2003年12月3日水曜日

「前立腺肥大症」について

ゲスト/元町泌尿器科 西村 昌宏 医師

前立腺肥大症について教えてください。

 前立腺は、クルミ大の大きさで膀胱(ぼうこう)の出口にあり、尿道を取り巻いている男性特有の臓器で、精のう腺とともに分泌液を出す働きをします。前立腺は肥大化する傾向があり、50歳を過ぎたころから肥大が進み、やがて尿道を締め付けて、尿が出づらくなります。症状の進み具合には個人差がありますが、60代で約6割、70代で約7割の人が肥大症に罹患(りかん)しているといわれています。前立腺肥大症の主な症状としては、夜間トイレに行く回数が多くなる、尿に勢いがない、尿がすぐ出ない、少ししか出ない、時間がかかる、尿を出した後も残尿感があり、すっきりとしないなどがあります。また、α(アルファ)交感神経が刺激され、尿が少したまっただけで尿意が感じられ、やがて尿が出づらくなり、残尿によって、さらにトイレが近くなってしまいます。「年だから仕方がない」と放っておくと膀胱の働き自体が弱くなり、尿管や腎臓へ悪影響を及ぼすこともあります。就寝中に3回以上トイレに起きるようになったら、1度泌尿器科を受診することをお勧めします。

診断や治療方法にはどのようなものがありますか。

 問診や触診のほか、尿の波形や尿流量を測定したり、画像診断を行います。症状に類似点の多い前立腺がんの検査も同時に行う場合がほとんどです。ある程度尿をためた状態で受診すると、検査が1度で済み、効率的です。治療としては、初期であれば薬物療法で症状が改善されます。ただ、薬を飲み続けなければならないので完全な治癒には至りません。症状が進んでいる場合は、前立腺部分の尿道を広げる手術をします。腰椎(ようつい)麻酔で20分程度の比較的簡単なもので、入院期間は約10日間です。年末年始やゴールデンウィークなどまとまった休みが取れるまで、薬で治療し、その後手術ということも可能なので、医師に相談してください。手術をしたくないという人には、尿道から前立腺に熱を加える高温度治療法があります。手術よりも簡易で、2泊程度の入院で行え、忙しい方は外来でも治療可能です。根本的な治癒には至りませんが、半年~2年程度効果が持続します。

人気の投稿

このブログを検索