2003年2月26日水曜日

「顔のシワ」について

ゲスト/緑の森皮フ科クリニック 森 尚隆 医師

顔のシワについて教えてください。

 大きく分けて2種類あります。一つは乾燥によって肌の柔軟性が失われ、折り目が元に戻る力が弱くなることでできる細かいシワ、もう一つは筋肉の動きによってできる表情ジワです。紫外線も悪影響をおよぼします。なかでも波長の長いUVAは真皮まで達し、肌に張りを与える弾力繊維のコラーゲンやエラスチンを変性させます。コラーゲンの機能が低下する25歳以降は、特に日ごろの手入れが重要です。細かいシワの予防には保湿が第一です。日中、乾燥していると思ったら、軽いメイクの上からであればミスト状の化粧水やジェルを塗布するのも効果的です。多種類の保湿液の常用は、肌そのものが持っている機能が低下する原因となるので、化粧水やジェルなどを中心としたシンプルな保湿をお勧めします。表情ジワの代表はみけんや額のシワで、視力の弱い方や眼瞼下垂の方が、物を凝視する表情を繰り返すことでできる場合が多いです。どちらのシワも、日常生活の心掛けである程度の予防が可能です。大切なのは、皮脂や汚れをしっかり落とす洗顔です。ゴシゴシ洗わず、低刺激性の洗顔料を十分に泡立て、包み込むように洗ってください。睡眠不足やストレスは良くありませんし、食事ではビタミンA、C、ベータカロチンの摂取を心掛けましょう。

出来てしまったシワの対処法はありますか。

 シワの深さや種類によってさまざまな方法があり、効果の継続期間や回数も異なります。複数の併用により、高い効果が得られる場合もあります。細かいシワはレチノイン酸(ビタミンA)や、コラーゲンの誘導体となるビタミンCが入ったクリームなどの塗布が有効です。また、元来皮膚など人体に存在しているヒアルロン酸を注入する方法では、潤いのある肌が期待できます。幅広い波長を持つフラッシュ光の照射で肌の老化を改善するフォトフェイシャルIPLも有効で、コラーゲンやエラスチンを増やす効果もあります。そのほか、角質の一部を除去し、肌の持っている修復力を活用するケミカルピーリングなどもあります。いずれも専門医とよく相談して行ってください。

2003年2月19日水曜日

「形成外科的傷の治療法」について

ゲスト/土田病院 日下貴文 医師

形成外科的な傷の治療について教えてください

 形成外科という分野についてですが、一般に整形外科と混同される人が多いようです。形成外科は、先天異常、外傷、腫瘍(しゅよう)による醜状を元の状態に戻すための治療を行います。通常の人に新たな外科侵襲を加えて、より美しくする場合は美容外科といい、これも形成外科分野に含まれます。形成外科医の数は、実はかなり少ないこともあり、救急病院で形成外科医が当直していることは極めてまれです。しかし、外傷を負って応急の処置を受けた後、形成外科を受診するのとしないのとでは、傷痕に大きな違いが出る可能性があります。形成外科医が縫合する場合、表面よりも深部の真皮縫合を重視します。皮膚表面はスーチャーマーク(縫合跡)が極力付かないようにごく細い糸で縫合し、抜糸は7日以内に行います。傷の表面は約1週間でふさがりますが、実際の傷の活動は最低でも3カ月間は持続します。つまり、少なくとも3カ月間は傷の幅が太くなったり、赤く盛り上がったりする可能性があります。このため、抜糸後に創の緊張による傷跡の広がりを防いだり、日焼けによる色素沈着を予防するためにテーピングを3カ月間続けます。

やけどについてはどうでしょうか。

 熱傷は、範囲が広いと生命にかかわることは知られていますが、小さなやけどでも早期治療が不適切だと、熱傷深度が進行することがしばしばあります。熱傷は皮膚組織損傷の深度によって1度、浅達性2度、深達性2度、3度熱傷に分類されます。浅達性2度熱傷までは自然治癒できれいに治ります。しかし、深達性2度、3度熱傷の場合は外科的切除と植皮が必要になりますので、早いうちに専門医を受診しましょう。外傷や熱傷で感染が生じると創傷治癒が遅れ、肥厚性瘢痕(はんこん)やケロイドが発生することがあります。この場合、内服薬や軟膏(なんこう)、ステロイド局所注射、テープ固定、放射線治療、手術などを組み合わせて治療します。しかし、肥厚性瘢痕やケロイドの改善は人によって難しい場合もあるので、早期に適切な治療を受けることをお勧めします。

2003年2月12日水曜日

「膀胱(ぼうこう)ガン」について

ゲスト/芸術の森泌尿器科 斉藤 誠一 医師

膀胱ガンについて教えてください。

 膀胱の中にできる腫瘍(しゅよう)の約9割はガンです。膀胱、前立腺、腎臓といった泌尿器系の臓器はガンになりやすく、日本人のかかるガンの10位までに3臓器とも入っています。原因は喫煙によるものがほとんどで、男性に多い病気です。現在、全体の喫煙人口は減少してしていますが、一方で若い女性の喫煙率は高くなっていますので、将来日本における女性の膀胱ガンは増加するものと懸念されています。また、ゴムや皮革の製造加工業、機械工、金属加工業、美容師など、化学薬品や染料を扱う職業にも発症率が高いことが知られています。症状としては、痛みがほとんど無く、血尿が出るだけです。また、膀胱炎でもないのに、頻尿になることもあります。とにかく、タバコを吸う人が何も症状が無いのに血尿が出たり、検診で血尿といわれたら要注意です。

治療と再発の可能性について教えてください。

 治療は、小さなものならカメラによる簡単な切除を行います。再発を少なくするためには、組織診断を注意深く行い、ひとかたまりとして切除することが理想的です。しかし、カメラで完全に切除しても50%の確率で再発しますので、それを防ぐために膀胱の中に抗ガン剤の注入を行います。一般的な抗ガン剤を入れても40%程度は再発しますが、弱毒結核菌であるBCGを注入した場合、再発率を15%程度まで下げることができ、非常に有効といえます。副作用も強いのですが、現在使用されている薬の中ではもっとも有効です。カメラで取りきれない状態であれば、膀胱の全摘出を行いますが、この場合、尿の出口を作る尿路変更が必要になります。尿道に再発の心配がなければ温存でき、腸を用いた新膀胱を作製し、今までと同様に自然排尿が可能となります。しかし、再発の危険性を避けるため尿道も摘除した場合、人工肛門と同じような集尿袋が必要になります。再発を防ぐためには、たばこをやめ、乳酸菌を多めに取ることが有効ですが、一番大切なのは、きちんと検査を受けて、できるだけ早期に発見し、治療することです。

2003年2月5日水曜日

「PET(ペット)によるガン診断」について

ゲスト/札幌新世紀病院  阿部 信彦 理事長

PETについて教えてください。

 PETは陽電子放射断層撮影によるガン診断の一つです。ガン細胞は正常な細胞に比べ、ブドウ糖を3~8倍多く取り込む性質があります。これを利用し、ブドウ糖の薬(FDG)を静脈に注射し、ガン細胞に集まったFDGから放出されるガンマ線をPETカメラで撮影し、ガンのある個所を特定します。生体内変化を画像化して診断するPET検査は、病気の形だけを頼りに診てきた従来の診断(CT・MR)に比べ、診断能力が大幅にアップされ、どこにガンがあるか、どこに転移しているか、病巣の広がりはどの程度かまで評価することが可能です。さらに、今までの診断法では困難だった良・悪性の判別から数ミリのガンの発見・転移まで、ほぼ全身にわたって約20分で検査を終了でき、「ガン診断の切り札」といわれています。ガンと闘う上で最も重要なのは早期発見・早期治療です。ミリ単位のごく小さな段階でガンを見つけて治療に取りかかれば、治療成績は格段にアップします。

どのような人に向いていますか。

 もちろん、検診の一環として受けることもできますが、この場合は健康保険の適用外となります。日本では、昨年4月から一部条件付きで脳腫瘍(しゅよう)、頭頸(けい)部ガン、肺ガン、乳ガン、すい臓ガン、大腸ガン、転移性肝ガン、原発不明ガン、悪性リンパ腫などにおけるPET診断が、健康保険の適用となりました。すでにガンと診断された人、ガンの疑いがあると言われた人、ガンの再発に不安を抱いている人、またガン治療の効果を判定したい人にもお勧めします。ガン治療の先進国・アメリカでは、ガン診断・治療の医療訴訟において、PETの有用性を医師が患者に説明していない場合は、医師が不利になるほど、PETは浸透しています。ただし、PETによる診断が難しいガンもあります。厚生労働省の発表では、2001年のガンによる死亡数は、日本全体の死亡数の約3分の1を占める30万人に達しました。PETのある施設はまだ限られていますので、PETに関心のある人は、まず主治医に相談することをお勧めします。