2002年1月30日水曜日

「脳卒中」について

ゲスト/川沿脳神経外科クリニック 蝶野吉美 医師

脳卒中について教えてください。

「卒」は卒然の卒、つまり突然・にわかの意、「中」は命中の中、つまり当たるの意味です。脳に突然当たって意識を失ったり、手足が麻痺することを指します。昔、お年寄りが突然倒れて、三日三晩大いびきをかいて大往生などといわれたのも実は脳卒中だったのかもしれません。原因は脳の血行障害ですが、これには血管が詰まって起きる脳梗塞(こうそく)と血管が破れて起きる脳出血(脳溢=いっ=血ともいわれ脳の中に出血するもの)、くも膜下出血(脳動脈瘤=りゅう=が破裂して脳の表面に出血するもの)が含まれます。人は血管と共に老いるともいわれますが、高齢化に伴い脳梗塞が増えています。このほか脳卒中の仲間には、症状が24時間以内に消える一過性脳虚血発作、血管性痴呆、高血圧性脳症があります。脳から背骨の中を腰まで伸びる脊髄(せきずい)にも、脳卒中と同じ病気が起きることがあり注意が必要です。

どのような兆候が現れたら受診すればいいのですか。

 簡単には、頭痛、めまい、しびれ、物忘れと覚えておくといいでしょう。しびれには口元のもつれ、手足の重だるさも含めることにします。脳は、機能局在といって、部位により果たす役割分担が決まっていますから、障害を受けた部位により出現する症状もいろいろなのです。耳鼻科、内科、整形外科など他科の病気も同様の症状を起こしますが、急激に出現した場合は脳卒中の疑いをまず晴らした方が安心です。このとき症状の程度、年齢は脳卒中の有無と関係ないことに注意してください。くも膜下出血による頭痛、小脳梗塞によるめまい、脳出血によるしびれの方が、偏頭痛による頭痛、メニエール病によるめまい、頚椎(けいつい)症によるしびれよりずっと軽いことがあります。また小児にもモヤモヤ病、動静脈奇形などによる脳卒中があります。最近はMRIなどの画像診断も比較的容易に受けられるようになり、症状の無いうちに発見される機会も増えてきました。それらの中には、将来脳卒中を起こす危険性、治療の必要性を正確に予測することが困難なものも少なくありません。脳神経専門医の責任が増しているとともに、自分の脳の健康は自分で守る時代が来たともいえるでしょう。

2002年1月23日水曜日

「受け口(下顎前突)」について

ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治正光 医師

受け口について教えてください。

 下顎前突、いわいる受け口ですが、原因は遺伝的因子と環境的因子が考えられます。乳歯が生え始めたときから発症する場合もありますから、一番身近に接するお母さんが注意をしていれば早い時期に気づくことができます。治療自体は、上下前歯の永久歯が生え揃う6、7才頃からという場合が多いのですが、気づいた時点で一度専門医を受診しておくと、その後の予測もつき、治療計画も立てられ安心です。受け口に限らず、咬(か)み合わせや歯並びが悪いと、歯にも体にも悪影響を与えます。80歳で20本以上の歯を残している人の中に、受け口の人はいないといわれているのは見逃せない事実です。前歯が刺激を受け続けるため、炎症を起こしやすく、歯槽膿漏(しそうのうろう)などになりやすいためです。また、受け口で舌足らずなしゃべり方をする人は、低位舌(ていいぜつ)の可能性があります。通常、人間の舌というのは上顎に貼り付いているものですが、受け口の場合、上顎が小さいため、舌が下方に貼り付いて、舌と下顎の間の筋が短く、舌が自由に動かないため、うまく発音することができなくなります。大人にも多く見られる症状なので、思い当たる人は一度受診してみるといいでしょう。

受け口の具体的な矯正方法について教えてください。

 受け口というと、下顎に問題があるように思われがちですが、むしろ、上顎が狭過ぎるという場合が意外に多いのです。下顎と大きさを合わせるために、上顎前方牽引装置で上顎骨の前方成長を計ります。この装置は自分で簡単に取り外しができるので、夜間のみの使用でかまいません。見た目や装着の不快感は最小限にとめます。受け口に限らず、歯列や噛み合わせの矯正については、現在、なるべく歯を抜かない、痛みを感じさせない、目立たないといった、患者の負担を極力軽くする治療法が主流になりつつあります。しかし、矯正は長期に渡り、健康保険の適用外になることが多いので、信頼できる専門医から納得できる説明を十分に受け治療を開始することをお勧めします。

2002年1月16日水曜日

「胃ろう」について

ゲスト/土田病院 北川一彦 医師

「おなかに小さな口」といわれている、胃ろうについて教えてください。

 経皮内視鏡的胃ろう造設術の英文頭文字を取って一般 に「PEG(ペグ)」と呼ばれています。食道がん、喉頭(こうとう)がんの手術後の人、脳外科手術後の意識がない人、嚥下(えんげ)機能障害のある人など、何らかの理由により食べられない、食べてもむせてしまうという人のために、直接胃に穴を開けて栄養を補給する方法です。現在主流である、鼻からチューブを通 す経鼻栄養の場合、チューブがのどに違和感を与え、患者の苦痛になったり、長期にわたると炎症や潰瘍(かいよう)などの合併症を引き起こしたり、胃液や栄養剤が逆流し、誤えん性肺炎を引き起こすこともあります。さらに、自由に動ける人の場合はリハビリの妨げにもなります。在宅管理も難しく、経鼻栄養のためだけに入院を余儀なくされる場合もあります。胃ろうの場合は、体を自由に動かせるのでストレスが少なく、また管理も簡単なため、自宅での療養が可能になります。一泊の入院で、危険性の極めて低い手術によって造設することができます。大きな特徴として、嚥下訓練などで口から栄養を取れるようになった時点で、麻酔や縫合も必要なく、すぐに抜くことができることがあげられます。抜いた後の穴は、ピアスの穴が自然にふさがるのと同様に、自然な回復力により痛みもなく、1日程度でふさがってしまいます。

胃ろうの手入れなどは大変ですか。

 日常のケアは、食後口の周りを拭(ふ)くように、栄養剤注入後に胃ろうチューブのまわりを清潔な布で拭くだけです。湯船に浸(つ)かったり、シャワーを浴びることもできますから、常に清潔を心がければ細菌感染を恐れることもありません。栄養剤のほかに、スープなど液体状の物であれば入れることができます。4カ月に一度程度のチューブ交換が必要ですが、介護にあたる人の負担が経鼻栄養より格段に軽く、患者本人のストレスが少ない点が大きな魅力です。胃ろう造設術を希望される方は、まず病院に相談してみてください。

2002年1月15日火曜日

「インフルエンザの予防と治療」について

ゲスト/つちだ消化器循環器内科 土田敏之 医師

インフルエンザについて教えてください。

 インフルエンザは、インフルエンザウイルスの感染によるもので、抗原性の違いから、A型、B型、C型に分類されます。冬季に大流行する場合が多く見られます。突然、悪寒を伴う39度以上の発熱で発症する場合が典型で、そのほかに頭痛、関節痛、筋肉痛、食欲不振、倦怠(けんたい)感などの全身症状が強く出現することが大きな特徴で、一般の風邪とは異なった感染症です。重症化することも多く、気管支炎や肺炎、中耳炎、熱性けいれんなどを合併したり、脳炎・脳症など重篤な合併症を引き起こすこともあります。また、呼吸器や心臓などに疾患を持つ人は、重症化することも多いので気を付けなくてはいけません。特に、抵抗力の弱い幼い子どもたちや高齢者には注意が必要です。

予防方法や治療法をご紹介ください。

 毎年10月ころからインフルエンザワクチンの接種が行われています。ワクチン接種をしても、インフルエンザに罹患(りかん)してしまうことがありますが、肺炎や脳炎など合併症を予防することが期待できます。特に老人介護施設や保育園など集団生活を送っている場合は、インフルエンザが蔓延する場合が多いので、ワクチンで予防することをお勧めします。流行しているときは、人込みに出掛けない、などの自衛策も大切です。インフルエンザに感染してしまった場合、有効な治療法としては、抗ウイルス薬の内服があります。抗ウイルス薬はウイルスの増殖を抑制し、症状を緩和させ、重症化による死亡率を低下させます。しかし、この薬は発症後48時間以内の服用が原則ですから、かかったかなと思ったら、すぐ病院へ行ってください。昨シーズンは大人用のみで、インフルエンザA型とB型の両方に効く抗ウイルス薬がありましたが、今シーズンから同じ効き目の小児用抗ウイルス薬が使用可能になりました。健康保険が適用になりますから、一刻も早く病院で薬を処方してもらい、つらい症状を緩和してあげてください。また、無理をせず、十分な休養と栄養を取るようにしてください。

2002年1月9日水曜日

「リウマチ」について

ゲスト/クラーク病院 守内順子 医師

リウマチとはどんな病気でしょうか。

 正式には慢性関節リウマチといいます。体質、免疫異常、感染などの原因が考えられていますが、まだはっきりと解明されていません。まれに子どもに発症する場合もありますが、8割以上は女性に発症する、40代を中心とした働き盛りの女性の病気です。病気の中心は関節の腫(は)れや痛みですが、関節以外にも症状が出ることがある全身の炎症性の病気です。炎症が進むと関節が破壊されるため、リウマチ特有の変形が手や足に見られ、日常生活にも支障を来すことがあります。根治療法は今のところありません。ただ、症状の現れ方や進行のスピードについては個人差が大きく、発病初期の段階で症状が治まる場合もあります。関節以外の症状、合併症としては、貧血、発熱、倦怠(けんたい)、腱鞘(けんしょう)炎、シェーグレン症候群(涙腺(せん)・唾液(だえき)腺に炎症が起き、分泌物が少なくなる病気)などがあります。

治療方法や注意点について教えてください。

 初期症状は、朝起きた時点での関節のこわばりや痛みです。手指の場合が多く、左右対称に発症します。このような症状が現れたら、早めに受診してください。できればリウマチ科を標榜(ひょうぼう)し、専門に診察している病院を受診した方がいいでしょう。関節を中心とした身体所見と血液検査で診断し、治療の中心は薬物療法になります。炎症を抑える非ステロイド性抗炎症剤、副腎(じん)皮質ステロイド剤、リウマチを改善する抗リウマチ剤、免疫抑制剤などが主に使われています。症状や病状変化、副作用など、状態を見ながら投薬していくので、定期的に受診してください。リウマチは長く付き合っていかざる得ない病気なので、検査値や投薬内容、病状の記録を残す「リウマチ手帳」を所持すると良いでしょう。患者自身の病気の理解、自己管理も大切です。関節の破壊が進んだときには、手術を受けた方が良い場合もあります。日常生活の注意点としては、寒さや過労を避け、関節に負担をかけないように過ごします。患者の多くが主婦であるため、安静にできないことも多く、治療には家族の理解と協力が必要です。