2003年4月16日水曜日

「虚血性心疾患と内臓肥満症候群」について

ゲスト/朝日内科クリニック 冨田 文 医師

虚血性心疾患と肥満の関係について教えてください。

 現在日本では、循環器疾患、特に狭心症、心筋梗塞(こうそく)などの虚血性心疾患が増加しており、大きな問題になっています。増加した要因として高齢化も挙げられますが、日本の昔ながらの食生活・ライフスタイルが崩れ、欧米化したことが大きく影響しています。虚血性心疾患の危険因子として、糖尿病、高血圧、高脂血症、喫煙などが知られています。一つ一つの危険因子は軽度であっても、それが複数重なることによって虚血性心疾患を発症する危険性が非常に高くなります。これら糖尿病や高血圧、高脂血症などの発症に、肥満は重要で中心的な役割を担っています。肥満に伴う合併症の発症には、脂肪の量そのものよりも付き方の違い、すなわち脂肪分布がより密接に関連しています。肥満は、腹腔内の腸間膜脂肪を主とする内臓脂肪の蓄積が顕著な「内臓脂肪型肥満」と、皮下脂肪が多い「皮下脂肪型肥満」に分類できます。「内臓脂肪型肥満」に糖尿病、高血圧、高脂血症などの合併症が高い確率で現れることが明らかになっています。また、見た目が肥満ではなくても内臓脂肪の蓄積がさまざまな代謝異常や高血圧、虚血性心疾患の発症に密接に関連することがわかっています。このような内臓脂肪の蓄積を成因基盤として糖尿病、高血圧、高脂血症など複数の危険因子が合併している病態は「内臓脂肪症候群」と呼ばれ、虚血性心疾患の高リスク集団と考えられています。

内臓脂肪症候群の原因は何でしょうか。

 「内臓脂肪症候群」の生活習慣上の特徴として、「過食で間食が多い」「運動不足」「喫煙」などが挙げられています。肥満の人でも内臓脂肪が正常な人たちは、日常の身体活動が活発であることが明らかになっており、運動不足が内臓脂肪蓄積の大きな要因と考えられます。内臓脂肪蓄積の正確な判断には腹部CTやMRI検査による脂肪分布の評価が必要ですが、参考値として、「ウエスト÷ヒップ」の値が、男性で1.0以上、女性で0.8以上なら、内臓型肥満の可能性が高くなりますので注意してください。

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