2004年3月24日水曜日

「子どもの歯科矯正治療」について

ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治 正光 歯科医師

矯正治療が必要かどうかを判断する方法はありますか。

 まず矯正が必要かどうかのチェック項目の1つとして、1度お子さんの口元を顔の正面からよく観察することを、親御さんにお勧めします。上の前歯と下の前歯の真ん中が一致していればひと安心ですが、ずれている場合は、矯正の必要が考えられます。出歯や受け口といった前後的に上下の顎(あご)が大きすぎたり小さすぎたりという骨格的な問題は一般の人にとって気が付きやすいのに対して、左右のずれは発見しづらいものです。自然な矯正治療なら、顎骨(がっこつ)の成長コントロールが可能な9~10歳までが理想的です。この時期なら就寝時に、バイオネーターやFKO(エフカーオー)と呼ばれる機能的顎(がく)矯正装置を装着し、ずれた顎の骨を中央に移動します。子どもの成長能力を利用したものですので、痛みはほとんど感じられず、日中は装着する必要がありません。ずれの程度にもよりますが、装着期間は平均すると半年から1年間。経過観察のための通院は、1カ月から3カ月に1度が目安です。ずれの原因には、歯そのものがずれている場合もあり、歯の矯正は永久歯が揃ってからでも矯正治療は可能です。その場合は、抜歯をしたりする可能性が高くなりますが、十分きれいに治療できます。その判断は非常に難しいので、是非、専門医にご相談ください。

ほかに、家庭でできるチェック項目はありますか。

 頬杖や噛(か)み癖、就寝時の体位に左右に大きな差があると、上記のような左右のずれを引き起こすことがあるといわれています。上の前歯と下の前歯の中央が一致しているのを確認したら、次は鼻の先端を規準に、顔の中央に沿っているかを確認してください。ずれの原因は一見してわかるものではなく、万が一、骨格のずれを歯のずれと勘違いして放っておくと、矯正に最適な成長期を逃してしまう危険性もあります。少しでもおかしいなと思ったら、早めに専門医へ相談することをお勧めします。

2004年3月17日水曜日

「過剰な運動による症状」について

ゲスト/山口整形外科クリニック 山口 秀夫 医学博士

運動をやり過ぎても良くないことがあるのですか。

 健康増進を目的としての運動でも、やり過ぎるとトラブルを起こすことがあります。代表的なのは、「テニス肘(ひじ)」「ランナー膝(ひざ)」「ジャンパー膝」です。テニス肘は、テニス、バドミントンなどラケットを使うスポーツをやっている人の肘の外側が痛む症状です。重い物を持ったり、タオルを絞ったりすると肘に痛みが走り、ひどい時にはコップを持ったり、ドアノブを回すことさえできなくなります。手首を外側に回したり、そらせる筋肉は肘の外側に付いており、この筋肉を使い過ぎると、付け根に炎症を起こして痛みとなります。ランナー膝は、ランニングをする人に多く、膝の内側や外側が痛みます。膝を曲げる筋肉の腱(けん)は、膝の内側と外側に付いています。ランニングによって腱と骨が摩擦を起こし、炎症が生じます。ほかに軟骨や半月板の障害、疲労骨折などもランナー膝の原因として考えられます。ジャンパー膝は、バレーボール、バスケットボールなど、ジャンプを繰り返す運動をしている人に多く、膝の前方に痛みを覚えます。ジャンプ後着地をする時に、膝前方の腱には700~1000kgの力がかかります。このような大きな負担が繰り返しかかるため、腱に炎症を起こすのです。またこの症状は、特に運動をしていない成長期の子どもに起こることもあります。オスグット病と呼ばれ、10~14歳ころに多く見られます。

治療と予防方法について教えてください。

 患部を温めたり、低周波を当てる理学療法は効果があります。鎮痛剤のクリーム塗布も有効です。痛みが強い場合は患部に注射する場合もあります。何より肝心なのは、痛みがとれるまでスポーツを休むことです。予防方法としては、負担の少ないラケットやシューズを選ぶこと、運動前に十分にストレッチを行うことが大切です。ランニングでは腿(もも)を高く上げる、テニスでは手首を使わず腰と肩でラケットを振るなど、正しいフォームをマスターすることも必要です。スポーツを休んでも痛みがある場合は、重大な疾病が隠れている可能性もあるので、専門医を受診してください。

2004年3月10日水曜日

「歯科矯正に伴う痛み」について

ゲスト/北大前矯正歯科クリニック 工藤 章修 歯科医師

矯正治療は痛いのではないかと心配なのですが。

 初めて口の中に装置を入れた後、歯が移動し始めることに伴って痛みが生じる場合があります。痛みの程度には個人差があり、「むずがゆい」「歯が浮くような痛み」「何か挟まっているような違和感」など、感じ方もさまざまです。大抵の場合は特に処置をしなくても、3~5日程度で収まります。しかし、中には気になって仕方がないという人もいますので、この場合は、微振動するマウスピースを30分程度はめる、開口訓練器を噛(か)む、ソフトレーザーを照射するなど、理学的な治療によって痛みを除去する方法もあります。まれですが、痛みの強い場合、鎮痛剤を処方することもあります。ほかに矯正治療中の痛みとしては、口の中に異物が入るわけですから、ワイヤーなどが歯茎などと摩擦し炎症を起こしたり、傷や口内炎になることもあります。このような場合は、なるべく早くにかかりつけの歯科医師の診察を受け、器具の調整をしてもらいましょう。軟こうを処方したり、シリコンのカバーを装着することもあります。いずれにしても、正しい矯正方法であれば、我慢できないほどの痛みを感じることはまずありません。

矯正期間中に食べてはいけないものなどはありますか。

 基本的に食べてはいけないものはありません。ただ、できるだけ控えたり、食べ方に注意した方が良いものはあります。堅焼きせんべいやピーナッツ、フランスパンなどの硬く、勢いよく噛まなければ食べられないものは、矯正装置が外れたり破損したりする可能性があるので、細かくしてから口に入れてください。リンゴの丸かじりのような大きく口を開ける食べ方も避けた方が良いでしょう。歯にくっつきやすいガムやキャラメルなども、トラブルの元です。ナッツ類、ポテトチップスなどは、食べかすが残りやすいので念入りに磨いてください。カレーやキムチは色素が強く、器具のゴム部分が変色することがあります。矯正治療は期間が長いので、ほかにも気になる点が多いと思います。事前に納得のいくまで質問をし、心配事を解消してから治療に臨むことをお勧めします。

2004年3月3日水曜日

「血尿と膀胱(ぼうこう)がん」について

ゲスト/芸術の森泌尿器科 斎藤 誠一 医師

血尿が出たら、膀胱がんの可能性がありますか。

 ほかに症状がなく血尿が出た場合、泌尿器科臓器のがんの可能性があります。膀胱(ぼうこう)、前立腺、腎臓といった泌尿器科臓器はがんになりやすく、日本人が罹患(りかん)するがんの上位10位以内に3臓器とも入っています。特に、日本を含めたアジア圏では、膀胱がんが多く、喫煙が原因の1つとして挙げられます。現在は男性に多いがんですが、近年、若い女性の喫煙率が増加していることから、将来日本における女性の膀胱がんが増加するものと考えられます。膀胱がんの典型的な症状は、痛みなどはほとんどなく、血尿だけです。膀胱炎でもないのに、頻尿になることもあります。血尿が出たり、検診で血尿といわれたら、早めに泌尿器の専門医を受診してください。喫煙する人は特に注意が必要です。血尿は赤色とは限らず、オレンジ色やワイン色、チョコレート色になるこ
ともあります。

膀胱がんの治療について教えてください。

 腫瘍(しゅよう)が小さい場合、内視鏡による簡単な切除を行います。組織診断を正確に行うことと、再発予防のためひと塊として切除することが理想です。内視鏡で完全に切除しても、約50%の人が再発します。再発する可能性の高い人には、再発を防ぐために膀胱内に抗がん剤を注入します。一般的な抗がん剤を使用しても約40%の確率で再発しますが、弱毒結核菌であるBCGを注入した場合、再発率を15%まで下げることができます。副作用が強いという問題はありますが、非常に有効です。内視鏡で取りきれない場合、膀胱をすべて摘出する手術を行いますが、同時に尿の出口を作る手術も必要になります。尿道も摘除した場合、人工肛(こう)門と同様の集尿袋が必要になります。尿道に再発の心配がなければ温存でき、この場合は腸を用いた新膀胱を作製し、自然排尿が可能になります。しかし、実際には尿道も摘出し集尿袋を使うことがほとんどです。再発を防ぐためには、喫煙せず、乳酸菌を多めに取ることが有効ですが、もっとも大切なことは、定期的に検査を受け、できるだけ早期に発見し、治療することです。

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