2004年3月3日水曜日

「血尿と膀胱(ぼうこう)がん」について

ゲスト/芸術の森泌尿器科 斎藤 誠一 医師

血尿が出たら、膀胱がんの可能性がありますか。

 ほかに症状がなく血尿が出た場合、泌尿器科臓器のがんの可能性があります。膀胱(ぼうこう)、前立腺、腎臓といった泌尿器科臓器はがんになりやすく、日本人が罹患(りかん)するがんの上位10位以内に3臓器とも入っています。特に、日本を含めたアジア圏では、膀胱がんが多く、喫煙が原因の1つとして挙げられます。現在は男性に多いがんですが、近年、若い女性の喫煙率が増加していることから、将来日本における女性の膀胱がんが増加するものと考えられます。膀胱がんの典型的な症状は、痛みなどはほとんどなく、血尿だけです。膀胱炎でもないのに、頻尿になることもあります。血尿が出たり、検診で血尿といわれたら、早めに泌尿器の専門医を受診してください。喫煙する人は特に注意が必要です。血尿は赤色とは限らず、オレンジ色やワイン色、チョコレート色になるこ
ともあります。

膀胱がんの治療について教えてください。

 腫瘍(しゅよう)が小さい場合、内視鏡による簡単な切除を行います。組織診断を正確に行うことと、再発予防のためひと塊として切除することが理想です。内視鏡で完全に切除しても、約50%の人が再発します。再発する可能性の高い人には、再発を防ぐために膀胱内に抗がん剤を注入します。一般的な抗がん剤を使用しても約40%の確率で再発しますが、弱毒結核菌であるBCGを注入した場合、再発率を15%まで下げることができます。副作用が強いという問題はありますが、非常に有効です。内視鏡で取りきれない場合、膀胱をすべて摘出する手術を行いますが、同時に尿の出口を作る手術も必要になります。尿道も摘除した場合、人工肛(こう)門と同様の集尿袋が必要になります。尿道に再発の心配がなければ温存でき、この場合は腸を用いた新膀胱を作製し、自然排尿が可能になります。しかし、実際には尿道も摘出し集尿袋を使うことがほとんどです。再発を防ぐためには、喫煙せず、乳酸菌を多めに取ることが有効ですが、もっとも大切なことは、定期的に検査を受け、できるだけ早期に発見し、治療することです。

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