2004年1月21日水曜日

「飛蚊(ひぶん)症」について

ゲスト/阿部眼科 阿部 法夫 医師

飛蚊症について教えてください。

 視界の中で、黒や白っぽい糸くず状のものや、点などが漂って見えた経験は、誰にでもあると思います。例えば白い壁や青空を見たときに顕著に現れますが、この症状を飛蚊症といいます。飛蚊症はたいていの場合、加齢による生理現象なので、心配する必要はありません。しかし、視界の妨げになるほど現れたり、数が増えるようなら、速やかに眼科を受診してください。網膜裂孔(れっこう)である可能性があります。眼球の内側にある薄い膜のことを網膜といい、ここに映った画像が視神経を経由して脳へ伝わります。この網膜を内側から支えているのが、硝子体(しょうしたい)です。硝子体は透明なゼリー状のコラーゲン繊維でできており、老化や強度の近視などでゆがんでしまうことがあります。硝子体のゆがみに網膜が引っ張られ、かぎ裂き状の孔(あな)が開いてしまうのが網膜裂孔です。網膜裂孔を放置しておくと、網膜剥離(はくり)に進行してしまうことがあります。網膜剥離は、裂孔から水分が入り込み、網膜がはがれ落ちてしまう病気です。視力が落ちたり、視野が欠けたりし、最悪失明する可能性もあります。

治療方法、注意すべきことについて教えてください。

 網膜裂孔の時点なら、レーザーによる治療で孔を簡単にふさぐことができます。網膜剥離まで進行した場合は手術が必要になりますが、視力や視野の機能回復については、剥離の程度によりますから、とにかく早期に発見し、治療をスタートすることが大切です。裂孔や剥離になりやすい人として、40歳以上の人、強度の近視の人、眼球をぶつけるなどの外傷があった人、白内障の手術を受けた人、アトピー性皮膚炎の人、家族が網膜剥離を経験した人などが挙げられます。網膜は1度機能を失うと治療をしても再生しません。裂孔や剥離は一般の健康診断では発見されず、痛みなどもないので、サインである飛蚊症の時点で受診することが望ましいのです。「たかが飛蚊症」と考えず、複数になったり、急に増えるようなことがあったら、1度、眼科で検査を受けることをお勧めします。

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