2004年5月6日木曜日

「QOL(クオリティー・オブ・ライフ)」について

ゲスト/北海道大野病院付属駅前クリニック 古口 健一 医師

QOLについて教えてください。

 ただ長生きするのではなく、生活の質を高めて幸せに生きるという意味で、QOLというテーマが注目されています。病気を患った際、まず本人が「どのような人生を送るか」を選択することが、QOLのスタートラインです。それぞれの人生観によって、QOLの意味合いは変わります。例えば、健康を害する恐れがあると知りながら、タバコや酒を「生きがい」と楽しむのは、当人の権利であり、人生観の問題です。がんや脳血管障害など、その後ハンディキャップを背負う危険性の高い病気には、医師による指導が重要ですが、慢性疾患など、自分でコントロールしながら生活する病気の場合は、患者自身がどう生きたいかを医師にはっきりと伝え、医師が医療面からそれをサポートすることが、希望に叶(かな)ったQOLの実現といえるでしょう。そしてそれには、両者の信頼関係が不可欠です。

ほかに、QOL実現のために必要なことはありますか。

 最近、定年退職後の経済的不安から通院数を減らしたり、仕事や趣味がないなど、精神的ストレスから体調を崩す人が増えています。医師と患者は、病状だけでなく、患者の社会的、経済的背景、家庭の事情などについてもよく話し合うことが大切です。治療の上で問題がなければ、経済的負担を医療面で緩和することも可能です。病気だけでなく「人」を診る心構えが、医師にも求められています。
 また、健康の基準も人それぞれ。近ごろ、健康をテーマにしたテレビ番組が人気を呼んでいます。健康管理に興味を持つ人が増えたのは大変良いことですが、「正常値と違うから病気」と神経質になり過ぎるのは禁物。すべて型通りの人はいません。老化を例に挙げると、子どもの成長と同様に老化の進み具合にも個人差があります。「周りはまだなのに自分だけ老眼は異常では」と憂うつになったり、「まだまだ若い」と無理したりせず、どのような治療をしていくか、前向きに医師に相談しましょう。医療も出会いが大切です。お互いに良い患者さんに出会った、良い主治医で良かったという信頼関係が築けるといいですね。

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