2002年8月14日水曜日

「結核」について

ゲスト/大道内科・呼吸器科クリニック 大道光秀 医師

結核について教えて いただきたいのですが。

 まず認識していただきたいのは、結核は決して過去 の病気ではなく、今でも世界中で毎年800万人の患者と300万人の死者を出しており、 特に開発途上国では成人における感染症死亡の第1位であり続け、また免疫力を低下 させるエイズの蔓(まん)延とともに、今後も増加が予想される病気です。また先進 国、特に日本でも近年罹患(りかん)率が増えている疾病であります。日本では昭和 26年当時、患者数60万人の国民病であり、死亡者数10万人近くを数える「死の病」と して恐れられていました。しかし、医学が進歩し生活環境も改善され、次第にその数 は減り、昭和40年代に開発された特効薬によって患者数は激減し、一般の人のみなら ず、医療関係者まで「結核は過去の病」と思い込むまでになりました。ところが、平 成9年から新規患者数が増え始め、以降毎年上昇しています。現在、毎年4万人余り の新規患者が発生し、3千人近くの人が結核によって亡くなっています。患者数がこ こにきて増えた理由の1つには高齢者の発症が多いことです。結核が蔓延していた時 代に結核菌に感染しながら、発病せずに免疫を持っていた人が、年を取り免疫力や体 力が衰え発症するためです。発症した人が、結核と気づくのが遅れたため、周囲の人 に感染させるということも多いのです。また、ホームレスなど劣悪な環境に身を置「ている人が多い地域では極端に罹患率が高くなっています。これは診察を受けなか チたり、治療を途中でやめてしまう人が多いためです。さらに不摂生な生活や偏った 食生活で栄養状態が悪くなっている若者にも患者が増えています。活動的な年代であ るため、接客などを通して多数の人に感染させている場合があります。一方、結核菌 に全く免疫力を持たない若年者が、診断の遅れのため結核菌を排菌している人から感 染する集団発症も最近増えています。

結核にかかったら、 どうすれば良いのですか。

 結核の初期症状は風邪と 似ています。せきやたんが出る、体がだるい、微熱が続くなどです。せきが1カ月以 上続く場合は、医療機関を受診してください。医療従事者でも結核の認識が薄いとい うのが実情なので、できれば呼吸器の専門医を訪ねてください。結核は、早くに発見 し、治療さえきちんと受ければ必ず治る病気です。長患いという印象がありますが、 現在では3,4種類の薬を6~9カ月服用することで短期間に治すことができます。排菌 が無ければ通院で治すこともできます。しかし治療を途中で中断すると、耐性菌が出 現し治療が困難になりますし、死亡することもあります。また、治療に時間を要する ことから、非常に進行した状態では薬の効果が出る前に死亡することもあります。や はり早期診断、早期治療が大事です。

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