2003年6月12日木曜日

「慢性肝炎」について

ゲスト/やまうち内科クリニック 山内雅夫 医師

慢性肝炎について教えて下さい。

 肝炎ウイルスの感染が持続し、肝機能異常が6カ月以上続く状態です。進展すると肝硬変に移行し、やがて高率で肝ガンを合併します。日本ではおよそ20%がB型肝炎ウイルス、約70%がC型肝炎ウイルスによるものです。B型慢性肝炎のほとんどは出産時あるいは乳児期の母子感染によるものです。乳児は免疫が無いためウイルスが体内に残り、無症候性キャリアとなりますが、免疫機構が発達する思春期になるとウイルスの存在を認識し、ウイルスを排除しようとしてウイルスを含む肝細胞まで攻撃してしまう~これが肝炎の原因です。このようにして発症した肝炎患者の約90%はやがて治癒しますが、残りの約10%は肝炎が持続し、慢性肝炎となります。輸血や性行為などによって成人がB型肝炎に罹患(りかん)した場合には、一過性の急性肝炎を起こしますが慢性化しません。なお現在、日本ではB型肝炎の母親から生まれた子どもに対しては予防接種がなされており、やがてB型慢性肝炎はほとんど無くなると考えられています。C型肝炎はB型肝炎と同様に血液を介して感染しますが、感染力は弱く、母子感染や性行為で移ることはまれです。過去に行われていた予防接種の注射針の使い回しや輸血などが主な原因です。C型肝炎ウイルスに感染すると、まず急性肝炎を発症しますが、その後高い割合(約70%)で慢性肝炎へ進行することが特徴です。

症状、治療法について教えてください。

 初期にはほとんど症状が無く、慢性肝炎がかなり進行してから、疲れやすい、食欲不振などの自覚症状が出る程度です。血液検査の結果、GOT(AST)、GPT(ALT)の値が高ければ肝臓障害があると見なされ、原因を調べます。B型慢性肝炎ではHBs抗原、HBe抗原など、C型慢性肝炎ではHCV抗体、HCV-RNAが陽性となります。一部のC型慢性肝炎にはインターフェロンが有効ですが、発熱、血小板減少、食欲不振、うつ状態など強い副作用が出る場合があります。最近では抗ウイルス薬のリバビリンを併用することで、より高い治療効果が期待されています。B型慢性肝炎にはインターフェロンの効果は低いのですが、経口抗ウイルス薬のラミブジンの有効性が注目されています。また強力ミノファーゲンC、ウルソなどの肝庇護剤や漢方薬も使われます。いずれにしてもまだ、慢性肝炎の治療法は確立していないというのが実情です。しかし、完治しない場合でも、慢性肝炎の進行を遅らせ、肝硬変への進展、肝がん発生の防止のため治療を継続し、禁酒を守るなど、日常生活の中で注意を払いながら長く付き合っていくことが必要です。

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