には歯と無関係と思われがちな症状を呈することもあります。他科を受診しても原因が分からず不定愁訴と診断されている人は、一度噛みしめを疑ってみるといいでしょう。
 長時間のパソコン操作やピアノ演奏、読書や書き物、裁縫、料理などに熱中し、前かがみの姿勢を続けることによって、噛みしめのほか、舌が低位置(舌で下の前歯を裏側から押している状態)にあったり、舌や咀嚼(そしゃく)筋などの口腔(こうくう)周囲筋や、顔面筋の緊張が持続、舌や頬粘膜に圧痕が見られるなどの現象が口腔内で起こっています。これらが、さまざまな症状を誘発しているのです。
 対策としては、日中に噛みしめていないかを自分でチェックする、作業や食事中の姿勢を正しく保つ、舌の位置の改善(正しい位置は上前歯の内側)、開口(かいこう)訓練、就寝前のリラックス、正しい咀嚼の訓練、喜怒哀楽を表し表情筋を使うなどがあります。噛みしめが気になる人は、一度専門医を受診することをお勧めします。

2005年6月8日水曜日

「白内障」について

ゲスト/大橋眼科 大橋 勉 医師

白内障の症状、治療について教えてください。

 眼球の中でピントを合わせる働きをするレンズ部分(水晶体)が濁るために起きる視力障害が、白内障です。40歳以上の方に多く、最も多いのが加齢に伴う老人性白内障です。眼(め)のかすみ、霧がかかったような視力低下、明るい場所で見えにくいなどの自覚症状があります。治療としては、点眼薬が主に投与されますが、老化現象の1つなので、最終的には手術が必要になります。

白内障の手術はどのようなものですか。 

 日本で行われている白内障の手術は年間80万件、眼科手術の約8割に及ぶといわれています。現在最も行われている手術は水晶体を包んでいる袋を残し、袋の中の濁りを超音波を利用して細かくして取り除き、その袋の中に人工レンズを挿入するものです。まだ日本では承認されていませんが、最近では袋の中で動いてピント合わせのできるレンズなど、より高性能なレンズの研究開発も盛んです。手術自体は安全性の高いものですが、患者さんによって眼の状態はさまざまなので、同じ白内障の手術でも難易度に差があります。手術のしにくい眼とは、小さい眼や奥眼(おくめ)、角膜の濁りがある眼、袋を支えている糸が弱い眼などです。最も合併症が起きやすいのが、進行して真っ白になった白内障です。進行した白内障の濁りは非常に固く、超音波で細かくすることができにくかったり、袋を支える糸が弱いことが多く、袋が破れて、濁りが眼の中に落下するような合併症が起こる可能性が高くなります。
 最近よく見かけるのは、片方の視力が良いため、進行した白内障を放置されている方が多いことです。進行は左右バラバラなので、「片目が見えるから」と放っておかず、早めに検査を受けることをお勧めします。白内障手術の合併症で怖いのは、術後に眼内でばい菌が繁殖し、網膜自体が死んで失明に至ることがまれにあります。これは1万人に1人という珍しい状態です。白内障手術はあまり進行しないうちに手術を受けた方が、合併症が少なく予後が良好です。気になる人は、経験豊富な専門医で早めに受診することをお勧めします。

2005年6月1日水曜日

「肌と漢方」について

ゲスト/宮の森スキンケア診療室 上林 淑人 医師

漢方治療について教えてください。

 西洋医学では、「発熱したら解熱剤」「細菌感染には抗生物質」といったように、対症療法が基本になります。東洋医学は、体全体の中でバランスの崩れから生じるゆがみを症状としてとらえ、これを補正することによって治療していこうという考え方です。東洋医学の中心の一つが漢方薬を用いた漢方治療です。漢方薬は主に薬草の茎や根、葉などから得られる生薬を組み合わせたものです。漢方治療では、症状に対してだけではなく、個々人の体格や体質などを総合的に見て、その人に合った薬を処方します。言い換えれば「一人一人に合わせたオーダーメードの医療」といえるでしょう。例えば、体力があり赤ら顔で精力的な人のニキビと、冷え性で疲れやすく虚弱な人のニキビでは、同じニキビでも発症にいたる経緯や原因が違います。そこで、それぞれの体格や体質などを考慮して、その人に合った漢方薬が処方されるのです。

肌のトラブルに漢方薬は有効ですか。

 漢方治療ですべての肌トラブルが解消されるというものではありません。西洋医学と東洋医学の良い所を両方取り入れて肌のトラブルに役立てるのが基本です。症状によっては効果が速やかに現れることも多くありますが、多少時間をかけてじっくりと症状を改善していくこともあります。また、経過を見ながら処方を変えていくこともあります。
 比較的漢方治療が適応しやすいのは、ニキビ、蕁麻疹(じんましん)、アトピー性皮膚炎などです。特に女性の場合は、肌のトラブルだけでなく、生理不順や冷え性、便秘など漢方薬が比較的効きやすい症状で悩まされている場合が多く、漢方治療が効果的なようです。漢方薬を処方する際は、詳しい問診や脈診、舌診、腹診など、一見無関係と思われることまで細かく診て、処方内容を決定します。
 漢方薬は副作用も少なく体への負担も軽いといわれています。またほとんどの漢方薬は健康保険が適用になっています。

2005年5月25日水曜日

「ストレス」について

ゲスト/五稜会病院  千丈 雅徳 医師

ストレスについて教えてください。

 精神的緊張のことをストレスといいますが、その度合いは性格や環境など個々人の要素によって異なります。ストレスはささいなことでも感じます。身近な例としては、暖かい屋内から戸外に出て、寒いと感じることもストレスです。また、昇進や進学など、一般的には良いことと思われるようなことでも、本人にとってはプレッシャーが強く、ストレスになることもあります。精いっぱい頑張ってきたのに、環境の変化などでその枠組みが変わることによって、不安を増加させるからです。ストレスを感じた場合、それをどう解消していくかが大きな問題です。うまく解消できれば深刻になることはないのですが、感情を抑え込む状態が続くと、心の病に発展する可能性があります。
 これといった原因がなく、身体がだるい、疲れがとれない、眠れない、いらいらするといった症状の多くは、ストレスが引き金となっており、主に身体症状の場合は「心身症」、精神症状の場合は「うつ」となります。代表的な身体症状は、高血圧、慢性胃炎、神経性皮膚炎などで、高血圧から不整脈、狭心症、心筋梗塞(こうそく)などの循環器疾患、胃炎から胃潰瘍(かいよう)や十二指腸潰瘍といった消化器疾患を引き起こしてしまうこともあります。うつの症状は悪化すると自殺に直結する可能性があります。

ストレスとどう付き合えばいいのでしょうか。

 日ごろからストレスを受けたときに、家族や友人など信頼できる人に相談することができれば、古典的ですがもっとも効果的な解消方法です。身近に本心をさらけだして素直に感情表現できる場があれば、心身症やうつに至ることは少ないでしょう。
 心身症やうつに陥りやすい人は、きまじめな人、体裁を気にする人で、逆にずぼらな人、いい加減な人はなりづらい傾向にあります。しかし、ストレス社会といわれる現代、心身症やうつになる可能性は誰にでもあります。うつかどうかを本人が見極めることは難しいのですが、職場に行きたくない、寝付けない、酒量が増えた、意欲が無くなったなどと感じるようになったら注意が必要です。周囲が本人より先に兆候に気付くこともあるでしょう。そのような場合は、気軽に精神科医や心療内科医を受診してください。風邪などの疾病と同様に早くに適切な治療を受ければ、回復も早くなります。

2005年5月18日水曜日

「親知らず」について

ゲスト/さとうのりゆき歯科クリニック 佐藤範幸 歯科医師

親知らずについて教えてください。

 親知らずは、一番奥に生える第三大臼(きゅう)歯のことで、だいたいは18~20歳ぐらいで生えます。上下左右各一本ずつの4本が基本ですが、最近は一部欠損している人も多くなっています。人間の進化の方向を考えると、歯の本数は減る傾向にあります。また、現代人の顎(あご)は、咀嚼(そしゃく)回数が減ったため、退化してだんだん小さくなってきています。実は歯自体も小さくなる傾向にあるのですが、顎が小さくなるスピードには追いついていません。結果として、親知らずが生えるには、顎のスペースが不足しているという状態です。そのため、親知らずが正常に生えることが難しくなっています。骨の中に埋まったままだったり、傾いて前の歯を押し付けるように生えたり、横に寝てしまって一部分のみ顔を出していたり、あるいは正常に生えても磨きづらいために虫歯になりやすいのです。

親知らずは抜いたほうが良いのでしょうか。

 親知らずを抜いたほうが良い場合は、次の通りです。
 (1)親知らずによって食べ物が歯間に詰まりやすい
 (2)親知らずと歯ぐきの間にばい菌が入り込み、歯ぐきが炎症を起こす。
 (3)磨きづらいために虫歯になる。また、隣の第二大臼歯まで
    親知らずの影響で虫歯になってしまう。
 このような場合は抜歯をお勧めします。もちろん正常に生え、きちんと磨けて虫歯になっていなければそのままで構いません。親知らずを正常に維持できれば、ほかの大臼歯が虫歯などによって抜歯しなければならなくなった場合、移植歯として利用できます。抜いた歯の位置に親知らずを入れる方法で、歯根膜がある状態で自家口腔(こうくう)内の移植であるため、治療後の経過が比較的良好です。また、健康保険が適用になるので、インプラントなどの施術よりも費用面での負担が軽くなります。治療が可能かどうかは、歯や口腔内の状況によりますので、かかりつけの歯科医によく相談しましょう。親知らずによるトラブルが発生した場合は、早めに歯科医で治療することをお勧めします。抜歯する場合でも少しでも若く体力のあるうちに行ったほうが、予後が良好です。

2005年5月11日水曜日

尿管結石」について

ゲスト/芸術の森泌尿器科 斎藤  誠一 医師

尿管結石について教えてください。

 腎臓にできる結石は、戦後日本で急増した病気の一つです。働き盛りの壮年期男性では、およそ10人に1人の割合で発症します。ほとんどの場合、腎臓の中で結石ができ、尿管に落ちてきて尿管結石となります。症状は腰がだるくなったり、腰および側腹部の激痛、吐き気、血尿などです。
 治療としては、まず投薬などで痛みを止めることが優先されます。結石が尿とともに自然に体の外に出てしまえば問題ないのですが、排石されない場合は、処置が必要になります。ESWL(体外衝撃波砕石装置)や、内視鏡を用いた砕石を行うのが一般的です。厄介なことに、一度できた人の2人に1人は5年以内に再発する場合が多いです。

予防法を教えてください。

 第一に水分を十分取ってください。特に食事中と汗をかいた時です。食事以外に1日2リットルの水分摂取を目標にしてください。ただし、清涼飲料水やアルコールはよくありません。水、麦茶、ほうじ茶が適しています。第二は適度な運動です。結石は結晶から始まるので、尿が腎臓の中で停滞しないこと、もしできても小さなうちに出してしまうことが大切です。第三は食事です。原則はバランスの取れた食生活を送ることです。夜の食事を食べ過ぎたり、夕食後にすぐ寝たりするのもよくありません。動物性タンパク質も取り過ぎないように注意しましょう。
 結石の成分で一番多いのはシュウ酸カルシウムを主としたものです。ホウレンソウ、ダイコン、タケノコ、チョコレートなどシュウ酸を多く含む食品も控え、またこれらを食べるときは、牛乳、小魚などのカルシウムを同時に取りましょう。カルシウムは腸の中でシュウ酸と結合し、吸収を抑制します。逆に脂肪はカルシウムと結合し、シュウ酸を吸収しやすくするので控えたほうがいいでしょう。炭水化物である穀物や食物繊維は、結石予防に有効です。
 二番目に多い結石の成分は尿酸です。尿酸は痛風の原因にもなりますが、腎臓の結石も作りやすくします。尿酸の多く含まれている食物の取り過ぎが原因となります。アルコール類のほとんどは、酸性で尿酸が多く含まれます。飲むなら、適量のワインなどアルカリ性のものにしましょう。また腎臓の働きの悪い人にもできやすくなります。尿酸結石のできやすい人は動物性タンパク質を控え、野菜を多く取り、アルカリイオン水などで体をアルカリ性にもっていくことが理想的です。

2005年5月6日金曜日

「高血圧」について

ゲスト/北海道大野病院付属駅前クリニック 古口 健一郎 医師

高血圧について教えてください。

 自身が高血圧かどうかを知るためには、まず正確な血圧を測定することが必要です。血圧は常に変動しています。病院で測ると高めになってしまうという経験を持つ人は多いと思います。家庭でリラックスした状態で測定するのが、もっとも正しい数値に近くなりますが、それでも寝不足時やトイレの後では高めになります。朝起きてから朝食までの間、夕食後就寝までの間の朝晩2回測るといいでしょう。日本高血圧学会のガイドラインでは、65歳以上の場合、収縮期血圧140mmHg以上、または拡張期血圧90mmHg以上が高血圧ということになります。
 高血圧なのに、生活習慣を変えず、治療をおろそかにすると、心筋梗塞(こうそく)、脳梗塞などの重篤な合併症を招く危険性が高くなります。糖尿病や高コレステロール血症、高脂血症など生活習慣病を併発すると、いっそうリスクが高まります。高血圧であれば、医学的、科学的にコントロールすべきでしょう。

高血圧の治療について教えてください。

 高血圧の程度、患者さんの年齢にもよりますが、薬の服用の前に医師の指導のもとで、数カ月生活習慣を修正してみましょう。それでも血圧が正常にならない場合には、薬物療法になります。また日本人の高血圧症の特徴は、塩分過多な食事に現れています。一日に6g未満を目標に減塩を心掛けましょう。野菜や果物も積極的に摂取し、コレステロールや飽和脂肪酸の摂取を控えます。肥満も合併症誘発の大きな要因になります。「BMI=体重(kg)÷身長(m)の2乗」で25を超えないことが大切です。心血管病変がない高血圧患者であれば、毎日30分以上の有酸素運動を心掛けましょう。アルコールは適量にとどめ、タバコはやめましょう。
 これらを実行し、高齢者で140/90mmHg未満、中年・若年者で130/85mmHg未満、糖尿病・腎障害患者で130/80mmHg未満を目標とします。
 最近はテレビや雑誌などで「健康に良い」という食材や健康食品が取り上げられると、わっと飛びつく傾向が目に付きます。もちろん、自身に合えばいいのですが、合わないこともあるし、服用している薬品の効果を妨げることもあります。極端に走らず、主治医に相談することをお勧めします。

2005年4月27日水曜日

「更年期障害」について

ゲスト/アップルレディースクリニック 工藤 正史 医師

更年期障害について教えてください

 更年期障害は、年齢を重ねるにつれて卵巣の働きが低下し、女性ホルモン(エストロゲン)が欠乏することで確実に訪れる症状です。「何歳くらいから始まりますか?」とよく質問されますが、一般的には45歳過ぎから月経が不順になり、不正出血がみられたり、生理の時に出血量が多くなる、逆に少なくなるなどの変化が出てきたらそろそろ更年期を意識してください。女性ホルモンの欠乏は、女性の生活のさまざまな面に影響します。化粧のりが悪い、肌に張りがない、イライラや不安感がつきまとう、不眠、突然の発汗、ほてり、動悸(どうき)、頭痛など、実にさまざまな症状に悩まされます。さらに、エストロゲン不足が長期にわたって続くと骨粗しょう症になったり、高脂血症や高血圧など、いろいろな病気の危険にさらされるようになります。
 また、他人には相談しづらい性生活上の悩みや、失禁、頻尿、残尿感などの問題が出てくるケースも決して少なくありません。

更年期を過ぎると症状はなくなりますか。

 残念ながら更年期を過ぎても安心とはいえません。よく時代劇に出てくる江戸時代(19世紀)の日本女性の平均寿命は、なんと36.5歳。大正時代でも43.2歳と、現代の日本女性の半分程度です。日本女性の平均寿命が80歳を超えて長生きするようになり、それに伴い更年期以降の人生も長くなっています。この長くなった人生の時間を「老年期」などと呼ぶこともありますが、むしろ、前向きなセカンドライフとしてとらえてはいかがでしょうか。最近は、更年期以降の過ごし方に対する認識も高まりつつあります。不足したエストロゲンを補充するホルモン補充療法では、飲み薬だけではなく、はり薬もあり、症状や生活に合わせて選択ができます。また漢方療法も症状改善に期待できます。更年期障害に悩む人は、まず婦人科専門医を受診することをお勧めします。問題が生じたとき、いつでも気軽にアドバイスを受けられるかかりつけの婦人科医を持つことは、身体と心の健康を維持するためにも必要です。

2005年4月20日水曜日

「アレルギー性結膜炎とコンタクトレンズ」について

ゲスト/札幌エルプラザ 阿部眼科 阿部 法夫 医師

今年は、例年に増して花粉の飛散量が多いそうですね。

 本州では、過去最大級のスギ花粉の飛散が話題になっていますが、北海道では、3月になって路面の雪が溶け始めるころの早春のハンノキから始まり、4月中旬のポプラ、4月下旬から5月末までで、ゴールデンウイークのころがピークのシラカバ(シラカンバ)が花粉症の原因として多く挙げられます。
 アレルギーとは、花粉などの異物に対してできる抗体が過剰に働き、病的症状が現れる過敏反応を指します。アレルギー性結膜炎については、ハウスダストなどによる一年中みられる通年性のもの、花粉など季節性のあるもの、アトピーに伴うもの、春季カタルといわれる学童期から思春期にかかりやすい重症のアレルギー性結膜炎、コンタクトレンズなどの異物が原因となって、まぶたの裏にゴロゴロ感やかゆみを感じるタイプに分けられています。

アレルギー性結膜炎患者は、この時期のコンタクト使用がつらそうですが。

 コンタクトレンズはアレルギー性結膜炎を悪化させやすいので使用を控え、メガネを使用し、抗アレルギー薬、低濃度ステロイド点眼で結膜炎をしっかりと治療すべきです。しかし、現実にはアレルギー性結膜炎でありながら、職業上、社会上やむを得ずコンタクトレンズを使用しなくてはならない方も多数おられます。軽症から中等症例では、汚れの付きにくいレンズや一日タイプの使い捨てレンズを選択するといいでしょう。さらに、コンタクトレンズの装用時間の短縮、防腐剤無添加人工涙液での洗眼、抗アレルギー点眼液の適切な使用を心掛けましょう。コンタクトレンズを使えないときは、代用として必ずメガネを用意し、目に負担をかけないことが重要です。また、重症例ではコンタクトレンズを使用せず、結膜炎の治療に専念すべきでしょう。症状が気にならなくなり、自覚症状が改善しても、診察すると治りきってない例が多く見られます。アレルギー性結膜炎の人はもちろん、コンタクトレンズを使用している人は定期的な眼科専門医の受診をお勧めします。

「アレルギー性結膜炎とコンタクトレンズ」について

ゲスト/札幌エルプラザ 阿部眼科 阿部 法夫 医師

今年は、例年に増して花粉の飛散量が多いそうですね。

 本州では、過去最大級のスギ花粉の飛散が話題になっていますが、北海道では、3月になって路面の雪が溶け始めるころの早春のハンノキから始まり、4月中旬のポプラ、4月下旬から5月末までで、ゴールデンウイークのころがピークのシラカバ(シラカンバ)が花粉症の原因として多く挙げられます。
 アレルギーとは、花粉などの異物に対してできる抗体が過剰に働き、病的症状が現れる過敏反応を指します。アレルギー性結膜炎については、ハウスダストなどによる一年中みられる通年性のもの、花粉など季節性のあるもの、アトピーに伴うもの、春季カタルといわれる学童期から思春期にかかりやすい重症のアレルギー性結膜炎、コンタクトレンズなどの異物が原因となって、まぶたの裏にゴロゴロ感やかゆみを感じるタイプに分けられています。

アレルギー性結膜炎患者は、この時期のコンタクト使用がつらそうですが。

 コンタクトレンズはアレルギー性結膜炎を悪化させやすいので使用を控え、メガネを使用し、抗アレルギー薬、低濃度ステロイド点眼で結膜炎をしっかりと治療すべきです。しかし、現実にはアレルギー性結膜炎でありながら、職業上、社会上やむを得ずコンタクトレンズを使用しなくてはならない方も多数おられます。軽症から中等症例では、汚れの付きにくいレンズや一日タイプの使い捨てレンズを選択するといいでしょう。さらに、コンタクトレンズの装用時間の短縮、防腐剤無添加人工涙液での洗眼、抗アレルギー点眼液の適切な使用を心掛けましょう。コンタクトレンズを使えないときは、代用として必ずメガネを用意し、目に負担をかけないことが重要です。また、重症例ではコンタクトレンズを使用せず、結膜炎の治療に専念すべきでしょう。症状が気にならなくなり、自覚症状が改善しても、診察すると治りきってない例が多く見られます。アレルギー性結膜炎の人はもちろん、コンタクトレンズを使用している人は定期的な眼科専門医の受診をお勧めします。

2005年4月13日水曜日

「サプリメント」について

ゲスト/つちだ消化器循環器内科 土田 敏之 医師 

最近サプリメントが話題に上りますが。

 サプリメントとは、食事によって十分に摂取できない栄養素を補うための補助食品の総称です。健康食品とほぼ同じと考えていいでしょう。かつては、野菜中心だった日本人の食卓も、欧米型の肉中心の食事や外食、加工食品が主となりつつあり、食生活が劇的に変化しています。サプリメントによって、ミネラルやビタミンなど不足しがちな栄養素をカバーすることも時には必要です。間違った摂取方法として、効果が薄いのに「飲むこと」に満足している人がいます。健康を維持する助けにならなくては、サプリメントを取る意味がありません。

サプリメントの上手な選び方を教えてください。

 まず、素材原料の安全性が確認されているか。基準値を超える農薬が残留していないか、有効成分量が不足なく配合されているかを調べます。原材料が天候によって不作の年もありますし、やせた作付地では有効成分量に期待できない場合もあります。また、製造工程が同じ製品でも、原材料が違えば効き目が違うのは当然です。各種栄養素が確実に、どれだけ入っているのかを表示するとともに、消費者センターや大学調査依頼機関等の抜き打ち検査に合格していることが肝心です。
 次に、品質の維持に努力しているかどうか。品質管理上信頼のおける工場か。効果があることが示されているデータがあるか。この場合は第三者のデータがあれば良いでしょう。
 粗悪品による害は問題外ですが、服用している医薬品との相互作用も重要です。カルシウムはある種の抗生物質の効き目を低下させます。鉄分も同様です。また鉄分は、甲状腺薬や骨粗しょう症薬の効果を低下させます。青汁やクロレラ、コエンザイムQ10は、抗凝固剤(血をサラサラにする薬)の効果を低下させます。グァバ葉は糖尿病の薬の効果を増強し、低血糖を招く可能性があります。ニンニクエキスが抗凝固剤の効果を増強し、出血しやすくする可能性もあります。医薬品を服用していて、サプリメントを摂取したいと考えているなら、一度主治医に尋ねてみるといいでしょう。

2005年4月6日水曜日

「頭痛」について

ゲスト/札幌一条クリニック 後藤康之 医師

頭痛について教えてください。

 風邪をひいたときの頭痛は、時間がたてば必ず治る、いわば病気ともいえない頭痛です。極端に痛んだり、今まで経験したことがない頭痛は、脳内の出血や脳腫瘍(しゅよう)が原因である可能性もあるので、MRIやCTスキャンで検査を受けて、脳の疾患による頭痛か否かを診断します。この2種類の頭痛のほかに、繰り返し強い頭痛に悩まされ、脳の検査をしても異常が見つからない慢性頭痛があり、緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛などがあります。
 一般に多いのは、緊張型頭痛です。頭が重い、圧迫感がある、締め付けられるような鈍痛が続きます。原因は、肩や首の筋肉の緊張によるもので、頭の皮下の血流が悪くなって、痛みを生じます。肩こり人口の多い日本人に多い頭痛です。一日中痛みが続く場合もありますが、精神的なストレスや疲労が強い場合に痛むことも多く見られます。予防法としては、精神的、肉体的ストレスを趣味や運動などで上手に解消することが有効です。パソコンなどによる眼精疲労、枕の不具合などが原因のこともあります。

片頭痛はどのような症状でしょうか。

 症状としては、月に1~2回から週に1~2回、頭の片側、または両側にズキンズキンとした強い頭痛が起こります。痛みの継続時間は人によってさまざまで、数時間で治まる人もいれば、数日続く人もいます。男性よりも女性、特に30歳代の女性に多く、親子で遺伝する場合も多くみられます。血液中にある血管を収縮させる働きのあるセロトニンが関係していると考えられていますが、原因は特定されていません。食べ物が誘引する場合もあります。光をまぶしく感じたり、音をうるさく感じる場合も多いので、症状のある時に暗い部屋で安静に過ごすといいでしょう。
 緊張型頭痛、片頭痛の治療法としては、神経ブロックで痛む神経を遮断し、さらに鎮痛剤などを服用します。根本的な治療は難しいのですが、痛みを取り除いて、原因がストレスにあればカウンセリングなどを並行して受けることをおすすめします。

2005年3月23日水曜日

「噛(か)むこと」について

ゲスト/E-line矯正歯科 上野 拓郎 歯科医師

最近、子どもたちの噛む力が弱くなっているといわれていますが。

 ハンバーグや麺類、カレーライスなどは、子どもや若者が好む料理ですが、あまり噛まずに食べられるメニューでもあります。最近は、咀嚼(そしゃく)せずに流しこめるこのようなメニューが食生活の中心になっているため、乳歯の時期からきちんと噛む習慣ができず、そのまま学童期、そして大人になってしまうというケースが多く見られます。噛むことは、人間にとって、とても大切な行為です。噛むことによって、脳にほど良い刺激が与えられ、脳神経の血流を促進します。成長期の子どもの、知能の発達を促し、お年寄りの老化防止や認知症防止にもひと役買います。また、噛む回数が減ることで、歯や歯を支える歯肉、歯根膜、歯層骨などの成長が滞ったり、歯垢(こう)がたまって歯周病にかかりやすくなったりします。口腔(こうくう)周辺の筋肉が鍛えられず、歯並びに影響することもあります。

きちんと噛むには、どうしたら良いのですか。

 まず、きちんと噛める咬(か)み合わせであることが重要です。開咬(かいこう)では前歯で噛み切ることができませんし、極端な上顎(がく)前突や下顎前突でもスムーズに噛めません。日常生活の中では、繊維質のものや硬いものを幼児期からメニューに取り入れ、噛む食感を楽しむようにしてあげましょう。最初は苦手でも、調理方法などを工夫して食べさせる努力をします。時間をかけて楽しく食事できる雰囲気づくりも大切です。「早く食べなさい」「残さないで」などと小言を聞きながらでは食も進みませんし、必要な唾液の分泌量も減ってしまい、消化にもよくありません。
 食べ物をちゃんと噛まない、歯ごたえのあるものを食べないと唾(だ)液の分泌量が少なくなります。歯垢(しこう)が付きやすい食生活をしていると、口腔内が不衛生になり、歯や歯茎の病気、口臭の原因になります。ペットの世界でも軟らかいペットフードばかり食べているペット達には、虫歯や歯周病を起こしている例が多数みられます。さらに、唾液には、食べ物の消化を助ける働きがあります。唾液に含まれる消化酵素と食べ物が口の中で混ぜ合わされ、消化しやすい状態にして胃に送ります。十分に噛まずに食べることによって、消化器官に大きな負担をかけるとともに、満腹感を感じるのが遅れ、食べる量が増えてしまい、肥満の原因ともなります。

2005年3月16日水曜日

「機能性胃腸症」について

ゲスト/琴似駅前内科クリニック 高柳 典弘 医師

機能性胃腸症について教えてください。

 胃痛、胃もたれ、むかつきなどの上腹部症状が続き、検査をしても胃潰瘍(かいよう)、胃がんなどの異常が認められない場合、機能性胃腸症(Functional Dyspepsia=FD)と呼んでいます。以前は慢性胃炎と診断されていましたが、実際には胃の炎症や胃酸による不快症状だけでなく、胃の運動機能低下に多くの原因があることがわかり、FDと呼ばれるようになりました。FDは、胃もたれ、むかつきなど消化管内容物のうっ帯症状を主体とする「運動不全型」、夜間や空腹時の疼(とう)痛症状が強く、食事や制酸剤によって軽快をみせる「潰瘍症状型」、症状が多彩で一定しない「非特異型」の3つのタイプに分類されます。中でも運動不全型が半数以上を占めるといわれています。
 FDの主な原因としてストレスが挙げられます。脳の迷走神経は胃のぜん動運動と胃酸の分泌をコントロールしています。ストレスを抱えると迷走神経の働きが鈍り、胃の運動や胃液成分のバランスが崩れ、胃もたれやむかつきなどの症状が現れます。ほかに、不規則な食事、過労、アルコールの飲み過ぎ、胃の手術歴なども、胃の運動機能を低下させます。

治療法を教えてください。

 3つのタイプに応じて治療法が異なります。運動不全型は、胃の運動機能の改善を図ることを目的に消化管運動賦(ふ)活薬を処方します。潰瘍症状型は、通常の潰瘍と同じく酸分泌の亢進(こうしん)が主たる原因であるため、酸分泌抑制薬が選択されます。非特異型は、心因性の要因に基づく場合が少なくないため、消化管運動賦活薬や酸分泌抑制薬を使いながら、さらに抗不安薬や抗うつ薬を併用します。
 加えて、生活の改善も重要です。ストレスをためず、規則正しい生活を送るように心掛けます。特に食事は、規則正しく3食取ること、脂っこい物、甘い物を控えることが大切です。慢性胃炎として、制酸剤などを処方されていても改善しない人は、FDである場合が多々あります。適切な治療によって症状は改善されますので、専門医の受診をお勧めします。

2005年3月9日水曜日

「ひざに水がたまる病気」について

ゲスト/山口整形外科クリニック 山口秀夫 医師

ひざに水がたまる病気について教えてください。

 関節には、主に潤滑液の役割を果たす関節液という液体があります。これは、関節を覆う袋の中にある滑膜という組織でつくられます。関節液の量は、通常、体内で最も大きなひざ関節で1~3ミリリットルですが、関節に炎症が起こると、滑膜の中で関節液が過剰につくられ、水がたまった状態となります。これを関節水腫といいます。ちょうど、鼻炎で鼻水が出てくるのと似ています。水がたまると、ひざが重い、だるい状態が続き、水の量が増えるにつれて痛みが増し、ひざを支える四頭筋の力が低下して歩きにくくなります。

どんな治療法がありますか。

 関節水腫の原因として代表的なものは、変形膝(しつ)関節症、関節リウマチ、痛風、外傷性関節炎です。この中で、最も頻度の多い変形膝関節症による関節水腫の治療法には、(1)消炎鎮痛剤の服用により炎症を抑える(2)ひざを支える大腿(たい)四頭筋を訓練して関節を安定化させる(3)関節注射で直接滑膜の炎症を抑える--などがあります。症状に応じて、これらを併用する場合もあります。関節注射には、関節軟骨を保護し、ひざを動かしやすくする作用のあるヒアルロン酸ナトリウムと、炎症を抑えて痛みを取り除く作用のあるステロイドを使用します。ほとんどの場合、ヒアルロン酸ナトリウムの注射を週1回、1~2回はステロイドを混ぜながら計5回行うと、症状が改善されます。しかし、場合によっては、治療に半年以上かかることもあります。関節水腫の原因については先ほど述べましたが、それらの病気にかかっていても、関節水腫になる人と、ならない人がいます。残念ながら、その理由については正確に分かっていないため、水がたまる状態が長く続くことがあります。ひざの水を抜くと癖になる、と言う人がいますが、抜いてすぐに水がたまるのは、原因となる病気自体が治っていないからです。その場合は、主治医と相談して、原因と思われる点(変形膝関節症、関節リウマチ、痛風、外傷性関節炎など)を根気強く改善していくことが必要です。

2005年3月2日水曜日

「糖尿病網膜症」について

ゲスト/あびこ眼科 安孫子徹 医師

糖尿病網膜症について教えてください。

 糖尿病、すなわち血液中の糖濃度が上昇する代謝異常によって引き起こされる網膜血管の障害で、現在日本の中途失明原因の第一位といわれています。2002(平成14)年度の厚生労働省の調査によると、20歳以上の日本人で糖尿病に罹患(りかん)している人は740万人、予備軍まで含めると1620万人にも上ると推測されています。実に、日本人の10人に1人は糖尿病の可能性があるというのが実情です。
 糖尿病網膜症は、
(1)網膜に点状出血や硬性白斑(はくはん)がみられる単純網膜症、(2)多発する軟性白斑や網膜に血管閉塞領域がみられる増殖前網膜症、(3)破れやすい新生血管が生じ、ときに硝子体出血(眼球内腔への出血)、牽引(けんいん)性網膜はく離(増殖組織が引き起こす網膜はく離)が出現する増殖網膜症、この三段階で進行していきます。厄介なのは、増殖前網膜症においても視力低下などの自覚症状が少なく、見えづらいと自覚するころには、増殖網膜症まで進行している可能性が高いことです。

糖尿病網膜症の予防と治療について教えてください。

 網膜症の予防は、糖尿病自体のコントロールが第一です。しかし、過去に血糖コントロール不良な時期があると、現在はコントロール良好でも、網膜症が出現することがあります。予防するには、患者自身も内科医、眼科医とともに糖尿病及び網膜症についての理解を共有し、連携して血糖コントロールを進めていく必要があります。
 眼局所の治療としては増殖前網膜症期に中心部以外の網膜全体をレーザー光線で凝固する汎網膜光凝固術が大変重要です。この時期に光凝固治療を受けずに増殖網膜症に移行すると、重篤な視力低下を来します。さらに、硝子体出血や牽引性はく離が生じた場合には、硝子体手術が必要になります。
 糖尿病と診断された方、健康診断で血糖が高めと言われた方は、まず信頼できる糖尿病専門医と眼科専門医を受診してください。たとえ、これといった症状が無くても中断することなく定期的に内科及び眼科の診察を受け、「見る」というすばらしい機能を守っていきましょう。

2005年2月16日水曜日

「高血圧と生活習慣病」について

ゲスト/秀愛会内科・消化器科クリニック 高梨 良秀 医師

高血圧症について教えてください。

 かつて血圧は、最高150、最低90以下であれば良いとされてきましたが、研究が進むにつれ、健康な状態を維持するには正常値が、65歳以上で最高140、最低90以下にすべきと発表されました。最高・最低血圧のどちらかが正常値より高ければ、高血圧と判断されます。頭が重い、顔がほてるなど高血圧の自覚症状がある人もいますが、何ら不快症状がないまま高血圧が進行している人も多くいます。心疾患、脳疾患など突然の重篤な症状に結び付かないよう、特に症状がない場合でも、日ごろから自身の血圧を正確に知ることが必要です。65歳以下の成人では、上が130、下が80程度が理想的な値です。血圧はさまざまな要因で変動するため、病院の外来で測っても本来の血圧よりたいていの場合、高めに出てしまうことが多いのです。正確な血圧を知るためには、家庭での血圧測定が理想です。血圧計の中では、上腕で測定するタイプのものがより正確です。毎日3回、決まった時間に測定し、測定前の15分はできるだけ安静にします。測定値は記録し、かかりつけの医師に見せ、治療計画の判断材料にしましょう。さらに正確な血圧を計る24時間血圧計もあります。1日を通して血圧の変動をモニターするので、時間ごとの薬の効果などを詳しく知ることができます。

血圧の管理が必要なのは、なぜですか。

 高血圧の人は、高脂血症や糖尿病などにもなりやすく、さまざまな生活習慣病の要因となります。また、高血圧状態が長く続くと血管や心臓に負担がかかり、動脈硬化が進行し、脳出血、脳梗塞(こうそく)、心筋梗塞、腎不全など重大な合併症を引き起こすことになります。高血圧であると診断されたら、医師の指示に従って薬の服用を続けてください。最近はさまざまなタイプの薬品が開発され、症状、ライフスタイルに合った薬が処方されます。日常生活では、塩分を控え、昔ながらの和食を中心とした食事をし、ストレスを解消し、適度な運動を長く続けることが大切です。血圧が正常値で安定すれば、投薬をやめることも可能です。

2005年2月9日水曜日

「矯正を始める時期」について

ゲスト/つちだ矯正歯科  土田 康人 歯科医師

子どもの矯正を始める時期について教えてください。

 小学校に入る前は、すべてが乳歯で永久歯が生えていない乳歯時期になります。乳歯の不正咬合としては、受け口と呼ばれる反対咬(こう)合、出歯と呼ばれる上顎(がく)前突、奥歯は噛(か)んでいても前歯が開いた状態の開咬(かいこう)、歯並びが凸凹な状態の叢生(そうせい)、顎(あご)が左右どちらかに曲がっている顎偏位などがあります。反対咬合は、一番前歯が生え替わる時に、自然に治ることもあります。出っ歯や開咬は、主におしゃぶりの使用や指しゃぶりが原因なので、それらをやめて様子を見ます。いずれも、反対咬合と同様に上下の一番前歯が生えてくるまで、注意深く観察し、矯正が必要であれば治療計画を立てます。叢生は、小さな顎に大きな歯が生えているために、歯並びが凸凹の状態をいいます。永久歯が生えそろってから、歯を何本か抜いて治療することが一般的ですが、上下顎の一番前歯が生えてきた時期から治療を始めると、歯を抜かずに治せる可能性があります。矯正を始める時期については、いろいろな考え方がありますが、上下顎の一番前歯が生える、小学1、2年生からスタートするのが良いでしょう。

では、乳歯時期には様子を見るだけでいいのですか。

 乳歯時期の不正咬合で、一番問題になるのは、顎偏位です。原因は噛み癖やほおづえなど日常の癖で、成長するにつれて顎の曲がりが大きくなりますから、早いうちに治療しなければなりません。また、顎偏位を放っておくと、顎の成長に偏りが出て、片側の顎がどんどん成長し、もう一方の成長が抑えられて圧迫し、顎関節の痛みを伴う顎関節症になりやすくなります。成長してからの治療は期間も長く、治療自体も難しくなるので、顎偏位の場合は、乳歯時期から治療します。
 いずれにしても、子どもの咬み合わせや顎の状態に疑問、不安を感じたら、乳歯時期でも構いませんので、矯正専門医を受診してください。治療開始の時期も含め、総合的な視点で適切なアドバイスが受けられます。

2005年2月2日水曜日

「痔(じ)ろう」について

ゲスト/札幌いしやま病院  樽見 研 医師

痔ろうとはどんな病気でしょうか。

 痔ろうは、直腸と肛門の境界部分にあるすき間(肛門陰窩=こうもんいんか)部分に細菌が入り感染し、炎症を起こして肛門周囲膿瘍(のうよう)になることから始まります。急性期は、炎症による激しい痛みや発熱に襲われます。しかし、膿瘍が破れたり、病院で切開して膿が出きってしまうと、一時的に痛みが治まるため、完治したと錯覚しがちです。実際には、肛門周囲膿瘍によって肛門内と皮膚の間に細菌の通り道ができ、そのままほっておくと通り道がアリの巣状に広がり、「痔ろう」の状態になります。痔ろうが完全にできあがった後の自覚症状は、鈍痛や痔ろうによってできた穴から膿が出て下着を汚す程度です。しかし、排便のたびに細菌に侵されるため、痔ろうは枝分かれして深く複雑に広がり、肛門周囲の穴が複数になる場合もあります。また、まれに病巣ががん化し、痔ろうがんになることもあります。

治療や予防法について教えてください。

 痔ろうは、30~40代の男性に多い病気ですが、原因ははっきりしていませんし、遺伝的なものでもありません。ただ、下痢をしやすい人、抵抗力の落ちている人は罹患(りかん)しやすい状態にありますから、規則正しく体調を整えて暮らすというのが、唯一の予防策といえます。クローン病(大腸や小腸などに潰瘍=かいよう=ができる慢性の炎症性の病気)に痔ろうを併発する場合も多いので、クローン病の人は注意が必要です。痔ろうに有効なのは、早期発見と適切な治療です。肛門に痛みを感じたり、下着が膿で汚れたら、すぐに受診しましょう。
 肛門周囲膿瘍の時点では膿を出す応急処置で症状が消えますが、根本的な治療は手術による病巣の摘出以外にありません。深く複雑に進行した痔ろうだと、括約筋を傷つけ、肛門機能に支障をきたす可能性があります。場合によっては、括約筋温存手術が不可能なこともあり、人工肛門が必要になります。そのような事態を避けるには、なるべく早く、病状の軽いうちに痔ろうの治療を数多く行っている専門医を受診することが必要です。入院期間は軽いものなら1週間、重症の場合は3週間程度です。

2005年1月26日水曜日

「動脈硬化症と糖尿病」について

ゲスト/青木内科クリニック 青木伸 医師

動脈硬化症について教えてください

 動脈は本来弾力性があるものですが、動脈壁に脂肪などが沈着したり、動脈壁の筋肉に弾力の無い繊維が増えたりすると硬くなります。血管の内側に粥(じゅく)状の塊(かたまり)ができ、血管が狭くなり本来の働きが悪くなります。また、塊を覆う繊維性皮膜が破れると、中の粥状のものが血管に流れ出て、血栓となって血液の流れを止めてしまいます。心臓の血管が詰まると心筋梗塞(こうそく)、脳では脳梗塞、足では壊疽(えそ)になります。動脈硬化症は生命にかかわる重大な病気ですから、早期に診断、治療を行う必要があります。動脈硬化症による重篤(じゅうとく)な症状を避けるには、粥状の内容物を減らすことと、内容物を覆っている繊維性皮膜を丈夫にすることが大切です。

予防方法を教えてください。

 動脈硬化症は、主に生活習慣病の合併症として現れます。危険因子である糖尿病、高脂血症、高血圧症をきちんと治療し、管理していくことが大切です。日本には非常に多くの糖尿病患者、そして予備軍がいます。軽度のうちは自覚症状が無いため、「血糖値が高い」といわれても放置している人が多いのですが、糖尿病が基本にあると2~3倍も動脈硬化になりやすいといわれています。動脈硬化症から、脳梗塞、心筋梗塞に至ることがあり、高血糖が原因で十数年後に腎(じん)不全(透析)、失明など重篤な症状に発展する場合もあります。治療は主に投薬と日常生活の中での数値管理です。過去1~2カ月間の平均血糖値を表すHbA1cの正常値は5.8%以下ですが、糖尿病患者の場合、この値を6.5%以下にしておくと血管の余病は出ません。また、糖尿病患者の約半数は高脂血症や高血圧症を合併しています。コレステロール値や中性脂肪値などにも注意を払うことが必要です。定期的な通院を続け、適切な投薬と数値管理を行えば、日常生活には支障ありません。生活習慣病は遺伝的要素も強く、家族に糖尿病や高脂血症の人がいる場合は、若者でも注意が必要です。また、食事を野菜中心の和食にするなど、日常生活を見直してみてください。

2005年1月19日水曜日

「増加する10代の人工妊娠中絶」について

ゲスト/札幌東豊病院 前田信彦 医師

若い年代の人工妊娠中絶が増えているそうですが。

 厚生労働省の2003年度の統計によると、19歳女性の50人に1人、18歳女性の64人に1人の割合で人工妊娠中絶が行われています。人工妊娠中絶全体の数字が減っている中で、10代から20代前半の中絶の割合が目立って増加しており、10代の中絶率は、10年前の約2倍になっています。また、北海道は中絶件数が全国で3番目と多く、特に10代の中絶件数では全国一という不名誉な数字になっています。実際に診療の現場にも、10代の患者さんが親御さんと一緒に受診するということが度々あります。性に関する情報があふれている現実の中で、性行動に関して歯止めがきかず、一方で生殖、避妊に関する正しい知識が欠如していることが背景にあります。
 妊娠中絶が増加するということは、すなわち性感染症の予防に関しても無防備だということを意味します。実際に性器クラミジアをはじめ、淋菌(りんきん)やHIV感染者が、若者の間で増加しています。

私たち大人が正しい知識を教えていかなくてはいけませんね。

 若者たちの無軌道な性行動は、大人社会の反映でもあります。とはいえ、社会全体の変化を待っている時間的ゆとりはありません。若者の性行動の抑止自体は困難であるという現実を踏まえ、現状の中で実態に即した性教育の必要があります。個々人によって、性への意識に格段の違いがある思春期の男女に対し、画一的な性教育は、確かに難しいことですが、家庭での性教育が一般的ではない日本においては、教育現場からのアプローチがもっとも容易です。
 教育現場における性教育は今までも実践されてきましたが、中絶や性感染症の数字を見る限り、十分な効果が得られているとはいえません。短期間での検証とより効果的な啓蒙(けいもう)に、早急に取り組まなければなりません。実際に人工妊娠中絶をする年代が高校生の年代から増加するということは、小学生から性に対する正しい知識とモラルを教え、中学生では現実的および実践的な性と避妊の知識を教育する必要があります。妊娠や中絶は心身に多大な影響を与えます。陰の部分も含めた性に関する教育、社会的啓蒙が急務です。

2005年1月12日水曜日

「外傷による歯の障害」について

ゲスト/庄内歯科医院 庄内 淳能 歯科医師

外傷による歯への影響について教えてください。

 転倒やスポーツ中の事故、交通事故など、外部から強い衝撃を受けることによって、歯が折れたり、抜けてしまうことがあります。これらは、歯牙(しが)破折と歯牙脱臼に分けられます。さらに、歯牙破折は歯冠破折と歯根破折に分類されます。歯冠破折は、歯の見えている部分が折れたり、欠けたりすることで、接着剤で元通りにできることもあるので、かけらを持参してすぐ受診しましょう。歯根破折は、歯の根の部分が破損している状態で、ぶつけた歯がカクカクと動く場合はこの可能性があります。無理に歯を取ったりせず、そのまますぐに受診してください。状態にもよりますが、一度歯を抜いて戻すという再植治療が可能な場合もあります。歯根破折の場合、2、3日でいったん痛みが治まるので、そのままにしてしまう人がいますが、やがて悪化し抜歯する事態になってしまいます。
 歯牙脱臼は、外傷によって歯が抜けてしまう状態です。歯がポロッと取れてしまったら、大至急受診してください。取れたばかりの歯はまだ歯根膜部分が生きているので、乾燥させずに持参すると再生します。生理的食塩水につけておくのが理想ですが、なければ、清潔にして口の中に入れたり、牛乳の中に入れて運びます。

治療や予防策について教えてください。

 状態によって治療法はさまざまですが、迅速に診察を受けることが肝心です。口元をぶつけると唇や口の中が切れて出血したり、顎(あご)を骨折したりするので、外科を受診する場合が多いのですが、必ず歯科も受診してください。表面上異常がなくても、レントゲンで破折や脱臼が見つかることもあります。また、転倒や交通事故などは予測できませんが、ボクシング、ラグビー、サッカー、ホッケー、ラクロス、アメリカンフットボール、野球、レスリング、柔道、空手など、頭部への衝撃が予想されるスポーツをする場合は、マウスガードを装着してください。歯科医のカスタムメイドのマウスガードであれば、違和感が少なく、歯や顎の保護はもちろん、スポーツパフォーマンスの向上にも役立ちます。

2005年1月5日水曜日

「ピロリ菌と胃・十二指腸潰瘍」について

ゲスト/やまうち内科クリニック 山内雅夫 医師

ピロリ菌について教えてください。

 正式にはヘリコバクター・ピロリといい、胃粘膜に住む細菌です。胃の中は、胃酸のため強い酸性を呈し、細菌が生き延びる環境ではないという先入観から発見が遅れ、存在が認められたのは20年ほど前です。ピロリ菌にはアンモニアを産生する能力があるので、胃酸を中和して胃の中でも生存できるのです。経口的に感染し、衛生状態の悪い地域や国で感染率が高いことが明らかにされています。日本では若い人の感染率は低いのですが、40歳以上では約80%の人が感染しています。これまでの研究で、ピロリ菌が胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の原因になっていることが解明されてきました。ピロリ菌感染=胃・十二指腸潰瘍になるというわけではありませんが、ストレス、喫煙、アルコールの過剰摂取などさまざまな要因が重なると胃・十二指腸潰瘍が発症します。また、ピロリ菌によって引き起こされた慢性胃炎から胃がんが発生することも推測されます。

胃・十二指腸潰瘍の治療方法をご紹介ください。

 以前の胃・十二指腸潰瘍の治療は、胃酸の分泌を抑制するH2ブロッカー投与が一般的でしたが、いったん治癒しても再発しやすく、再治療が必要でした。しかし潰瘍の主要な原因がピロリ菌であることが判明してからは除菌療法に変わりました。これは、胃の中のピロリ菌を駆除するために2種類の抗生剤を1週間内服し、さらにH2ブロッカーよりも強力に胃酸の分泌を抑制するプロトンポンプ・インヒビターを併用する方法です。ただし胃・十二指腸潰瘍の中にはピロリ菌が関与していないものもあり、除菌療法の対象外となります。ピロリ菌感染の有無を検索するには、内視鏡検査で胃粘膜を採取して顕微鏡的に調べる方法のほか、尿素呼気試験、糞(ふん)便検査法、採血による抗体の検査などの方法があり、比較的簡単に分かります。なお、胃・十二指腸潰瘍を有しないピロリ菌感染者(高度の慢性胃炎患者など)に対しても胃がん予防の見地から除菌療法をした方が良いとする意見もありますが、まだ明確な結論は出ていません。