2004年9月1日水曜日

「月経困難症と子宮内膜症」について

ゲスト/アップルレディースクリニック 工藤 正史 医師

月経困難症の原因について教えてください。

 日常生活を制限されるほどの月経困難症は、女性の約5%といわれています。その原因は、子宮筋腫(きんしゅ)、子宮腺筋症、子宮内膜症、クラミジア感染などの後遺症による骨盤腹膜の癒(ゆ)着性病変によるものといった器質的疾患が認められる場合と、器質的疾患が認められない機能的月経困難症とに分類されます。

最近増えている、子宮内膜症について教えてください。

 子宮筋腫は子宮に、卵巣腫瘍(しゅよう)は卵巣にできるものですが、やっかいなのは子宮内膜症。これは、子宮という名が付いているのに、子宮はもちろんのこと、卵巣、卵管、膀胱(ぼうこう)、腹膜、膣壁、直腸、まれに肺など、子宮以外の場所にもできます。子宮内膜は女性ホルモン(エストロゲン)で厚くなり、妊娠しない場合は、はがれて外に出る、これが月経の出血です。これが膀胱の中だと、そこでも月経と同じことが起こり、月経時に血尿になります。卵巣の中でも月経と同じことが起こりますが、子宮や膀胱と違い排出される出口がないため、月経の回数を重ねるたびに卵巣は腫(は)れて嚢腫(のうしゅ)となり、痛みは強くなります。たまっているのは、本来月経時に排出されるはずの血液で、血は古くなると固まりチョコレートに似た状態になるため、チョコレート嚢腫と呼ばれています。歌手の宇多田ヒカルさんもなったことで有名です。甘い名前ですが、現実は少しも甘くありません。非常に月経痛がひどく、周辺と癒着しやすく、不妊症や子宮外妊娠の原因になる厄介な疾病です。治療法としては、極度の月経痛を避けるために、投薬によって妊娠や閉経の状態を人工的に作り出し、月経を止めます。症状が進んでいれば、手術を行う場合もありますが、癒着が強くなければ、腹腔鏡手術という小さな切開創ですむ手術も可能で、入院期間も少なくてすみます。
 最近、ますます女性の妊娠、分娩(ぶんべん)回数が減り、高齢出産が進んでいます。薬で作り出すのではない本当の妊娠状態の期間が減っているため、子宮内膜症の増加の原因になっていると考えられています。

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